後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

文字の大きさ
46 / 72

第46話【勝負の行方】

しおりを挟む
「【アビスブレイク】!!」

 アンナの凶刃がハドラーに到達する直前、詠唱が終わり、放電しながら黒く輝く球体がアンナに向かって解き放たれる。
 避ける暇もなくアンナに着弾したその魔法は、全身を真っ黒く包みそして爆ぜた。

「がはぁっ!!」
「先ほどまで与えたダメージを合わせれば、いくらアンナさんでも耐え切ることはできないはずです」

 ハドラーは勝利を確信したのか、そのまま立ち尽くしていたのでは他の相手からの攻撃を受けると判断したのか、移動を始めた。
 その瞬間。

「ぐはぁっ!?」
「誰が耐え切ることができないって!? 残念だったね! さっきの鬼ごっこの間のダメージなら、回復薬がぶ飲みでチャラになってるよ!」

 交流戦では敵チームのHPの残量は見えない仕様になっている。
 恐らくハドラーはアンナのHPと、自分の攻撃のダメージを計算していた。

 一撃では倒すことのできないアンナのHPを逃げならが削り、十分なダメージの蓄積を与えてからの高火力の一撃で決着をつける予定だったのだろう。
 ところが、私は全員のHPが見えているから気付いていたけれど、アンナはこのクランに入る前と同じように、ダメージを食らう側から回復薬を飲んで自身を回復させていた。

 結果、倒しきったはずのアンナのHPは残り、意識を別に向けたハドラーはアンナの渾身の一撃で地に伏したというわけだ。
 確かにクランに入ってからはその必要が無くなって、アンナ自身が回復薬を飲むことなんてなくなっていたから、ハドラーも自己回復手段があるということを失念してしまっていたのだろう。

 かくいう私も、すっかり忘れていた。

「すいません。アンナさん! これも勝負なので!!」

 ハドラーに勝ち、満足そうな様子のアンナに向かって、ソフィが矢を射った。
 どうやら二人のやりとりを見ていたらしい。

 勝ったとはいえ、これは団体戦で一人倒せば終わりではない。
 ハドラーの高火力の魔法を受けたアンナは、ソフィの撃った攻撃を耐え切るほどのHPを残していなかった。

「結構みんな倒し始めているわね」

 高みの見物の私は独り呟く。
 特定の人物のやりとりに注視していた目線を全体に向けると、最初よりも人数が減っているのに気付いた。

 そこでようやく本来の目的の、新しく仲間に入ったメンバーたちの動きに意識を向ける。
 【蒼天】クランの中でいい動きをしているのは、やはりクランマスターのケロと、サブマスターのトールだった。

「うーん。結構みんな攻撃的な人が多いのね。アンナさんとウマが合いそう」

 残念というべきか、これが普通というべきか、それ以外には気になるプレイヤーはいなかった。
 みんなそれぞれが適度に動けてはいるものの、私のクランのメンバーの動きに慣れてしまっているせいか少し見劣りをしてしまう。

「でも、攻城戦のことを考えれば、強い個よりも優秀な集団だって言ってたもんね」

 そんなことを思い出しながら、私は再び今だにやりあっているセシルとカインの二人へと目線を向けた。

「くっそ。やり辛いなぁ! これだけ僕の攻撃躱すプレイヤーなんてそうそういないよ!」
「そう言うな! これでも必死で粘ってるんだから。ちょっとでも気を抜くとやられるな!」

 人数が減ったせいで周りからくる流れ弾や横やりも少なくなってきたようで、二人はまさに二人だけの空間を作り出していた。
 カインは持ち前の素早さと【忍び】のスキルを駆使してトリッキーな攻撃を繰り返している。

 一方セシルは位置移動は少ないものの、巧みな槍捌きと身体の動かし方で、カインの攻撃を時に受け、時に避けながら反撃を繰り返している。
 しかしセシルの攻撃も、カインの素早さの前ではなかなか当てることが難しいらしく、どちらも有効打を与えることができずにいるようだ。

「やっぱりあの二人は凄いなぁ」

 私自身のステータスの問題もあるけれど、二人の動きは遠くから見てやっと分かるほど速く複雑だ。
 生き残った他のプレイヤーたちも、うかつに割って入るのが難しいと判断したのか、なかなか近寄る者もいない。

「あーもう! ラチがあかないな! そうだ、これならどうだ!?」

 するとカインはアイテムを取り出すとセシルに向かって投げつけた。
 【忍び】のスキル【投げる】を使ったわけだ。

 このスキルは持っているアイテムの内、専用アイテムである手裏剣などや、武器を相手に向かって投げることができる。
 攻撃力も高く遠距離攻撃なので強力なスキルだけれど、文字通り投げて攻撃に使用するため、使ったアイテムは消耗される。

 専用アイテムは店売りしておらず、ドロップか生産職によって作られるし、武器も店売りで手に入るものではダメージもそこそこなので、なかなか使いどころの難しいスキルだ。
 私もカインがこのスキルを使っているところを見るのは初めてだった。

「くっ!」

 思わぬタイミングで飛来したアイテムに、セシルは体勢を崩しながらも辛うじてそれを避ける。
 投げたカインはそれを追うようにセシルに迫り、ここぞとばかりに攻撃を繰り出す。

 恐らく素早さで劣るセシルが、ここまでカインの攻撃に対応できたのは、カインの動きの癖を知っていたからだろう。
 どういう動きをするか、それが分かっていたから予測がつき、事前にその動きに対応する準備ができたのだ。

 ところが、ここになってカインは今まで見せたことのない動きを突然して見せた。
 まさに切り札とも言える動作に、予想していなかったセシルは対応が遅れた、というわけだ。

 カインの両手の短剣が、セシルの身体を切り裂く。
 明らかなダメージを受けたセシルは、カインの追撃を逃れるように、大きくその場から退いた。

「逃さないよ!!」

 なおも追うカインに向かって、セシルは【竜騎士】の代名詞とも言えるスキル【青龍破】を放つ。
 青い龍の形をしたエフェクトがカインを襲う。

「至近距離だから避けられないと思ったら間違いだよ!!」

 そう叫びながらカインは身体を捩り横転する。
 ギリギリのところでセシルのスキルはカインをかすめるように通り過ぎ、少し離れた別のプレイヤーをなぎ払いながら中空へと消えた。

「ふぅ! ギリギリだったけど、って。うわぁ!!」

 どうやらセシルは躱されることも読んでいたらしい。
 先ほどのカインと同じように、撃った直後にカインに向かって走っていた。

 今度はセシルの一撃が、立ち上がろうとしていたカインに向かって繰り出される。
 敏捷特化のカインの装甲はハドラーと同程度、セシルの渾身の攻撃を受けては、致命傷になりえた。

「悪いな! 俺の、勝ちだ!!」

 セシルの攻撃がカインに当たる、と思った瞬間。
 私の目の前が真っ暗に一瞬変わり、意識を取り戻すと、闘技場のロビーに戻されていた。

「くっそう。時間切れかー」

 一瞬、何が起こったか分かっていなかった私の耳に、誰かの声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 132

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...