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異世界転移をした彼女は女性の意識改革(服装改革)を行うことにした
23制服改定となりましたが、不満も多いようです
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一週間後、騎士団の制服が改定された。エリザベスの独断とも言えるその制服は、男性騎士たちにとって、不満の多いものとなった。ソフィアが会議の最期に訴えた意見を取り入れたもので、男女関係なく、同じような制服にするというものだった。
「これはやばいな」
「おれ、騎士団やめようかな」
「なんか、女の人からめちゃくちゃ見られるようになった気がする。しかも、じっと熱い視線が俺たちに注がれているような……。普段なら、モテてるのかなとうれしいけど、この格好でそれはないよな」
ソフィアたちが最初に提言したのは、女性騎士の制服の改定で、男性騎士の制服の変更は希望していなかった。しかし、今回のエリザベスの決定は、それを覆すものだった。女性騎士の制服は現状のまま、露出度の高いもので変更されることはなかった。代わりに、男性騎士の制服が大幅に変更となった。
男性の騎士服が、女性の騎士服同様の露出度の高いものに切り替えられた。胸元を大きく広げ、シャツの胸の中心には、無意味と思える空白部分ができた。さらには、サイズが人サイズほど小さく設定され、シャツのボタンがはじけそうなほど窮屈なものが適正サイズと定められた。ズボンは、さすがに男性がスカートを履くのはかわいそうだとの判断で、スカートの着用は見送られた。その代わり、ミニスカートほどの長さで、下着が見えそうなほどの短パン、もはやホットパンツと呼べるほどのものになった。靴は、ひざ下まであるロングブーツで、かなりの高さのヒールが付いたものが着用義務となった。
「まさか、エリザベス様がこのような思い切った決断をするとは思いませんでした」
「ソフィアやカナデほどではないし、こんなことは、まだまだ序の口だとわれは思うがな」
「それにしても、城の雰囲気がだいぶ変わりましたね。これは、今後のカナデの活動にいい影響を及ぼしそうです」
カナデとソフィア、エリザベスの三人は、天気が良かったので、庭でお茶を楽しんでいた。ただし、飲んでいるのは、カナデのもといた世界によく似たお菓子やお茶の類だった。
「それは結構なことですけど……。いまだに慣れないんですけど、この世界の食べ物事情。これ絶対に緑茶に饅頭ですよね。しかもこし餡。おいしいんですけど、何か違う……」
「そんな些細なことは気にしてはいけませんよ。ほら、今日もまた、憐れな子羊が狼に追われていますよ。こんな光景が見られるだけでも、制服改定は意味あるものだったと思いませんか?」
にっこりと聖女のほほえみを浮かべるソフィアの指さす先には、女性陣に追われている、破廉恥な格好、つまり女性騎士と同じような制服に身を包んだ一人の男性騎士だった。
制服改定が実地されてから、年齢に関係なく、騎士団に所属する男性たちは、新たに制定された破廉恥とも呼べる騎士団の制服を身につけるようになった。それにより男性騎士は、城の内部で居心地の悪さを感じるようになったらしい。
男性にも恥じらいというものはあるらしく、胸の空いたところを隠したり、足を隠したりするものもちらほらいたが。それ以上に、女性の視線から逃れるために隠したいと思ったのかもしれない。
「やっぱり、団長って、いい筋肉していたのね。制服が改定されてからというもの、男たちの露出が多くて、目の保養になるわね」
「わかるかも。確かにかっちりと着こんだ姿も素敵だけど、あれだけ露出があると、私たちにとっては、『素晴らしい、ありがとう』の一言に尽きるわ。それに、隠そうとしている姿もそれはそれでおいしい」
「そうですかねえ。でもまあ、女性と同じ気分を味わうっていう点において、この改定は意味があるかもしれないですね」
女性に対して、散々なことを言っていた男性騎士だが、いざ、女性と同じような制服が義務付けられると、男性たちは猛反発した。しかし、それが認められることはなかった。女性たちは、男性騎士を指さしてはこそこそと話しているが、内容までは男性騎士は聞いておらず、自分たちの恰好がいかに似合っていないかを話しているのだろうと勝手に推測していた。
城の女性たちは男性騎士を見て、こそこそと話してはいたが、話の内容は、彼らが考えているものとは、だいぶ違っていた。大多数の女性は確かに似合っていないというものが多かったが、それ以外に、今の男性の騎士服に喜んでいる者も一定数存在した。
女性たちはある気持ちを視線に込めていた。改定された男性騎士服を着た男性に対して、以前、男性が女性にしていた視線と同じものを向けていた。城の男性が、女性騎士たちに対してみていた視線と同じ、厭らしい視線を彼らに向けていたのだ。
「エリザベス女王様。城の騎士団の男性たちから、制服改定の嘆願書が届いております」
ソフィアが、エリザベスに男性騎士団からもらった書類を差し出した。ソフィアは、あの騎士団での一件から、騎士団からの信用という名の強制力を持つことになった。書類はソフィアが勝手に騎士団から奪い取ったに等しい。女王の執務室で仕事をしていたエリザベスは書類を受け取り、ざっと目を通す。
「ふむ。さて、どうしたものか。ほれ、皆の者、お前らと同じ男性たちからの要望だぞ」
「女王、あなたは一体何を考えているのですか!当然、彼らの要望は正しい。今すぐ、このふざけた制服を取りやめ、今まで通りの制服に戻すべきです!」
制服が改定されて数週間が過ぎたころ、エリザベスのもとに、男性騎士団からの嘆願書が届いた。ソフィアが彼らから奪ってきた書類である。男性騎士全員の署名が書かれた書類には、早期に元の制服に戻して欲しいという内容が記載され、新たな制服に対する不満も多く記されていた。その内容を読んでいたところに、貴族たちのお偉いさんである老人たちが集まってきたのだった。
老人たちに目を向けたエリザベスだが、すぐに書類に視線を戻すが、老人たちの講義は止まることはない。
「聞こえているのですか?男子騎士の制服を今すぐにでも元に戻すべきだと」
「そうは言っても、一度変更したものを再度変更というのは、微妙なものだとは思わないか?だったらいっそ、これは実験だと思って、次の制服の改善の手助けとしてもらうというのはどうだろうか?」
「何を言って」
ソフィアがそんな彼らの会話に口をはさむ。
「エリザベス様。私に用事があるとのことですが、どんな用事でしょうか。書類を届ける用事があってこちらに赴いたのですが」
「おお、そうだった。よく来てくれた。男性騎士からの要望で、制服を元に戻して欲しいという意見が多く聞かれてな。ソフィアが持ってきた書類もそれと同じ内容のものだろう?せっかく、われが改定した案に文句が多くて困っていたのだ。また再度制服の改定というのは、さすがに早すぎると思わんか?われ一人ではその辺りを判断できんので、ソフィアの意見を聞こうと思ったのだ」
老人たちの話を無視して、ソフィアに意見を求めるエリザベス。それに対して、ソフィアはため息をつくが、予想していたとことだと大して驚いてはいなかった。
「結構長く持った方ですか。それで、もとの制服に戻して欲しいということですが、具体的にどの辺が不満なのでしょうね。ああ、エリザベス様にお渡しした男性騎士からの嘆願書にその理由が記されていますね」
老人たちは、ソフィアの言葉に顔をしかめた。もともと、制服を変えたいと言い出したのは、ソフィアの侍女だったことを思い出した彼らは、ソフィアを攻め立てることにした。
「そもそも、今回の制服改定の件は、そこのあばずれ聖女の侍女が言い出したのが原因なのだろう?お前の侍女のせいで、フリードリヒ様もこの城から出ていかれたのだぞ。それなのになぜ、そんなのんきな態度でいられるのか」
「侍女をさっさとやめさせるのがまずは最初だ。そして、お前の処分は……。お前みたいな美女は、我々には価値ある女性だ。思う存分、我々の元で働いてもらおうか」
「さっさと、制服を元に戻してからその話はしましょう。エリザベス様、取り急ぎ、制服を元に戻すのと同時に、そこの聖女もどきに正当な処罰を」
「ソフィア、嘆願書の内容は読んだのか?」
「いえ、エリザベス様とご一緒に拝読しようかと思いましたし、内容は予想できるものでしたので、まだ読んではいませんが」
「そうか。では、ソフィア、お主が我にこの嘆願書を読んではくれぬか。そこにいる奴らにも聞こえるようにしてくれるとなおよい」
「わかりました」
老人たちの言葉は、完全に無視され、エリザベスとソフィアは男性騎士たちがまとめた嘆願書を読むことにした。
「嘆願書のテーマは今回の制服改定に対する不満と言ったところだな。それで、いったい子会の制服の不満点はなんと書かれている?」
ある程度の予想はしているだろうエリザベスとソフィアが、白々しく嘆願書を見ながら会話をしている。ソフィアが嘆願書をめくり、彼らの不満を抜粋してエリザベスや老人たちに聞こえるように話し出した。
「これはやばいな」
「おれ、騎士団やめようかな」
「なんか、女の人からめちゃくちゃ見られるようになった気がする。しかも、じっと熱い視線が俺たちに注がれているような……。普段なら、モテてるのかなとうれしいけど、この格好でそれはないよな」
ソフィアたちが最初に提言したのは、女性騎士の制服の改定で、男性騎士の制服の変更は希望していなかった。しかし、今回のエリザベスの決定は、それを覆すものだった。女性騎士の制服は現状のまま、露出度の高いもので変更されることはなかった。代わりに、男性騎士の制服が大幅に変更となった。
男性の騎士服が、女性の騎士服同様の露出度の高いものに切り替えられた。胸元を大きく広げ、シャツの胸の中心には、無意味と思える空白部分ができた。さらには、サイズが人サイズほど小さく設定され、シャツのボタンがはじけそうなほど窮屈なものが適正サイズと定められた。ズボンは、さすがに男性がスカートを履くのはかわいそうだとの判断で、スカートの着用は見送られた。その代わり、ミニスカートほどの長さで、下着が見えそうなほどの短パン、もはやホットパンツと呼べるほどのものになった。靴は、ひざ下まであるロングブーツで、かなりの高さのヒールが付いたものが着用義務となった。
「まさか、エリザベス様がこのような思い切った決断をするとは思いませんでした」
「ソフィアやカナデほどではないし、こんなことは、まだまだ序の口だとわれは思うがな」
「それにしても、城の雰囲気がだいぶ変わりましたね。これは、今後のカナデの活動にいい影響を及ぼしそうです」
カナデとソフィア、エリザベスの三人は、天気が良かったので、庭でお茶を楽しんでいた。ただし、飲んでいるのは、カナデのもといた世界によく似たお菓子やお茶の類だった。
「それは結構なことですけど……。いまだに慣れないんですけど、この世界の食べ物事情。これ絶対に緑茶に饅頭ですよね。しかもこし餡。おいしいんですけど、何か違う……」
「そんな些細なことは気にしてはいけませんよ。ほら、今日もまた、憐れな子羊が狼に追われていますよ。こんな光景が見られるだけでも、制服改定は意味あるものだったと思いませんか?」
にっこりと聖女のほほえみを浮かべるソフィアの指さす先には、女性陣に追われている、破廉恥な格好、つまり女性騎士と同じような制服に身を包んだ一人の男性騎士だった。
制服改定が実地されてから、年齢に関係なく、騎士団に所属する男性たちは、新たに制定された破廉恥とも呼べる騎士団の制服を身につけるようになった。それにより男性騎士は、城の内部で居心地の悪さを感じるようになったらしい。
男性にも恥じらいというものはあるらしく、胸の空いたところを隠したり、足を隠したりするものもちらほらいたが。それ以上に、女性の視線から逃れるために隠したいと思ったのかもしれない。
「やっぱり、団長って、いい筋肉していたのね。制服が改定されてからというもの、男たちの露出が多くて、目の保養になるわね」
「わかるかも。確かにかっちりと着こんだ姿も素敵だけど、あれだけ露出があると、私たちにとっては、『素晴らしい、ありがとう』の一言に尽きるわ。それに、隠そうとしている姿もそれはそれでおいしい」
「そうですかねえ。でもまあ、女性と同じ気分を味わうっていう点において、この改定は意味があるかもしれないですね」
女性に対して、散々なことを言っていた男性騎士だが、いざ、女性と同じような制服が義務付けられると、男性たちは猛反発した。しかし、それが認められることはなかった。女性たちは、男性騎士を指さしてはこそこそと話しているが、内容までは男性騎士は聞いておらず、自分たちの恰好がいかに似合っていないかを話しているのだろうと勝手に推測していた。
城の女性たちは男性騎士を見て、こそこそと話してはいたが、話の内容は、彼らが考えているものとは、だいぶ違っていた。大多数の女性は確かに似合っていないというものが多かったが、それ以外に、今の男性の騎士服に喜んでいる者も一定数存在した。
女性たちはある気持ちを視線に込めていた。改定された男性騎士服を着た男性に対して、以前、男性が女性にしていた視線と同じものを向けていた。城の男性が、女性騎士たちに対してみていた視線と同じ、厭らしい視線を彼らに向けていたのだ。
「エリザベス女王様。城の騎士団の男性たちから、制服改定の嘆願書が届いております」
ソフィアが、エリザベスに男性騎士団からもらった書類を差し出した。ソフィアは、あの騎士団での一件から、騎士団からの信用という名の強制力を持つことになった。書類はソフィアが勝手に騎士団から奪い取ったに等しい。女王の執務室で仕事をしていたエリザベスは書類を受け取り、ざっと目を通す。
「ふむ。さて、どうしたものか。ほれ、皆の者、お前らと同じ男性たちからの要望だぞ」
「女王、あなたは一体何を考えているのですか!当然、彼らの要望は正しい。今すぐ、このふざけた制服を取りやめ、今まで通りの制服に戻すべきです!」
制服が改定されて数週間が過ぎたころ、エリザベスのもとに、男性騎士団からの嘆願書が届いた。ソフィアが彼らから奪ってきた書類である。男性騎士全員の署名が書かれた書類には、早期に元の制服に戻して欲しいという内容が記載され、新たな制服に対する不満も多く記されていた。その内容を読んでいたところに、貴族たちのお偉いさんである老人たちが集まってきたのだった。
老人たちに目を向けたエリザベスだが、すぐに書類に視線を戻すが、老人たちの講義は止まることはない。
「聞こえているのですか?男子騎士の制服を今すぐにでも元に戻すべきだと」
「そうは言っても、一度変更したものを再度変更というのは、微妙なものだとは思わないか?だったらいっそ、これは実験だと思って、次の制服の改善の手助けとしてもらうというのはどうだろうか?」
「何を言って」
ソフィアがそんな彼らの会話に口をはさむ。
「エリザベス様。私に用事があるとのことですが、どんな用事でしょうか。書類を届ける用事があってこちらに赴いたのですが」
「おお、そうだった。よく来てくれた。男性騎士からの要望で、制服を元に戻して欲しいという意見が多く聞かれてな。ソフィアが持ってきた書類もそれと同じ内容のものだろう?せっかく、われが改定した案に文句が多くて困っていたのだ。また再度制服の改定というのは、さすがに早すぎると思わんか?われ一人ではその辺りを判断できんので、ソフィアの意見を聞こうと思ったのだ」
老人たちの話を無視して、ソフィアに意見を求めるエリザベス。それに対して、ソフィアはため息をつくが、予想していたとことだと大して驚いてはいなかった。
「結構長く持った方ですか。それで、もとの制服に戻して欲しいということですが、具体的にどの辺が不満なのでしょうね。ああ、エリザベス様にお渡しした男性騎士からの嘆願書にその理由が記されていますね」
老人たちは、ソフィアの言葉に顔をしかめた。もともと、制服を変えたいと言い出したのは、ソフィアの侍女だったことを思い出した彼らは、ソフィアを攻め立てることにした。
「そもそも、今回の制服改定の件は、そこのあばずれ聖女の侍女が言い出したのが原因なのだろう?お前の侍女のせいで、フリードリヒ様もこの城から出ていかれたのだぞ。それなのになぜ、そんなのんきな態度でいられるのか」
「侍女をさっさとやめさせるのがまずは最初だ。そして、お前の処分は……。お前みたいな美女は、我々には価値ある女性だ。思う存分、我々の元で働いてもらおうか」
「さっさと、制服を元に戻してからその話はしましょう。エリザベス様、取り急ぎ、制服を元に戻すのと同時に、そこの聖女もどきに正当な処罰を」
「ソフィア、嘆願書の内容は読んだのか?」
「いえ、エリザベス様とご一緒に拝読しようかと思いましたし、内容は予想できるものでしたので、まだ読んではいませんが」
「そうか。では、ソフィア、お主が我にこの嘆願書を読んではくれぬか。そこにいる奴らにも聞こえるようにしてくれるとなおよい」
「わかりました」
老人たちの言葉は、完全に無視され、エリザベスとソフィアは男性騎士たちがまとめた嘆願書を読むことにした。
「嘆願書のテーマは今回の制服改定に対する不満と言ったところだな。それで、いったい子会の制服の不満点はなんと書かれている?」
ある程度の予想はしているだろうエリザベスとソフィアが、白々しく嘆願書を見ながら会話をしている。ソフィアが嘆願書をめくり、彼らの不満を抜粋してエリザベスや老人たちに聞こえるように話し出した。
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