永久の眠りを妨げられた大賢者〜ネクロマンスで生き返らされたので死生を楽しもうと思う〜

黄舞

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第9話【足りないならば増やせばいい。簡単な計算だ】

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「何者だ! 貴様一体どこから忍び込んだ!!」
「あ、あの。大司教様。この人は、えーっと。イザヤです!!」

 サーシャの目の前にいたハゲ散らかした老人が。
 おっと、俺が老人なんて言ったら失礼か。

 とりあえず、目の前の叫んでいるジジイが大司教ってやつらしい。
 なるほど、髪を生やせば先ほど見たばかりのゴーシュに似ている。

 それにしても、サーシャは相変わらずとんちんかんな受け答えをしているな。
 まぁ、素直ないい子だとひいき目に見てやることにしよう。

「イザヤだと!? なるほど! お前ら、こやつをひっ捕らえろ! 生死は問わん!!」
「はっ!」

 大司教の周りに控えた男たちが合図で一斉にこちらに迫ってくる。
 正確に言えば、その場で攻撃魔法を唱えようとしている者もいるが。

 少なくともこういう荒事の方が得意で、どう見ても聖職者ではない者ばかりのようだ。
 聖職者が攻撃魔法を唱えられるはずがないからな。

 いや……俺の常識は400年前の話だから、時代の進歩で聖職者も攻撃魔法を使えるようになったのか?
 そんなしょうもないことを考えている間に第一陣がこちらに辿り着く。

「魔法よりも人の方が速いって、正直どうかと思うぞ?」
「何をたわけたことを! 丸腰ではこの攻撃は避けきれまい!!」

 法着の下に隠した各々の得物を手に、五人が俺に向かって同時に襲いかかる。
 訓練された動き。タイミングを微妙にずらし、一人を避けても次が避けられない。

「なっ!?」

 だがそんなものは十分な威力を有したものが使ってこそ意味がある。
 いや、十分な威力を持つ攻撃ができるものなら、同時に襲いかかるなど面倒なことをする必要がないか。

 放たれた攻撃はことごとく俺の前に張られた魔力の壁に阻まれてこちらには届かない。
 一応断っておくが、俺は今【魔力障壁ウォール】は使ってない。

 つまりこいつらは、俺が無意識に垂れ流す防御膜すら破壊できないのだ。
 そんなことが分かるような高尚な頭は残念ながら持っていないようで、何度も無駄な攻撃を繰り返しては弾かれて目を丸くする。

「何をやってる! どけっ!!」

 ああ。あれはダメだ。
 物理が効かないと分かったからなのか、これまで時間がかかったのか知らないが、ようやく攻撃魔法が放たれた。

 こいつに魔法を教えた奴がこの場にいるとしたら小一時間ほど問い詰めてやりたい。
 一体何を教えていたのかと。

「攻撃魔法を放つ時はきちんと支配するのが基本中の基本だろうが。そうしないと、ほら」
「なぁ!?」

 こいつが放った攻撃魔法【雷撃招来エレクトロニックボルト】は、まぁそれなりの魔法だ。
 放った瞬間の顔を見ればかなり自信のあった魔法だと言うのが分かった。

 中空に生まれた球体から対象に向けて無数の雷が襲う魔法だが、俺の魔力に干渉されたそれは俺ではなく誘爆を恐れて退いた五人に向かって雷を向けた。
 術者の支配を俺が上書きしたのだ。

「ぐあぁ!」

 本来は対象は一人で、術者もそう使う予定だったようだが、俺は支配とともに多人数向けにアレンジも加えた。
 ただ術者の魔力が微々たるものだったせいか、雷に打たれた者たちはせいぜい動けなくなる程度のダメージしか受けていないようだ。

「な……何をしておる! 誰か! こやつを殺せるものはおらんのか!!」
「おいおい。捕まえるんじゃなかったのか? まぁ、いい。おい、いいか? 今後この娘に一切関わるな」

「あ、あの……イザヤ? 何が何だか私さっぱりなんですけど……」
「気にするな。こいつら女に騙されて頭が狂ってしまったらしい」

 まだ目の前でわぁわぁうるさく叫んでいるのがめんどくさくなったので、俺は天井に向かって魔法を放つ。
 どこまでも澄んだ青空が覗き、そこに向かってサーシャを抱えて、いや、体格的に難しかったから腰を掴んで飛び立った。

「逃がすな! 追え!!」

 下では頭が寂しい男が何か叫んでいるが、どうやら【飛行フライ】を使える者はいないようだ。
 まぁ、いても撃ち落とすけどな。

「じゃあな! そうだ、性悪女に伝えろ。俺はお前の存在は許さん、とな」

 それだけ言うと俺はサーシャを連れて王都を離れた。
 ソニアが直接出てこられると今はまずいからな。

 適当に離れた場所に降り立ち、何やらぐったりしているサーシャをおろした。
 ソニアに行き先がバレないように今出せる最高速度で飛んだのがいけなかったらしい。

「おい。しっかりしろ。これから狩りをするぞ」
「ほぇえ?」

 どうやらまだ意識がしっかりしていないようだ。
 まったく、世話のやける。

「これはお前しか出来んのだからしっかりしろ! 俺が渡した魔血宝玉ブラディストーンはきちんと持ってるな?」
「ほえ?」

「しょうがない。一度叩いたら正常になるかな?」
「わぁ! 持ってます持ってます! きちんとここに!!」

 慌てた様子で腰に提げた袋から珠を取り出す。
 よし、これがあればいいだろう。

「いいか? 今から教える魔法を唱えろ。これは俺には使えん魔法だからな」
「え? 魔法ですか?」

「そうだ。まず今から俺がここに魔法陣を描くから、少し待ってろ。そうしたらこの【集魔装魂デザイア】を唱えるんだ。いいな?」
「は、はい。よく分からないですけど、やってみます!」

 詳しい説明も用意はしたが、素直な子で助かった。
 いちいち話すには面倒だからな。

 俺はそこら辺にあった木を魔法で炭にして、それを使って地面に魔法陣を描いていく。
 これを知っているのはおそらく俺だけだろう。

 危なすぎてとてもじゃないが後世には残す気になれなかったからな。
 まぁ、俺が使えん魔法だったからと言うやつもいたが、そんなやつは無視だ、無視。

「いいぞ。この魔法陣の中心にその珠を置いて、魔法を唱えろ」
「分かりました……【集魔装魂デザイア】!!」

 サーシャの魔法に呼応するように、周囲に薄く漂っていた魔力の源が、一斉に【魔血宝玉ブラディストーン】に集まっていく。
 そしてみるみるうちにそれを核に新たな魔族が形を成していく。

 サーシャがやっている事は、簡単に言うと魔族の成り立ちを早送り再生しているのだ。
 人間が直接周囲の魔力の源を吸収するのは難しいが、一度集約して魔族として形を作れば、そこから吸収するのは容易い。

 ソニアが魔王を使ってサーシャの魔力を我がものにしようとしていた方法と、同じような事を俺が今からするということだ。
 しかし……まいったな。

「サーシャ。お前一体、どのくらいの魔力を秘めてるんだ? 新たな魔王を生み出したのは、案外お前なんじゃないのか?」

 周囲の魔力の源、そしてサーシャから注がれた魔力を元に作り上げられた魔族は、前回城ごと凍らせた魔王など比較にならないほど強大な魔力をみなぎらせていた。
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