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18朝の散歩
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「昨日、アリアから真珠さんの事情は聞きました。今回僕は、真珠さんと彼氏を別れさせるための助っ人として呼ばれたことも」
弟のマンションを出て、私たちは近くの公園を目指して歩いていく。土曜日の朝ということもあり、私たち以外に歩いている人は見当たらない。車もほとんど通らず、とても静かだった。そのため、ルリさんの声がはっきりと聞こえる。
「アリアさんがルリさんを連れて来たときは本当に驚きました」
「僕も最初にアリアから相談を受けた時は驚きました。でも、もともとダイヤからお姉さんのことは聞いていたので、これはよい機会だなと思いました」
「よい機会、ですか?」
「はい。ダイヤは会うたびに真珠さんのことを話すので、実際に会って話してみたくなりました」
私がモデル時代、ルリさんはすでに活躍していたが、実際に彼と話したことはなかった。現場で一緒になったことはあったので会ったことがないとは言えないが、それでも今回が初の顔合わせみたいなものだった。
「それで、実際に会って話してみて疑問だったのですが、どうして今の相手と付き合い始めたのか気になって。同棲までしていたということは、彼のことが好きだったのですか?」
静かな朝の雰囲気でいつもと違う空気の中、超人気モデルのルリさんと2人きりで歩いている。私にとってはかなりの非日常な光景だ。そんな中、私はルリさんに同棲している彼のことを聞かれている。なんだか変な気分だ。まるで浮気を問い詰められているような気になる。とはいえ、大した理由などない。
「ルリさんみたいな、人を選べるような立場ではないので」
私も、過去の自分に会えるなら、彼と付き合うことはやめておけと忠告したい。しかし、あの当時は彼が良いと思った。いや、そうではない。弟のダイヤとアリアさんのことが羨ましかったからだ。私も早く彼らのような幸せな恋人生活を送りたいと思ってしまった。だから、後先考えずに彼と付き合って、同棲までしてしまった。
本当に少しだけ、彼となら、きっと自分に自信をもって生きられると思った時期もあった。そう思ったのに、ふたを開けてみれば、まったく私は変わることができなかった。
「どうしてですか?真珠さんはきれいだし、優しくて気遣いができる。男だったら、誰だってあなたに夢中になります」
どうして、そこまで言ってくれるのだろうか。お世辞だとは思うが、肯定的な言葉に嬉しくなる。しかし、その言葉を素直に信じられない。
「そう言ってくれるのは、ルリさんやダイヤ、アリアさんたちだけです。確かに私は世間一般から見たらきれいな部類に入るかもしれません。弟と似ていて、昔はモデルもしていました。だから、男の人に声をかけられることが多いのは事実です。ですが」
性格がこんなに地味でつまらないとは思わなかった。
大抵、男たちは私にこんな言葉をかけて去っていく。しかし、持って生まれた性格はそう簡単に変えられない。
私の容姿は外で遊び歩いているというイメージが強いらしい。酒も強くて強気な態度。凛とした感じの大人な余裕ある女性だと思われがちだった。実際の中身は正反対で、酒も弱いし、コミュ障気味であまり話すことが得意ではない。大人の余裕などまったくない。
そもそも、外で遊び歩いているというのも間違っている。私はどちらかというとインドア派で、用事がなければ家で引きこもっていたいタイプだ。休みの日は、家で掃除をしたり、お菓子を作ったりとのんびり過ごしたい。
私の容姿が普通で、掃除やお菓子作りが得意そうな見た目だったら良かったのに、と何度思ったことか。
「失言でした。すみません。たくさん人が寄ってきたところで、真珠さんのお眼鏡にかなう人がいるとは限りませんよね」
私が黙ってしまったことを心配して、ルリさんは申し訳なさそうな顔で謝罪してきた。彼が謝ることではない。ただ、私の精神状態が不安定で、些細な言葉が気になって気分が下がってしまうだけだ。
「謝らないでください。ルリさんが悪いわけではないので。悪いのは」
私なのだから。
最後の言葉は口に出すことができなかった。その言葉を口にすることで、ルリさんに要らぬ心配をかけたくなかった。ルリさんとは出会ったばかりだが、少ない会話からとても優しい気遣い出来る人だと理解した。そんな人にこれ以上の気を遣わせたくない。
弟のマンションを出て、私たちは近くの公園を目指して歩いていく。土曜日の朝ということもあり、私たち以外に歩いている人は見当たらない。車もほとんど通らず、とても静かだった。そのため、ルリさんの声がはっきりと聞こえる。
「アリアさんがルリさんを連れて来たときは本当に驚きました」
「僕も最初にアリアから相談を受けた時は驚きました。でも、もともとダイヤからお姉さんのことは聞いていたので、これはよい機会だなと思いました」
「よい機会、ですか?」
「はい。ダイヤは会うたびに真珠さんのことを話すので、実際に会って話してみたくなりました」
私がモデル時代、ルリさんはすでに活躍していたが、実際に彼と話したことはなかった。現場で一緒になったことはあったので会ったことがないとは言えないが、それでも今回が初の顔合わせみたいなものだった。
「それで、実際に会って話してみて疑問だったのですが、どうして今の相手と付き合い始めたのか気になって。同棲までしていたということは、彼のことが好きだったのですか?」
静かな朝の雰囲気でいつもと違う空気の中、超人気モデルのルリさんと2人きりで歩いている。私にとってはかなりの非日常な光景だ。そんな中、私はルリさんに同棲している彼のことを聞かれている。なんだか変な気分だ。まるで浮気を問い詰められているような気になる。とはいえ、大した理由などない。
「ルリさんみたいな、人を選べるような立場ではないので」
私も、過去の自分に会えるなら、彼と付き合うことはやめておけと忠告したい。しかし、あの当時は彼が良いと思った。いや、そうではない。弟のダイヤとアリアさんのことが羨ましかったからだ。私も早く彼らのような幸せな恋人生活を送りたいと思ってしまった。だから、後先考えずに彼と付き合って、同棲までしてしまった。
本当に少しだけ、彼となら、きっと自分に自信をもって生きられると思った時期もあった。そう思ったのに、ふたを開けてみれば、まったく私は変わることができなかった。
「どうしてですか?真珠さんはきれいだし、優しくて気遣いができる。男だったら、誰だってあなたに夢中になります」
どうして、そこまで言ってくれるのだろうか。お世辞だとは思うが、肯定的な言葉に嬉しくなる。しかし、その言葉を素直に信じられない。
「そう言ってくれるのは、ルリさんやダイヤ、アリアさんたちだけです。確かに私は世間一般から見たらきれいな部類に入るかもしれません。弟と似ていて、昔はモデルもしていました。だから、男の人に声をかけられることが多いのは事実です。ですが」
性格がこんなに地味でつまらないとは思わなかった。
大抵、男たちは私にこんな言葉をかけて去っていく。しかし、持って生まれた性格はそう簡単に変えられない。
私の容姿は外で遊び歩いているというイメージが強いらしい。酒も強くて強気な態度。凛とした感じの大人な余裕ある女性だと思われがちだった。実際の中身は正反対で、酒も弱いし、コミュ障気味であまり話すことが得意ではない。大人の余裕などまったくない。
そもそも、外で遊び歩いているというのも間違っている。私はどちらかというとインドア派で、用事がなければ家で引きこもっていたいタイプだ。休みの日は、家で掃除をしたり、お菓子を作ったりとのんびり過ごしたい。
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「失言でした。すみません。たくさん人が寄ってきたところで、真珠さんのお眼鏡にかなう人がいるとは限りませんよね」
私が黙ってしまったことを心配して、ルリさんは申し訳なさそうな顔で謝罪してきた。彼が謝ることではない。ただ、私の精神状態が不安定で、些細な言葉が気になって気分が下がってしまうだけだ。
「謝らないでください。ルリさんが悪いわけではないので。悪いのは」
私なのだから。
最後の言葉は口に出すことができなかった。その言葉を口にすることで、ルリさんに要らぬ心配をかけたくなかった。ルリさんとは出会ったばかりだが、少ない会話からとても優しい気遣い出来る人だと理解した。そんな人にこれ以上の気を遣わせたくない。
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