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妹を庇ったら婚約破棄された、なので私は自由の身です。<後>

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「そんなの、ぎぬだわ!どこにそんな証拠しょうこが…!」

「証拠は、ここだ。」

「あ、あなただれ!…お姉様、この男はあなたの仲間!?」
 
「俺はある人物にやとわれた者だ。俺はあることを調べていたんだが…そのさいエミリー、君の計画を知ったんだ。この男が、これまでのことをすべいてくれたよ。」

「す、すまない、エミリー!でも俺、こんなことを手伝うのはもういやなんだ。」

「ちょっと、名前を呼ばないで!私、あんた何て知らないから!」

「エミリー、見捨みすてないでくれよ。…俺をさんざん利用したくせに、ひどいじゃないか!」

「おい、エミリー。守って欲しいと言ったのに、お前、俺をだましていたのか!?」

「シオン様、これは、その…。」

「…シオン様、騙されたって言ってますけど、あなたも人のこと言えないんじゃなくて?」

「メアリ―、何が言いたい。」

「俺が調べてたのは、あんただよ…シオン様。あんた、いろんなご令嬢れいじょう言葉巧ことばたくみにあやつって、お金を騙し取ってただろう。そのお金で、また違う女性に手を出して…そんなことを何回も繰り返していた。今度はエミリーでも、ねらうつもりだったか?まあ、悪者同士わるものどうし似合にあいだけどな。2人仲良く取り調べなり、うったえてもらうなりすればいいさ。」

「そんな…お姉様、ゆるしてよ!」

「おいメアリー、お前婚約者ならどうにかしろよ!」

「エミリー、あなたをかばい続け犠牲ぎせいになった私の時間、傷のない体…もう帰ってこないのよ。私、あなたを許すつもりないから。それにシオン様、あなたさっき私に婚約破棄こんやくはきげたでしょう?あなたとはもう赤の他人ですから、助ける義理ぎりはありません。これで私は、妹からも婚約者からも、晴れて自由の身となりました。あとは、好きにさせてもらいますよ…縁を切るなり、訴えるなり、私の自由にね。」

※※※

「それで、エミリーとシオンを訴えることに。」

「妹を庇ってこんな傷跡きずあとまで残ったんですもの。あの男にも、汚いだの散々侮辱さんざんぶじょくされましたしね。これで、スッキリしました。あなたに声をかけられた時は驚いたけど、信じて良かったです。」

「汚い何て…あの男、そんな酷いことを言ったのか。君は汚くなんかない、とっても綺麗きれい…あ、っと。」

 彼はコホンと咳払せきばらいして、私から目をらした。
 私は思わず、クスクスと笑ってしまった。

「…俺は、基本は依頼内容いらいないようとは関係ないことまでは、首を突っ込まない主義しゅだ。でも、君が妹を必死ひっしで庇う姿を見てたら、目がはなせなくなって。どうしても、君を助けたくなった。」

 そう言って彼は、今度こそずかしそうに顔をそむけた。

 …この人、ぶっきらぼうだけど、本当は優しい人なのよね。
 そして、ちょっぴり照れ屋さんだわ。

「…私、言ったでしょ。私は晴れて自由の身となった。あとは、好きにさせてもらうって。だから私、あなたのこともっと知りたいわ。まずはあなたの名前、教えてくれる?」

「俺の名は─。」

※※※

 妹を庇ったら、婚約破棄された。

 そうして自由の身になった私は、新たなこいを始めようとしている─。
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