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23そして今に至る
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指定された部屋の番号を伝え、エレベーターを使って上に上がっていく。指定された部屋の前で深呼吸をして、ノックする。中から入るようにと、男の声が聞こえ、ジャスミンはためらいなくドアを開ける。
「待っていたよ。それにしても、朔夜さんが好きだと言っても、わざわざこんな場所まで普通やってこないよ。そこは賞賛に値する。でも、次回からはもっと警戒した方がいいかもよ。男女二人きりで、この場所を指定されたら、やることは一つでしょう?」
「別に警戒していないわけではないわ。あんたこそ、蒼紗のことはいいのかしら?蒼紗のことが好きなら、こんな場所に私を呼びだすのは、悪手でしょう」
二人はじっと互いの様子を伺い合う。数分後、男が根負けして、手を挙げて降参の意を示す。
「まあまあ、そんなに警戒しないでよ。僕と佐藤さんの仲でしょう。まずは座って飲み物でも飲みながら話し合おう」
男はジャスミンに部屋の奥にある、窓の近くにあったイスに座るように勧めた。仕方なく、男の言う通り、イスに座るが、男が勧めてきた飲み物には手をつけなかった。
「さっきは、警戒させるようなことを言ってごめん。それで、僕の話だけど、朔夜さんの秘密は佐藤さんも知っていると思うけど、言霊を操る能力、年を取らない特異体質。それと狐の神様を居候させていることがあるよね」
男がジャスミンを呼び寄せた目的である、蒼紗の秘密について話し出す。ジャスミンは初めて聞くようなふりをして、慎重に男の出方を見ることにした。
「蒼紗が好きすぎて、頭がおかしくなったんじゃないかしら?蒼紗が能力者なんてありえないし、年を取らないなんて、吸血鬼じゃあるまいし、それこそありえないわ。狐の神様にしても、ここは京都ではないし、狐がいる神社も遠いわよ」
「往生際が悪いですね。まあ、認めても認めなくても、あなたは今日ここで、朔夜さんに関する記憶を失うことになるから、心配はいりません」
「さっきから、ずいぶんと中二病的発言ばかりだけど、それを言うためだけに、私をここに呼んだのかしら。そんな用事なら、帰らせてもらうわよ」
そう言いながらも。ジャスミンは内心警戒を最大限に高めていた。いつ、男が何をしてきてもいいように、能力をすぐに解放できるように、全身に力を入れていく。身体のところどころから爬虫類のうろこが現れる。
「それはダメだよ。今日の目的は、佐藤さんから記憶を奪うことが目的だもの。そうすれば、朔夜さんはどうするかなあ。それによってあの人も動きやすくなるからね。実行させてもらいますよ!」
男はいきなり、ベッドの下に隠してあった銃を取り出した。そして、ジャスミンに照準を合わせる。
「いきなり、物騒なものを取り出してきたわね。乙女に向けるものではないと思うけど」
「記憶を奪うとは言っても、あなたも能力者。一筋縄にはいかないことは承知。だからまずは、動きを封じようと思いまして。安心してください。殺しはしません。そんなことをしたら、誰が何をしてくるかわからないからね」
「一応、あんたも私のことは警戒しているわけね。さっきから、話し方が丁寧なのか、タメなのかわからなくなっているけど、どっちが本性なのかしら?」
ジャスミンは、男と話しながら、ちらりと後ろにある窓を確認する。窓は人が通れるほどの大きさで、窓を割れば外に出られるだろう。しかし、ここは三階。普通の人間ならば、窓を割って外に出るのは、危険行為でしかない。ジャスミンとは言え、無傷では済まされないだろう。
「あんたの話し方も本性もどうでもいいけど、とりあえず、あんたみたいな三下を相手にする暇は、私にはないの。だから、無理やりにでも帰らせてもらうわよ!」
「このあまあ!」
男がジャスミンに向けて発砲する。その瞬間、ジャスミンは窓に向かって体当たりして、外に出る。当然、そこは三階であることを理解していたジャスミンは、能力を発動してホテルの壁に爪を突き立てて、一階まで降りていく。男は窓の外まで追っては来なかった。
ジャスミンは、話し終えると、ふうと深いため息をつく。
「ここまでが私が蒼紗と一緒に居られなかった理由と、今日の出来事の真相だけど、理解してくれたかしら?」
「理解はできました。次回から、私のことで、一人で悩んで解決しようとしないでください。何かあったら、どうするつもりだったのですか?」
「あら、心配してくれるなら、本望ってやつよ」
「先生は、いつも苦労しているよね?」
そういえば、と私はジャスミンと翼君以外にその場にゆきこちゃんがいることを思い出す。どうして、あの場に二人がいたのだろうか。
「ゆきこちゃんと翼君は、なんであんなところにいたんですか?」
「ええと、それは、車坂先生が、朔夜先生がピンチになっているからって。先生がいる場所に行って欲しいと言われたの。そしたら、そこに翼先生もいて、それで……」
「まあ、いろいろ僕たちも思うところがありまして。僕の力だけでは、いざとなった時に役に立ちませんから。それも見越して車坂は雪子ちゃんをよこしたのでしょう」
「どうして、車坂先生が私の動向を知っているのか気になりますが、今回は助かりました。塾に行った時にでもお礼を言った方がいいでしょうか」
「その必要はないと思いますよ」
翼君の言葉に苦笑する。翼君はどうやら、車坂と相性が悪いようだ。
「さて、これまでのこと、今日のことは話したけど、そこに転がっている男はどうする?蒼紗にちょっかいをかける輩はつぶすのが理想だけど、蒼紗はどうしたらいいと思う?蒼紗が言う通りにするわよ。この男を煮るなり焼くなり、海でも山でも捨てるなり、何でも言ってちょうだい」
「物騒なことを言わないでください。そうですね、まずは話を聞きましょう。この男の処遇はその後に決めていきましょう」
話はまとまりつつあった。とりあえずは、男から話を聞くということになり、翼君に起こしてくれるよう頼んだ。
「ピーンポーン」
そんな最中、玄関のインターホンが鳴る。まったく、次から次へと面倒事がやってくる。仕方なく、インターホンの画面で来客者を確認すると、またため息が出た。
「待っていたよ。それにしても、朔夜さんが好きだと言っても、わざわざこんな場所まで普通やってこないよ。そこは賞賛に値する。でも、次回からはもっと警戒した方がいいかもよ。男女二人きりで、この場所を指定されたら、やることは一つでしょう?」
「別に警戒していないわけではないわ。あんたこそ、蒼紗のことはいいのかしら?蒼紗のことが好きなら、こんな場所に私を呼びだすのは、悪手でしょう」
二人はじっと互いの様子を伺い合う。数分後、男が根負けして、手を挙げて降参の意を示す。
「まあまあ、そんなに警戒しないでよ。僕と佐藤さんの仲でしょう。まずは座って飲み物でも飲みながら話し合おう」
男はジャスミンに部屋の奥にある、窓の近くにあったイスに座るように勧めた。仕方なく、男の言う通り、イスに座るが、男が勧めてきた飲み物には手をつけなかった。
「さっきは、警戒させるようなことを言ってごめん。それで、僕の話だけど、朔夜さんの秘密は佐藤さんも知っていると思うけど、言霊を操る能力、年を取らない特異体質。それと狐の神様を居候させていることがあるよね」
男がジャスミンを呼び寄せた目的である、蒼紗の秘密について話し出す。ジャスミンは初めて聞くようなふりをして、慎重に男の出方を見ることにした。
「蒼紗が好きすぎて、頭がおかしくなったんじゃないかしら?蒼紗が能力者なんてありえないし、年を取らないなんて、吸血鬼じゃあるまいし、それこそありえないわ。狐の神様にしても、ここは京都ではないし、狐がいる神社も遠いわよ」
「往生際が悪いですね。まあ、認めても認めなくても、あなたは今日ここで、朔夜さんに関する記憶を失うことになるから、心配はいりません」
「さっきから、ずいぶんと中二病的発言ばかりだけど、それを言うためだけに、私をここに呼んだのかしら。そんな用事なら、帰らせてもらうわよ」
そう言いながらも。ジャスミンは内心警戒を最大限に高めていた。いつ、男が何をしてきてもいいように、能力をすぐに解放できるように、全身に力を入れていく。身体のところどころから爬虫類のうろこが現れる。
「それはダメだよ。今日の目的は、佐藤さんから記憶を奪うことが目的だもの。そうすれば、朔夜さんはどうするかなあ。それによってあの人も動きやすくなるからね。実行させてもらいますよ!」
男はいきなり、ベッドの下に隠してあった銃を取り出した。そして、ジャスミンに照準を合わせる。
「いきなり、物騒なものを取り出してきたわね。乙女に向けるものではないと思うけど」
「記憶を奪うとは言っても、あなたも能力者。一筋縄にはいかないことは承知。だからまずは、動きを封じようと思いまして。安心してください。殺しはしません。そんなことをしたら、誰が何をしてくるかわからないからね」
「一応、あんたも私のことは警戒しているわけね。さっきから、話し方が丁寧なのか、タメなのかわからなくなっているけど、どっちが本性なのかしら?」
ジャスミンは、男と話しながら、ちらりと後ろにある窓を確認する。窓は人が通れるほどの大きさで、窓を割れば外に出られるだろう。しかし、ここは三階。普通の人間ならば、窓を割って外に出るのは、危険行為でしかない。ジャスミンとは言え、無傷では済まされないだろう。
「あんたの話し方も本性もどうでもいいけど、とりあえず、あんたみたいな三下を相手にする暇は、私にはないの。だから、無理やりにでも帰らせてもらうわよ!」
「このあまあ!」
男がジャスミンに向けて発砲する。その瞬間、ジャスミンは窓に向かって体当たりして、外に出る。当然、そこは三階であることを理解していたジャスミンは、能力を発動してホテルの壁に爪を突き立てて、一階まで降りていく。男は窓の外まで追っては来なかった。
ジャスミンは、話し終えると、ふうと深いため息をつく。
「ここまでが私が蒼紗と一緒に居られなかった理由と、今日の出来事の真相だけど、理解してくれたかしら?」
「理解はできました。次回から、私のことで、一人で悩んで解決しようとしないでください。何かあったら、どうするつもりだったのですか?」
「あら、心配してくれるなら、本望ってやつよ」
「先生は、いつも苦労しているよね?」
そういえば、と私はジャスミンと翼君以外にその場にゆきこちゃんがいることを思い出す。どうして、あの場に二人がいたのだろうか。
「ゆきこちゃんと翼君は、なんであんなところにいたんですか?」
「ええと、それは、車坂先生が、朔夜先生がピンチになっているからって。先生がいる場所に行って欲しいと言われたの。そしたら、そこに翼先生もいて、それで……」
「まあ、いろいろ僕たちも思うところがありまして。僕の力だけでは、いざとなった時に役に立ちませんから。それも見越して車坂は雪子ちゃんをよこしたのでしょう」
「どうして、車坂先生が私の動向を知っているのか気になりますが、今回は助かりました。塾に行った時にでもお礼を言った方がいいでしょうか」
「その必要はないと思いますよ」
翼君の言葉に苦笑する。翼君はどうやら、車坂と相性が悪いようだ。
「さて、これまでのこと、今日のことは話したけど、そこに転がっている男はどうする?蒼紗にちょっかいをかける輩はつぶすのが理想だけど、蒼紗はどうしたらいいと思う?蒼紗が言う通りにするわよ。この男を煮るなり焼くなり、海でも山でも捨てるなり、何でも言ってちょうだい」
「物騒なことを言わないでください。そうですね、まずは話を聞きましょう。この男の処遇はその後に決めていきましょう」
話はまとまりつつあった。とりあえずは、男から話を聞くということになり、翼君に起こしてくれるよう頼んだ。
「ピーンポーン」
そんな最中、玄関のインターホンが鳴る。まったく、次から次へと面倒事がやってくる。仕方なく、インターホンの画面で来客者を確認すると、またため息が出た。
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