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新たに歩み出した二人
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苦しげに顔を歪めた羽月が、陽一の奥に何度も強く自身を叩き付ける。そしてブルッと背中を震わせたかと思うと、奥深くに熱い迸りを放った。
「くっ…!」
陽一の中に何度も放つ。射精している間も腰を動かし、満たしていく。
「んっあ…は、づき…」
羽月に強くしがみ付き、中を熱く満たされながら、陽一は意識を手放した。
「んっ…」
ふと眼を覚ますと、見慣れぬ部屋が視界に写った。
「えっ、ここは…」
上半身を起こすと、腰に鈍く重い痛みが走った。
「いたっ!」
「あっ、起きた? 陽一」
部屋に入ってきたのは、今までシャワーを浴びてきた様子の羽月だった。バスローブ姿で、タオルで濡れた頭を拭いている。
そこでようやく陽一は、何故自分がここにいるのか、そして裸で眠っていたのかを、鮮明に思い出した。
「~~~っ!」
思わず頭を抱えると、顔色が赤から青へと変わった。
「今何時だっ!」
「夜中の二時過ぎだよ」
「あれから一日も経っていないよな?」
「うん。日付は変わったけどね」
羽月が陽一の携帯電話を差し出してきたので、受け取り、日付と時間をチェックした。
それで自分が数時間しか眠っていないことに安堵したものの、水野や両親から連絡が入っていたことにガックリ項垂れる。
「…オレ、ケータイが鳴ってても眠っていたのか?」
「それはもうグッスリと」
嬉しそうに羽月は言うものの、陽一は気落ちした。
低い着信音設定にしていたとは言え、全く気付かず眠ってしまっていたのは、落ち込むところだ。
こちらから連絡しようにも、こんな時間ではあちらの方が出てくれない。
「…ちなみに言っておくが、今日は帰るからな」
「うん…。寂しいけど、しょうがないよね」
羽月は寂しそうに笑い、ベッドに腰かけた。
その様子を見て、陽一は意外そうに眼を丸くした。
「随分あっさりしているんだな。帰らないでほしいとか、言い出すかと思った」
「五年前のことで、陽一のご両親に苦労をかけたことは自覚しているからね」
「ああ…」
再び羽月と会ったことも、家に帰って言うべきかどうか迷うところだった。
陽一の両親は、二人の仲を知らない。五年前の事件は、精神的に追い詰められて行ったことだと思っているはずだ。
「陽一、ボクがこんなことを言う権利はないと思うけど…ご両親にはしばらく黙っていてほしいんだ」
「お前のことを、か?」
「うん。話せるタイミングは必ずあると思うけど、今はまだ…」
それは陽一も同感だった。
今だってお互い、まだ混乱している部分も多い。
「…分かった。しばらくは黙っといてやるよ。でも仕事のことはどうする?」
「そのことなんだけど、担当者は代理を立てようかと思っている」
「代理?」
「そう。実際の担当者はボクでも、向こうの工場の人達に会うのは別の人間を用意する。そうすれば少なくともボクの存在は隠せる」
「確かにそうだが…仕事の内容はどうする?」
「詳しいことはボクと陽一の間で行えばいい。代理の人間はあくまでも顔見せ用であればいいし」
確かにそれなら、羽月のことは一切洩らさないで済むだろう。
「その代理の人間はどこで用意するんだ?」
「ウチの会社の人間に頼むよ。でもさっき陽一は水野さんに担当者は昔の知り合いだって言ってたから、高校時代の友人って設定で」
「…だな」
こっちにいた頃の知り合いならば、水野や両親が会ったことのない人物で通るだろう。
「今回はとりあえず、契約の確認をしに来たってことで工場の人達は納得させて、後のことは代理人を向こうに送って、仕事を済ませよう」
「ああ、分かった」
仕事上はそれで良いだろう。
だが問題はある。
「…なぁ、羽月。お前の親父さん、感付いてきたらどうする?」
目的の為なら手段を選ばない男だ。二人が再会したことを知れば、どんな行動を起こすか分からない。
「そっちは大丈夫」
しかし羽月は自信ありげに微笑んだ。
そして陽一の頭を撫でながら、そっとキスをした。
「絶対に陽一を傷付けさせない。ボクだって子供のままじゃないんだ。父を黙らせることだってできる」
「それは頼もしいけれど…」
「大丈夫だって」
羽月は陽一を優しく抱き締めた。
「今度は陽一を守る。決して逃げたりしないから。ボクを信じて」
「…ああ、分かった」
不安は残っていたが、羽月の言葉を信じてみたいと思った。
翌朝。羽月の作った朝食を食べながら、陽一は尋ねてみた。
「後継者問題、どうなっている?」
それはずっと考えていたこと。その問題のせいで二人は五年間、離れ離れにされたのだ。
「う~ん。まだ父はボクをと考えているみたい。でもこの五年の間に、二人目の義姉が結婚してね。優秀な人だから、彼を後継者にと正妻は思っているみたい」
「婿を取ったのか?」
「ううん、それがちょっと厄介でね」
羽月は弱々しい笑みを浮かべた。
「義兄は自ら経営学を学び、仕事をしている人なんだ。ご両親や親戚も同じく会社経営で成功している。彼は一人息子だし、どちらかと言えば義姉が嫁入りしたようなもんかな?」
「じゃあ後継者はムリだろう? 無理やり後継ぎにさせたら、逆に会社が乗っ取られるんじゃないか?」
「うん、そこを父も考えててね。まあ義兄の仕事はご両親や親戚とは関係ないし、家の為に乗っ取るとかそういう可能性は低い…かなぁ?」
珍しく歯切れの悪い言い方に、陽一は顔をしかめる。
家の為にと言う可能性が低いならば、もしかしたら自分の為になら動く可能性が高いのかもしれない。
「野心的、なのか?」
「ああ、そうだね。そういうタイプだ」
「くっ…!」
陽一の中に何度も放つ。射精している間も腰を動かし、満たしていく。
「んっあ…は、づき…」
羽月に強くしがみ付き、中を熱く満たされながら、陽一は意識を手放した。
「んっ…」
ふと眼を覚ますと、見慣れぬ部屋が視界に写った。
「えっ、ここは…」
上半身を起こすと、腰に鈍く重い痛みが走った。
「いたっ!」
「あっ、起きた? 陽一」
部屋に入ってきたのは、今までシャワーを浴びてきた様子の羽月だった。バスローブ姿で、タオルで濡れた頭を拭いている。
そこでようやく陽一は、何故自分がここにいるのか、そして裸で眠っていたのかを、鮮明に思い出した。
「~~~っ!」
思わず頭を抱えると、顔色が赤から青へと変わった。
「今何時だっ!」
「夜中の二時過ぎだよ」
「あれから一日も経っていないよな?」
「うん。日付は変わったけどね」
羽月が陽一の携帯電話を差し出してきたので、受け取り、日付と時間をチェックした。
それで自分が数時間しか眠っていないことに安堵したものの、水野や両親から連絡が入っていたことにガックリ項垂れる。
「…オレ、ケータイが鳴ってても眠っていたのか?」
「それはもうグッスリと」
嬉しそうに羽月は言うものの、陽一は気落ちした。
低い着信音設定にしていたとは言え、全く気付かず眠ってしまっていたのは、落ち込むところだ。
こちらから連絡しようにも、こんな時間ではあちらの方が出てくれない。
「…ちなみに言っておくが、今日は帰るからな」
「うん…。寂しいけど、しょうがないよね」
羽月は寂しそうに笑い、ベッドに腰かけた。
その様子を見て、陽一は意外そうに眼を丸くした。
「随分あっさりしているんだな。帰らないでほしいとか、言い出すかと思った」
「五年前のことで、陽一のご両親に苦労をかけたことは自覚しているからね」
「ああ…」
再び羽月と会ったことも、家に帰って言うべきかどうか迷うところだった。
陽一の両親は、二人の仲を知らない。五年前の事件は、精神的に追い詰められて行ったことだと思っているはずだ。
「陽一、ボクがこんなことを言う権利はないと思うけど…ご両親にはしばらく黙っていてほしいんだ」
「お前のことを、か?」
「うん。話せるタイミングは必ずあると思うけど、今はまだ…」
それは陽一も同感だった。
今だってお互い、まだ混乱している部分も多い。
「…分かった。しばらくは黙っといてやるよ。でも仕事のことはどうする?」
「そのことなんだけど、担当者は代理を立てようかと思っている」
「代理?」
「そう。実際の担当者はボクでも、向こうの工場の人達に会うのは別の人間を用意する。そうすれば少なくともボクの存在は隠せる」
「確かにそうだが…仕事の内容はどうする?」
「詳しいことはボクと陽一の間で行えばいい。代理の人間はあくまでも顔見せ用であればいいし」
確かにそれなら、羽月のことは一切洩らさないで済むだろう。
「その代理の人間はどこで用意するんだ?」
「ウチの会社の人間に頼むよ。でもさっき陽一は水野さんに担当者は昔の知り合いだって言ってたから、高校時代の友人って設定で」
「…だな」
こっちにいた頃の知り合いならば、水野や両親が会ったことのない人物で通るだろう。
「今回はとりあえず、契約の確認をしに来たってことで工場の人達は納得させて、後のことは代理人を向こうに送って、仕事を済ませよう」
「ああ、分かった」
仕事上はそれで良いだろう。
だが問題はある。
「…なぁ、羽月。お前の親父さん、感付いてきたらどうする?」
目的の為なら手段を選ばない男だ。二人が再会したことを知れば、どんな行動を起こすか分からない。
「そっちは大丈夫」
しかし羽月は自信ありげに微笑んだ。
そして陽一の頭を撫でながら、そっとキスをした。
「絶対に陽一を傷付けさせない。ボクだって子供のままじゃないんだ。父を黙らせることだってできる」
「それは頼もしいけれど…」
「大丈夫だって」
羽月は陽一を優しく抱き締めた。
「今度は陽一を守る。決して逃げたりしないから。ボクを信じて」
「…ああ、分かった」
不安は残っていたが、羽月の言葉を信じてみたいと思った。
翌朝。羽月の作った朝食を食べながら、陽一は尋ねてみた。
「後継者問題、どうなっている?」
それはずっと考えていたこと。その問題のせいで二人は五年間、離れ離れにされたのだ。
「う~ん。まだ父はボクをと考えているみたい。でもこの五年の間に、二人目の義姉が結婚してね。優秀な人だから、彼を後継者にと正妻は思っているみたい」
「婿を取ったのか?」
「ううん、それがちょっと厄介でね」
羽月は弱々しい笑みを浮かべた。
「義兄は自ら経営学を学び、仕事をしている人なんだ。ご両親や親戚も同じく会社経営で成功している。彼は一人息子だし、どちらかと言えば義姉が嫁入りしたようなもんかな?」
「じゃあ後継者はムリだろう? 無理やり後継ぎにさせたら、逆に会社が乗っ取られるんじゃないか?」
「うん、そこを父も考えててね。まあ義兄の仕事はご両親や親戚とは関係ないし、家の為に乗っ取るとかそういう可能性は低い…かなぁ?」
珍しく歯切れの悪い言い方に、陽一は顔をしかめる。
家の為にと言う可能性が低いならば、もしかしたら自分の為になら動く可能性が高いのかもしれない。
「野心的、なのか?」
「ああ、そうだね。そういうタイプだ」
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