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39.building a mystery(1)
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[62]
「ああ、春日だ」と――
すぐに分かる。廊下の先、周囲より頭一つ抜けた長身の男の後姿。
尊は視野の端に、その姿を入れる。
ギリギリの際、マージナル。
ゆっくりと、悠一の方へと歩いていく。
すれ違う――
刹那、尊の鋭い嗅覚が感じ取った。
あまい。
あまい、甘いあまい――爛れた匂い。
ザワリと、背筋があわだった。
揺らめく炎のような、そんな何かが頭の中で――耳の奥で。
脈打つ血管の音が、ギュウギュウと大きくなっていく。
*
放課後、尊は、階段のおどり場から校舎裏を見やった。
走る姿。
カサカサに冬枯れた古いグラウンドを、まっすぐに。
確かなストライドで。風を切って。
走る男の姿。
ダッシュタイムを数本測り終えた後、トラックジャケットを羽織って、ナイロンパンツを着込み、悠一がいくつかの大きな筋肉にストレッチをかける。
尊が階段を降り始めた。
一階のピロティに着く。その足は「2グラ」へと向いた。
風が渡る。
斜めに差し込む冬の午後の光。ハレーションを起こす視界の中に――
春日悠一。
尊を見て、悠一が挨拶めいて軽く頷く。
「なんだよ、藤堂。最近は走りに来なかったな。トレーニングなんぞ簡単すぎて、もう飽きちまったか?」
目一杯に皮肉めかせて、悠一が言った。
「『お邪魔』かと思って」
シレッと尊が応じる。
「よく言うぜ」と、悠一が吐き捨てた。だが、その声に棘はない。
そして、少しだけためらってから、
「大丈夫なのか、その…体調とか」と、悠一が続けた。
尊がごく尊大に顎先を上げる。
その小さな仕草だけで、投げられた「質問」への「不快さ」が言い表された。
そんな「スーパーアルファ」らしい傲慢な態度に、悠一は唖然としたものの、不思議と腹立ちは感じなかった。
まあ、「愉快な態度」ではないさ。
けど、それもまた、ごく藤堂らしいよな、と。
そう感じただけだった。
悠一は、わずかに両肩をすくめてみせると、バッグを手にして歩き出す。
ちょうど尊の真横を歩み過ぎようとした時だ。
ひどくこれ見よがしに、尊がスンと匂いを嗅いだ。
そして、
「ベットリ匂ってるぞ」と低く低く呟く。
足を止め、軽く振り返りながら、悠一が目を見開いた。
尊が続ける。
「結局は『デキた』ってコトか。あの一組のオメガと」
悠一が凍りつく。
そして、
「まったく、口ほどにもないな」と。
追い打ちをかけるような尊の言葉。
「違う……」
「なにが『違う』?」
嘲笑とともに尊が問い直した。
悠一は答えない。
「『コイビトではない』とでも? ああ、そうか。発情オメガの体のいい『性欲処理役』か? それともお前が、見さかいなく襲いかかって……」
「いい加減にしろ!」
悠一が鋭く言い放つ。
その両肩に憤怒のオーラを揺らめかせて。
「藤堂、オマエ、なんだってそう、いちいち俺にウザ絡みしてくんだよ。関係ねぇだろ。俺が誰と何しようが。それともなにか? 奏に目をつけてたとでも? それで俺に腹を立ててるのかよ!」
――ああ、「なんで」なんだろうな。
たかが「ベータ」の男に怒鳴られて、尊はただ、ゆっくりとまばたく。
腹を立てている? 憤怒?
いや、どこのオメガが誰とどう「デキようが」、別にオレの知ったことではない。そんなコトなど「どうだっていい」。
だったら、この腹の奥に渦巻くような得体のしれない感情は。
どういう「言葉」で定義される――?
ああ、たしかに、オレはイラついている。
だが、何に対してだ?
「俺と奏がどうだろうが……そんなコトはオマエなんかに関係ねぇんだよ」
ムッと押し殺した声で告げ、悠一が尊の手を振り払った。
ほかでもない、その切り捨てるような口調にこそ、尊の感情が一気に逆なでされる。
後ろから、悠一の肩を強く掴んで引き寄せた。
「オイ、痛ぇぞ、ふざけんな、藤堂!!」
悠一が怒鳴る。本気の声で。
だが、尊の指は緩まない。
猛烈な力で、悠一を引きずるようにして歩いていく。
2グラの古い備品が押し込められた小部屋。
たてつけが悪く、誰もが開けることを諦めていたその戸を、尊が片手で引き開けた。
そして、勢いよく放るようにして、悠一を室内に押し入れる。
よろめいた悠一が、背の高い棚に思い切り背中をぶつけた。
「っ…って、痛ぇって、マジ、オマエ、ムカつくな」
悠一の声が、狭い室内に響く。
尊が引き戸を閉めた。
窓のほとんどがガラクタで覆われた部屋が、濃い闇に沈む。
「……藤堂?!」
返事はない。悠一は、闇に蠢く気配に目を凝らす。
その瞬間、ガシリと襟首を掴まれた。
続けて、両方の上腕が猛烈な力で捉えられる。
振りほどこうともがけばもがくほど、絡め取られるように身体ごと尊に拘束されて。
後ろから足を掛けられ、悠一は仰向けに床へと倒れた。
両膝の間に、割り入ってくる尊の脚。
ドキリと怯んだ瞬間に、悠一の両手首は、やすやすと尊の右手で拘束された。
「クソっ…なんだよ、この馬鹿力」
悠一がひたすらに悪態をつく。
尊は、ひと言も発さぬまま、悠一のトラックパンツのゴムに手を掛けた。
「ちょっ……藤堂! なにす…」
逃れようと脚をバタつかせれば、それを逆手に取るかのように、尊は悠一の腰から服と下着をはぎ取っていく。
あまりにも「手慣れた」拘束だった。
上背も体格も、さほど変わらないはずの同学年の男のふるまいに。
悠一はゾッと胃の底を冷たくさせられる。
――前に、温泉まで一緒に走った。
あの時の映像が、悠一の脳裏にふと蘇る。
秋風の中のジョグ。
川べりで、山々を見ながらごく他愛ない話をした。
あの時は――
「お高くとまってる」とばかり思っていた、「別世界」の人間だと思っていた「藤堂」のアルファも、意外と「普通」に話せたりするんだなと。
意外といいヤツなんじゃないかと。
一瞬だけ、そんなことも思った。
でも――
違うじゃねぇか。全然。
「普通」でもなけりゃ「いいヤツ」でもない。こんな――こんな。
首筋に熱い何かが落ちてきた。
「舐められた」のだと、すぐに気づく。
グワリと、悠一の頬が熱くなった。
あの日。
風呂で、俺は勃起してた。
「十代の男なら『さかって』当たり前だろ」と、藤堂は鼻で嗤った。
あの時俺は――
一体「何に」反応してたんだ。
尊が鼻先で、悠一の首筋をなぞる。
腰骨、そして脇腹。中指と人差し指と薬指が、さあっと悠一の鼠径部から腹筋をなぞりあげ、胸元をまさぐり始めた。
悠一の脚の間はさらに割り開かされて、尊は、折り曲げた膝をグッと押し上げてくる。
ねじ込まれるような、擦り上げるような。
物理的な刺激に、悠一の「部分」は、自動的に身勝手に快楽を拾い始めて――
「やめ、やめ……ろ、ふざけんな、藤堂、やめろ!」
ビクリと、悠一にのしかかっている身体が痙攣する。
初めて――
尊が悠一の言葉に反応を見せた。
すこしずつ、闇に慣れてきた目が、悠一に尊の表情を、うっすらとだが認識させる。それは――
尊の顔は――
ひどく必死に見えた。追い詰められたように。
どこか、なぜか。
怯えているようにすらみえるほどに。
気づけば、悠一は前腕を伸ばし、尊の端正すぎる顎を掴んで引き寄せ。
――そのくちびるに、くちづけていた。
尊に与えられた、予期せぬ驚愕。
そのまま、ふたりはキスを続ける。
幾度か息を継いで、さらに深く、口腔を舐めとって舌を絡め合って。
くちびるを離してからも、ふたりの荒い息遣いは止まらずに、狭く暗い物置の床に沈殿していく。
すると尊が、悠一のうなじに歯を立てた。
――激痛。焼けるような。
「いたっ……やめ……ろ、とうどう、ヤメロ!!」
もがき叫ぶ悠一の声など、まるで耳に入っていないのか、尊は必死に悠一のうなじを噛み続ける。
――なんの「証」にもならない。
アルファの「噛み痕」など、ベータには何の意味もない。
そんなコトは分かっている。なのに。
なんでだ。
誰の首にも、オメガだろうが、ベータだろうが。
男だろうが女だろうが。
噛み痕をつけたいなどと思ったことはなかった。一度もなかった。
なのに。なぜ、オレは――
渾身の力で悠一を拘束したまま、尊は、自分が付けた歯形から染み出す血液を、そっとそっと舌で舐め取り、くちびるで吸う。
悠一の手首でスマートウォッチがバイブした。
闇と静寂の中、突然に響き渡った振動音は、尊の正気を呼び覚ますに十分な衝撃だった。
押さえ込む力が、ふと緩んだ隙を捉え、悠一がすかさず、尊を突き飛ばす。
それは、母親からの通話の着信を知らせる音だった。
悠一はすぐに小さな液晶をタップして、
「……母さん、なに?」と、精一杯の平静を装った声で応じて見せた。
「ああ、春日だ」と――
すぐに分かる。廊下の先、周囲より頭一つ抜けた長身の男の後姿。
尊は視野の端に、その姿を入れる。
ギリギリの際、マージナル。
ゆっくりと、悠一の方へと歩いていく。
すれ違う――
刹那、尊の鋭い嗅覚が感じ取った。
あまい。
あまい、甘いあまい――爛れた匂い。
ザワリと、背筋があわだった。
揺らめく炎のような、そんな何かが頭の中で――耳の奥で。
脈打つ血管の音が、ギュウギュウと大きくなっていく。
*
放課後、尊は、階段のおどり場から校舎裏を見やった。
走る姿。
カサカサに冬枯れた古いグラウンドを、まっすぐに。
確かなストライドで。風を切って。
走る男の姿。
ダッシュタイムを数本測り終えた後、トラックジャケットを羽織って、ナイロンパンツを着込み、悠一がいくつかの大きな筋肉にストレッチをかける。
尊が階段を降り始めた。
一階のピロティに着く。その足は「2グラ」へと向いた。
風が渡る。
斜めに差し込む冬の午後の光。ハレーションを起こす視界の中に――
春日悠一。
尊を見て、悠一が挨拶めいて軽く頷く。
「なんだよ、藤堂。最近は走りに来なかったな。トレーニングなんぞ簡単すぎて、もう飽きちまったか?」
目一杯に皮肉めかせて、悠一が言った。
「『お邪魔』かと思って」
シレッと尊が応じる。
「よく言うぜ」と、悠一が吐き捨てた。だが、その声に棘はない。
そして、少しだけためらってから、
「大丈夫なのか、その…体調とか」と、悠一が続けた。
尊がごく尊大に顎先を上げる。
その小さな仕草だけで、投げられた「質問」への「不快さ」が言い表された。
そんな「スーパーアルファ」らしい傲慢な態度に、悠一は唖然としたものの、不思議と腹立ちは感じなかった。
まあ、「愉快な態度」ではないさ。
けど、それもまた、ごく藤堂らしいよな、と。
そう感じただけだった。
悠一は、わずかに両肩をすくめてみせると、バッグを手にして歩き出す。
ちょうど尊の真横を歩み過ぎようとした時だ。
ひどくこれ見よがしに、尊がスンと匂いを嗅いだ。
そして、
「ベットリ匂ってるぞ」と低く低く呟く。
足を止め、軽く振り返りながら、悠一が目を見開いた。
尊が続ける。
「結局は『デキた』ってコトか。あの一組のオメガと」
悠一が凍りつく。
そして、
「まったく、口ほどにもないな」と。
追い打ちをかけるような尊の言葉。
「違う……」
「なにが『違う』?」
嘲笑とともに尊が問い直した。
悠一は答えない。
「『コイビトではない』とでも? ああ、そうか。発情オメガの体のいい『性欲処理役』か? それともお前が、見さかいなく襲いかかって……」
「いい加減にしろ!」
悠一が鋭く言い放つ。
その両肩に憤怒のオーラを揺らめかせて。
「藤堂、オマエ、なんだってそう、いちいち俺にウザ絡みしてくんだよ。関係ねぇだろ。俺が誰と何しようが。それともなにか? 奏に目をつけてたとでも? それで俺に腹を立ててるのかよ!」
――ああ、「なんで」なんだろうな。
たかが「ベータ」の男に怒鳴られて、尊はただ、ゆっくりとまばたく。
腹を立てている? 憤怒?
いや、どこのオメガが誰とどう「デキようが」、別にオレの知ったことではない。そんなコトなど「どうだっていい」。
だったら、この腹の奥に渦巻くような得体のしれない感情は。
どういう「言葉」で定義される――?
ああ、たしかに、オレはイラついている。
だが、何に対してだ?
「俺と奏がどうだろうが……そんなコトはオマエなんかに関係ねぇんだよ」
ムッと押し殺した声で告げ、悠一が尊の手を振り払った。
ほかでもない、その切り捨てるような口調にこそ、尊の感情が一気に逆なでされる。
後ろから、悠一の肩を強く掴んで引き寄せた。
「オイ、痛ぇぞ、ふざけんな、藤堂!!」
悠一が怒鳴る。本気の声で。
だが、尊の指は緩まない。
猛烈な力で、悠一を引きずるようにして歩いていく。
2グラの古い備品が押し込められた小部屋。
たてつけが悪く、誰もが開けることを諦めていたその戸を、尊が片手で引き開けた。
そして、勢いよく放るようにして、悠一を室内に押し入れる。
よろめいた悠一が、背の高い棚に思い切り背中をぶつけた。
「っ…って、痛ぇって、マジ、オマエ、ムカつくな」
悠一の声が、狭い室内に響く。
尊が引き戸を閉めた。
窓のほとんどがガラクタで覆われた部屋が、濃い闇に沈む。
「……藤堂?!」
返事はない。悠一は、闇に蠢く気配に目を凝らす。
その瞬間、ガシリと襟首を掴まれた。
続けて、両方の上腕が猛烈な力で捉えられる。
振りほどこうともがけばもがくほど、絡め取られるように身体ごと尊に拘束されて。
後ろから足を掛けられ、悠一は仰向けに床へと倒れた。
両膝の間に、割り入ってくる尊の脚。
ドキリと怯んだ瞬間に、悠一の両手首は、やすやすと尊の右手で拘束された。
「クソっ…なんだよ、この馬鹿力」
悠一がひたすらに悪態をつく。
尊は、ひと言も発さぬまま、悠一のトラックパンツのゴムに手を掛けた。
「ちょっ……藤堂! なにす…」
逃れようと脚をバタつかせれば、それを逆手に取るかのように、尊は悠一の腰から服と下着をはぎ取っていく。
あまりにも「手慣れた」拘束だった。
上背も体格も、さほど変わらないはずの同学年の男のふるまいに。
悠一はゾッと胃の底を冷たくさせられる。
――前に、温泉まで一緒に走った。
あの時の映像が、悠一の脳裏にふと蘇る。
秋風の中のジョグ。
川べりで、山々を見ながらごく他愛ない話をした。
あの時は――
「お高くとまってる」とばかり思っていた、「別世界」の人間だと思っていた「藤堂」のアルファも、意外と「普通」に話せたりするんだなと。
意外といいヤツなんじゃないかと。
一瞬だけ、そんなことも思った。
でも――
違うじゃねぇか。全然。
「普通」でもなけりゃ「いいヤツ」でもない。こんな――こんな。
首筋に熱い何かが落ちてきた。
「舐められた」のだと、すぐに気づく。
グワリと、悠一の頬が熱くなった。
あの日。
風呂で、俺は勃起してた。
「十代の男なら『さかって』当たり前だろ」と、藤堂は鼻で嗤った。
あの時俺は――
一体「何に」反応してたんだ。
尊が鼻先で、悠一の首筋をなぞる。
腰骨、そして脇腹。中指と人差し指と薬指が、さあっと悠一の鼠径部から腹筋をなぞりあげ、胸元をまさぐり始めた。
悠一の脚の間はさらに割り開かされて、尊は、折り曲げた膝をグッと押し上げてくる。
ねじ込まれるような、擦り上げるような。
物理的な刺激に、悠一の「部分」は、自動的に身勝手に快楽を拾い始めて――
「やめ、やめ……ろ、ふざけんな、藤堂、やめろ!」
ビクリと、悠一にのしかかっている身体が痙攣する。
初めて――
尊が悠一の言葉に反応を見せた。
すこしずつ、闇に慣れてきた目が、悠一に尊の表情を、うっすらとだが認識させる。それは――
尊の顔は――
ひどく必死に見えた。追い詰められたように。
どこか、なぜか。
怯えているようにすらみえるほどに。
気づけば、悠一は前腕を伸ばし、尊の端正すぎる顎を掴んで引き寄せ。
――そのくちびるに、くちづけていた。
尊に与えられた、予期せぬ驚愕。
そのまま、ふたりはキスを続ける。
幾度か息を継いで、さらに深く、口腔を舐めとって舌を絡め合って。
くちびるを離してからも、ふたりの荒い息遣いは止まらずに、狭く暗い物置の床に沈殿していく。
すると尊が、悠一のうなじに歯を立てた。
――激痛。焼けるような。
「いたっ……やめ……ろ、とうどう、ヤメロ!!」
もがき叫ぶ悠一の声など、まるで耳に入っていないのか、尊は必死に悠一のうなじを噛み続ける。
――なんの「証」にもならない。
アルファの「噛み痕」など、ベータには何の意味もない。
そんなコトは分かっている。なのに。
なんでだ。
誰の首にも、オメガだろうが、ベータだろうが。
男だろうが女だろうが。
噛み痕をつけたいなどと思ったことはなかった。一度もなかった。
なのに。なぜ、オレは――
渾身の力で悠一を拘束したまま、尊は、自分が付けた歯形から染み出す血液を、そっとそっと舌で舐め取り、くちびるで吸う。
悠一の手首でスマートウォッチがバイブした。
闇と静寂の中、突然に響き渡った振動音は、尊の正気を呼び覚ますに十分な衝撃だった。
押さえ込む力が、ふと緩んだ隙を捉え、悠一がすかさず、尊を突き飛ばす。
それは、母親からの通話の着信を知らせる音だった。
悠一はすぐに小さな液晶をタップして、
「……母さん、なに?」と、精一杯の平静を装った声で応じて見せた。
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