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第46話【勝負の行方】
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「【アビスブレイク】!!」
アンナの凶刃がハドラーに到達する直前、詠唱が終わり、放電しながら黒く輝く球体がアンナに向かって解き放たれる。
避ける暇もなくアンナに着弾したその魔法は、全身を真っ黒く包みそして爆ぜた。
「がはぁっ!!」
「先ほどまで与えたダメージを合わせれば、いくらアンナさんでも耐え切ることはできないはずです」
ハドラーは勝利を確信したのか、そのまま立ち尽くしていたのでは他の相手からの攻撃を受けると判断したのか、移動を始めた。
その瞬間。
「ぐはぁっ!?」
「誰が耐え切ることができないって!? 残念だったね! さっきの鬼ごっこの間のダメージなら、回復薬がぶ飲みでチャラになってるよ!」
交流戦では敵チームのHPの残量は見えない仕様になっている。
恐らくハドラーはアンナのHPと、自分の攻撃のダメージを計算していた。
一撃では倒すことのできないアンナのHPを逃げならが削り、十分なダメージの蓄積を与えてからの高火力の一撃で決着をつける予定だったのだろう。
ところが、私は全員のHPが見えているから気付いていたけれど、アンナはこのクランに入る前と同じように、ダメージを食らう側から回復薬を飲んで自身を回復させていた。
結果、倒しきったはずのアンナのHPは残り、意識を別に向けたハドラーはアンナの渾身の一撃で地に伏したというわけだ。
確かにクランに入ってからはその必要が無くなって、アンナ自身が回復薬を飲むことなんてなくなっていたから、ハドラーも自己回復手段があるということを失念してしまっていたのだろう。
かくいう私も、すっかり忘れていた。
「すいません。アンナさん! これも勝負なので!!」
ハドラーに勝ち、満足そうな様子のアンナに向かって、ソフィが矢を射った。
どうやら二人のやりとりを見ていたらしい。
勝ったとはいえ、これは団体戦で一人倒せば終わりではない。
ハドラーの高火力の魔法を受けたアンナは、ソフィの撃った攻撃を耐え切るほどのHPを残していなかった。
「結構みんな倒し始めているわね」
高みの見物の私は独り呟く。
特定の人物のやりとりに注視していた目線を全体に向けると、最初よりも人数が減っているのに気付いた。
そこでようやく本来の目的の、新しく仲間に入ったメンバーたちの動きに意識を向ける。
【蒼天】クランの中でいい動きをしているのは、やはりクランマスターのケロと、サブマスターのトールだった。
「うーん。結構みんな攻撃的な人が多いのね。アンナさんとウマが合いそう」
残念というべきか、これが普通というべきか、それ以外には気になるプレイヤーはいなかった。
みんなそれぞれが適度に動けてはいるものの、私のクランのメンバーの動きに慣れてしまっているせいか少し見劣りをしてしまう。
「でも、攻城戦のことを考えれば、強い個よりも優秀な集団だって言ってたもんね」
そんなことを思い出しながら、私は再び今だにやりあっているセシルとカインの二人へと目線を向けた。
「くっそ。やり辛いなぁ! これだけ僕の攻撃躱すプレイヤーなんてそうそういないよ!」
「そう言うな! これでも必死で粘ってるんだから。ちょっとでも気を抜くとやられるな!」
人数が減ったせいで周りからくる流れ弾や横やりも少なくなってきたようで、二人はまさに二人だけの空間を作り出していた。
カインは持ち前の素早さと【忍び】のスキルを駆使してトリッキーな攻撃を繰り返している。
一方セシルは位置移動は少ないものの、巧みな槍捌きと身体の動かし方で、カインの攻撃を時に受け、時に避けながら反撃を繰り返している。
しかしセシルの攻撃も、カインの素早さの前ではなかなか当てることが難しいらしく、どちらも有効打を与えることができずにいるようだ。
「やっぱりあの二人は凄いなぁ」
私自身のステータスの問題もあるけれど、二人の動きは遠くから見てやっと分かるほど速く複雑だ。
生き残った他のプレイヤーたちも、うかつに割って入るのが難しいと判断したのか、なかなか近寄る者もいない。
「あーもう! ラチがあかないな! そうだ、これならどうだ!?」
するとカインはアイテムを取り出すとセシルに向かって投げつけた。
【忍び】のスキル【投げる】を使ったわけだ。
このスキルは持っているアイテムの内、専用アイテムである手裏剣などや、武器を相手に向かって投げることができる。
攻撃力も高く遠距離攻撃なので強力なスキルだけれど、文字通り投げて攻撃に使用するため、使ったアイテムは消耗される。
専用アイテムは店売りしておらず、ドロップか生産職によって作られるし、武器も店売りで手に入るものではダメージもそこそこなので、なかなか使いどころの難しいスキルだ。
私もカインがこのスキルを使っているところを見るのは初めてだった。
「くっ!」
思わぬタイミングで飛来したアイテムに、セシルは体勢を崩しながらも辛うじてそれを避ける。
投げたカインはそれを追うようにセシルに迫り、ここぞとばかりに攻撃を繰り出す。
恐らく素早さで劣るセシルが、ここまでカインの攻撃に対応できたのは、カインの動きの癖を知っていたからだろう。
どういう動きをするか、それが分かっていたから予測がつき、事前にその動きに対応する準備ができたのだ。
ところが、ここになってカインは今まで見せたことのない動きを突然して見せた。
まさに切り札とも言える動作に、予想していなかったセシルは対応が遅れた、というわけだ。
カインの両手の短剣が、セシルの身体を切り裂く。
明らかなダメージを受けたセシルは、カインの追撃を逃れるように、大きくその場から退いた。
「逃さないよ!!」
なおも追うカインに向かって、セシルは【竜騎士】の代名詞とも言えるスキル【青龍破】を放つ。
青い龍の形をしたエフェクトがカインを襲う。
「至近距離だから避けられないと思ったら間違いだよ!!」
そう叫びながらカインは身体を捩り横転する。
ギリギリのところでセシルのスキルはカインをかすめるように通り過ぎ、少し離れた別のプレイヤーをなぎ払いながら中空へと消えた。
「ふぅ! ギリギリだったけど、って。うわぁ!!」
どうやらセシルは躱されることも読んでいたらしい。
先ほどのカインと同じように、撃った直後にカインに向かって走っていた。
今度はセシルの一撃が、立ち上がろうとしていたカインに向かって繰り出される。
敏捷特化のカインの装甲はハドラーと同程度、セシルの渾身の攻撃を受けては、致命傷になりえた。
「悪いな! 俺の、勝ちだ!!」
セシルの攻撃がカインに当たる、と思った瞬間。
私の目の前が真っ暗に一瞬変わり、意識を取り戻すと、闘技場のロビーに戻されていた。
「くっそう。時間切れかー」
一瞬、何が起こったか分かっていなかった私の耳に、誰かの声が聞こえた。
アンナの凶刃がハドラーに到達する直前、詠唱が終わり、放電しながら黒く輝く球体がアンナに向かって解き放たれる。
避ける暇もなくアンナに着弾したその魔法は、全身を真っ黒く包みそして爆ぜた。
「がはぁっ!!」
「先ほどまで与えたダメージを合わせれば、いくらアンナさんでも耐え切ることはできないはずです」
ハドラーは勝利を確信したのか、そのまま立ち尽くしていたのでは他の相手からの攻撃を受けると判断したのか、移動を始めた。
その瞬間。
「ぐはぁっ!?」
「誰が耐え切ることができないって!? 残念だったね! さっきの鬼ごっこの間のダメージなら、回復薬がぶ飲みでチャラになってるよ!」
交流戦では敵チームのHPの残量は見えない仕様になっている。
恐らくハドラーはアンナのHPと、自分の攻撃のダメージを計算していた。
一撃では倒すことのできないアンナのHPを逃げならが削り、十分なダメージの蓄積を与えてからの高火力の一撃で決着をつける予定だったのだろう。
ところが、私は全員のHPが見えているから気付いていたけれど、アンナはこのクランに入る前と同じように、ダメージを食らう側から回復薬を飲んで自身を回復させていた。
結果、倒しきったはずのアンナのHPは残り、意識を別に向けたハドラーはアンナの渾身の一撃で地に伏したというわけだ。
確かにクランに入ってからはその必要が無くなって、アンナ自身が回復薬を飲むことなんてなくなっていたから、ハドラーも自己回復手段があるということを失念してしまっていたのだろう。
かくいう私も、すっかり忘れていた。
「すいません。アンナさん! これも勝負なので!!」
ハドラーに勝ち、満足そうな様子のアンナに向かって、ソフィが矢を射った。
どうやら二人のやりとりを見ていたらしい。
勝ったとはいえ、これは団体戦で一人倒せば終わりではない。
ハドラーの高火力の魔法を受けたアンナは、ソフィの撃った攻撃を耐え切るほどのHPを残していなかった。
「結構みんな倒し始めているわね」
高みの見物の私は独り呟く。
特定の人物のやりとりに注視していた目線を全体に向けると、最初よりも人数が減っているのに気付いた。
そこでようやく本来の目的の、新しく仲間に入ったメンバーたちの動きに意識を向ける。
【蒼天】クランの中でいい動きをしているのは、やはりクランマスターのケロと、サブマスターのトールだった。
「うーん。結構みんな攻撃的な人が多いのね。アンナさんとウマが合いそう」
残念というべきか、これが普通というべきか、それ以外には気になるプレイヤーはいなかった。
みんなそれぞれが適度に動けてはいるものの、私のクランのメンバーの動きに慣れてしまっているせいか少し見劣りをしてしまう。
「でも、攻城戦のことを考えれば、強い個よりも優秀な集団だって言ってたもんね」
そんなことを思い出しながら、私は再び今だにやりあっているセシルとカインの二人へと目線を向けた。
「くっそ。やり辛いなぁ! これだけ僕の攻撃躱すプレイヤーなんてそうそういないよ!」
「そう言うな! これでも必死で粘ってるんだから。ちょっとでも気を抜くとやられるな!」
人数が減ったせいで周りからくる流れ弾や横やりも少なくなってきたようで、二人はまさに二人だけの空間を作り出していた。
カインは持ち前の素早さと【忍び】のスキルを駆使してトリッキーな攻撃を繰り返している。
一方セシルは位置移動は少ないものの、巧みな槍捌きと身体の動かし方で、カインの攻撃を時に受け、時に避けながら反撃を繰り返している。
しかしセシルの攻撃も、カインの素早さの前ではなかなか当てることが難しいらしく、どちらも有効打を与えることができずにいるようだ。
「やっぱりあの二人は凄いなぁ」
私自身のステータスの問題もあるけれど、二人の動きは遠くから見てやっと分かるほど速く複雑だ。
生き残った他のプレイヤーたちも、うかつに割って入るのが難しいと判断したのか、なかなか近寄る者もいない。
「あーもう! ラチがあかないな! そうだ、これならどうだ!?」
するとカインはアイテムを取り出すとセシルに向かって投げつけた。
【忍び】のスキル【投げる】を使ったわけだ。
このスキルは持っているアイテムの内、専用アイテムである手裏剣などや、武器を相手に向かって投げることができる。
攻撃力も高く遠距離攻撃なので強力なスキルだけれど、文字通り投げて攻撃に使用するため、使ったアイテムは消耗される。
専用アイテムは店売りしておらず、ドロップか生産職によって作られるし、武器も店売りで手に入るものではダメージもそこそこなので、なかなか使いどころの難しいスキルだ。
私もカインがこのスキルを使っているところを見るのは初めてだった。
「くっ!」
思わぬタイミングで飛来したアイテムに、セシルは体勢を崩しながらも辛うじてそれを避ける。
投げたカインはそれを追うようにセシルに迫り、ここぞとばかりに攻撃を繰り出す。
恐らく素早さで劣るセシルが、ここまでカインの攻撃に対応できたのは、カインの動きの癖を知っていたからだろう。
どういう動きをするか、それが分かっていたから予測がつき、事前にその動きに対応する準備ができたのだ。
ところが、ここになってカインは今まで見せたことのない動きを突然して見せた。
まさに切り札とも言える動作に、予想していなかったセシルは対応が遅れた、というわけだ。
カインの両手の短剣が、セシルの身体を切り裂く。
明らかなダメージを受けたセシルは、カインの追撃を逃れるように、大きくその場から退いた。
「逃さないよ!!」
なおも追うカインに向かって、セシルは【竜騎士】の代名詞とも言えるスキル【青龍破】を放つ。
青い龍の形をしたエフェクトがカインを襲う。
「至近距離だから避けられないと思ったら間違いだよ!!」
そう叫びながらカインは身体を捩り横転する。
ギリギリのところでセシルのスキルはカインをかすめるように通り過ぎ、少し離れた別のプレイヤーをなぎ払いながら中空へと消えた。
「ふぅ! ギリギリだったけど、って。うわぁ!!」
どうやらセシルは躱されることも読んでいたらしい。
先ほどのカインと同じように、撃った直後にカインに向かって走っていた。
今度はセシルの一撃が、立ち上がろうとしていたカインに向かって繰り出される。
敏捷特化のカインの装甲はハドラーと同程度、セシルの渾身の攻撃を受けては、致命傷になりえた。
「悪いな! 俺の、勝ちだ!!」
セシルの攻撃がカインに当たる、と思った瞬間。
私の目の前が真っ暗に一瞬変わり、意識を取り戻すと、闘技場のロビーに戻されていた。
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