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「そりゃ嬉しいね」
嫌な顔をしてハッキリ言ったのに、光雅は嬉しそうに笑った。
光雅にとって、オレは全てであってほしいらしい。喜怒哀楽、全ての感情が自分に向けば良い。他の誰にも、何物にも向けないでいてほしいんだ。
「で、ボクが何?」
「昼休みに言っていたこと、本気だったら縁を切ろうかと思ってな」
「また怖いことを言い出すなぁ。ボクは綾に見捨てられたら、生きていけないのに」
「死ぬ間際にオレを道連れにするだろう?」
「それはもちろん。綾を残して、死ぬわけにはいかないからね」
楽しそうに語るも、真剣さは伝わってくる。…いや、本気の殺意を、か?
「ボクのいない世界で、生きていてほしくないんだ。だから殺してあげる」
どっちが怖いんだか…。
「そうかい。その時は優しくしてくれよな?」
「ああ。綾に苦しむ顔は似合わない。絶頂を感じさせながら、イかせてあげる」
オレの殺され方はヤりながらか…。マジでイヤだ!
「はいはい。それじゃあメシ食おうぜ。いい加減、腹の虫が合唱してるし」
「そうだね」
そこでようやく開放された。
…恋の病にかかったものは下手に挑発してはいけないことを、オレは学んだ。
夕飯は特大のハンバーグだ。それにコーンスープに、パン。ツナのサラダときたか。
「飲み物は何が良い?」
「ウーロン茶」
「分かった」
結局、話はすり返られたか。…本気で休学、留年するつもりなんだろうか? 確かめるのも、勇気がいるな。
それでもご飯は美味しくいただきたいので、食事中は黙っていた。
そして食事を終え、光雅が皿洗いを終えたところで、再び話を再開させるつもりだったが…。
「なぁ、光雅」
「綾、お風呂入ろうか」
…またもや阻まれた。
腕を捕まれ、ずるずるバスルームへ連行される。服を脱がされ、光雅も服を脱ぎ、二人で湯船に浸かる。
風呂の中では癒されると言うが、オレはちっとも癒されない。後ろからオレを抱き締める光雅のせいで。
「綾、少し髪伸びたね。今度の食事会までに切ってあげるよ」
「へいへい」
オレの髪も爪も、光雅が整える。いつものことだった。
でもそろそろ髪の毛がうっとおしくなってきたところだった。ちなみにオレの髪は染めずに黒い。本当は染めたかったけれど、光雅が許してくれなかった。
一方、光雅の髪は天然で茶色い。眼も琥珀色だ。本物の宝石のように色が深くて綺麗。お湯に浸かると陶器のように白くなる肌も、どこまでも綺麗だ。
美形は隅々まで美しくできているんだなぁと、羨ましくはないが感心してしまう。
「光雅って焼けないよな」
肩に回された手を外し、じっと見つめる。
「日焼けしにくい体質だからね」
でも綺麗だ。口には決して出さないけど、本心からそう思う。…言うと調子付くから、絶対に言わない。
「ふぅん」
ブラブラと手を振っても、後ろの美人は笑みを浮かべたまま。
ふとイタズラ心が出てきた。持っている手を口元に運び、中指をかぶっと噛んでみた。あくまで甘噛みだ。
「ふふっ、くすぐったいよ」
その声が妙に嬉しそうだったんで、オレは続けて他の指もガブガブと噛んでいった。軽く噛んでいるだけなので、痕は残らない。
五本全部の指を噛んだところで、口から出した。
「―じゃあ今度はボクの番だ」
「えっ?」
予想外の言葉に眼を丸くしていると、今度は光雅の人差し指と中指が口の中に入ってきた。
「うぐっ!」
「噛んじゃダメだよ」
二本の指の腹が、オレの舌をスーっと撫でる。
「んんっ。こぅっが、やめっ」
「大丈夫。奥まで入れないから」
そう言って指を動かし、オレの口の中を撫でていく。舌の表と裏、そして歯茎に上顎まで丹念に優しく撫で上げていく。
「ふっ…んん、はぁ…」
甘い吐息が出るのを抑えきれない。後ろにいる光雅を何とかして離そうとするが、体格からして負けているので不可能だった。
光雅の指が触れている部分から、甘い痺れが広がる。それは口の中だけではなく、頭の中にまで侵食してきた。その反応は下半身にまで及んでしまう。
「アレ? 感じてるの?」
透明な湯船には、全てが丸見えだった。反応し始めたオレの下半身を見て、熱っぽい視線を送ってくる。
「綾から誘ってくれるなんて嬉しいなぁ。ご褒美にいっぱい可愛がってあげるよ」
誘うって…さっきの指を噛んだことか!
イタズラ心が物の見事にアダになって返ってきた…。
呆然としている間に、薬指まで増やされた。
「あふぅ…んっ」
「しゃぶってよ、綾」
嫌な顔をしてハッキリ言ったのに、光雅は嬉しそうに笑った。
光雅にとって、オレは全てであってほしいらしい。喜怒哀楽、全ての感情が自分に向けば良い。他の誰にも、何物にも向けないでいてほしいんだ。
「で、ボクが何?」
「昼休みに言っていたこと、本気だったら縁を切ろうかと思ってな」
「また怖いことを言い出すなぁ。ボクは綾に見捨てられたら、生きていけないのに」
「死ぬ間際にオレを道連れにするだろう?」
「それはもちろん。綾を残して、死ぬわけにはいかないからね」
楽しそうに語るも、真剣さは伝わってくる。…いや、本気の殺意を、か?
「ボクのいない世界で、生きていてほしくないんだ。だから殺してあげる」
どっちが怖いんだか…。
「そうかい。その時は優しくしてくれよな?」
「ああ。綾に苦しむ顔は似合わない。絶頂を感じさせながら、イかせてあげる」
オレの殺され方はヤりながらか…。マジでイヤだ!
「はいはい。それじゃあメシ食おうぜ。いい加減、腹の虫が合唱してるし」
「そうだね」
そこでようやく開放された。
…恋の病にかかったものは下手に挑発してはいけないことを、オレは学んだ。
夕飯は特大のハンバーグだ。それにコーンスープに、パン。ツナのサラダときたか。
「飲み物は何が良い?」
「ウーロン茶」
「分かった」
結局、話はすり返られたか。…本気で休学、留年するつもりなんだろうか? 確かめるのも、勇気がいるな。
それでもご飯は美味しくいただきたいので、食事中は黙っていた。
そして食事を終え、光雅が皿洗いを終えたところで、再び話を再開させるつもりだったが…。
「なぁ、光雅」
「綾、お風呂入ろうか」
…またもや阻まれた。
腕を捕まれ、ずるずるバスルームへ連行される。服を脱がされ、光雅も服を脱ぎ、二人で湯船に浸かる。
風呂の中では癒されると言うが、オレはちっとも癒されない。後ろからオレを抱き締める光雅のせいで。
「綾、少し髪伸びたね。今度の食事会までに切ってあげるよ」
「へいへい」
オレの髪も爪も、光雅が整える。いつものことだった。
でもそろそろ髪の毛がうっとおしくなってきたところだった。ちなみにオレの髪は染めずに黒い。本当は染めたかったけれど、光雅が許してくれなかった。
一方、光雅の髪は天然で茶色い。眼も琥珀色だ。本物の宝石のように色が深くて綺麗。お湯に浸かると陶器のように白くなる肌も、どこまでも綺麗だ。
美形は隅々まで美しくできているんだなぁと、羨ましくはないが感心してしまう。
「光雅って焼けないよな」
肩に回された手を外し、じっと見つめる。
「日焼けしにくい体質だからね」
でも綺麗だ。口には決して出さないけど、本心からそう思う。…言うと調子付くから、絶対に言わない。
「ふぅん」
ブラブラと手を振っても、後ろの美人は笑みを浮かべたまま。
ふとイタズラ心が出てきた。持っている手を口元に運び、中指をかぶっと噛んでみた。あくまで甘噛みだ。
「ふふっ、くすぐったいよ」
その声が妙に嬉しそうだったんで、オレは続けて他の指もガブガブと噛んでいった。軽く噛んでいるだけなので、痕は残らない。
五本全部の指を噛んだところで、口から出した。
「―じゃあ今度はボクの番だ」
「えっ?」
予想外の言葉に眼を丸くしていると、今度は光雅の人差し指と中指が口の中に入ってきた。
「うぐっ!」
「噛んじゃダメだよ」
二本の指の腹が、オレの舌をスーっと撫でる。
「んんっ。こぅっが、やめっ」
「大丈夫。奥まで入れないから」
そう言って指を動かし、オレの口の中を撫でていく。舌の表と裏、そして歯茎に上顎まで丹念に優しく撫で上げていく。
「ふっ…んん、はぁ…」
甘い吐息が出るのを抑えきれない。後ろにいる光雅を何とかして離そうとするが、体格からして負けているので不可能だった。
光雅の指が触れている部分から、甘い痺れが広がる。それは口の中だけではなく、頭の中にまで侵食してきた。その反応は下半身にまで及んでしまう。
「アレ? 感じてるの?」
透明な湯船には、全てが丸見えだった。反応し始めたオレの下半身を見て、熱っぽい視線を送ってくる。
「綾から誘ってくれるなんて嬉しいなぁ。ご褒美にいっぱい可愛がってあげるよ」
誘うって…さっきの指を噛んだことか!
イタズラ心が物の見事にアダになって返ってきた…。
呆然としている間に、薬指まで増やされた。
「あふぅ…んっ」
「しゃぶってよ、綾」
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