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異世界転移をした彼女は女性の意識改革(服装改革)を行うことにした
22逆転の発想で、会議はこれにて閉会いたします
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『カナデ(さん)!何でここに!』
女性陣は、カナデがこの場に現れたことに驚きを見せた。ソフィアは、カナデを会議に同伴させなかった。それなのに、どうしてお茶を差し入れにきたと言って、堂々とこの場に乱入してきたのだろうか。
「いや、そんなに困惑された顔をされると、マジで私がここにいちゃいけなかった、みたいな感じになるのでやめてもらえますか。まあ、会議に同伴させてもらえなかった時点でそれは察していましたが」
「察していたのなら、そのままおとなしく部屋にとどまっていたら良かったのでは?」
ソフィアの言葉にも、カナデが悪びれることはなかった。続けてなぜ、お茶を運んできたか、そこまでの経緯を話し始めた。
「ソフィアさんから部屋でおとなしくしろと言われても、やはり、会議の様子は気になったので、部屋を出て、会議が行われている場所を探して城をさまよっていました。そうしたら、たまたま出くわしたメイドさんが、会議がちょうど休憩時間に差し掛かると言っていたのを耳にしたのです!詳しく聞くと、ちょうどお茶入れをしようとしているところだったので、私が代わりに運びますと伝えて、私が皆さんにお茶を運んでいるという次第です!皆さんだけに仕事を押し付けるのは申し訳ないので、今から私も、この会議に参加させていただきます!」
「ソフィアさん、この前はすいませんでした。カナデさんに似ているなんて言ってしまって。今のカナデさんを見たら、そんなことはありませんでした」
「私もこの前の発言は取り消します」
「はあ、まったく、あなたという人は」
「カナデをそこまで追いつめることもあるまい。ちょうど良かったではないか。カナデがこなければ、このままずっと話は平行線をたどったまま、終わることがなかったかもしれん」
自信満々に話し終えたカナデ。しかし、レオナやイザベラ、ソフィアの呆れた顔を見て、表情を曇らせる。イザベラやレオナの似ている発言、エリザベスの会議が終わりそうにないという発言、彼女たちの言葉の意味も気になるところだが、その前に老人たちの冷たい視線がカナデは気になった。
ようやく、自分の今置かれている状況を理解しつつあった。
「ええと、大変な状況のようですね。とりあえず、お茶が冷める前に、皆さんに配りますので、温かいうちにお召し上がりください」
カナデは、会議に参加している一人一人にお茶を配り始めた。お茶を受け取った老人の一人がソフィアに言葉をかける。
「ふん、ソフィアとか言ったな。お前の侍女は、話には聞いていたが、飛んでもない奴だな。もしや、こいつの影響で、今回の議題を提案したのではなかろうな。こんな奴のために働くなんてことはありえないだろうが」
ソフィアに向かって、カナデを馬鹿にする言葉を口にする老人。そして、もうすっかり、カナデと出会った初対面の人が話す言葉を老人も口にする。
「それにしても、お前は。本当に女なのか。その容姿に恰好、まるで男ではないか」
「いや、どうしてこの世界の人たちは、服装と髪型だけで性別を判断しようとするかな」
「ぶふっ」
すっかり慣れてしまった彼らの反応に、カナデはもはや怒る気力もわかなかった。カナデは今、もといた世界での服装を着ていた。いつものチェックシャツにパーカー、ジーンズにスニーカーという格好だ。髪も最近、長くなって切ってしまい、前髪はぱっつんで、後ろも邪魔になってきたので、短くしてしまった。侍女服を着るのは、似合っていないこともあり、断念していた。
カナデは、怒る気力がない代わりに、近くで笑いをかみ殺している人物を見つけ、注意することにした。
「ソフィアさん、笑うことはないでしょう」
「だって、本当に毎回みんな、同じ反応だもの、これはもう、笑うしかないと思うわ」
「そうですけど……」
二人ののんびりとした緊張感のない会話に、老人たちが邪魔をする。
「お前みたいな男の茶なぞ、飲めるか」
「さっさとこの部屋から出ていってもらおうか」
「ふん、とっとと失せろ。ちょうどいいから、この辺でこの無駄な会議はお開きにしよう。何度言っても我々が意見を変えることはない」
「待ってください!」
自分の登場によって、会議が終わろうとしていることに気付いたカナデが慌てて叫んだ。
老人たちが席を立ち、解散しようとしていた。会議が急きょ、終了するかのように思えた。
「まだ何か?」
「ええと……」
「性別で服装を判断しているのなら、男性も服装を改めましょう!」
呼び止めたはいいが、言葉続かないカナデだったが、ソフィアの言葉で老人たちは足を止めた。
「そ、ソフィアさん?」
「男性も、女性と同じにしましょう。男性の今の服装では、男装した女性が紛れ込んでもわかりません。先ほど、エリザベス様が、女性のスパイが他国で育成されていると言っていましたね。だとしたら、彼女たちは、男性の騎士団として潜入を計ることも考えられます。女性騎士団の数は、まだまだ数が少ないので、新人として入れば、目をつけられる。でも、男性なら?女性よりも目をつけられる可能性は低くなります」
「それがどうした?」
ソフィアが何を言いたいのか理解できない老人が、イライラを押さえきれず、尋ねる。質問に対して、ソフィアが興奮したように言葉を続ける。
「だからこそですよ。男性も、女性と同じように、露出を増やしましょう!胸のところに穴をあけて、ズボンもミニスカート、いやそれはさすがに仕事に支障が出そうなので、短パンにしましょう!シャツはいっそのこと、袖なしにへそ出し、靴はロングブーツに統一しましょう!それなら、誰が男性か女性か逆にわかりやすいでしょう!男女の性差が一目瞭然で確認できますよ!」
「そ、ソフィアさん。あなた、初期とだんだんキャラ変わってきてませんか?そもそも、そのセリフ、どちらかというと、私が言うべきセリフだと思いますが」
「カナデさんは、細かいことを気にするんですね。それで、どうしましょうか。エリザベス様はどうお考えになりますか?」
カナデのツッコミを気にせず、エリザベスに意見を求めるソフィア。カナデが恐る恐るエリザベスに視線を向けると、彼女は思わぬ反応を見せていた。
「あはははははは。ソフィア、お主も、カナデみたいに面白いのう。いやはや、逆転の発想というわけだな。男女平等という観点において、ソフィアの案は大変興味深い。女性の服を男性に近づけるのではなく、女性の服に男性の服を近づける。その発想は思いつかなかった。そうだな、男女ともにやれば恥ずかしくない。みんなでやれば怖くないという言葉もあるし、試してみるのも一興かもしれん」
突然、大笑いを始め、飛んでもないことを言いだしたエリザベスに、ソフィア以外のその場の全員が唖然としてしまった。数秒後、われに返った老人たちが口々に反論する。
「女王!何を言っているのか、わかっているのですか!女王とはいえ、看過できかねる発言ですぞ!」
「ありません。男性の仕事の邪魔をする気ですか?」
「なんていう暴言。いくら女王とは言え、冗談が過ぎた発言は控えた方がよろしいかと」
「たわけ!われは別に自分の言葉に責任を持てぬほど落ちぶれてはおらんぞ。冗談なんぞ、この場で言っても仕方ないだろう?どうあっても、この議題が平行線をたどるというのなら、そういう大胆な発想もよいかと思っただけだ」
「ということは」
カナデがエリザベスに結論を促すと、エリザベスは大きく深呼吸した。ちらりと目を向けた先には、いつからいたのだろうか。ソフィアやカナデといつもともにいる二匹の猫がいた。その近くには、心配そうに、会議の行く末を見守る二人の女性騎士がいた。
『にゃーにゃー』
エリザベスに猫の言葉はわからないが、猫たちはエリザベスの味方だと言っている気がした。猫たちに励まされ、エリザベスはこの会議の決定事項を伝えることにした。
「では、このたびの会議で出された、女性騎士の制服の改定についてだが」
女性陣は、カナデがこの場に現れたことに驚きを見せた。ソフィアは、カナデを会議に同伴させなかった。それなのに、どうしてお茶を差し入れにきたと言って、堂々とこの場に乱入してきたのだろうか。
「いや、そんなに困惑された顔をされると、マジで私がここにいちゃいけなかった、みたいな感じになるのでやめてもらえますか。まあ、会議に同伴させてもらえなかった時点でそれは察していましたが」
「察していたのなら、そのままおとなしく部屋にとどまっていたら良かったのでは?」
ソフィアの言葉にも、カナデが悪びれることはなかった。続けてなぜ、お茶を運んできたか、そこまでの経緯を話し始めた。
「ソフィアさんから部屋でおとなしくしろと言われても、やはり、会議の様子は気になったので、部屋を出て、会議が行われている場所を探して城をさまよっていました。そうしたら、たまたま出くわしたメイドさんが、会議がちょうど休憩時間に差し掛かると言っていたのを耳にしたのです!詳しく聞くと、ちょうどお茶入れをしようとしているところだったので、私が代わりに運びますと伝えて、私が皆さんにお茶を運んでいるという次第です!皆さんだけに仕事を押し付けるのは申し訳ないので、今から私も、この会議に参加させていただきます!」
「ソフィアさん、この前はすいませんでした。カナデさんに似ているなんて言ってしまって。今のカナデさんを見たら、そんなことはありませんでした」
「私もこの前の発言は取り消します」
「はあ、まったく、あなたという人は」
「カナデをそこまで追いつめることもあるまい。ちょうど良かったではないか。カナデがこなければ、このままずっと話は平行線をたどったまま、終わることがなかったかもしれん」
自信満々に話し終えたカナデ。しかし、レオナやイザベラ、ソフィアの呆れた顔を見て、表情を曇らせる。イザベラやレオナの似ている発言、エリザベスの会議が終わりそうにないという発言、彼女たちの言葉の意味も気になるところだが、その前に老人たちの冷たい視線がカナデは気になった。
ようやく、自分の今置かれている状況を理解しつつあった。
「ええと、大変な状況のようですね。とりあえず、お茶が冷める前に、皆さんに配りますので、温かいうちにお召し上がりください」
カナデは、会議に参加している一人一人にお茶を配り始めた。お茶を受け取った老人の一人がソフィアに言葉をかける。
「ふん、ソフィアとか言ったな。お前の侍女は、話には聞いていたが、飛んでもない奴だな。もしや、こいつの影響で、今回の議題を提案したのではなかろうな。こんな奴のために働くなんてことはありえないだろうが」
ソフィアに向かって、カナデを馬鹿にする言葉を口にする老人。そして、もうすっかり、カナデと出会った初対面の人が話す言葉を老人も口にする。
「それにしても、お前は。本当に女なのか。その容姿に恰好、まるで男ではないか」
「いや、どうしてこの世界の人たちは、服装と髪型だけで性別を判断しようとするかな」
「ぶふっ」
すっかり慣れてしまった彼らの反応に、カナデはもはや怒る気力もわかなかった。カナデは今、もといた世界での服装を着ていた。いつものチェックシャツにパーカー、ジーンズにスニーカーという格好だ。髪も最近、長くなって切ってしまい、前髪はぱっつんで、後ろも邪魔になってきたので、短くしてしまった。侍女服を着るのは、似合っていないこともあり、断念していた。
カナデは、怒る気力がない代わりに、近くで笑いをかみ殺している人物を見つけ、注意することにした。
「ソフィアさん、笑うことはないでしょう」
「だって、本当に毎回みんな、同じ反応だもの、これはもう、笑うしかないと思うわ」
「そうですけど……」
二人ののんびりとした緊張感のない会話に、老人たちが邪魔をする。
「お前みたいな男の茶なぞ、飲めるか」
「さっさとこの部屋から出ていってもらおうか」
「ふん、とっとと失せろ。ちょうどいいから、この辺でこの無駄な会議はお開きにしよう。何度言っても我々が意見を変えることはない」
「待ってください!」
自分の登場によって、会議が終わろうとしていることに気付いたカナデが慌てて叫んだ。
老人たちが席を立ち、解散しようとしていた。会議が急きょ、終了するかのように思えた。
「まだ何か?」
「ええと……」
「性別で服装を判断しているのなら、男性も服装を改めましょう!」
呼び止めたはいいが、言葉続かないカナデだったが、ソフィアの言葉で老人たちは足を止めた。
「そ、ソフィアさん?」
「男性も、女性と同じにしましょう。男性の今の服装では、男装した女性が紛れ込んでもわかりません。先ほど、エリザベス様が、女性のスパイが他国で育成されていると言っていましたね。だとしたら、彼女たちは、男性の騎士団として潜入を計ることも考えられます。女性騎士団の数は、まだまだ数が少ないので、新人として入れば、目をつけられる。でも、男性なら?女性よりも目をつけられる可能性は低くなります」
「それがどうした?」
ソフィアが何を言いたいのか理解できない老人が、イライラを押さえきれず、尋ねる。質問に対して、ソフィアが興奮したように言葉を続ける。
「だからこそですよ。男性も、女性と同じように、露出を増やしましょう!胸のところに穴をあけて、ズボンもミニスカート、いやそれはさすがに仕事に支障が出そうなので、短パンにしましょう!シャツはいっそのこと、袖なしにへそ出し、靴はロングブーツに統一しましょう!それなら、誰が男性か女性か逆にわかりやすいでしょう!男女の性差が一目瞭然で確認できますよ!」
「そ、ソフィアさん。あなた、初期とだんだんキャラ変わってきてませんか?そもそも、そのセリフ、どちらかというと、私が言うべきセリフだと思いますが」
「カナデさんは、細かいことを気にするんですね。それで、どうしましょうか。エリザベス様はどうお考えになりますか?」
カナデのツッコミを気にせず、エリザベスに意見を求めるソフィア。カナデが恐る恐るエリザベスに視線を向けると、彼女は思わぬ反応を見せていた。
「あはははははは。ソフィア、お主も、カナデみたいに面白いのう。いやはや、逆転の発想というわけだな。男女平等という観点において、ソフィアの案は大変興味深い。女性の服を男性に近づけるのではなく、女性の服に男性の服を近づける。その発想は思いつかなかった。そうだな、男女ともにやれば恥ずかしくない。みんなでやれば怖くないという言葉もあるし、試してみるのも一興かもしれん」
突然、大笑いを始め、飛んでもないことを言いだしたエリザベスに、ソフィア以外のその場の全員が唖然としてしまった。数秒後、われに返った老人たちが口々に反論する。
「女王!何を言っているのか、わかっているのですか!女王とはいえ、看過できかねる発言ですぞ!」
「ありません。男性の仕事の邪魔をする気ですか?」
「なんていう暴言。いくら女王とは言え、冗談が過ぎた発言は控えた方がよろしいかと」
「たわけ!われは別に自分の言葉に責任を持てぬほど落ちぶれてはおらんぞ。冗談なんぞ、この場で言っても仕方ないだろう?どうあっても、この議題が平行線をたどるというのなら、そういう大胆な発想もよいかと思っただけだ」
「ということは」
カナデがエリザベスに結論を促すと、エリザベスは大きく深呼吸した。ちらりと目を向けた先には、いつからいたのだろうか。ソフィアやカナデといつもともにいる二匹の猫がいた。その近くには、心配そうに、会議の行く末を見守る二人の女性騎士がいた。
『にゃーにゃー』
エリザベスに猫の言葉はわからないが、猫たちはエリザベスの味方だと言っている気がした。猫たちに励まされ、エリザベスはこの会議の決定事項を伝えることにした。
「では、このたびの会議で出された、女性騎士の制服の改定についてだが」
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