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第71話【届かぬ攻撃】
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「みんな、慌てないで! 予定通りいくよ!!」
私は浮足立っているみんなに向かって叫ぶ。
その声が聞こえたのか、ざわついた空気は鎮まる。
おそらく今のは私たちを倒すことよりも、慌てさせることが目的の攻撃。
ここで慌ててしまえば向こうの思うつぼだ。
私はハドラーに目線で合図を送る。
ハドラーも頷き、それを見た私は【神への冒涜】をハドラーに使った。
美男子と言って差し支えのないエルフのアバターであるハドラーは、その肌を漆黒に染め、他の人と同じ様に巨大化していった。
身体の周辺を大樹の枝が覆った様な格好をしたその姿は、ボスモンスターの千樹王に似ていた。
「皆さん。いきます。予定通りにお願いしますね」
ハドラーはそう言うと、自身の使える最大の攻撃魔法の詠唱を始めた。
遠距離攻撃を使える者たちも、自分の最大火力のスキルを準備する。
「【アビスブレイク】!!」
ハドラーの声が高らかに鳴り響く。
通常ならばこの魔法を使うためには、かなりの集中と詠唱時間が必要なはずだけれど、魔神化のおかげで知識が倍増している状態のハドラーは驚くべき速さで詠唱を終えていた。
巨大化したハドラーから放たれた、放電しながら黒く輝く球体が、アーサーに向かって飛んでいく。
それに合わせて他のメンバーも、アーサーに向かって用意していたスキルを解き放つ。
先ほど失敗に終わった一手と同じ様に見えるが、今回はハドラーが魔神化していることが大きな違いだ。
恐らく他のメンバーが放った物理攻撃は、今まで通り尽く弾き飛ばされるだろう。
しかし、そのおかげでアーサーの身体の動きを制限することができる。
そこを襲うのが、ハドラーの魔法攻撃だ。
魔法防御が高いのなら、それを上回る攻撃力を持つスキルで叩けばいい。
シンプルだけれど、それゆえに防ぐ方法は限られる。
仕様上、魔法攻撃はいくらアーサーでも【パリィ】で弾くことはできない。
ならば避けるか。
いくら対個人攻撃魔法だと言っても、それを避けるのにはかなりの集中力が必要だ。
出来ないわけではないけれど、困難を伴うだろう。
そうすればどうなるか。
一緒に放った多くの物理攻撃を避けられなくなる。
カインによれば、アーサーは自分のスキルへの絶対的な自信から、対物理攻撃の装甲は紙らしい。
恐らく全てを受けて無事で済む様なことはないだろう。
これが対アーサーに考えた作戦。
物理を【パリィ】で弾くのなら、ハドラーの超火力の魔法攻撃が襲い、それを避けようとすれば、今度は無数の物理攻撃が襲う。
もし成功してくれれば、アーサーがコアを同期しているのだから、すぐに勝敗が決まる。
私は祈る様な気持ちで、みんなが放った攻撃の行方を見つめていた。
「はやりそうきたか! だが、想定内だ!」
攻撃の矛先を再び向けられたアーサーは、驚く様子もなく、私たちの攻撃を迎え撃った。
先ほどの様に、全ての物理攻撃を弾き飛ばしていく。
しかし、私たちの思惑通り、その場から大きく動くことは難しいらしく、ハドラーの超火力の魔法がアーサーに直撃した。
もちろんこの一撃で倒せるほど甘いとは考えていない。
ハドラーは既に次の攻撃のための詠唱を始めている。
他のみんなも、火力は落ちるものの、次の攻撃スキルの準備をしていた。
クールタイムがあるため、火力の高いスキルは連続して使えないけれど、数さえ揃えれば二番目や三番目の火力を持つスキルでも十分に役に立つ。
それに、使う順番がばらける様に、みんなには事前に示し合わせがなされている。
「くぅ! さすがにこれは堪えるな。連続して食らうとまずいかもしれん」
攻撃を食いダメージを受けたはずのアーサーは、何故か嬉しそうな顔でそんなことを言っていた。
周囲の回復職のおかげでダメージは軽減され、そして回復魔法も施されているけれど、ハドラーの変身時間はまだ十分にある。
相手だってスキルにはクールタイムがある。
いつまでも万全の状態でこちらの攻撃を受け続けることはできないはずだ。
そう思っている間に、ハドラーは第二撃目の詠唱を終えていた。
再び他のメンバーの物理攻撃と一緒に、ハドラーの魔法がアーサーに向かって飛んでいく。
「いいか? 食らう直前だぞ! タイミングが命だ。上手くやれよ!!」
アーサーはそう叫ぶと、身体を今より前に乗り出し始めた。
襲い来る攻撃の雨に立ち向かう様に、ゆっくりと前に進んでいる。
よく見ると【理想郷】のメンバー全体がアーサーに率いられる様に、前に歩を進めていた。
そして、ハドラーの攻撃魔法が再度アーサーにぶつかる直前、それは発動された。
「【聖女の祈り】か! 無駄だ。それで一時的に防いだとしても、【神への冒涜】の効果の方が圧倒的に長い! まさに無駄死にってやつだ!」
私たちのメンバーの誰かがそう言ったのが聞こえた。
本当にそうだろうか。
そんな無駄なことをアーサー率いる最強クラン【理想郷】のメンバーがするだろうか。
「はっ! 何が無駄死にだなんて。これは尊い犠牲ってやつよ!! 一瞬で終わらせてやるんだから」
弓を持ったエルフのアバターをした相手のメンバーがそう叫ぶ。
確か、彼女はケーシー、サブマスターの一人だとカインが説明していた人だ。
「サラさん! 相手の狙いは君だ!!」
突然セシルが叫ぶ。
その言葉に一瞬身体が強張る。
セシルの言葉に周囲も状況を理解したのか、慌てた様子で私を守るための布陣を強固なものにする。
ティファに至っては、相手と同じ様にいつでも【聖女の祈り】を使える様に構えていた。
十秒。
一瞬で過ぎ去るはずのこの時間が、とても長く感じた。
予想通り、近接職も含めた攻撃職全員が、最大のスキルを放つのが鮮明に見えた。
あまりの物量に、私は思わず目をつぶってしまった。
数え切れないほどの攻撃スキルが着弾する音が聞こえる。
しかし私の身体に異常は見られなかった。
みんなが守ってくれたおかげだろうか。
もしかしたら、またティファの犠牲の元に助かったのかもしれない。
永遠にも感じられた一瞬を経て、私は状況を確認するために目を開き、その光景を見た瞬間、最大まで目を見開いた。
そこには想定外の状況が起きていた。
私は浮足立っているみんなに向かって叫ぶ。
その声が聞こえたのか、ざわついた空気は鎮まる。
おそらく今のは私たちを倒すことよりも、慌てさせることが目的の攻撃。
ここで慌ててしまえば向こうの思うつぼだ。
私はハドラーに目線で合図を送る。
ハドラーも頷き、それを見た私は【神への冒涜】をハドラーに使った。
美男子と言って差し支えのないエルフのアバターであるハドラーは、その肌を漆黒に染め、他の人と同じ様に巨大化していった。
身体の周辺を大樹の枝が覆った様な格好をしたその姿は、ボスモンスターの千樹王に似ていた。
「皆さん。いきます。予定通りにお願いしますね」
ハドラーはそう言うと、自身の使える最大の攻撃魔法の詠唱を始めた。
遠距離攻撃を使える者たちも、自分の最大火力のスキルを準備する。
「【アビスブレイク】!!」
ハドラーの声が高らかに鳴り響く。
通常ならばこの魔法を使うためには、かなりの集中と詠唱時間が必要なはずだけれど、魔神化のおかげで知識が倍増している状態のハドラーは驚くべき速さで詠唱を終えていた。
巨大化したハドラーから放たれた、放電しながら黒く輝く球体が、アーサーに向かって飛んでいく。
それに合わせて他のメンバーも、アーサーに向かって用意していたスキルを解き放つ。
先ほど失敗に終わった一手と同じ様に見えるが、今回はハドラーが魔神化していることが大きな違いだ。
恐らく他のメンバーが放った物理攻撃は、今まで通り尽く弾き飛ばされるだろう。
しかし、そのおかげでアーサーの身体の動きを制限することができる。
そこを襲うのが、ハドラーの魔法攻撃だ。
魔法防御が高いのなら、それを上回る攻撃力を持つスキルで叩けばいい。
シンプルだけれど、それゆえに防ぐ方法は限られる。
仕様上、魔法攻撃はいくらアーサーでも【パリィ】で弾くことはできない。
ならば避けるか。
いくら対個人攻撃魔法だと言っても、それを避けるのにはかなりの集中力が必要だ。
出来ないわけではないけれど、困難を伴うだろう。
そうすればどうなるか。
一緒に放った多くの物理攻撃を避けられなくなる。
カインによれば、アーサーは自分のスキルへの絶対的な自信から、対物理攻撃の装甲は紙らしい。
恐らく全てを受けて無事で済む様なことはないだろう。
これが対アーサーに考えた作戦。
物理を【パリィ】で弾くのなら、ハドラーの超火力の魔法攻撃が襲い、それを避けようとすれば、今度は無数の物理攻撃が襲う。
もし成功してくれれば、アーサーがコアを同期しているのだから、すぐに勝敗が決まる。
私は祈る様な気持ちで、みんなが放った攻撃の行方を見つめていた。
「はやりそうきたか! だが、想定内だ!」
攻撃の矛先を再び向けられたアーサーは、驚く様子もなく、私たちの攻撃を迎え撃った。
先ほどの様に、全ての物理攻撃を弾き飛ばしていく。
しかし、私たちの思惑通り、その場から大きく動くことは難しいらしく、ハドラーの超火力の魔法がアーサーに直撃した。
もちろんこの一撃で倒せるほど甘いとは考えていない。
ハドラーは既に次の攻撃のための詠唱を始めている。
他のみんなも、火力は落ちるものの、次の攻撃スキルの準備をしていた。
クールタイムがあるため、火力の高いスキルは連続して使えないけれど、数さえ揃えれば二番目や三番目の火力を持つスキルでも十分に役に立つ。
それに、使う順番がばらける様に、みんなには事前に示し合わせがなされている。
「くぅ! さすがにこれは堪えるな。連続して食らうとまずいかもしれん」
攻撃を食いダメージを受けたはずのアーサーは、何故か嬉しそうな顔でそんなことを言っていた。
周囲の回復職のおかげでダメージは軽減され、そして回復魔法も施されているけれど、ハドラーの変身時間はまだ十分にある。
相手だってスキルにはクールタイムがある。
いつまでも万全の状態でこちらの攻撃を受け続けることはできないはずだ。
そう思っている間に、ハドラーは第二撃目の詠唱を終えていた。
再び他のメンバーの物理攻撃と一緒に、ハドラーの魔法がアーサーに向かって飛んでいく。
「いいか? 食らう直前だぞ! タイミングが命だ。上手くやれよ!!」
アーサーはそう叫ぶと、身体を今より前に乗り出し始めた。
襲い来る攻撃の雨に立ち向かう様に、ゆっくりと前に進んでいる。
よく見ると【理想郷】のメンバー全体がアーサーに率いられる様に、前に歩を進めていた。
そして、ハドラーの攻撃魔法が再度アーサーにぶつかる直前、それは発動された。
「【聖女の祈り】か! 無駄だ。それで一時的に防いだとしても、【神への冒涜】の効果の方が圧倒的に長い! まさに無駄死にってやつだ!」
私たちのメンバーの誰かがそう言ったのが聞こえた。
本当にそうだろうか。
そんな無駄なことをアーサー率いる最強クラン【理想郷】のメンバーがするだろうか。
「はっ! 何が無駄死にだなんて。これは尊い犠牲ってやつよ!! 一瞬で終わらせてやるんだから」
弓を持ったエルフのアバターをした相手のメンバーがそう叫ぶ。
確か、彼女はケーシー、サブマスターの一人だとカインが説明していた人だ。
「サラさん! 相手の狙いは君だ!!」
突然セシルが叫ぶ。
その言葉に一瞬身体が強張る。
セシルの言葉に周囲も状況を理解したのか、慌てた様子で私を守るための布陣を強固なものにする。
ティファに至っては、相手と同じ様にいつでも【聖女の祈り】を使える様に構えていた。
十秒。
一瞬で過ぎ去るはずのこの時間が、とても長く感じた。
予想通り、近接職も含めた攻撃職全員が、最大のスキルを放つのが鮮明に見えた。
あまりの物量に、私は思わず目をつぶってしまった。
数え切れないほどの攻撃スキルが着弾する音が聞こえる。
しかし私の身体に異常は見られなかった。
みんなが守ってくれたおかげだろうか。
もしかしたら、またティファの犠牲の元に助かったのかもしれない。
永遠にも感じられた一瞬を経て、私は状況を確認するために目を開き、その光景を見た瞬間、最大まで目を見開いた。
そこには想定外の状況が起きていた。
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