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8.○○は見た。
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キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン
授業開始の鐘の音を聞いた私は、クラスの皆と同じように次の授業の用意をしていた。
ガラッと音をさせて担任の佐々木先生が入ってくる。
次の授業は数学で担当は山形先生だった。担当講師ではない撫子の登場に皆首を傾げた。
「撫子ちゃん、ひげ爺休み~?」
クラス委員の西九条さんが問いかける。
【ひげ爺】はうちの数少ない男性講師で、一見70歳以上に見えるほど白いあごひげをしている。
本人は50代半ば、と言っていて、日欧のクォーターらしく遺伝で毛髪も白い。
「違います。また”ひげ爺”だなんて。山形先生はあれでも56歳ですよ。それより、長嶋さん、ちょっと…」
撫子ちゃんに呼ばれ廊下に出ると、
「園長室隣の談話室にお父様が見えられてるわ。行ってらっしゃい」
いつもの彼女らしくない沈鬱な表情に心をかき乱される。
談話室は時折来訪する父兄との歓談用に、学舎内に複数あり園長室隣の談話室は、豪華さが半端ない、と掃除を担当したことがある、曲直部(まがなべ)さんが、前に話してくれた。
「あの、母に何かありましたか?」
私を出産した折から体調を崩し、常日頃から床に伏せっている母。
父のつてを片っ端から当たり、高名な大病院の医師にも見てもらったが、病状は回復せず眠り続けている。
それならと、西条 実朝(さねとも)様が現代医学によらない神秘の力、京は西の橘家に回復魔法の使い手を派遣してもらえるよう、打診をしてくれた。
一般には知られていないことだが、この世界には【魔法】が存在する。
橘家は平安の治世、当時の天皇家ゆかりの死病に苦しむ姫君を魔術により回復せしめたことから、【橘】の姓をもらい受け以来、朝廷の医療全般にわたって貢献してきた、と言われている。
その【橘(たちばな)家】からは、術者不在の為派遣できず、との答申を受け取った。
橘のおばば様の姉君が回復のエキスパートで、はるか遠い日に里を飛び出し、音信不通のままの姉。
彼女の係累とは一切の親交が無い、という。
実朝様はその姉君についても探してくれたが、雲をつかむように情報は一切つかめなかった。
万策尽きた父と私は、毎日母の回復を神に祈ってきた。それ以外に方法が見いだせなかった。
その病状が悪化したのか?と不安に駆られ問いただす。
「お母さま?…いいえ、違うわ。詳しくはお父様に聞きなさい」
撫子ちゃんに伴われ、談話室に入るといつも仕事で忙しく、こんな時間に出歩かないはずの父が待っていた。
父の沈鬱な表情で私を見ると、何かを言いかけ、言いよどみ。
また言いかけ下を向き、ため息を吐き出した。
父の顔色と態度から良くない知らせだと分かる。
「お父様、どうなされました?」
「実はな……驚かずに聞いてくれ。雄一郎君の乗った飛行機がハイジャックされて」
「えっ!?雄一郎さんが乗られていた飛行機がハイジャック!!?」
「……それでな、麗奈。気をしっかり持つんだぞ…先ほど爆発炎上して、インド洋に墜落した」
「つい…ら…く…??!」
爆発…墜落…!?どういうこと?雄一郎さんはどうなったの?
私は父に縋り付いて泣きじゃくりながら、問いただした。
後に分かったことだけど、雄一郎さんが乗った飛行機は、【Amanda】を名乗る武装組織の自爆テロに巻き込まれ爆発炎上し墜落した。
乗っていた乗客と乗務員合わせて250名が帰らぬ人となった。
懸命な海上捜索にもかかわらず、雄一郎さんを含む学生100人余りは発見されなかった。
彼らの遺体の一部さえ見つからない。
爆発して墜落した機体の破片が粉みじんに漂う海面。報道番組では延々と同じ画像を流している。
『生存は限りなく絶望的だと…』、というアナウンス発表を信じざるを得なかった。
それが半年前の事。私は婚約者の雄一郎さんを失った。
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私が雄一郎さんに初めて会ったのは5歳の時。父に連れられて西条家の祝賀会に参加したとき。
雄一郎さんは西条家の長女 由真様が嫁がれた、田沼グループ次期会長 田沼 和久氏との間に長男として生まれた。
私より6歳年上だった。
私と同じ年の弟と3歳の妹がいて、西条の後継者と目されるほど優秀だった。
西条家は平安の世の京都で『西は橘(たちばな)、東は西条、北に山路(やまじ)、南に楠 正孝(くすのき まさたか)』と呼ばれた、京都守護職【国家守(くにやもり)】のうち、内政を担当してきた由緒正しい旧家の一つ。
代々優秀な官吏を天皇家補佐官として輩出し…現在にいたる。
当主の実朝(さねとも)様は御年65歳。
現政権下の与党幹部として敏腕を払い、国事に勤しんでいる。
その実朝様から是非にと、養子を望まれるほどの有望株なのが、雄一郎さんだった。
幼心に私は彼にときめきを覚え、ほわぁ~となっていた。
そんな雄一郎さんから話しかけてもらった私は、
「君、大丈夫?顔赤いけど…」
「だいじょうぶでし…好きです、けっこんしてくだちゃい!」
思わず告白してしまった。今考えると相当ませていたと思う。
戸惑う彼と大笑いする彼の父君、頭を抱える私の父。
感心している西条家当主様とお付きの犬神様を交えて、にぎやかな談話の後、とんとん拍子で私たちの婚約は進んだ。
私が【高等部】を卒業後に結婚をする。
それまでは婚約者として、毎週の日曜日には家族を交えてのデートにと、日々をはぐくんでいた。
雄一郎さんは私に大変優しく、美男子だったこともあるけど、私は彼の人柄や考え方がすごく気に入った。
旧家の多くの子女が通い、優秀な卒業生を輩出してきた【清涼女学院】に入学した私は、将来に向けての花嫁修業に精を出していた。
なのに、彼はいない。もう、この世にはいない。
私はふさぎ込み、自宅から出れなくなった。
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そんな、ある日。祖父の書斎からペンダントを見つけた。
不思議なきらめきを見せる、小指大の石をはめ込んだ精緻な彫刻を施されたペンダントトップ。
祖父に由来を聞くと不思議な話をしてくれた。
『これはな、ワシがピチピチの少年だった頃。橘のおばば様にいただいたものでな。おばば様はそれはもう高齢にもかかわらず、お綺麗な方じゃった。天女様がいるとすればあのような方だろうな…』
祖父の話はこの後も続いたが、要約するとほとんどが”橘のおばば様”に対する賛辞で占められ、それを聞いていた祖母に後でこっぴどく絞られたらしい。
で、これは何かについて。資格ある者、力あるものなら起動させられる道具らしい。
世界は7度書き換えられ、科学が発展し魔術と変わらないまでになった時につくられた、っていうんだけど。
世界が7回壊された、という時点でトンでも話過ぎて、正直祖父の頭の方が心配になった。
託された祖父は使えなかったが、”橘のおばば様”が言った、
『今は使えないでしょう。でも、将来あなたの家系に適格者が現れた時、与えてあげてください』
と、言われ。後生大事にしまっていたらしい。
眉唾物だった私は、この事を忘れ数日は同じ引きこもり生活を続けていた。
こんな私を見て、天国に行かれた雄一郎さんはどう思うだろう?
その思いが私に行動する勇気をくれた。
さすれば……身近なものから始めてみよう。
そういえば、お爺様から頂いたペンダント……使えるかな。
確か、お爺様はこう仰られていた。
「顕現(けんげん)せよ、世界の深淵を望むもの」
ペンダントトップを握る手から、何かが溢(あふ)れる感触を覚える。
目の前の空間がガラスのようにひび割れ、崩れた。
”空間が割れる”。この超常現象に私は言葉にできない驚きを感じていた。
割れた空間の中は暗く、すぐそばに浮かんでいるように鎮座した大きな筐体。
それから漏れる光が闇の中でほのかに穴の中を照らしていた。
ゲームセンターにある筐体を思わせる、コンソール席とそれを囲む各種計器類。
複数のモニターで埋め尽くされた天蓋。
恐る恐る私は未知の道具のコンソール席についた。
すると頭の中に流れてくるこの装置の使用方法。
空中に漂う”マナ”を用いて”視聴端子”を世界中に飛ばし、この場にいながら情報収集をすることができる、らしい。
”視聴端子”の大きさは親指と人差し指でつまめるほどで、無色透明な”ビー玉”のような形をしている。
周囲のマナを推進材に地表から最大500メートルの高さまで浮遊し、最高時速200キロで移動できる。
対象物の50メートル圏内に入ると”光学迷彩”がかかり、周囲の風景に溶け込む。
私は早速、彼の所在について調べた。もういない人、失われた大切な人。
結論から言うと、彼がいた痕跡は見つからなかった。
なのに、学生以外の遺体は収容されている、という点が私でもわかるくらい不自然だった。
なぜ、学生たちの遺体は一欠けらもないのか?
爆発四散した後、魚のえさとなりえた、と考えるべきだろうか?
でも、学生たちが着用していた学生服も見つからなかった、おかしな程欠片も。
これらは何を意味するのか。この”知るための道具”、唯一の欠点は現状を知ることはできても、過去に遡(さかのぼ)る機能を有していない、ということだと感じた。
この装置の限界なのだろう…しかし、現状の深海探査艇でも行けない深さを水圧をものともせず、探査でき世界中どこにでも”目”を飛ばして観察できる能力は破格と言っても言い過ぎではなかった。
現科学技術の数百年は先をいっているのは間違いない。
”橘のおばば様”の言葉、『世界は7度書き換えられている』、という言葉を受け入れるべき、なのかもしれない。
世界は7度滅んだ。8度目の世界に私たちはいて、かって栄えた文明の遺産がこの装置なのだ。
であれば、それを知り、この装置を保存できた”橘家”とは、いったい何なのだろう?
一抹の不安と疑問は残ったが、雄一郎さんがいない、のは確認できた。
やることが無くなった私は、取り敢えず装置を起動させ、あちらこちらに”視聴端子”を飛ばし世界各地の景色を眺めながら時間をつぶした。
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学園に復帰してからも色々あった。
婚約者死亡で引きこもりから復帰した私に対して、はれ物に触れるようによそよそしくなった友人たち。
ひとまずは、”そっとしておく”という方針なのか、私にことさら干渉しなくなった講師たち。
時間だけ流れる。その中で心の余裕を取り戻し始めた私は、装置の有効利用と機能検証の為、自分の周囲……学友及び学園関係者にそれぞれ”視聴端子”を振り分け、観察対象とした。
友人の”時雨”は『麗奈が覗き趣味に目覚めた…』なんて言っているけど、断じて違う。
そう、いつか、何かで必要になるかもしれないじゃない?だから常日頃から情報を集めるの。
図星を刺された私は狼狽(うろた)え気味に”時雨”に答えた。
観察対象者の中で厄介なのが、この”犬神 時雨”とい少女だ。
彼女に関しては西条家ゆかりの犬神家長女で、”犬神流忍術を極めている”という思い込みが半端ない、変わった少女………というのが私の幼いころからの認識だった。
西条家との親交の関係上、私は彼女の事を知っていた。
幼少のみぎりから本物忍者顔負けの行動力を見せていた。
道具を使わないで高さ20メールの庭木を命綱なしに登る。
10メートル以上の布を腰につけて走っても地面につけない。
西条さまの池の中に潜り、竹の筒で水中から呼吸して、1時間以上出てこない。
快挙を上げればキリがない。
もちろん、犬神のおじ様に確認してみたけど、彼女の家系に”犬神流忍術”なんてものを生み出したものもいなければ、継承者なんて人もいなかった。
西条 実朝様のお付きをしているのは、彼女の父の仕事がSPで政府要人の警護を真面目にこなす腕前を西城様に買われ、彼の代からお付きを始めている。
代々従者の家系、ということは無かった。
完全に彼女の創作で架空設定を思い込みで実行している、これが彼女のすごいところでダメな点だった。
とかく特異過ぎて彼女の思考についていけない子供たちは、彼女から距離を置いた。
同じ学園に通うよしみもあり、何かと多忙な犬神のおじ様より『娘の事を頼む』、と頼まれていた。
私の”視聴端子”は対象人物の各種パラメーター、個人魔力波長から追跡を行っている。
なのに、いつの間にか撒(ま)かれ、彼女自身の居場所をロストしてしまう。
西条家が秘密裏に日本上空に設置している、監視衛星を私の装置を使って無断でお借りした。
その衛星の力を使い、地上の彼女のいたであろう場所に熱源探査も行ったけど、こちらもロスト。
厄介極まりない存在だ。
普段”増田 加奈”という彼女曰く、仮の姿を演じている時は、かろうじて捕捉できている。
でも、ひとたび『私は背景』という言葉が彼女から発せられると、周りの風景に溶け込み彼女の存在を感知できなくなった。
最近は友人の砂霧のそばにいるおかげで、”時雨”を観測し続けていられる。
”時雨”は砂霧に対して、学園外の居もしない友人にされた相談事の話や顛末について、面白おかしく話している。
あー……友人関係に関しては私も言えない。学園復帰後、まともに話せているのは”時雨”だけの私。
時雨の話題のソースは私が調べ上げ、各署に匿名通報して解決した事案も混ぜられている。
いや、違うな。私だけが成しえた事ではなかった。
彼女は私のかけがえのない友達でもあり、同士でもあった。
私の”視聴端子”は録画・録音することはできる。
この録画録音も”まだ来ていない未来”の遺物である、この装置に現代のデバイスなどは付随していない。
その都度、私物のビデオカメラで記録しなければならない。
そして、実際…現場にいない私は物的証拠を押さえられない。
そんな時、時雨は彼女のいうところの犬神流忍術を駆使して、対象の敷地に侵入し証拠物を私に届けてくれた。
私は”思い込み”が激しいだけの友達に『危険な真似はやめろ』と、何度も言ったがやめてくれなかった。
『覗きは麗奈で追跡は私』なんてよく言ってくれる。
雄一郎さんを失ったことを少しでも忘れるために始めた事だけど、誰かの役に立っているのは地味にうれしかった。
時雨……じゃなかった、今は加奈ね。
加奈の話は佳境を迎えてはいる。でも、砂霧さんは上の空で聞いていない。いつものことだ。
基本、加奈の話は彼女が知りえた情報のコラージュで、知らないものは答えられない。
私が調べて、彼女の行動で確証と証拠をそろえ、私が匿名通報する…そんな流れを”加奈”という女の子が一人で行っている、という設定を演じきっている。
これを常日頃から行っている時雨は、将来女優になれば大成するだろう。
けど、彼女のアレは”天然”のものだから始末が悪い。
実生活の半分を別人格で過ごすなんて、将来が心配。
まぁ、かく言う私も雄一郎さん喪失から脱しきれず、クラスで友達とも話さず、寮に帰ってからはコンソール席で情報収集という名の気晴らし三昧。
時雨のことは言えない。
友人の話に上の空の砂霧と…”加奈”になりきり中の”時雨”。二人の前に、不可思議な青年が現れた。
見た目は何のことは無い、ごく普通の平凡な容姿の自分たちより1,2歳年上ぐらいに見える。
いつも見えない”時雨”のせいでその相貌から注目されがちな”砂霧”。
周囲の男性諸氏が彼女に向ける視線の意味は推して知るべしだ。
なのに、彼は”砂霧”に対して彼らと違う感情の元、視線を送っているように見えた。
そんな彼に興味が引かれ、”砂霧”に付けていた”視聴端子”で彼を調べてみた。
すると、各種パラメーターが、対象を【魔王】と特定した。
危険要注意クラス”S”と分類される、【魔王】
天蓋のモニター画面が全面、【警告!】【警告!】と赤い点滅表示で覆われ、耳がワンワンとなるほど警告音がコンソール席に響き渡る。
ここが、寮の自室のままなら、誰かが何事か?と駆けつけてくるだろう。
でも、私がコンソール席について、各種デバイスを起動し、”視聴端子”との接続を開始すると亜空間に隔離される仕組みになっているため、寮にいる他の人には気づかれない。
青年を中心に渦を巻き周囲の”マナ”が吸い込まれていく。
通常の人間の魔力許容量をはるかに超えた、人知外の存在【魔王】。
一般的な人の魔力値が1に対して、魔術素養者の平均値が100。大成した術者クラスが1000。
装置の適格者だった私は1500らしいので、【魔術師】クラスとなる。
【魔術師】の更に上、魔力値平均5000の【魔導師】をはるかに超える、人知の及ばない領域に踏み込んだ魔力値10000以上の存在が【魔王】
【魔王】とされた存在をこの目で見るのは実は2回目。
1回目はひと月ほど前……国連軍に協力し中東の武装勢力【Amanda】の掃討作戦時、情報収集の為、攻略目標となる街を”視聴端子”で探索中に黒髪黒目の少年の姿を捉えたのが最初。
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”視聴端子”が送信してくる映像は、距離を感じさせないクリアなもので、すぐそばで起こっている現実という風に感じられた。
装置の機能とその成果………雄一郎さんを含む行方知れずの学生の痕跡が一切発見できなかった。
この結果を私は犬神のおじ様を通じて西条 実朝様に報告してもらった。
あのテロ事件で死亡扱いになった学生の中には、実朝様の末娘 美里(みさと)様も含まれ、それ以外の学生にも旧財閥系資産家の子女が含まれていた。
過度の期待を含まらせるのは本意ではないが、私自身の胸の内で抑え込むには重い情報だったから。
そんな折、テロ実行の中核組織【Amanda】の拠点が発見され、拉致学生と住民救出の為派遣された、国連軍の後方支援の形で日本も参加することになった。
その作戦に実朝様は私に装置を使って参加するよう要請された。
大恩ある実朝様の願いにこたえたい一方で、これは彼なりの敵討(かたきう)ちなのだ、と思った。
だから、私は積極的に参加した。
国連側には日本の最新式の探査装置による情報収集という説明がされ、国連側の技術担当者を大いに驚かせたらしい。
詳細な町の内部の状況と拉致学生や町の住人の現在の状況、それらがリアルタイムで作戦室のモニターにごく近距離の画像と音声でもって、映し出されていたから。
中には女学生たちが奴隷として、組織員間で売買され、性の道具として使われていたり、町の住人が見せしめの為に町の中央広場で斬首される情景など、ショッキングすぎて目をそむけたくなる画像も含まれていた。
そして、作戦も煮詰まり機運を高めに高めた国連軍が、作戦を実行に移そうとしたとき、その少年が突如中央広場の処刑場に姿を現した。
啞然とする人々。次の斬首に取り掛かろうとしていた戦闘員も、武器を持ち上げた姿勢で固まっていた。
いつの間に手にしていたのか、右手に抜身の日本刀らしき武器を手にしていた。
片刃の武器を無造作に少年が降りぬいたとき、一瞬遅れて戦闘員の首がずれ落ちた。
そこから、少年の殲滅戦が始まった。
すぐさま私は実朝様を通じて、国連軍に作戦延期を申し入れ、事の終了までの静観を願い出た。
当初、国連軍は難色を示したが、私がlive映像で流す惨劇を見て静観することを了承した。
その映像の中で少年が一方的に戦闘員を刈り取り、血痕のシミを広げていく。
不思議と死体は見られず、血しぶきが舞った後には血痕だけ残され、攻撃に用いられた重機関銃やライフル、小型小銃なども見当たらない。
だから国連軍兵士の誰もが、映像を注視していられた。
戦場慣れしているといっても彼らの武器は主に銃で、近接戦闘で敵がなます切りされていく光景、なんてものはなかなか見ない。
爆破等で肉体損壊した死体は見たことがあるだろうけど、それすら死後の遺体であり生きている人間が切り殺される映像を見る機会は少ないだろう。
そのうち、”視聴端子”の一つが彼らの成れの果ての処遇を映し出した。
切られ絶命しただろう戦闘員たちは、血しぶきをあげながら倒れこみ、地面につくかつかないかの間に次々と消滅していた。
少年は淡々と戦闘員を片づけていく。
戦闘音が収まり周囲が静かになると、少年は手を”空間に突き入れた”と表現するしかない情景が移されている。
彼が突き入れた手の先は消え、何かを探すようにひじから先が消えた腕が動く。
やがて、突き入れていた手が抜かれ彼の手にはランタンが掲げられていた。
彼はランタンの開口部を開けた。中にはこの世のものとは思えない蒼い炎が燈(とも)っていた。
何のために掲げているのか、作戦室の兵士たちには皆目見当もつかなかった。
私の”視聴端子”が送ってくる情報は驚きの結果だった。
彼が先ほど使ったのは【空間魔法】で戦闘中に使用していたのは【土系魔法】
そしてあのランタンは【魔法道具】で、ランタンの開口部に向かって数百の”魂”が吸い込まれている、らしい。
ことを終えた少年はランタンを【空間魔法】を使って仕舞うと、周囲を見回し何かに気付いたそぶりを見せた。
そして、何かの印を切るように手を動したかと思うと、モニター画面から映像が途絶えた。
私の”視聴端子”が全て破壊されたようだ。使われた魔法は判別できなかった。
作戦司令部は私からの情報提供が途絶えたことを知ると、至急現地に調査部隊を派遣した。
現地での調査は【Amanda】側からの抵抗が全くない状況で行われた。
拉致学生や残存する住人の救助が速やかに行われた。
町の各地に残る戦闘痕、複数人分の血だまり…それらは散見されたが戦闘員の死体、武器弾薬や戦闘車両などの武器類、【Amanda】が隠し持っていただろう資金に至るまで、いまだ発見されていない。
これらについて知っているだろう件の少年について、国連は引き続き調査中らしい。
私の装置は彼によって破壊され、貴重なデータまで抹消されたが為に使用不能になった、と西条さまは国連側に説明した。
有耶無耶にはできないだろうが、未だ国連側からの問い合わせは無い。
でも、私の心はかき乱され、それどころじゃなかった。
件の少年があまりにも………行方知れずになった、”田沼 雄一郎”に似すぎていたからだ。
映像を凝視していた実朝様は急ぎ、現地に犬神のおじ様をリーダーとした調査班を派遣した。
私もわが目を疑った。確かに瓜二つだった。
でも差異も感じた。
あんなに優しく私を映した瞳は、ケンある鋭いまなざしで殺人の愉悦を浮かべる残忍な濁(にご)った瞳に。
左利きだった彼が右手で刀を扱っていた事。何より人間離れした動き。
行方不明だった間の彼に何があれば、このようになるのか?
それに魔力値が【魔王】をさしている。
彼に元から魔術師としての素養があったのだろうか?
私は彼の事をそこまで知らかったことに気付いた。
本当に彼は雄一郎さんなのだろうか?
私の問いかけにノイズが走っているモニターは答えてくれなかった。
”ネットうよチャンネル”に動画サイトのリンクを貼ったのだって、彼からのなにがしかのアプローチを期待してのモノだったが、返事は帰ってきていない。
視聴者が別掲示板や自サイトにリンク先を次々と貼り、広告収入が数億に膨れ上がっていたけど、雄一郎さんが絡まなければ私には無用な収入でしかなかった。
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回想から戻った私はモニターに映る彼らを見ていた。
彼に対して警戒する”加奈”。彼に対して関心を向け歩み寄ろうとする砂霧。
彼に集まるマナが一瞬はじけると、砂霧がその場から消失していた。
使われたのは【時空魔法】…私はすぐさま彼女の所在を装置で追った。
彼女がいる空間は高さ3メートル、広さが三畳程のレンガ壁で囲まれた空間。
空間座標は表示できず、MAP検索もできなかった。
そして時を置かず”視聴端子”の送信が途絶えた。
破壊されたのではなく装置が示すのは、”時間停止”による機能停止だった。
”砂霧”消失に動揺したのか、”加奈”は姿を現し彼に接近され”普通の少女”の対応をしていた。
砂霧を探す二人。別空間に囚われている少女は見つかるはずなく、公園で休憩する二人。
”砂霧”を探すときは曇っていた彼女の表情が、いつの間にか”恋をし始めた少女”の顔になっていた。
会話の内容から護身術の披露を頼まれた彼女が彼の前で舞う。
いつしか彼も参加し舞踏会のごとく、息の合った二人の乱舞。
あっ、今”加奈”は彼の目を警棒で突き刺そうとしたみたい。
けど、彼は余裕を持ってかわし彼女の動作をそのままコピーした動きで彼女の目を突く、のではなく優しく額に掌(てのひら)を当てた。
瞳に剣呑な光を宿した彼女は、彼に対して容赦のない攻撃を繰り出していく。
もう、護身術の領域を超え、実戦さながらの様相になった。
次第に激しさを増すダンス。
私の目は当然追いきれず、装置で録画した動画を後でスロー再生で見ることになりそうだ。
先に体力が尽きたのは”加奈”…いや、今は”時雨”に戻っている。
長い黒髪を高く結い上げ、はち切れんばかりの胸と均整の取れた彼女の肢体。
それらが彼の腕の中にあり、”時雨”に浮かぶ表情は熱に浮かされていた。
あー、これはあれだ。いつも”時雨”は言っていた。
『私が真に仕えるべき”主(あるじ)”は私が見つける』
が、今なんだ………
二人は見つめ合い、”時雨”は彼に抗うこと無く接吻を受け入れた。
口づけ、なんて生易しいものではなかった彼らの逢瀬は、撫子(なでしこ)の乱入で幕を閉じる。
”加奈”に戻り自分たちの不実を説明するが、決定的証拠を見られているので到底聞き入れてもらえない。
実は彼女付随の”視聴端子”の接近が、分かっていた私は”撫子”が二人の逢瀬をうらやましそうに眺め、教師の本分を思い出し二人に駆け出すまでの一部始終を別モニターで捉えていた。
普通なら親族に連絡の後にややこしい事態になるはずだが、彼が撫子に向き直り謝罪を始めると、不自然なぐらい撫子は二人の非を黙認し、同行する旨を伝えた。
ここでも感知されたのが【魅了魔法】
”加奈”にも使っていたのだけど、”時雨”は抵抗していたので、”普通の少女の加奈が魅了されている”という設定を演じていたみたいだけど、撫子は完全に効果が表れていた。
普通、見ず知らずの今さっき遭遇したばかりの若い男に、親密なものにしか浮かべない表情を浮かべ、”恋人になった演技をする”生徒の前で、臆面も羞恥も無く”イチャイチャ”できるだろうか?
まず、できるとしたら撫子の常識を疑う。
撫子は見た目のたおやかさに比べて、教師としての自分に誇りを持ち毅然と私たちを指導してきた。
彼女も私たち同様、【清涼女学園】に通い男性の少ない世界で”蝶よ花よ”と育てられた、生粋のお嬢様だ。
そんな彼女が自ら彼と腕を組み、彼の肩にしなだれかかる……到底尋常じゃない事態だと言える。
そんな二人の姿に嫉妬の炎を灯したような視線で、撫子に何か言いたそうな”加奈”
こじれた三角関係の様相が画面越しに見え、私はドラマ視聴者のように魅入られていた。
三人は近所で有名な洋菓子店【セレスディア】に入った。
どうしてか、この洋菓子店を含め日本各地には私の”視聴端子”が入れない場所は存在する。
装置からは【MAPが存在しません】と表示され、侵入不可領域になっている。
十数分後店を出てきた三人は、女子寮へと向かい玄関ホールで彼が、寮に珍しく訪れた男性を見ようと出迎えた寮生たちに、ケーキが入っているだろう箱を数個手渡していた。
”加奈”を演じている”時雨”と恋人との逢瀬に悲しみの表情を浮かべる撫子を除いた、寮生たちは普段食べられないケーキ【セレスディアSP】に喜色を浮かべ、男子禁制である女子寮の中へと彼を誘おうとしていた。
普通なら寮生たちもこんな反応はせず、撫子もまた許可しなかっただろう。
でも、誰も不自然に思わないのか、彼が女子の聖域に入るのを拒まなかった。
恐るべきは【魅了魔法】の効果。ここまで人を狂わす悪しき魔法。
ひとたび亜空間を出て彼の元に姿を現せば、私も囚われかねず容易には出ていけなかった。
だが、不思議なことに彼は彼女たちの誘いを固辞し、寮を後にした。
残された寮生たちと撫子は名残惜し気に彼の姿が、通りの角で見えなくなるまで見送っていたが、彼のもたらしたケーキを皆で食すことにしたようだ。
私は急ぎ、予備の”視聴端子”で彼を捕捉しようとしたが、【転移魔法】を使われロストしてしまった。
寮生たちの【お茶会】に参加せずに自室に戻った”加奈”は、いつもの儀式を行い”時雨”に戻った。
姿見に向かいブツブツ呟(つぶや)いたのち、彼女は身の回りの着替えやその他を数個のカバンに仕舞うと自室を後にした。
彼女は『…主様、今はせ参じます』と呟いていたので、【魔王】の彼を追いかけていったのだろう。
さて、私はどうすればいい?
”見て知る”ことしかできない私がとるべき行動は……
考えがまとまらず、”主”を見出(みいだ)して興奮していたのか、珍しく姿を消さないで行動する”時雨”を装置で自動追尾させて、私は思案に暮れてしまった。
いつのまにか寝てしまったのだろう。
適温で保たれている席で夜を明かしてしまった私。
貴重なケーキを食べる機会を逃してしまったことに気付いたが。もう登校しないといけない時間だ。
時間が時間なので登校の準備をして、【高等部】の教室に向かった。
今日の通学路は心なしか、普段より学生の姿が少ないように感じる。
この時間にいつも通学している先輩の姿も見えず、同じ寮生たちの姿も見えない。
私は少しの不安に駆られながら、学園への道を急ぎ教室に入った。
教室には数名の生徒がいた。
自宅通学の一般組が大半であったが、【鳶鷹(とんびたか)姉妹】の姿は見えない。
「あっ、麗奈さん、おはよう…で、他の皆は?」
私に対する朝の挨拶もおざなりに、聞いてくるクラス委員長の西九条さん。
彼女の自宅マンションは駅の近くの”ロイヤルパレス”という名の建物で、内装は立派でセキュリティー対策も万全な”陸のアルカトラズ”とまで言われている、頑強な砦……もとい、高級億ションだった。
自宅通学組の中で外国産の防弾ガラスで守られた、高級車で送り迎えされている彼女は十分お嬢様だ。
なのに、その喋り口調は一般家庭組の学生と変わらず、彼女の気さくな性格に友人も多い。
彼女の『他の皆…』とは、私と”時雨”以外の学生を指すのだろう。
普段から見えない”時雨”は一部の学生を除き、”自主休学中”と考えている生徒が大半なので、ここに含まれない。
そう言えば……今頃、”時雨”は彼の元に辿り着けただのだろうか?
【転移魔法】の発動は装置で感知はできるが、転移後の場所に”視聴端子”が無い状況ではどこに彼が飛んだ、のかは分からない。
でも、自称”犬神流忍術”継承者の”時雨”なら、もしかして……という期待を持っていた。
何にしても、彼は危険極まりない【魔王】だ。”砂霧”以外の被害者がいないとも……!?
そこまで考えて思い出す。寮生たちが彼の【魅了魔法】の虜にされていたことを。
撫子先生はメロメロだった。
「もしかして、まだ登校していないの?」
私は一縷の希望をもって西九条さんに聞いたが、応えは決まっていた。
「そうなのよ。他のクラスも同じで先輩方も何故か寮生の皆さんで……」
やはり、そうなのか?彼が何かしたのか…”砂霧”と同じように別空間に囚われているのか?
私はいてもたってもいられず、装置で皆の居場所を探すために教室を出ようと扉に向かいかけると、数学講師の山形先生が教室に入ってきた。
「おう、お前たちだけか?…まいったなぁ。他のクラスも同じように登校する生徒が少ないみたいだ。それにこのクラスの担任の佐々木先生も職員会議に欠席されていたし、寮で何かあったのか?」
山形先生は寮生で唯一登校していた私に聞いていたのだろうけど、私は正直に話せなかった。
彼女たちは今もあの”彼”にどこかに囚われ、私の発言次第でどうにかなる可能性が捨てきれなかった。
私は無言で首を横に振るしかなく、山形先生は私たちに一限目を自習しているよう伝えると教室を後にした。
不安を浮かべる西九条さんをはじめとするクラスメイトを放っておくこともできず、自習を終えた。
2時限目初めに校内放送がされ、不安がる皆を連れ講堂に場所を移した。
学年とクラス別に整列した生徒たちが見守る、前方の演壇上で園長をはじめ講師たちは、不可解な生徒たちの不登校に頭を悩ましていた。
しかし、講堂に駆け込んできた用務員さんが園長先生に何かを告げると、納得するように何度も頷き、他の講師の先生と協議し教頭先生が生徒達へと話し出した。
「皆さん、突然の事態に不安に思っている方は多いでしょう。私たち学園関係者も困惑しています。しかし、先ほど登校してきていない生徒の保護者の方々より連絡がありました」
登校してきていない、【高等部】の寮生たち。
彼女たちの親達からもたらされたのは、いずれも”家の事情で無期限休学”する、というものだった。
これには講師問わず生徒達も疑問の声を上げた。同時期に寮生たちが突然、無期限休学するなんて事態は信じられず、何かの事件性を疑う者もいた。
しかし、この場では学園側は何とも言えずクラス再編と授業内容の変更を生徒達に言い渡し、3時限目から授業を行うことになった。
学外の普通高校と違い少数教育をモットーにクラス編成されていた、私たちの学年のクラスは一クラス20名の四クラス。
能力者と一般人の混合率はクラス様々だったが、次年の2年生からは明確に能力ごとにクラス分けされて、制御力を培っていく工程に入る。
クラス編成と言っても半数に減った私たちの学年は、クラス合同教科で使用される60人が入れる教室で、残りの生徒が同じ教科を受けることになった。
普段顔を合わせない顔ぶれと顔見知りがいない不安から、生徒達の口は重かったが昼食時間を過ぎ、午後の授業に入るころには打ち解けあっていたように見える。
私はそれらの中に入れずにいたが、委員長の西九条さんに連れられ友誼(ゆうぎ)を交わした。
他のクラスだった一般家庭通学組の生徒も話してみれば、育ちの関係なく付き合えるいい人ばかりだった。
全ての授業を終え、皆のいなくなった寮に帰るのは気が重かったが、私だけが彼女たちを救うことができるかもしれない、という強がりを胸に寮の自室に入ると……
にこやかな笑顔を浮かべ、無表情にたたずむ”時雨”を伴った”彼”が待っていた。
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本作品はフィクションであり、現代の世界情勢その他団体、個人は優に及ばす一切と無関係です。
普通の学校は校長先生が一番上の管理職なのだろうけど、学園だと学園長になるんでしょうか。
短縮して【園長】としてみると、保育園や幼稚園の園長を思い浮かべます。
”他人から見た彼”のターンはここまでで、次回は彼視線に戻ります。
授業開始の鐘の音を聞いた私は、クラスの皆と同じように次の授業の用意をしていた。
ガラッと音をさせて担任の佐々木先生が入ってくる。
次の授業は数学で担当は山形先生だった。担当講師ではない撫子の登場に皆首を傾げた。
「撫子ちゃん、ひげ爺休み~?」
クラス委員の西九条さんが問いかける。
【ひげ爺】はうちの数少ない男性講師で、一見70歳以上に見えるほど白いあごひげをしている。
本人は50代半ば、と言っていて、日欧のクォーターらしく遺伝で毛髪も白い。
「違います。また”ひげ爺”だなんて。山形先生はあれでも56歳ですよ。それより、長嶋さん、ちょっと…」
撫子ちゃんに呼ばれ廊下に出ると、
「園長室隣の談話室にお父様が見えられてるわ。行ってらっしゃい」
いつもの彼女らしくない沈鬱な表情に心をかき乱される。
談話室は時折来訪する父兄との歓談用に、学舎内に複数あり園長室隣の談話室は、豪華さが半端ない、と掃除を担当したことがある、曲直部(まがなべ)さんが、前に話してくれた。
「あの、母に何かありましたか?」
私を出産した折から体調を崩し、常日頃から床に伏せっている母。
父のつてを片っ端から当たり、高名な大病院の医師にも見てもらったが、病状は回復せず眠り続けている。
それならと、西条 実朝(さねとも)様が現代医学によらない神秘の力、京は西の橘家に回復魔法の使い手を派遣してもらえるよう、打診をしてくれた。
一般には知られていないことだが、この世界には【魔法】が存在する。
橘家は平安の治世、当時の天皇家ゆかりの死病に苦しむ姫君を魔術により回復せしめたことから、【橘】の姓をもらい受け以来、朝廷の医療全般にわたって貢献してきた、と言われている。
その【橘(たちばな)家】からは、術者不在の為派遣できず、との答申を受け取った。
橘のおばば様の姉君が回復のエキスパートで、はるか遠い日に里を飛び出し、音信不通のままの姉。
彼女の係累とは一切の親交が無い、という。
実朝様はその姉君についても探してくれたが、雲をつかむように情報は一切つかめなかった。
万策尽きた父と私は、毎日母の回復を神に祈ってきた。それ以外に方法が見いだせなかった。
その病状が悪化したのか?と不安に駆られ問いただす。
「お母さま?…いいえ、違うわ。詳しくはお父様に聞きなさい」
撫子ちゃんに伴われ、談話室に入るといつも仕事で忙しく、こんな時間に出歩かないはずの父が待っていた。
父の沈鬱な表情で私を見ると、何かを言いかけ、言いよどみ。
また言いかけ下を向き、ため息を吐き出した。
父の顔色と態度から良くない知らせだと分かる。
「お父様、どうなされました?」
「実はな……驚かずに聞いてくれ。雄一郎君の乗った飛行機がハイジャックされて」
「えっ!?雄一郎さんが乗られていた飛行機がハイジャック!!?」
「……それでな、麗奈。気をしっかり持つんだぞ…先ほど爆発炎上して、インド洋に墜落した」
「つい…ら…く…??!」
爆発…墜落…!?どういうこと?雄一郎さんはどうなったの?
私は父に縋り付いて泣きじゃくりながら、問いただした。
後に分かったことだけど、雄一郎さんが乗った飛行機は、【Amanda】を名乗る武装組織の自爆テロに巻き込まれ爆発炎上し墜落した。
乗っていた乗客と乗務員合わせて250名が帰らぬ人となった。
懸命な海上捜索にもかかわらず、雄一郎さんを含む学生100人余りは発見されなかった。
彼らの遺体の一部さえ見つからない。
爆発して墜落した機体の破片が粉みじんに漂う海面。報道番組では延々と同じ画像を流している。
『生存は限りなく絶望的だと…』、というアナウンス発表を信じざるを得なかった。
それが半年前の事。私は婚約者の雄一郎さんを失った。
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私が雄一郎さんに初めて会ったのは5歳の時。父に連れられて西条家の祝賀会に参加したとき。
雄一郎さんは西条家の長女 由真様が嫁がれた、田沼グループ次期会長 田沼 和久氏との間に長男として生まれた。
私より6歳年上だった。
私と同じ年の弟と3歳の妹がいて、西条の後継者と目されるほど優秀だった。
西条家は平安の世の京都で『西は橘(たちばな)、東は西条、北に山路(やまじ)、南に楠 正孝(くすのき まさたか)』と呼ばれた、京都守護職【国家守(くにやもり)】のうち、内政を担当してきた由緒正しい旧家の一つ。
代々優秀な官吏を天皇家補佐官として輩出し…現在にいたる。
当主の実朝(さねとも)様は御年65歳。
現政権下の与党幹部として敏腕を払い、国事に勤しんでいる。
その実朝様から是非にと、養子を望まれるほどの有望株なのが、雄一郎さんだった。
幼心に私は彼にときめきを覚え、ほわぁ~となっていた。
そんな雄一郎さんから話しかけてもらった私は、
「君、大丈夫?顔赤いけど…」
「だいじょうぶでし…好きです、けっこんしてくだちゃい!」
思わず告白してしまった。今考えると相当ませていたと思う。
戸惑う彼と大笑いする彼の父君、頭を抱える私の父。
感心している西条家当主様とお付きの犬神様を交えて、にぎやかな談話の後、とんとん拍子で私たちの婚約は進んだ。
私が【高等部】を卒業後に結婚をする。
それまでは婚約者として、毎週の日曜日には家族を交えてのデートにと、日々をはぐくんでいた。
雄一郎さんは私に大変優しく、美男子だったこともあるけど、私は彼の人柄や考え方がすごく気に入った。
旧家の多くの子女が通い、優秀な卒業生を輩出してきた【清涼女学院】に入学した私は、将来に向けての花嫁修業に精を出していた。
なのに、彼はいない。もう、この世にはいない。
私はふさぎ込み、自宅から出れなくなった。
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そんな、ある日。祖父の書斎からペンダントを見つけた。
不思議なきらめきを見せる、小指大の石をはめ込んだ精緻な彫刻を施されたペンダントトップ。
祖父に由来を聞くと不思議な話をしてくれた。
『これはな、ワシがピチピチの少年だった頃。橘のおばば様にいただいたものでな。おばば様はそれはもう高齢にもかかわらず、お綺麗な方じゃった。天女様がいるとすればあのような方だろうな…』
祖父の話はこの後も続いたが、要約するとほとんどが”橘のおばば様”に対する賛辞で占められ、それを聞いていた祖母に後でこっぴどく絞られたらしい。
で、これは何かについて。資格ある者、力あるものなら起動させられる道具らしい。
世界は7度書き換えられ、科学が発展し魔術と変わらないまでになった時につくられた、っていうんだけど。
世界が7回壊された、という時点でトンでも話過ぎて、正直祖父の頭の方が心配になった。
託された祖父は使えなかったが、”橘のおばば様”が言った、
『今は使えないでしょう。でも、将来あなたの家系に適格者が現れた時、与えてあげてください』
と、言われ。後生大事にしまっていたらしい。
眉唾物だった私は、この事を忘れ数日は同じ引きこもり生活を続けていた。
こんな私を見て、天国に行かれた雄一郎さんはどう思うだろう?
その思いが私に行動する勇気をくれた。
さすれば……身近なものから始めてみよう。
そういえば、お爺様から頂いたペンダント……使えるかな。
確か、お爺様はこう仰られていた。
「顕現(けんげん)せよ、世界の深淵を望むもの」
ペンダントトップを握る手から、何かが溢(あふ)れる感触を覚える。
目の前の空間がガラスのようにひび割れ、崩れた。
”空間が割れる”。この超常現象に私は言葉にできない驚きを感じていた。
割れた空間の中は暗く、すぐそばに浮かんでいるように鎮座した大きな筐体。
それから漏れる光が闇の中でほのかに穴の中を照らしていた。
ゲームセンターにある筐体を思わせる、コンソール席とそれを囲む各種計器類。
複数のモニターで埋め尽くされた天蓋。
恐る恐る私は未知の道具のコンソール席についた。
すると頭の中に流れてくるこの装置の使用方法。
空中に漂う”マナ”を用いて”視聴端子”を世界中に飛ばし、この場にいながら情報収集をすることができる、らしい。
”視聴端子”の大きさは親指と人差し指でつまめるほどで、無色透明な”ビー玉”のような形をしている。
周囲のマナを推進材に地表から最大500メートルの高さまで浮遊し、最高時速200キロで移動できる。
対象物の50メートル圏内に入ると”光学迷彩”がかかり、周囲の風景に溶け込む。
私は早速、彼の所在について調べた。もういない人、失われた大切な人。
結論から言うと、彼がいた痕跡は見つからなかった。
なのに、学生以外の遺体は収容されている、という点が私でもわかるくらい不自然だった。
なぜ、学生たちの遺体は一欠けらもないのか?
爆発四散した後、魚のえさとなりえた、と考えるべきだろうか?
でも、学生たちが着用していた学生服も見つからなかった、おかしな程欠片も。
これらは何を意味するのか。この”知るための道具”、唯一の欠点は現状を知ることはできても、過去に遡(さかのぼ)る機能を有していない、ということだと感じた。
この装置の限界なのだろう…しかし、現状の深海探査艇でも行けない深さを水圧をものともせず、探査でき世界中どこにでも”目”を飛ばして観察できる能力は破格と言っても言い過ぎではなかった。
現科学技術の数百年は先をいっているのは間違いない。
”橘のおばば様”の言葉、『世界は7度書き換えられている』、という言葉を受け入れるべき、なのかもしれない。
世界は7度滅んだ。8度目の世界に私たちはいて、かって栄えた文明の遺産がこの装置なのだ。
であれば、それを知り、この装置を保存できた”橘家”とは、いったい何なのだろう?
一抹の不安と疑問は残ったが、雄一郎さんがいない、のは確認できた。
やることが無くなった私は、取り敢えず装置を起動させ、あちらこちらに”視聴端子”を飛ばし世界各地の景色を眺めながら時間をつぶした。
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学園に復帰してからも色々あった。
婚約者死亡で引きこもりから復帰した私に対して、はれ物に触れるようによそよそしくなった友人たち。
ひとまずは、”そっとしておく”という方針なのか、私にことさら干渉しなくなった講師たち。
時間だけ流れる。その中で心の余裕を取り戻し始めた私は、装置の有効利用と機能検証の為、自分の周囲……学友及び学園関係者にそれぞれ”視聴端子”を振り分け、観察対象とした。
友人の”時雨”は『麗奈が覗き趣味に目覚めた…』なんて言っているけど、断じて違う。
そう、いつか、何かで必要になるかもしれないじゃない?だから常日頃から情報を集めるの。
図星を刺された私は狼狽(うろた)え気味に”時雨”に答えた。
観察対象者の中で厄介なのが、この”犬神 時雨”とい少女だ。
彼女に関しては西条家ゆかりの犬神家長女で、”犬神流忍術を極めている”という思い込みが半端ない、変わった少女………というのが私の幼いころからの認識だった。
西条家との親交の関係上、私は彼女の事を知っていた。
幼少のみぎりから本物忍者顔負けの行動力を見せていた。
道具を使わないで高さ20メールの庭木を命綱なしに登る。
10メートル以上の布を腰につけて走っても地面につけない。
西条さまの池の中に潜り、竹の筒で水中から呼吸して、1時間以上出てこない。
快挙を上げればキリがない。
もちろん、犬神のおじ様に確認してみたけど、彼女の家系に”犬神流忍術”なんてものを生み出したものもいなければ、継承者なんて人もいなかった。
西条 実朝様のお付きをしているのは、彼女の父の仕事がSPで政府要人の警護を真面目にこなす腕前を西城様に買われ、彼の代からお付きを始めている。
代々従者の家系、ということは無かった。
完全に彼女の創作で架空設定を思い込みで実行している、これが彼女のすごいところでダメな点だった。
とかく特異過ぎて彼女の思考についていけない子供たちは、彼女から距離を置いた。
同じ学園に通うよしみもあり、何かと多忙な犬神のおじ様より『娘の事を頼む』、と頼まれていた。
私の”視聴端子”は対象人物の各種パラメーター、個人魔力波長から追跡を行っている。
なのに、いつの間にか撒(ま)かれ、彼女自身の居場所をロストしてしまう。
西条家が秘密裏に日本上空に設置している、監視衛星を私の装置を使って無断でお借りした。
その衛星の力を使い、地上の彼女のいたであろう場所に熱源探査も行ったけど、こちらもロスト。
厄介極まりない存在だ。
普段”増田 加奈”という彼女曰く、仮の姿を演じている時は、かろうじて捕捉できている。
でも、ひとたび『私は背景』という言葉が彼女から発せられると、周りの風景に溶け込み彼女の存在を感知できなくなった。
最近は友人の砂霧のそばにいるおかげで、”時雨”を観測し続けていられる。
”時雨”は砂霧に対して、学園外の居もしない友人にされた相談事の話や顛末について、面白おかしく話している。
あー……友人関係に関しては私も言えない。学園復帰後、まともに話せているのは”時雨”だけの私。
時雨の話題のソースは私が調べ上げ、各署に匿名通報して解決した事案も混ぜられている。
いや、違うな。私だけが成しえた事ではなかった。
彼女は私のかけがえのない友達でもあり、同士でもあった。
私の”視聴端子”は録画・録音することはできる。
この録画録音も”まだ来ていない未来”の遺物である、この装置に現代のデバイスなどは付随していない。
その都度、私物のビデオカメラで記録しなければならない。
そして、実際…現場にいない私は物的証拠を押さえられない。
そんな時、時雨は彼女のいうところの犬神流忍術を駆使して、対象の敷地に侵入し証拠物を私に届けてくれた。
私は”思い込み”が激しいだけの友達に『危険な真似はやめろ』と、何度も言ったがやめてくれなかった。
『覗きは麗奈で追跡は私』なんてよく言ってくれる。
雄一郎さんを失ったことを少しでも忘れるために始めた事だけど、誰かの役に立っているのは地味にうれしかった。
時雨……じゃなかった、今は加奈ね。
加奈の話は佳境を迎えてはいる。でも、砂霧さんは上の空で聞いていない。いつものことだ。
基本、加奈の話は彼女が知りえた情報のコラージュで、知らないものは答えられない。
私が調べて、彼女の行動で確証と証拠をそろえ、私が匿名通報する…そんな流れを”加奈”という女の子が一人で行っている、という設定を演じきっている。
これを常日頃から行っている時雨は、将来女優になれば大成するだろう。
けど、彼女のアレは”天然”のものだから始末が悪い。
実生活の半分を別人格で過ごすなんて、将来が心配。
まぁ、かく言う私も雄一郎さん喪失から脱しきれず、クラスで友達とも話さず、寮に帰ってからはコンソール席で情報収集という名の気晴らし三昧。
時雨のことは言えない。
友人の話に上の空の砂霧と…”加奈”になりきり中の”時雨”。二人の前に、不可思議な青年が現れた。
見た目は何のことは無い、ごく普通の平凡な容姿の自分たちより1,2歳年上ぐらいに見える。
いつも見えない”時雨”のせいでその相貌から注目されがちな”砂霧”。
周囲の男性諸氏が彼女に向ける視線の意味は推して知るべしだ。
なのに、彼は”砂霧”に対して彼らと違う感情の元、視線を送っているように見えた。
そんな彼に興味が引かれ、”砂霧”に付けていた”視聴端子”で彼を調べてみた。
すると、各種パラメーターが、対象を【魔王】と特定した。
危険要注意クラス”S”と分類される、【魔王】
天蓋のモニター画面が全面、【警告!】【警告!】と赤い点滅表示で覆われ、耳がワンワンとなるほど警告音がコンソール席に響き渡る。
ここが、寮の自室のままなら、誰かが何事か?と駆けつけてくるだろう。
でも、私がコンソール席について、各種デバイスを起動し、”視聴端子”との接続を開始すると亜空間に隔離される仕組みになっているため、寮にいる他の人には気づかれない。
青年を中心に渦を巻き周囲の”マナ”が吸い込まれていく。
通常の人間の魔力許容量をはるかに超えた、人知外の存在【魔王】。
一般的な人の魔力値が1に対して、魔術素養者の平均値が100。大成した術者クラスが1000。
装置の適格者だった私は1500らしいので、【魔術師】クラスとなる。
【魔術師】の更に上、魔力値平均5000の【魔導師】をはるかに超える、人知の及ばない領域に踏み込んだ魔力値10000以上の存在が【魔王】
【魔王】とされた存在をこの目で見るのは実は2回目。
1回目はひと月ほど前……国連軍に協力し中東の武装勢力【Amanda】の掃討作戦時、情報収集の為、攻略目標となる街を”視聴端子”で探索中に黒髪黒目の少年の姿を捉えたのが最初。
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”視聴端子”が送信してくる映像は、距離を感じさせないクリアなもので、すぐそばで起こっている現実という風に感じられた。
装置の機能とその成果………雄一郎さんを含む行方知れずの学生の痕跡が一切発見できなかった。
この結果を私は犬神のおじ様を通じて西条 実朝様に報告してもらった。
あのテロ事件で死亡扱いになった学生の中には、実朝様の末娘 美里(みさと)様も含まれ、それ以外の学生にも旧財閥系資産家の子女が含まれていた。
過度の期待を含まらせるのは本意ではないが、私自身の胸の内で抑え込むには重い情報だったから。
そんな折、テロ実行の中核組織【Amanda】の拠点が発見され、拉致学生と住民救出の為派遣された、国連軍の後方支援の形で日本も参加することになった。
その作戦に実朝様は私に装置を使って参加するよう要請された。
大恩ある実朝様の願いにこたえたい一方で、これは彼なりの敵討(かたきう)ちなのだ、と思った。
だから、私は積極的に参加した。
国連側には日本の最新式の探査装置による情報収集という説明がされ、国連側の技術担当者を大いに驚かせたらしい。
詳細な町の内部の状況と拉致学生や町の住人の現在の状況、それらがリアルタイムで作戦室のモニターにごく近距離の画像と音声でもって、映し出されていたから。
中には女学生たちが奴隷として、組織員間で売買され、性の道具として使われていたり、町の住人が見せしめの為に町の中央広場で斬首される情景など、ショッキングすぎて目をそむけたくなる画像も含まれていた。
そして、作戦も煮詰まり機運を高めに高めた国連軍が、作戦を実行に移そうとしたとき、その少年が突如中央広場の処刑場に姿を現した。
啞然とする人々。次の斬首に取り掛かろうとしていた戦闘員も、武器を持ち上げた姿勢で固まっていた。
いつの間に手にしていたのか、右手に抜身の日本刀らしき武器を手にしていた。
片刃の武器を無造作に少年が降りぬいたとき、一瞬遅れて戦闘員の首がずれ落ちた。
そこから、少年の殲滅戦が始まった。
すぐさま私は実朝様を通じて、国連軍に作戦延期を申し入れ、事の終了までの静観を願い出た。
当初、国連軍は難色を示したが、私がlive映像で流す惨劇を見て静観することを了承した。
その映像の中で少年が一方的に戦闘員を刈り取り、血痕のシミを広げていく。
不思議と死体は見られず、血しぶきが舞った後には血痕だけ残され、攻撃に用いられた重機関銃やライフル、小型小銃なども見当たらない。
だから国連軍兵士の誰もが、映像を注視していられた。
戦場慣れしているといっても彼らの武器は主に銃で、近接戦闘で敵がなます切りされていく光景、なんてものはなかなか見ない。
爆破等で肉体損壊した死体は見たことがあるだろうけど、それすら死後の遺体であり生きている人間が切り殺される映像を見る機会は少ないだろう。
そのうち、”視聴端子”の一つが彼らの成れの果ての処遇を映し出した。
切られ絶命しただろう戦闘員たちは、血しぶきをあげながら倒れこみ、地面につくかつかないかの間に次々と消滅していた。
少年は淡々と戦闘員を片づけていく。
戦闘音が収まり周囲が静かになると、少年は手を”空間に突き入れた”と表現するしかない情景が移されている。
彼が突き入れた手の先は消え、何かを探すようにひじから先が消えた腕が動く。
やがて、突き入れていた手が抜かれ彼の手にはランタンが掲げられていた。
彼はランタンの開口部を開けた。中にはこの世のものとは思えない蒼い炎が燈(とも)っていた。
何のために掲げているのか、作戦室の兵士たちには皆目見当もつかなかった。
私の”視聴端子”が送ってくる情報は驚きの結果だった。
彼が先ほど使ったのは【空間魔法】で戦闘中に使用していたのは【土系魔法】
そしてあのランタンは【魔法道具】で、ランタンの開口部に向かって数百の”魂”が吸い込まれている、らしい。
ことを終えた少年はランタンを【空間魔法】を使って仕舞うと、周囲を見回し何かに気付いたそぶりを見せた。
そして、何かの印を切るように手を動したかと思うと、モニター画面から映像が途絶えた。
私の”視聴端子”が全て破壊されたようだ。使われた魔法は判別できなかった。
作戦司令部は私からの情報提供が途絶えたことを知ると、至急現地に調査部隊を派遣した。
現地での調査は【Amanda】側からの抵抗が全くない状況で行われた。
拉致学生や残存する住人の救助が速やかに行われた。
町の各地に残る戦闘痕、複数人分の血だまり…それらは散見されたが戦闘員の死体、武器弾薬や戦闘車両などの武器類、【Amanda】が隠し持っていただろう資金に至るまで、いまだ発見されていない。
これらについて知っているだろう件の少年について、国連は引き続き調査中らしい。
私の装置は彼によって破壊され、貴重なデータまで抹消されたが為に使用不能になった、と西条さまは国連側に説明した。
有耶無耶にはできないだろうが、未だ国連側からの問い合わせは無い。
でも、私の心はかき乱され、それどころじゃなかった。
件の少年があまりにも………行方知れずになった、”田沼 雄一郎”に似すぎていたからだ。
映像を凝視していた実朝様は急ぎ、現地に犬神のおじ様をリーダーとした調査班を派遣した。
私もわが目を疑った。確かに瓜二つだった。
でも差異も感じた。
あんなに優しく私を映した瞳は、ケンある鋭いまなざしで殺人の愉悦を浮かべる残忍な濁(にご)った瞳に。
左利きだった彼が右手で刀を扱っていた事。何より人間離れした動き。
行方不明だった間の彼に何があれば、このようになるのか?
それに魔力値が【魔王】をさしている。
彼に元から魔術師としての素養があったのだろうか?
私は彼の事をそこまで知らかったことに気付いた。
本当に彼は雄一郎さんなのだろうか?
私の問いかけにノイズが走っているモニターは答えてくれなかった。
”ネットうよチャンネル”に動画サイトのリンクを貼ったのだって、彼からのなにがしかのアプローチを期待してのモノだったが、返事は帰ってきていない。
視聴者が別掲示板や自サイトにリンク先を次々と貼り、広告収入が数億に膨れ上がっていたけど、雄一郎さんが絡まなければ私には無用な収入でしかなかった。
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回想から戻った私はモニターに映る彼らを見ていた。
彼に対して警戒する”加奈”。彼に対して関心を向け歩み寄ろうとする砂霧。
彼に集まるマナが一瞬はじけると、砂霧がその場から消失していた。
使われたのは【時空魔法】…私はすぐさま彼女の所在を装置で追った。
彼女がいる空間は高さ3メートル、広さが三畳程のレンガ壁で囲まれた空間。
空間座標は表示できず、MAP検索もできなかった。
そして時を置かず”視聴端子”の送信が途絶えた。
破壊されたのではなく装置が示すのは、”時間停止”による機能停止だった。
”砂霧”消失に動揺したのか、”加奈”は姿を現し彼に接近され”普通の少女”の対応をしていた。
砂霧を探す二人。別空間に囚われている少女は見つかるはずなく、公園で休憩する二人。
”砂霧”を探すときは曇っていた彼女の表情が、いつの間にか”恋をし始めた少女”の顔になっていた。
会話の内容から護身術の披露を頼まれた彼女が彼の前で舞う。
いつしか彼も参加し舞踏会のごとく、息の合った二人の乱舞。
あっ、今”加奈”は彼の目を警棒で突き刺そうとしたみたい。
けど、彼は余裕を持ってかわし彼女の動作をそのままコピーした動きで彼女の目を突く、のではなく優しく額に掌(てのひら)を当てた。
瞳に剣呑な光を宿した彼女は、彼に対して容赦のない攻撃を繰り出していく。
もう、護身術の領域を超え、実戦さながらの様相になった。
次第に激しさを増すダンス。
私の目は当然追いきれず、装置で録画した動画を後でスロー再生で見ることになりそうだ。
先に体力が尽きたのは”加奈”…いや、今は”時雨”に戻っている。
長い黒髪を高く結い上げ、はち切れんばかりの胸と均整の取れた彼女の肢体。
それらが彼の腕の中にあり、”時雨”に浮かぶ表情は熱に浮かされていた。
あー、これはあれだ。いつも”時雨”は言っていた。
『私が真に仕えるべき”主(あるじ)”は私が見つける』
が、今なんだ………
二人は見つめ合い、”時雨”は彼に抗うこと無く接吻を受け入れた。
口づけ、なんて生易しいものではなかった彼らの逢瀬は、撫子(なでしこ)の乱入で幕を閉じる。
”加奈”に戻り自分たちの不実を説明するが、決定的証拠を見られているので到底聞き入れてもらえない。
実は彼女付随の”視聴端子”の接近が、分かっていた私は”撫子”が二人の逢瀬をうらやましそうに眺め、教師の本分を思い出し二人に駆け出すまでの一部始終を別モニターで捉えていた。
普通なら親族に連絡の後にややこしい事態になるはずだが、彼が撫子に向き直り謝罪を始めると、不自然なぐらい撫子は二人の非を黙認し、同行する旨を伝えた。
ここでも感知されたのが【魅了魔法】
”加奈”にも使っていたのだけど、”時雨”は抵抗していたので、”普通の少女の加奈が魅了されている”という設定を演じていたみたいだけど、撫子は完全に効果が表れていた。
普通、見ず知らずの今さっき遭遇したばかりの若い男に、親密なものにしか浮かべない表情を浮かべ、”恋人になった演技をする”生徒の前で、臆面も羞恥も無く”イチャイチャ”できるだろうか?
まず、できるとしたら撫子の常識を疑う。
撫子は見た目のたおやかさに比べて、教師としての自分に誇りを持ち毅然と私たちを指導してきた。
彼女も私たち同様、【清涼女学園】に通い男性の少ない世界で”蝶よ花よ”と育てられた、生粋のお嬢様だ。
そんな彼女が自ら彼と腕を組み、彼の肩にしなだれかかる……到底尋常じゃない事態だと言える。
そんな二人の姿に嫉妬の炎を灯したような視線で、撫子に何か言いたそうな”加奈”
こじれた三角関係の様相が画面越しに見え、私はドラマ視聴者のように魅入られていた。
三人は近所で有名な洋菓子店【セレスディア】に入った。
どうしてか、この洋菓子店を含め日本各地には私の”視聴端子”が入れない場所は存在する。
装置からは【MAPが存在しません】と表示され、侵入不可領域になっている。
十数分後店を出てきた三人は、女子寮へと向かい玄関ホールで彼が、寮に珍しく訪れた男性を見ようと出迎えた寮生たちに、ケーキが入っているだろう箱を数個手渡していた。
”加奈”を演じている”時雨”と恋人との逢瀬に悲しみの表情を浮かべる撫子を除いた、寮生たちは普段食べられないケーキ【セレスディアSP】に喜色を浮かべ、男子禁制である女子寮の中へと彼を誘おうとしていた。
普通なら寮生たちもこんな反応はせず、撫子もまた許可しなかっただろう。
でも、誰も不自然に思わないのか、彼が女子の聖域に入るのを拒まなかった。
恐るべきは【魅了魔法】の効果。ここまで人を狂わす悪しき魔法。
ひとたび亜空間を出て彼の元に姿を現せば、私も囚われかねず容易には出ていけなかった。
だが、不思議なことに彼は彼女たちの誘いを固辞し、寮を後にした。
残された寮生たちと撫子は名残惜し気に彼の姿が、通りの角で見えなくなるまで見送っていたが、彼のもたらしたケーキを皆で食すことにしたようだ。
私は急ぎ、予備の”視聴端子”で彼を捕捉しようとしたが、【転移魔法】を使われロストしてしまった。
寮生たちの【お茶会】に参加せずに自室に戻った”加奈”は、いつもの儀式を行い”時雨”に戻った。
姿見に向かいブツブツ呟(つぶや)いたのち、彼女は身の回りの着替えやその他を数個のカバンに仕舞うと自室を後にした。
彼女は『…主様、今はせ参じます』と呟いていたので、【魔王】の彼を追いかけていったのだろう。
さて、私はどうすればいい?
”見て知る”ことしかできない私がとるべき行動は……
考えがまとまらず、”主”を見出(みいだ)して興奮していたのか、珍しく姿を消さないで行動する”時雨”を装置で自動追尾させて、私は思案に暮れてしまった。
いつのまにか寝てしまったのだろう。
適温で保たれている席で夜を明かしてしまった私。
貴重なケーキを食べる機会を逃してしまったことに気付いたが。もう登校しないといけない時間だ。
時間が時間なので登校の準備をして、【高等部】の教室に向かった。
今日の通学路は心なしか、普段より学生の姿が少ないように感じる。
この時間にいつも通学している先輩の姿も見えず、同じ寮生たちの姿も見えない。
私は少しの不安に駆られながら、学園への道を急ぎ教室に入った。
教室には数名の生徒がいた。
自宅通学の一般組が大半であったが、【鳶鷹(とんびたか)姉妹】の姿は見えない。
「あっ、麗奈さん、おはよう…で、他の皆は?」
私に対する朝の挨拶もおざなりに、聞いてくるクラス委員長の西九条さん。
彼女の自宅マンションは駅の近くの”ロイヤルパレス”という名の建物で、内装は立派でセキュリティー対策も万全な”陸のアルカトラズ”とまで言われている、頑強な砦……もとい、高級億ションだった。
自宅通学組の中で外国産の防弾ガラスで守られた、高級車で送り迎えされている彼女は十分お嬢様だ。
なのに、その喋り口調は一般家庭組の学生と変わらず、彼女の気さくな性格に友人も多い。
彼女の『他の皆…』とは、私と”時雨”以外の学生を指すのだろう。
普段から見えない”時雨”は一部の学生を除き、”自主休学中”と考えている生徒が大半なので、ここに含まれない。
そう言えば……今頃、”時雨”は彼の元に辿り着けただのだろうか?
【転移魔法】の発動は装置で感知はできるが、転移後の場所に”視聴端子”が無い状況ではどこに彼が飛んだ、のかは分からない。
でも、自称”犬神流忍術”継承者の”時雨”なら、もしかして……という期待を持っていた。
何にしても、彼は危険極まりない【魔王】だ。”砂霧”以外の被害者がいないとも……!?
そこまで考えて思い出す。寮生たちが彼の【魅了魔法】の虜にされていたことを。
撫子先生はメロメロだった。
「もしかして、まだ登校していないの?」
私は一縷の希望をもって西九条さんに聞いたが、応えは決まっていた。
「そうなのよ。他のクラスも同じで先輩方も何故か寮生の皆さんで……」
やはり、そうなのか?彼が何かしたのか…”砂霧”と同じように別空間に囚われているのか?
私はいてもたってもいられず、装置で皆の居場所を探すために教室を出ようと扉に向かいかけると、数学講師の山形先生が教室に入ってきた。
「おう、お前たちだけか?…まいったなぁ。他のクラスも同じように登校する生徒が少ないみたいだ。それにこのクラスの担任の佐々木先生も職員会議に欠席されていたし、寮で何かあったのか?」
山形先生は寮生で唯一登校していた私に聞いていたのだろうけど、私は正直に話せなかった。
彼女たちは今もあの”彼”にどこかに囚われ、私の発言次第でどうにかなる可能性が捨てきれなかった。
私は無言で首を横に振るしかなく、山形先生は私たちに一限目を自習しているよう伝えると教室を後にした。
不安を浮かべる西九条さんをはじめとするクラスメイトを放っておくこともできず、自習を終えた。
2時限目初めに校内放送がされ、不安がる皆を連れ講堂に場所を移した。
学年とクラス別に整列した生徒たちが見守る、前方の演壇上で園長をはじめ講師たちは、不可解な生徒たちの不登校に頭を悩ましていた。
しかし、講堂に駆け込んできた用務員さんが園長先生に何かを告げると、納得するように何度も頷き、他の講師の先生と協議し教頭先生が生徒達へと話し出した。
「皆さん、突然の事態に不安に思っている方は多いでしょう。私たち学園関係者も困惑しています。しかし、先ほど登校してきていない生徒の保護者の方々より連絡がありました」
登校してきていない、【高等部】の寮生たち。
彼女たちの親達からもたらされたのは、いずれも”家の事情で無期限休学”する、というものだった。
これには講師問わず生徒達も疑問の声を上げた。同時期に寮生たちが突然、無期限休学するなんて事態は信じられず、何かの事件性を疑う者もいた。
しかし、この場では学園側は何とも言えずクラス再編と授業内容の変更を生徒達に言い渡し、3時限目から授業を行うことになった。
学外の普通高校と違い少数教育をモットーにクラス編成されていた、私たちの学年のクラスは一クラス20名の四クラス。
能力者と一般人の混合率はクラス様々だったが、次年の2年生からは明確に能力ごとにクラス分けされて、制御力を培っていく工程に入る。
クラス編成と言っても半数に減った私たちの学年は、クラス合同教科で使用される60人が入れる教室で、残りの生徒が同じ教科を受けることになった。
普段顔を合わせない顔ぶれと顔見知りがいない不安から、生徒達の口は重かったが昼食時間を過ぎ、午後の授業に入るころには打ち解けあっていたように見える。
私はそれらの中に入れずにいたが、委員長の西九条さんに連れられ友誼(ゆうぎ)を交わした。
他のクラスだった一般家庭通学組の生徒も話してみれば、育ちの関係なく付き合えるいい人ばかりだった。
全ての授業を終え、皆のいなくなった寮に帰るのは気が重かったが、私だけが彼女たちを救うことができるかもしれない、という強がりを胸に寮の自室に入ると……
にこやかな笑顔を浮かべ、無表情にたたずむ”時雨”を伴った”彼”が待っていた。
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本作品はフィクションであり、現代の世界情勢その他団体、個人は優に及ばす一切と無関係です。
普通の学校は校長先生が一番上の管理職なのだろうけど、学園だと学園長になるんでしょうか。
短縮して【園長】としてみると、保育園や幼稚園の園長を思い浮かべます。
”他人から見た彼”のターンはここまでで、次回は彼視線に戻ります。
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