後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜

黄舞

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第53話【圧勝】

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「すごいね! これは!!」

 漆黒の巨人となったアンナが嬉しそうにそう叫ぶ。
 声の大きさが変わったわけではないけれど、発される位置が頭上になったためか、いつもより大きく聞こえた。

「みんな! 行くよ! さっきやられた仲間の分もやり返してやるよ!!」
「おう!!」

 アンナのグループのメンバーは、リーダーと同じで血の気が多い人が多い。
 もともとアンナと組んでいたギルバートが前衛としては最後の良心と言える。

 あまりに無茶な突っ込みを繰り返すメンバーを回復するために、範囲回復魔法に長けたレクターが入っている。
 本当はもう一人くらい付けたいところなのだけれど、もともと私たちのクランに回復職が一人しかいなかったことと、【蒼天】にも二人しかいなかったため、現状は仕方がない。

「なんだあれは!?」
「おい! 見ろ! みたことないモンスターが出現したぞ!! あんなアプデの告知あったか!?」

 アンナの姿に気付いた相手クランのメンバーから、驚きの声が上がる。

 リディアのクランで一度見せた以外は、まだ誰にも見せていない【神への冒涜】の効果。
 驚くのも無理はない。

「時間が限られてるんだったね! ひとまず一人でも多く蹴散らしてやるよ!」

 アンナは自身と同じように巨大化した武器の斧を握り締めると、相手クランのメンバーが多くいる場所目掛けて垂直にそれを振り下ろした。
 凄まじいほどの衝撃のエフェクトを見せながら、アンナはその一振りでその場にいたメンバー全員を一撃の元に葬り去る。

「ふざけんな!! なんだこれは!? みんな! ヤベェ奴がいるぞ!! 気を付けろ!」

 近くでその凶刃の一撃を目の当たりにした相手は、仲間に警告を発する。
 言い終えた瞬間、彼もアンナの横薙ぎに吹き飛ばされ、そのまま戦線から離脱した。

「なるほど。カインの時は目で追えないほどの素早さを手に入れていたけれど、アンナさんの場合は、恐ろしいほどの攻撃力を得たみたいね」

 やはり上昇する能力は、使った相手によって大きく異なるようだ。
 もともと高いステータスが大きく跳ね上がっているところを見ると、固定上昇ではなく割合上昇だと考えればいいのだろうか。

 しかし、カインの時は低いはずの防御力もそれなりに上昇していた。
 薬を使った後のステータスを確認出来れば手っ取り早いのだけれど、変身している間は見られないらしい。

「くそっ! このバケモン、俺らしか攻撃してこないぞ! なんだかよく分からんが相手側の仲間らしい。一旦拠点に引け!! 態勢を整えるぞ!!」

 相手の一人の合図で、残り少なくなった相手クランのメンバーたちは、自分の拠点の入口に向かって駆けていく。
 セシルの時のことを考えれば、巨大化したアンナは拠点、つまり建物の中には入れないだろう。

 そのことを相手が知っているとは思えないけれど、思いつきの行動としては運良くアンナという脅威から逃げる唯一の方法を選択したと言える。
 だけど、それが正解だということは決してない。

「うわぁ!! なんだ!? なんで自分の拠点で罠が発動するんだ!!」
「自分の拠点でも相手が仕込んだ罠なら発動しますよ」

 カインのグループのウィルが罠にかかって身動きが取れなくなっている相手にそう言う。
 相手がアンナに気を取られている間に、カインたちは既に相手の拠点に入り込み、罠解除やオブジェクト破壊などでポイントを稼いでいた。

 そのついでに、入口近くに多くの罠を仕込んでいたのだ。
 完全に虚を衝かれ、慌てふためいている相手にカインのグループが総攻撃を繰り出す。

 ただでさえアンナの脅威に負けて半ば逃げ出したような所に受けた攻撃だ。
 本来の実力を出すことも出来ずに、カインやソフィア、そしてトールたちの攻撃になすすべもなくやられていく。

「なんなんだよぉ! こいつら!! こんなの今まで見た事ねぇよ!!」
「あはは。そりゃそうでしょ。僕だって初めて見るし、やるんだから」

 やけクソ気味に叫ぶ相手に、笑いながらカインは返答し、その言葉の言い切りと同時に相手を切り伏せる。
 カインのグループの攻撃力の無さを補うために入ってもらっているトールも、楽しそうにハンマーを振るっていた。

 残すところあと一人、という所で、自陣勝利のテロップが流れ、攻城戦の終了が告げられた。
 おそらく、カインと一緒に拠点に攻め込んだセシルのグループが、相手のコアの破壊に成功したのだろう。

「ちぇ! ちょっセシル早すぎるよ。もうちょっとで全滅勝利だったのに。まぁ、コア破壊の方がポイント高いからいいんだけど」

 最後の一撃になったかもしれない攻撃が空振りに終わったカインは不平を漏らした。
 その言葉に私はなんだかおかしくなってしまって笑ってしまう。

 どうやら二人の間の勝負はまだ続いているようだ。
 私としては競い合うのはいい事だと思うけれど、出来ればもう少し仲良くして欲しいとも思う。

 特にこの前のオフ会の後からは、お互い顔を見知ったせいか、その前よりも明確にどちらが上かムキになっている気がする。
 なぜかその結果を二人とも私に逐一報告してくるので、最近はまたか、と思ったりしている。

 ある時アンナにそのことをやんわりと伝えたら、『男はしょうがないねぇ』と笑っていた。
 攻城戦のフィールドから移動するまでの間、私はそんなことを頭にめぐらせていた。

 やがて目の前の景色が変わり、通常のフィールドに戻ってきた。
 周りを見れば、クランの他のメンバーたちも移動を終え集まっている。

 みんなにこやかな顔つきをしている。
 そんなみんなを見て私は思わず手を頭上に上げて叫んでいた。

「みんな、お疲れ様! 初めてのS級、圧勝!!」
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