後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

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第28話【リメイク】

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「実はね。僕はサラと初めて会うのはここに入るよりずっと前なんだ」
「え!? そうだったの? ごめん……覚えてなくて」

 開口一番にカインが言った言葉に、記憶を総動員させるが全く思い出せない。

「いや。覚えているわけないんだよ。だって、その時は見た目も名前も職業も違ったからね」
「え? どういうこと?」

「つまりね――」

 カインの話を聞いているうちに古い記憶が思い出されてきた。
 たしかあれは、アーサーと出会ってそんなに経っていない時期だったと思う。

☆☆☆

『それじゃあ、よろしくね。僕はアベル。見ての通りの【戦士】だよ』
『よろしく。私はサラ。なるべく役に立つように頑張るからよろしくね』

 このアベルというのがカインの元々のキャラクターだったという。
 見た目はヒューマンで、当時初心者に人気の【戦士】だった。

 【戦士】系は今のカインの職業の【盗賊】系とは真逆で、重鈍だけれど攻撃力が高い一撃必殺の職業だ。
 そんなアベルと他に数人でレベル上げをするための野良パーティ、つまりその場限りのパーティを組んだのだ。

『おい! そこの【戦士】! お前さっきから空振り多すぎだろ。いくら攻撃力高くても当たらなきゃ意味ないんだぞ!』
『それに攻撃も喰らいすぎ! あなただけさっきから回復する頻度が高すぎる。ちょっとは避けてよね!』
『ご、ごめん……』

 当時のアベルことカインのプレイヤースキルは、お世辞にも上手いとは言いがたかったのを覚えている。
 戦士特有のすばやさの低さが余計にそれを助長していたようにも見えた。

 運悪くその時のパーティのメンバーは、少し文句を言うのが多い人達だった。
 前衛も、そして回復職の後衛も、技術が拙いカインのことをお荷物だと罵った。

『ったく。これならこの【調合師】の方が全然役に立つな。強化薬をこんなに使えるのも驚きだけど、店売りしてないやつ、これの効果はすげぇな!』
『そうだね。ほんと。使えない【戦士】なんかよりずっと使えるよ。ねぇ、あんたさ。いい加減、自分が寄生だって分かんないの?』

『ごめん……僕……抜けるね……』
『あ、ちょっと……!』

 しばらくして他のメンバーのあまりの辛辣しんらつな言葉に、カインは脱退を宣言した。
 パーティが減るとその場でソロ狩りをしている人を誘って補充するか、街に戻って募集し直しになるため、文句を言っていたメンバーは余計に嫌な顔を見せた。

『あの……ごめん。私も抜けるね。ありがとう。でもね……頑張ってる人にさっきからその発言はないと思うよ。私、これ以上あなたたちに支援できない』

 私は自分の気持ちを言い放ち、カインが抜けたと同時に自分もパーティから脱退した。
 曲がりなりにも一緒に狩りをしている人に向かって、寄生、つまり自分は役に立たずに人が倒した経験値などの成果を貰っているだけ、なんて言うなんて許せなかった。

 何か文句を言われていた気もするけれど、残念ながらもうその人たちに興味がなかったため覚えてすらいない。

『ねぇ! 良かったら、一緒に狩らない?』
『え……?』

『二人じゃさっきの狩場は難しいかもしれないけどさ。私、いい案があるんだ!』
『えーっと……今の見てたでしょ? 僕じゃ効率よく狩り出来ないよ』

 私は抜けて去ろうとしていたカインに向かって声をかけた。
 案の定、予想していた通りの答えに私は少し笑ってしまった。

『うふふ。大丈夫! ね、試してみるだけでもいいから! さっき使ってたこれと、それとこれを使えばね?』

 カインは正直困ったような顔をしていた。
 それでも興味があったのか、私の押しに負けたのか分からないけれど、再びパーティを組むことに同意してくれた。

『さっきは攻撃力を上げる強化薬だけ使ってたけどね? 敏捷を上げる強化薬も一緒に使えば、きっと上手く行くと思うんだ!』
『敏捷を?』

 当時の私の能力や資金力では、複数の薬を何人にも使うだけの余力がなかった。
 そのため、一人につきひとつの強化薬を使っていたのだ。

 【戦士】だったアベル、つまりカインには長所を上げるつもりで攻撃力を上げるものを使っていた。
 しかし、さっきのパーティの人の言う通り、どんな高い攻撃力も当たらなければ意味が無い。

『敏捷を上げるとね。敵が遅くなって見えるんだって。だから当てやすくなるし、モンスターの攻撃も避けやすくなるらしいよ!』
『へぇ。知らなかったなぁ。僕の敏捷はかなり低いからね』

 どうやら元々敏捷が低い上に、レベル上げで得られたステータスを上げるためのポイントも、全く敏捷には振っていなかったらしい。
 そのため恐らくカインにはモンスターがかなり素早く動くように見えていたに違いない。

『この薬を使えばきっと大丈夫! 騙されたと思って、ね?』
『う、うん。分かったよ』

 結果は大成功。
 敏捷を底上げしたカインは、まるで水を得た魚みたいに凄い勢いでモンスターを狩っていった。

 人数が少ない分モンスター一匹から得られる経験値も多く、効率は先ほどよりもいいくらいだった。
 カインは嬉しそうに私に向けてこう言った。

『ははっ! 凄いよ! 全然違う! これなら攻撃を避けられる気もしないし、一対一なら当てられる気もしないね! ああ! 初めっから敏捷が高いキャラにすれば良かった!』
『うふふ。良かった。もしかしたらアベルは敏捷が高いキャラの方が向いているのかもね』

 その時の私の何気ない一言が、今のカインを作っていたなんて全く知るよしもなかった。

☆☆☆

「それでね。結局キャラをリメイクしてさ。どうせなら極限に敏捷を極めてやろうって、アバターも職業も変えたのがこのキャラって訳」
「へー。ぜんぜん気づかなかったよ。言ってくれたらいいのに!」

 まさか私のせいで一人のプレイヤーのその後を大きく変えていたとは。
 私にも経験があるけれど、これがオンラインゲームの醍醐味とも言えるのだろうか。

「だって……そこから今までずっと探してた、なんて恥ずかしくて言えないじゃない……」
「え? なんか言った?」

 アベルをカインにしてしまった私とカインの出来事に思いを馳せていたせいで、カインが小さな声で何か呟いたように聞こえたが、全く聞き取れなかった。

「ううん。なんでもないよ。という事でね。このキャラになったのは他でもないサラのせいだからさ。その責任をとって欲しいなーって」
「なにそれー。そんなのとれません。でも、そんな思い出があっただなんて嬉しいな。見つけてくれてありがとう。それと、クランに入ってくれてありがとう。これからもよろしくね!」

 私がそう言うと、カインは猫の顔をくしゃりと歪めて笑顔を作った。

 そういえば、よく考えると私のことを知っている理由は分かったけど、わざわざ私と一緒のクランになって戦ってくれる理由は分からないままじゃないかな。
 まぁいいか。
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