62 / 72
第62話【試行錯誤の結果】
しおりを挟む
「それじゃあ今日は、カインたちは相手の拠点を攻めてみてね」
ティファのやらかしの後、私たちは今までのコア同期以外の方法についても、試行錯誤を続けていた。
まずはオーソドックスな、拠点を守るグループと、広場で戦うグループと、拠点を攻めるグループに分ける方法。
コアを守るのはセシル、広場でカインの行手を阻もうとする相手と戦うのはアンナのグループの役目だ。
初めての戦法でドキドキを感じながら、私は広場からスタートする人たちに薬を配る。
攻城戦が開始してすぐに戦闘になる可能性があるため、各自が自分で薬を使うという方法が採用された。
今までのように私が投げる方法では、どうしても一定の時間が必要になってしまうからだ。
その結果は……。
「やっぱり、サラが薬を使うっていう効果はすごいんだよなぁ」
「そうだねぇ。わたしも、いつもの調子が出なくてかなりやりにくかったよ」
「S級ともなると、皆さんそれなりに強化薬も用意されてきますからね。数では負けてないでしょうが、今までの【二倍の効果】というものをかんがえてしまうと……」
「そうだよな。改めて、薬師の、サラさんのパッシブは優秀だと思い知らされる」
攻城戦が終わり、反省会をカイン、アンナ、ハドラーそしてセシルと共に行っていた。
結果は辛勝。
アンナのグループはなかなか相手を倒しきれず、カインもコアのある広間まではたどり着けたものの、コアの破壊は出来なかった。
時間終了数分前に、セシルのグループが広場まで向かったおかげで得点差で勝つことが出来た。
「やっぱり。サラはスタートは広場からにしてみたらどうかな? そうしたら、少なくとも二つのグループには薬使えるわけだし」
「しかしそれではサラさんが使い終えるまでに、薬の効果なしで相手の攻撃を受けなくてはなりません」
「わたしゃいいアイデアが浮かんだよ! みんなが先に自分で薬を飲んで、後からサラちゃんが薬をみんなに投げてくれりゃいいんだ! どうだい!?」
「それじゃあ、今まで以上にサラさんに薬を用意してもらわないといけないだろ? それは無理だよ」
無理、ではないけれど、確かに実質二倍量を毎回用意するとなると、かなり厳しいのは間違いない。
それをするくらいなら他の方法を考えてくれた方が助かるものだ。
「じゃあさ、毎回。コアを同期させる人をランダムにするってのはどう?」
私だけだと分かってしまえば相手の狙いもつけやすくなってしまう。
だけど、戦うたびに誰かわからなくしてしまえば、相手も的を絞れずにこまるんじゃないだろうか。
「でもさ。そのコアを同期した人はどうするの? 戦いに出て、うっかり死なれたらそれっきりだよ」
「そうだな。もし、戦わずに離れたところに居たら、結局そいつが優先的に狙われるだろうし」
その後も色々と試してみたものの、結果はあまり芳しいものではなかった。
運よく勝ちは続けられているものの、危ない状況になることも多く、少し相手の対応が違えば負けていそうな場面も何度かあった。
そんな試行錯誤を続けていたある日のこと。
授業中に攻城戦の戦法を考えていた私にマリナが話しかけてきた。
「どうしたの? 悩み事?」
「え? あ、うん。ちょっとね……」
そう答えると、マリナは私の隣に座り、話を続けた。
「なになに? 相談なら乗るよ? まさか、恋とか!?」
「違うよ。えっとね、前から言ってるゲームのこと」
「ああ。前オフ会行ったやつね。それがどうしたの?」
「えっとね――」
マリナはオンラインゲームは全くやらないことは知っているのに、不思議となんでも話したくなる不思議な雰囲気を持つ子だ。
私は今考えていた攻城戦のことについて、出来るだけ分かりやすく要点だけを説明した。
全て話し終えると、マリナは顎に手を当てて考えるそぶりを見せた後、こともなげに彼女の考えを述べた。
「ふーん。それってさ。つまり、サラが将棋の王将ってことでしょう? 取られたら負けっていう」
「うん。今までのやり方だとそうなるね。でも、私は強くないから……」
「だったら、サラを守るナイトを周りに置けばいいんじゃないの? どんな攻撃からも守ってくれるような」
「えーそんなの……え、そうかも。いや、でも……」
マリナに言われたことを頭の中で巡らす。
確かに私がコアを同期していることがバレたとしても、私自身が守られるならこれまでのやり方が一番安定して勝てる方法なのかもしれない。
「ありがとう! マリナ!!」
「え? よく分からないけど、どういたしまして」
学校が終わり帰宅した私は、急いでゲームの中にダイブする。
早くマリナから聞いた戦法をみんなに話したくて気が急く。
『みんな。攻城戦について話したいことがあるから、集まれるかな?』
ゲームの中に入ってすぐに、セシルたちにメッセージを送る。
幸い、全員からすぐに集まれると返信が来た。
「どうしたの? サラ。何かいい案見つかった?」
「うん。あのね。やっぱり、今まで通りのやり方が私たちには合ってると思うの」
「今まで通りってのは、サラさんがコア同期するってこと? でもそれじゃ、サラさんが毎回狙われちゃうじゃないか」
「そう。だからね。私を守って欲しいの。みんなに」
ティファのやらかしの後、私たちは今までのコア同期以外の方法についても、試行錯誤を続けていた。
まずはオーソドックスな、拠点を守るグループと、広場で戦うグループと、拠点を攻めるグループに分ける方法。
コアを守るのはセシル、広場でカインの行手を阻もうとする相手と戦うのはアンナのグループの役目だ。
初めての戦法でドキドキを感じながら、私は広場からスタートする人たちに薬を配る。
攻城戦が開始してすぐに戦闘になる可能性があるため、各自が自分で薬を使うという方法が採用された。
今までのように私が投げる方法では、どうしても一定の時間が必要になってしまうからだ。
その結果は……。
「やっぱり、サラが薬を使うっていう効果はすごいんだよなぁ」
「そうだねぇ。わたしも、いつもの調子が出なくてかなりやりにくかったよ」
「S級ともなると、皆さんそれなりに強化薬も用意されてきますからね。数では負けてないでしょうが、今までの【二倍の効果】というものをかんがえてしまうと……」
「そうだよな。改めて、薬師の、サラさんのパッシブは優秀だと思い知らされる」
攻城戦が終わり、反省会をカイン、アンナ、ハドラーそしてセシルと共に行っていた。
結果は辛勝。
アンナのグループはなかなか相手を倒しきれず、カインもコアのある広間まではたどり着けたものの、コアの破壊は出来なかった。
時間終了数分前に、セシルのグループが広場まで向かったおかげで得点差で勝つことが出来た。
「やっぱり。サラはスタートは広場からにしてみたらどうかな? そうしたら、少なくとも二つのグループには薬使えるわけだし」
「しかしそれではサラさんが使い終えるまでに、薬の効果なしで相手の攻撃を受けなくてはなりません」
「わたしゃいいアイデアが浮かんだよ! みんなが先に自分で薬を飲んで、後からサラちゃんが薬をみんなに投げてくれりゃいいんだ! どうだい!?」
「それじゃあ、今まで以上にサラさんに薬を用意してもらわないといけないだろ? それは無理だよ」
無理、ではないけれど、確かに実質二倍量を毎回用意するとなると、かなり厳しいのは間違いない。
それをするくらいなら他の方法を考えてくれた方が助かるものだ。
「じゃあさ、毎回。コアを同期させる人をランダムにするってのはどう?」
私だけだと分かってしまえば相手の狙いもつけやすくなってしまう。
だけど、戦うたびに誰かわからなくしてしまえば、相手も的を絞れずにこまるんじゃないだろうか。
「でもさ。そのコアを同期した人はどうするの? 戦いに出て、うっかり死なれたらそれっきりだよ」
「そうだな。もし、戦わずに離れたところに居たら、結局そいつが優先的に狙われるだろうし」
その後も色々と試してみたものの、結果はあまり芳しいものではなかった。
運よく勝ちは続けられているものの、危ない状況になることも多く、少し相手の対応が違えば負けていそうな場面も何度かあった。
そんな試行錯誤を続けていたある日のこと。
授業中に攻城戦の戦法を考えていた私にマリナが話しかけてきた。
「どうしたの? 悩み事?」
「え? あ、うん。ちょっとね……」
そう答えると、マリナは私の隣に座り、話を続けた。
「なになに? 相談なら乗るよ? まさか、恋とか!?」
「違うよ。えっとね、前から言ってるゲームのこと」
「ああ。前オフ会行ったやつね。それがどうしたの?」
「えっとね――」
マリナはオンラインゲームは全くやらないことは知っているのに、不思議となんでも話したくなる不思議な雰囲気を持つ子だ。
私は今考えていた攻城戦のことについて、出来るだけ分かりやすく要点だけを説明した。
全て話し終えると、マリナは顎に手を当てて考えるそぶりを見せた後、こともなげに彼女の考えを述べた。
「ふーん。それってさ。つまり、サラが将棋の王将ってことでしょう? 取られたら負けっていう」
「うん。今までのやり方だとそうなるね。でも、私は強くないから……」
「だったら、サラを守るナイトを周りに置けばいいんじゃないの? どんな攻撃からも守ってくれるような」
「えーそんなの……え、そうかも。いや、でも……」
マリナに言われたことを頭の中で巡らす。
確かに私がコアを同期していることがバレたとしても、私自身が守られるならこれまでのやり方が一番安定して勝てる方法なのかもしれない。
「ありがとう! マリナ!!」
「え? よく分からないけど、どういたしまして」
学校が終わり帰宅した私は、急いでゲームの中にダイブする。
早くマリナから聞いた戦法をみんなに話したくて気が急く。
『みんな。攻城戦について話したいことがあるから、集まれるかな?』
ゲームの中に入ってすぐに、セシルたちにメッセージを送る。
幸い、全員からすぐに集まれると返信が来た。
「どうしたの? サラ。何かいい案見つかった?」
「うん。あのね。やっぱり、今まで通りのやり方が私たちには合ってると思うの」
「今まで通りってのは、サラさんがコア同期するってこと? でもそれじゃ、サラさんが毎回狙われちゃうじゃないか」
「そう。だからね。私を守って欲しいの。みんなに」
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる