後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

文字の大きさ
29 / 72

第29話【新しい薬】

しおりを挟む
「で……できたぁ!!」

 私はクランの専用スペースにある、さらに私専用の部屋、通称【調合部屋】で独り雄叫びを上げた。
 その理由というのも、新しい薬のレシピを見つけることに成功したからだ。

「うーん、この薬は癖がある感じね。使い方を考えないと……」

 出来上がった薬、【剛力の魔薬】の効果をマジマジと眺め、うーんと唸ってしまう。
 新しく出来た薬は強化薬、だけど今までのように単純に何かのステータスを上げる効果ではなかった。

「なに今の!? サラさん大丈夫?」
「あ、セシル。居たんだ。知らなかった。ごめんね大きな声出して。あ! 聞いて! 新しい薬が出来たよ!!」

「え! ほんと!? やったじゃない! どんな薬なの?」
「うーん。それがね。強化薬なんだけど……逆にステータスが下がる効果もあるみたいなんだよね」

 私はセシルに効果を説明する。
 今回作ることの出来た【剛力の魔薬】は、上昇率が今までのものよりも格段に高い代わりに、別のステータスが減少する効果になっている。

 下がったステータスを上手く他の強化薬で補うことも可能だと思うけれど、どういう組み合わせが最適か、なかなか悩むところだ。

「へー。面白いね。全部使ったらどうなるの?」
「まだ一つしか出来てないから、予想になるけど。全部使うなら差し引きで、【神薬】とそんなに変わらない感じね。特化させたい所に使うのが正解だと思う」

「でも出来たってことは良かったじゃない。サラさんの夢の実現に一歩近付いたってことだし」
「うん! あ、でもね……ちょっと今のじゃ効率悪そうなんだよね。素材が多すぎる。これじゃあ量を作るのは無理。もう少し検討したいけど、もう素材がないのよねぇ」

 今回新しい薬を作るのに使った素材は、全てこの前のアップデートで解禁された新エリアのモンスターのものだ。
 出どころはこの前会ったアーサーからもらった素材。

 検討でほぼ全部使ってしまったので、これ以上調べるためには再度素材を入手しなければならない。
 だけど残念なことに、他のみんなも四苦八苦しているのか、未だに市場にはほとんど現れない。

 きっと生産クランが未だに集めるためのクエストを開いているのだろう。
 そうなると自分で取りに行くしかないのだけれど。

「そうなんだ。もし良かったら取りに行こうか? 難しい場所なの?」
「ありがとう。でもね。この前できたばかりの新エリアなんだよね。セシルと私だけじゃ無理かな」

 私の言葉にセシルは気を落としたような顔を見せる。
 相変わらず顔は竜で怖いはずなのに、仕草や雰囲気で人懐っこい犬のように見えてしまう。

「そうなんだ……あ、じゃあさ。みんなにも手伝ってもらうってのはどう?」
「みんなってクランのみんな?」

「そうそう。ほら、前言ったじゃない。クランマスターとしてもサラさんの夢の実現を応援するって。みんないれば行けるでしょう?」
「うん。多分ね。セシルとハドラーのレベル上げにもなるし。でもみんな来てくれるかな? 今回は本当に私の趣味みたいなものだし……」

 ただでさえこれからは攻城戦に出るために、決まった時間を拘束させる可能性が高い。
 私の素材集めのためにみんなを呼んで困らせないだろうか。

「大丈夫だと思うよ。ハドラーは確実に。カインもみんなで何かやりたいって言ってたし。アンナはサラさんに心酔してるみたいだしね」
「そうかな。じゃあ今度お願いしてみようかな」

 そう言っている間にセシルがクラン掲示板、クランメンバーが情報を共有出来るメッセージが書ける場所に、さっさと書いてしまった。
 しばらくすると、さっきまで居なかった他のメンバーが調合部屋に集まってきた。

「なになに。みんなで狩り? しかも新エリア? 行く行く。僕今ちょうど暇だったしさ」
「サラちゃん! 新しい薬出来たんだってね! さっそく試そうよ! わたしゃ今以上に攻撃力が出せるって聞いてワクワクしてるよ!!」

「みんなありがとう。ハドラーも大丈夫?」
「ええ。皆さんとご一緒できるのは楽しいですからね。何よりマスターであるセシルさんからの集合要請ですから」

 みんなが揃いも揃って私の素材集めのために来てくれた。
 それが嬉しくて、私はなんだか胸が熱くなってしまった。

 今まで欲しい素材を集めるのには、露店から買うしかなかった。
 この前セシルが素材集めを手伝ってくれたのは、すごく嬉しかった。

 それでもきっと攻城戦のため、なんて思っていた自分が恥ずかしくなる。
 改めて思う。みんないい人だ。

 私は自分では気付いてなかったけど、まだどこか臆病になっていたんだと思う。
 もっと変わりたい。自分を変えたい。

 人に頼っていいのだと、自分が輪に交じっていいのだと、ここの人たちはそれを私に教えてくれる。
 うん。もう不安に思う必要なんてないんだと思う。

「ねぇ、みんな。ありがとう。大好きだよ!!」

 思わず発せられた言葉に、自分自身が顔を赤く染めてしまった。
 本心だけれど、大好きだなんて大声で人に言ったのは初めてで、恥ずかしさのあまり両手で顔を隠してしまう。

 自分の指のすき間から覗くと、何故かみんなまで恥ずかしそうにしていて、私はおかしくなって笑ってしまった。

「あははは! ちょっと! みんな。恥ずかしがるのは私だけで十分!! とにかく。みんなありがとうね。私、みんなの役に立つ薬、頑張って作るから!」

 私が笑顔でそう言うと、みんな大きく頷いてくれた。
 その後、新エリアで狩りをして、無事に素材を集めることができた。

 新薬の検討を続ければまたすぐに足りなくなると思う。
 だけどもう私は心配しない。

 だって、頼れる仲間が、こんなに温かい仲間がいるんだから。
しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

処理中です...