58 / 69
37.DiE4u(3)
しおりを挟む
[57]
悠一は考える。
どう対応すればいいか。どんな態度を取ればいいのか。
どんな言葉を選べばいいのか。
どうしたら――
楽にしてやれるのか。
どうしたら、奏を助けてやれるのか。傷つけずにすむのか。
奏は横たわったままモゾモゾと足を動かし、膝を抱えて丸くなる。
「俺、向こうに行ってる。だからその、シたいなら……」
奏の真紅の耳朶から視線をそらし、悠一がそう、低い呟きで口にすれば、
「…ばっ、ばか、なに…言ってんだよ、ゆう…い、ち」と、奏が応じた。
「いや、だから……すこしは気分とかが、マシになるんだったらさ」
オマエが楽になるんなら。
バカでもなんでも、俺は別に構わない――
奏は黙っている。
ちいさく荒い息遣い。
悠一が立ち上がる。
「まっ…て」
奏が悠一を見上げた。
「おいて…くなよ……や、だ」
そうやってまた身悶える奏の制服のスラックスの前立てに、悠一は、ごくわずかだが先走りが染み出しているのに気づく。
「その…脱いどけ、スラックス……汚れたら、大変だから」
できるだけ淡々と、だが素っ気なくなり過ぎないように、悠一が言い添えた。
「や、だ…やだ」
奏がフルフルと首を横に振る。
そんな様子を少し見やって、悠一は、
「やっぱ、俺。下に降りてる」と告げた。
ティッシュの箱をそっとベッドに置き、歩き去ろうとする悠一の背に、奏が「ゆういち」と呼びかける。そして、
「ごめ…ん、おれ、分かんない、わかんない…んだ、ひとり、にしないでくれよ、やだよ……どうしたら」と繰り返した。
悠一は戸惑いを隠して、ただ瞬く。
そして、ふたたびベッドへ歩み寄ると、端に腰を下ろした。
右手をそっと、奏のベルトへと伸ばす。
静かにバックルを外して、スラックスの前立てを寛げてやった。
ボクサーブリーフの合わせ目はぬかるんでいて、屹立した部分がのぞいている。
ひたすらさりげなく「そこ」から目をそらし、悠一は軽く唇をかみしめて、奏の脚からスラックスを脱がせた。
奏の身体の下から掛布団を引き出して、あらわになった足元に掛けてやる。
すると、もうどうしようもなくなったのだろう。
ついに奏が「自らの部分」へと指を伸ばした。
自慰が始まる音。
息を殺す気配。
ほのかな熱っぽさ。
悠一は奏の横顔を見下ろす。
サラサラとした指ざわりの奏の髪へと指を滑らせ、そっとそっと、くしけずった。
奏の自らを扱く動きが早まる。
粘度のある水音が続いた。切なく鼻にかかる声。
あまい、甘い――声。
淫戯はかなりの時間続いた。
奏は疲れを見せ始めている。
ある程度まで高まった快楽は、けれどもそれ以上には駆け上がっていかず、奏は達することができないままだった。
いたたまれなくなった悠一が、視線をさまよわせる。
横向きのままの奏の、ボクサーパンツの「後ろ」が濡れていた。
奏もすぐに、「それ」を悠一に気づかれたコトを察し取る。そして、
「みる、なぁ……ぁっ」と。
ちいさな、でも鋭く悲痛な声を上げた。
悠一が立ち上がる。
たしか、アレがまだ、どこかに――
記憶を手繰り寄せた。
学習机の最下段。悠一が、その奥の奥を指先で探る。
使いかけのコンドームの箱が見つかった。
中学時代。
半ばたぶらかされるようにして、近所のOLと「密事」に耽っていた時の――名残。
使用期限はギリギリだった。
だがまあ、「当座の役」には立つだろう――
その中身を3つほど切り取り、悠一は、
「かなで」と呼びかけて、
「これ」と、コンドームを差し出した。
大きな目をさらに大きく見開いて、奏がフルフルと首を横に振る。
どうしたらよいのか、もう、まるきり分からないとでもいう風に――
悠一は、手にしていた避妊具を軽く咥えて、指と歯でパッケージを破く。
手早く、それを奏の男茎に装着した。
それから、残りのふたつも包装を剥がして取り出し、自分の右手の人差し指と中指に二重して被せる。
「あのさ……」
悠一が、ひどく声量を落として言った。
「手伝うから、俺」
その声の低さは「家業」の場で遺族に声がけするときと、なぜかどこか似ていた。
「てつ、だう……?」
奏が訊き返す。
「……後ろ、とか、すこしは…役に立つかなとか、思って」
悠一の言葉は、相当に回りくどかった。
けれども奏は、すぐさま耳朶だけでなく頬まで真っ赤にしてしまう。
あえて返事は聞かぬまま、悠一はコンドームをした指先を、奏の腰に滑らせた。その指は、すでに分泌液で濡れそぼった窪みへと、ごくあっけなく滑りい入る。
入り口を軽くこするように指を上下させれば、くちゅりくちゅりと音がして、その響きは、あまりにも淫らで恥ずかしく。奏は――
固く瞼を閉じて、奥歯を喰いしばる。
けれど――
「やめろ」とは言えなかった。
「やめてくれ」とは頼めなかった。
だってずっと――
その場所に触れたかった。そして、誰かに触れられたかったから。
そこへの「刺激」を欲していたから。
悠一の指が擦れる場所から、ふつふつと訳の分からないものがこみ上げて。
奏の腰は、どうしようもなく痺れて揺れる。
どんなにペニスを弄ったところで、こんな感覚は全然得られなくて。
――そうだよ、気づけば、おれはいつだって。
尻を、床に枕にこすりつけてた。
腰を揺らして、ぬるぬるに「後ろ」を濡らして。
最近は、いつも、そんな。
「あ、…っ、あぁっ……」
あやふやな形に開かれたくちびるから漏れ出す、奏の声の色が変わる。
「あ、あん、あんあん、あ、ああっ……」
つき上げるような嬌声。
悠一はそっと左手を伸ばし、窓とレースのカーテンを閉めた。
そして、奏の肩に腕を回して、寄り掛からせて――
コンドームをかぶせた人差し指と中指を、奏の中へと挿し入れた。
悠一は考える。
どう対応すればいいか。どんな態度を取ればいいのか。
どんな言葉を選べばいいのか。
どうしたら――
楽にしてやれるのか。
どうしたら、奏を助けてやれるのか。傷つけずにすむのか。
奏は横たわったままモゾモゾと足を動かし、膝を抱えて丸くなる。
「俺、向こうに行ってる。だからその、シたいなら……」
奏の真紅の耳朶から視線をそらし、悠一がそう、低い呟きで口にすれば、
「…ばっ、ばか、なに…言ってんだよ、ゆう…い、ち」と、奏が応じた。
「いや、だから……すこしは気分とかが、マシになるんだったらさ」
オマエが楽になるんなら。
バカでもなんでも、俺は別に構わない――
奏は黙っている。
ちいさく荒い息遣い。
悠一が立ち上がる。
「まっ…て」
奏が悠一を見上げた。
「おいて…くなよ……や、だ」
そうやってまた身悶える奏の制服のスラックスの前立てに、悠一は、ごくわずかだが先走りが染み出しているのに気づく。
「その…脱いどけ、スラックス……汚れたら、大変だから」
できるだけ淡々と、だが素っ気なくなり過ぎないように、悠一が言い添えた。
「や、だ…やだ」
奏がフルフルと首を横に振る。
そんな様子を少し見やって、悠一は、
「やっぱ、俺。下に降りてる」と告げた。
ティッシュの箱をそっとベッドに置き、歩き去ろうとする悠一の背に、奏が「ゆういち」と呼びかける。そして、
「ごめ…ん、おれ、分かんない、わかんない…んだ、ひとり、にしないでくれよ、やだよ……どうしたら」と繰り返した。
悠一は戸惑いを隠して、ただ瞬く。
そして、ふたたびベッドへ歩み寄ると、端に腰を下ろした。
右手をそっと、奏のベルトへと伸ばす。
静かにバックルを外して、スラックスの前立てを寛げてやった。
ボクサーブリーフの合わせ目はぬかるんでいて、屹立した部分がのぞいている。
ひたすらさりげなく「そこ」から目をそらし、悠一は軽く唇をかみしめて、奏の脚からスラックスを脱がせた。
奏の身体の下から掛布団を引き出して、あらわになった足元に掛けてやる。
すると、もうどうしようもなくなったのだろう。
ついに奏が「自らの部分」へと指を伸ばした。
自慰が始まる音。
息を殺す気配。
ほのかな熱っぽさ。
悠一は奏の横顔を見下ろす。
サラサラとした指ざわりの奏の髪へと指を滑らせ、そっとそっと、くしけずった。
奏の自らを扱く動きが早まる。
粘度のある水音が続いた。切なく鼻にかかる声。
あまい、甘い――声。
淫戯はかなりの時間続いた。
奏は疲れを見せ始めている。
ある程度まで高まった快楽は、けれどもそれ以上には駆け上がっていかず、奏は達することができないままだった。
いたたまれなくなった悠一が、視線をさまよわせる。
横向きのままの奏の、ボクサーパンツの「後ろ」が濡れていた。
奏もすぐに、「それ」を悠一に気づかれたコトを察し取る。そして、
「みる、なぁ……ぁっ」と。
ちいさな、でも鋭く悲痛な声を上げた。
悠一が立ち上がる。
たしか、アレがまだ、どこかに――
記憶を手繰り寄せた。
学習机の最下段。悠一が、その奥の奥を指先で探る。
使いかけのコンドームの箱が見つかった。
中学時代。
半ばたぶらかされるようにして、近所のOLと「密事」に耽っていた時の――名残。
使用期限はギリギリだった。
だがまあ、「当座の役」には立つだろう――
その中身を3つほど切り取り、悠一は、
「かなで」と呼びかけて、
「これ」と、コンドームを差し出した。
大きな目をさらに大きく見開いて、奏がフルフルと首を横に振る。
どうしたらよいのか、もう、まるきり分からないとでもいう風に――
悠一は、手にしていた避妊具を軽く咥えて、指と歯でパッケージを破く。
手早く、それを奏の男茎に装着した。
それから、残りのふたつも包装を剥がして取り出し、自分の右手の人差し指と中指に二重して被せる。
「あのさ……」
悠一が、ひどく声量を落として言った。
「手伝うから、俺」
その声の低さは「家業」の場で遺族に声がけするときと、なぜかどこか似ていた。
「てつ、だう……?」
奏が訊き返す。
「……後ろ、とか、すこしは…役に立つかなとか、思って」
悠一の言葉は、相当に回りくどかった。
けれども奏は、すぐさま耳朶だけでなく頬まで真っ赤にしてしまう。
あえて返事は聞かぬまま、悠一はコンドームをした指先を、奏の腰に滑らせた。その指は、すでに分泌液で濡れそぼった窪みへと、ごくあっけなく滑りい入る。
入り口を軽くこするように指を上下させれば、くちゅりくちゅりと音がして、その響きは、あまりにも淫らで恥ずかしく。奏は――
固く瞼を閉じて、奥歯を喰いしばる。
けれど――
「やめろ」とは言えなかった。
「やめてくれ」とは頼めなかった。
だってずっと――
その場所に触れたかった。そして、誰かに触れられたかったから。
そこへの「刺激」を欲していたから。
悠一の指が擦れる場所から、ふつふつと訳の分からないものがこみ上げて。
奏の腰は、どうしようもなく痺れて揺れる。
どんなにペニスを弄ったところで、こんな感覚は全然得られなくて。
――そうだよ、気づけば、おれはいつだって。
尻を、床に枕にこすりつけてた。
腰を揺らして、ぬるぬるに「後ろ」を濡らして。
最近は、いつも、そんな。
「あ、…っ、あぁっ……」
あやふやな形に開かれたくちびるから漏れ出す、奏の声の色が変わる。
「あ、あん、あんあん、あ、ああっ……」
つき上げるような嬌声。
悠一はそっと左手を伸ばし、窓とレースのカーテンを閉めた。
そして、奏の肩に腕を回して、寄り掛からせて――
コンドームをかぶせた人差し指と中指を、奏の中へと挿し入れた。
23
あなたにおすすめの小説
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
八月は僕のつがい
やなぎ怜
BL
冬生まれの雪宗(ゆきむね)は、だからかは定かではないが、夏に弱い。そして夏の月を冠する八月(はつき)にも、弱かった。αである八月の相手は愛らしい彼の従弟たるΩだろうと思いながら、平凡なβの雪宗は八月との関係を続けていた。八月が切り出すまでは、このぬるま湯につかったような関係を終わらせてやらない。そう思っていた雪宗だったが……。
※オメガバース。性描写は薄く、主人公は面倒くさい性格です。
交際0日婚の溺愛事情
江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。
だから緩やかに終わりを探して生きていた。
──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。
誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。
そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。
■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。
■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
拾ってくれたスパダリ(?)が優しすぎて怖い
澪尽
BL
生来、内気で自分に自身を持てない性格の朝哉は、入学当初の騒動によりいっそう内に籠るようになっていた。
家族は彼とは正反対の明るい人々ばかりで何となく居所がなく、その事件に関しても理解を得られない。
そんな彼を憐れみ、ほとんど単なる同居人か家政夫同然の名ばかり≪彼氏≫として扱ってくれていた女性も、愛想が尽きたのか朝哉がバイトをクビになったのを機に唐突に家を追い出されてしまう。
途方にくれた朝哉が最寄りのコンビニに向かうと、そこには憧れの男性の姿が。
どういう偶然なのか、会うたびに朝哉と同じような格好をしている彼。
名前も職業も何も知らないけれど、週に二度は出くわしてしまうため、なんとなく目で追うようになって半年。
ひょんなことから彼のもとで暮らすこととなるが、それと同時に、あの≪騒動≫の影がふたたび日常を蝕むようになり…?
包容力高めの美人お兄さんの手で気弱&卑屈な大学生くんが前向きになっていく話。
もし、運命の番になれたのなら。
天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(α)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。
まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。
水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。
そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。
隣の番は、俺だけを見ている
雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。
ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。
執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。
【キャラクター設定】
■主人公(受け)
名前:湊(みなと)
属性:Ω(オメガ)
年齢:17歳
性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。
特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。
■相手(攻め)
名前:律(りつ)
属性:α(アルファ)
年齢:18歳
性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。
特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる