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第47話【検証】
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「だから! あそこから反撃の一撃で僕の勝ちだったんだってば!!」
「嘘言うな! あのタイミングであの攻撃はクリーンヒット間違いなしだっただろ!?」
言い争う声に振り向くと、私と同様にロビーに戻されたカインとセシルが、勝敗について叫んでいた。
どうやらカインはあの体勢からでも反撃できたと言い張り、セシルは時間切れさえなければ確実にカインを捉えていたという主張だ。
「はいはい。二人とも。交流戦なんだから。そんなにムキになっても仕方がないでしょう? まだ次の試合もあるんだし。そっちで続きやったら?」
私の声に二人は顔を見合わせる。
「次は絶対僕が勝つからね。さっきみたいに一撃も食らわずに倒すんだから」
「はっ! さっきの武器投げは初めて見たから虚を衝かれただけだ。もう一回見てるからな、あれが最後のチャンスだった!」
なんだか、こんなにやり合う二人は珍しいので、私は可笑しくなって笑ってしまった。
カインはともかく、セシルも年齢相応の態度を見せることがあるのだと、なぜか安心した。
「今のは引き分けだったみたいだな。今度こそ、俺の有終の美を飾るために勝ちたいもんだ」
ケロがそうぼやく。
その合図にみんな三回戦に向けて、受付に向かった。
☆
「だから、僕の方が一人多く倒したろ? 僕の勝ちだってば!」
「カインが倒したのはHPの低い後衛ばかりじゃないか。しかも倒しやすいやつから狙って。倒した相手のレベルも考えたら俺の勝ちだね」
三回戦を終え、私たちも参加して【蒼天】のクランマスター、ケロの送別会を行った後、二人は再び交流戦の結果について言い争っていた。
ちなみに、【蒼天】のメンバーの移動については、色々と準備などがあるため、後日ということになった。
三回戦で勝敗をつけるつもりだったカインとセシルは、残念なことに今度は同じチームになってしまった。
それに気付いた瞬間、二人が出した結論は、どちらが活躍するか、で一致したらしい。
セシルは積極的に倒しに行くために、普段よりも攻撃重視の戦法で相手チームの前衛を薙ぎ払っていった。
一方のカインは、その素早さを活かした動きで前衛を潜り抜け、後衛にいる遠距離攻撃を主とするプレイヤーや、回復職などを蹴散らしていった。
結果、人数で言えばカインの言うように一人だけカインが多く、相手のレベルやHPの多さなどを考えればセシルの方が活躍したとも言えた。
「もう、どっちでもいいでしょう。ま、二人の活躍のおかげで、最後はケロさんも勝利できたし。良かったんじゃないかな?」
二人の活躍に触発されるように、一緒のチームとなったケロもかなりの成果を上げていた。
結局、三人がいる方のチームの勝利となり、ケロも満足して引退できると喜んでいた。
「それで、前言ってた【神への冒涜】の検討なんだけど、いつやろうか?」
「あ、僕まだ暇あるよ。なんかさっきので気持ちも上がっちゃってるし、サラがいいなら今からでも!」
私の声に反応して、セシルの方に向けていた顔を私に向けてカインがそう言う。
私も交流戦は結局三回中二回が見ているだけだったので、体力は余っている。
「うん。じゃあ、今からやろうか? えーっと、どこでやろうかなぁ」
「どうせなら、新エリアでいいんじゃないかな? サラさん。俺も一緒に行くよ」
セシルも参加を表明してくれた。
これなら私の身の安全も確保しやすいので、強いモンスターが居るところに行ける。
正直なところ、あまりに弱いモンスター相手だと、どのくらい強くなったのかを確認するのが難しい。
適度な強さがある方が、検証としては有用だ。
「なんだい、サラちゃん! 水臭いね! みんなが行くんなら、わたしも行くよ!」
「そうですね。私もその薬の効果を実際で見てみたいですから、参加させてください」
アンナとハドラーも参加してくれることになり、結局いつものパーティで新エリアに向かうことになった。
目的は【神への冒涜】の効果の検証だ。
目的のフィールドに辿り着き、事前の確認として、色々なモンスター相手にカインに攻撃してもらいその結果をメモしていく。
その後に薬を使った効果を調べていく予定だ。
カインは次々とモンスターに多種多様なスキルで攻撃を当てていく。
私はカインが与えたダメージを事細かに記録していく。
「それにしてもサラさんって、ほんと、マメだよなぁ」
「え? そう? このくらい普通じゃない?」
横で邪魔なモンスターを狩りながら、セシルが声をかけてきた。
「いやいや。普通じゃないよ。まぁ、そういうのを見てると、あれだけの薬を一人で作れちゃうのも納得というか」
「マメなことはいいことですよ。セシルさんも見習わないといけない部分があると思いますけれど」
ハドラーが口を挟む。
それを聞いたセシルは何やらバツが悪そうだ。
「それじゃあ、そろそろいいかな! カイン! 今から薬使うよ。準備はいい!?」
「うん! いつでもオーケー!」
間違って外さないよう、カインには立ち止まってもらう。
巨大化するのはセシルの時で見ているため、私は全体が見渡せるよう、少し離れた位置から【神への冒涜】をカインに投げた。
ハート型の薬がカインに当たった瞬間、セシルの時と同じように、その姿が変わっていく。
巨大化し終えたカインを見て、やはり使用後の姿は、元のアバターが関連しているのだと確信する。
黒い魔竜の姿になったセシルとは違い、カインは黒い虎のような姿をしていた。
白虎というボスモンスターが居るが、真っ白い姿を持つ白虎をそのまま漆黒に染めたような感じだ。
「わぁ! これ凄いね!! どうなってるの!?」
黒い大虎となったカインが声をあげる。
セシルと同様、姿を変えても会話はできるようだ。
「時間測ってるから、色々としたいことができるかどうか試してみて! あと、モンスターへの攻撃もお願いね!」
「うん! いっくよー!!」
虎になったカインが地を駆ける。
驚くほどの速さに私は目を見張った。
どうやらそう簡単には効果を解明できそうにない。
私はカインの動きをできるだけ見逃さぬようにと集中した。
「嘘言うな! あのタイミングであの攻撃はクリーンヒット間違いなしだっただろ!?」
言い争う声に振り向くと、私と同様にロビーに戻されたカインとセシルが、勝敗について叫んでいた。
どうやらカインはあの体勢からでも反撃できたと言い張り、セシルは時間切れさえなければ確実にカインを捉えていたという主張だ。
「はいはい。二人とも。交流戦なんだから。そんなにムキになっても仕方がないでしょう? まだ次の試合もあるんだし。そっちで続きやったら?」
私の声に二人は顔を見合わせる。
「次は絶対僕が勝つからね。さっきみたいに一撃も食らわずに倒すんだから」
「はっ! さっきの武器投げは初めて見たから虚を衝かれただけだ。もう一回見てるからな、あれが最後のチャンスだった!」
なんだか、こんなにやり合う二人は珍しいので、私は可笑しくなって笑ってしまった。
カインはともかく、セシルも年齢相応の態度を見せることがあるのだと、なぜか安心した。
「今のは引き分けだったみたいだな。今度こそ、俺の有終の美を飾るために勝ちたいもんだ」
ケロがそうぼやく。
その合図にみんな三回戦に向けて、受付に向かった。
☆
「だから、僕の方が一人多く倒したろ? 僕の勝ちだってば!」
「カインが倒したのはHPの低い後衛ばかりじゃないか。しかも倒しやすいやつから狙って。倒した相手のレベルも考えたら俺の勝ちだね」
三回戦を終え、私たちも参加して【蒼天】のクランマスター、ケロの送別会を行った後、二人は再び交流戦の結果について言い争っていた。
ちなみに、【蒼天】のメンバーの移動については、色々と準備などがあるため、後日ということになった。
三回戦で勝敗をつけるつもりだったカインとセシルは、残念なことに今度は同じチームになってしまった。
それに気付いた瞬間、二人が出した結論は、どちらが活躍するか、で一致したらしい。
セシルは積極的に倒しに行くために、普段よりも攻撃重視の戦法で相手チームの前衛を薙ぎ払っていった。
一方のカインは、その素早さを活かした動きで前衛を潜り抜け、後衛にいる遠距離攻撃を主とするプレイヤーや、回復職などを蹴散らしていった。
結果、人数で言えばカインの言うように一人だけカインが多く、相手のレベルやHPの多さなどを考えればセシルの方が活躍したとも言えた。
「もう、どっちでもいいでしょう。ま、二人の活躍のおかげで、最後はケロさんも勝利できたし。良かったんじゃないかな?」
二人の活躍に触発されるように、一緒のチームとなったケロもかなりの成果を上げていた。
結局、三人がいる方のチームの勝利となり、ケロも満足して引退できると喜んでいた。
「それで、前言ってた【神への冒涜】の検討なんだけど、いつやろうか?」
「あ、僕まだ暇あるよ。なんかさっきので気持ちも上がっちゃってるし、サラがいいなら今からでも!」
私の声に反応して、セシルの方に向けていた顔を私に向けてカインがそう言う。
私も交流戦は結局三回中二回が見ているだけだったので、体力は余っている。
「うん。じゃあ、今からやろうか? えーっと、どこでやろうかなぁ」
「どうせなら、新エリアでいいんじゃないかな? サラさん。俺も一緒に行くよ」
セシルも参加を表明してくれた。
これなら私の身の安全も確保しやすいので、強いモンスターが居るところに行ける。
正直なところ、あまりに弱いモンスター相手だと、どのくらい強くなったのかを確認するのが難しい。
適度な強さがある方が、検証としては有用だ。
「なんだい、サラちゃん! 水臭いね! みんなが行くんなら、わたしも行くよ!」
「そうですね。私もその薬の効果を実際で見てみたいですから、参加させてください」
アンナとハドラーも参加してくれることになり、結局いつものパーティで新エリアに向かうことになった。
目的は【神への冒涜】の効果の検証だ。
目的のフィールドに辿り着き、事前の確認として、色々なモンスター相手にカインに攻撃してもらいその結果をメモしていく。
その後に薬を使った効果を調べていく予定だ。
カインは次々とモンスターに多種多様なスキルで攻撃を当てていく。
私はカインが与えたダメージを事細かに記録していく。
「それにしてもサラさんって、ほんと、マメだよなぁ」
「え? そう? このくらい普通じゃない?」
横で邪魔なモンスターを狩りながら、セシルが声をかけてきた。
「いやいや。普通じゃないよ。まぁ、そういうのを見てると、あれだけの薬を一人で作れちゃうのも納得というか」
「マメなことはいいことですよ。セシルさんも見習わないといけない部分があると思いますけれど」
ハドラーが口を挟む。
それを聞いたセシルは何やらバツが悪そうだ。
「それじゃあ、そろそろいいかな! カイン! 今から薬使うよ。準備はいい!?」
「うん! いつでもオーケー!」
間違って外さないよう、カインには立ち止まってもらう。
巨大化するのはセシルの時で見ているため、私は全体が見渡せるよう、少し離れた位置から【神への冒涜】をカインに投げた。
ハート型の薬がカインに当たった瞬間、セシルの時と同じように、その姿が変わっていく。
巨大化し終えたカインを見て、やはり使用後の姿は、元のアバターが関連しているのだと確信する。
黒い魔竜の姿になったセシルとは違い、カインは黒い虎のような姿をしていた。
白虎というボスモンスターが居るが、真っ白い姿を持つ白虎をそのまま漆黒に染めたような感じだ。
「わぁ! これ凄いね!! どうなってるの!?」
黒い大虎となったカインが声をあげる。
セシルと同様、姿を変えても会話はできるようだ。
「時間測ってるから、色々としたいことができるかどうか試してみて! あと、モンスターへの攻撃もお願いね!」
「うん! いっくよー!!」
虎になったカインが地を駆ける。
驚くほどの速さに私は目を見張った。
どうやらそう簡単には効果を解明できそうにない。
私はカインの動きをできるだけ見逃さぬようにと集中した。
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