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08.兄妹
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「いいの? 読みたいっ」
本当は、アートレイドより余程あの書庫に入り浸りたい気分だったのだ。
あそこの本が読めなくても、新しい本が読めるならそれでもいい。この姿になってから、まともに本を読めなかったから。
「じゃあ、ぼくの部屋へおいで。アートレイド、構わないかな」
「もちろんです。シェイナ、おとなしくしてろよ」
横でうろうろされるより、アートレイドもその方がずっと作業に集中できる。
「本を読みながら、どうやって暴れろって言うのよ」
「はは、そうだね。じゃあ、行こうか、シェイナ」
ユーリオンに促され、シェイナは部屋を出て行った。その後ろ姿を見て、アートレイドはほっとする。
「……アート?」
「え? ああ、シェイナの奴、すごく喜んでるなって思って。久しぶりに人間扱いしてもらったから」
「そうなの? だけど、今までアートが会った人って、魔法使いが多かったんじゃないの? 事情を話せば、シェイナが人間だってことはちゃんとわかってるはずでしょ」
妹が呪いでねこにされた、と話しているのだから、シェイナが黒ねこの姿であっても、魔法使いには人間だとわかるはず。
「うん。俺が会った魔法使い達は、ネイロスさん達みたいにシェイナが呪いをかけられてるってことをちゃんとわかってくれたよ。彼女が人間だってことをね。だけど、どうしてもみんな、シェイナの見た目で対応してしまうんだ。特にねこが好きな人は、ねこを扱うようにシェイナを扱って……本当のねこかわいがりだよ。中身はフローゼと変わらない女の子だから、後でいっつも怒ってた」
今のシェイナは、十五歳。思春期まっただ中だ。背伸びし、大人のように振る舞おうとする子も多い。
本来なら「難しい年頃」と言われる少女が、子ども扱いどころか単なるねこのように頭をなでられたりする。
そのことにシェイナが怒りを覚えても、仕方がない。
好きでねこになった訳ではないし、こんな姿でいることに嫌悪感だってあるのに。
しかし、相手は自分を元に戻してくれるかも知れない、もしくはその情報を持っているかも知れない。
そう思うと、その場でわめき散らす訳にもいかなかった。その結果、後でアートレイドがグチを延々と聞かされることになるのだ。
冷たい目で見られるよりいい。不気味がられるよりいい。
アートレイドがそう言ったところで、自分に向けられる行為を全て受け入れるまでには、シェイナもまだ大人ではないのだ。
しかし、さっきのユーリオンは普通に対応してくれていた。シェイナも本が読めることを喜び、機嫌よく部屋を出て行った。
それを見て、アートレイドも安堵感を覚えたのだ。いわゆる「大人の対応」がありがたかった。
「じゃ、書庫へ行って来るよ」
アートレイドは、足早に部屋を出て行った。
「相当苦労しているようだな」
少年の後ろ姿を見て、ネイロスがつぶやく。フローゼも、黙って彼の後ろ姿を見送った。
☆☆☆
予想はしていたが、その日のうちにそれらしい記述のある魔法書を見付けることはできなかった。
探す時間も短かったので、そう簡単に見付かるとは思っていない。
次の日もアートレイドは書庫にこもり、どこかに呪いを解く方法、もしくは変化の術そのものについて書かれていないかを探し続ける。
ネイロスの記憶では、古い魔法書にそういった術に関する記述があった、ということのようだ。
アートレイドは、年代物の方から探し始めていた。なので、時間が無駄にならずに済んでほっとしたのも束の間、この書庫にあるのは古い魔法書の方が多い。半分以上を占めるので、結局あまりなぐさめにはならなかった。
ユーリオンも手伝ってくれるが、彼も時間をもてあましている訳ではない。どうしても手の空いたわずかな時間しかなく、結局はアートレイド一人だ。
フローゼはユーリオンから少しだけ魔法を習っていたので、一応魔法書を読むことができる。家事の合間のわずかな時間ではあるが、アートレイドより時間はかかりながらも手伝ってくれた。
「シェイナはどうしてた?」
夕暮れより少し早い頃。
フローゼが時間をつくり、また書庫に現れた。アートレイドは書庫にこもったままだったが、その間ずっと妹を放ったままにしていたことを思い出す。
「ずっとお父さんの部屋にいるわ。新しい本を読むのが楽しくて仕方がないって感じね。夢中って、ああいう状態を言うんだなぁってことがわかったわ」
ねこの手で器用にページをめくり、書かれていることを隅から隅まで読んでいる。集中しているのを邪魔するのも悪いので、フローゼは昼食の時以外は声をかけないでいた。
今シェイナが読んでいるのは、ユーリオンの本。所有者から「傷が付いても気にしなくていいよ」と言われたこともあってか、気負うことなく本に触れている。
もちろん、シェイナもそれなりに気を付けてはいるが、気楽に読めるから楽しんでいるようだ。
「そうか。あいつ、家でもそんな感じだったからなぁ」
我が妹ながら、あの集中力は尊敬に値する、とアートレイドはいつも感心しているのだ。
「ねぇ。シェイナの青い目は、人間の時もそうなの?」
「うん。俺は茶色だけどね。俺は母親似で、シェイナは父親に似たんだ。黒ねこになったのは、たぶん髪の色が影響してるんじゃないかな」
本当のシェイナは、長く真っ直ぐな黒髪をポニーテイルにしていた。
今の姿にされて思ったが、元々ねこっぽい雰囲気を持っている。魔女リュイスがシェイナをねこにしたのは、その雰囲気のせいか、偶然なのか。
「それじゃ、私みたいに茶色の髪なら、そういう体毛のねこになってたかもね」
「うん、たぶん」
「普段のシェイナって、どんな女の子なの?」
「どんな……んー、本人が聞いたら突っかかってきそうだけど。本を読んでいる時は当然おとなしいけど、普段のシェイナはかなりお転婆なんだ。気が強いって言うのかな」
村の悪ガキに髪を引っ張られ、取っ組み合いのケンカをしたことは何度もあった。相手が男の子でも構わず、シェイナの方が泣かせることもしばしば。
「何度止めに入ったか、忘れたな。ああ見えて……あ、今の姿じゃわからないけど、かなりケンカっ早い部分があってさ、ヤオブも困ってたよ。お転婆って言葉でおさまるかな。ケンカの時に魔法を使わなかったのは、唯一ほめられるけど。あれは使うのを忘れて、直接手を出してただけだろうな」
アートレイドの話に、フローゼはくすくす笑う。
「本が好きな人って、物静かなイメージがあるけど」
「シェイナは、絶対その中には入らないよ。極端なんだ」
「そう言えば、最初の魔物への攻撃は、シェイナの爪だったわね」
魔物の顔に飛びかかり、その爪で引っ掻いていた。
「確かに、ねこの爪は武器になるけど、それに慣れられるのも困るな。相手にもよるけど、ケンカは口だけにしてほしいよ。……あんまり口が悪いのも、考えものだけど」
「元気な女の子なのね。……うらやましいわ。アートは、本当にシェイナを大切にしてるのね」
「うらやましい?」
「だって、妹をとっても大切にしてるって感じが、今の口調からよくわかるもん。私には兄弟姉妹がいないから、そういうのってうらやましい」
兄弟どころか、フローゼには血のつながった肉親が一人もいない。たった一人でも、存在するのとしないのでは大きな違いだ。
「養い親はいたけど……俺が守ってやらなきゃって、小さい頃から思ってた。なりきれるはずはないけど、親父代わりにならないといけないって」
それなのに、街へ出るために妹を置いて行こうとした。いくらシェイナが反対しなかったとは言え、そうするべきではなかったのだろうか。
アートレイドが街へ出ることを考えなければ、シェイナは魔女の山へ薬草を採りに行くこともなく、ねこにされることもなかったのか。
しかし、ずっと村にいれば生活に困る訳で……。何が正解なのか、わからない。
「私は、両親の思い出がないの。小さかったしね。残ってるとすれば、形見だよって最近渡された、このペンダントくらいかしら」
フローゼの胸には、白い玉が三つ連なったペンダントがあった。
親指の爪くらいの大きな玉を、小指の爪くらいの小さな玉が挟むようにして並んでいる。通されているのはチェーンではなく、細く黒い紐だ。一見しただけでは、何の素材かわからない。
素材がわからないのは、ペンダントトップの玉も同じだ。
白いと言っても、真っ白ではない。薄く黄みがかっていて、年季が入っているように見える。両親の持ち物だったのなら、本当に長い年月が経っているせいかも知れない。
不透明なので、水晶ではないだろう。真珠でもなさそうだが、アートレイドは宝石に詳しくないので、本当に真珠ではないとも言い切れなかった。
しかし、シンプルな白でありながら、きれいだと思える。
「だけど、ある意味では私って幸せ者よね。育ての親が三人もいるんだもん。おじいちゃんも入れれば四人になるし。これ以上ぜいたく言うと、天国のお父さんとお母さんに叱られるわね」
そう言って、フローゼは笑う。
「あ、そうだわ。ねぇ、アート。夕食の後は、もう書庫に入らないでね」
本当は、アートレイドより余程あの書庫に入り浸りたい気分だったのだ。
あそこの本が読めなくても、新しい本が読めるならそれでもいい。この姿になってから、まともに本を読めなかったから。
「じゃあ、ぼくの部屋へおいで。アートレイド、構わないかな」
「もちろんです。シェイナ、おとなしくしてろよ」
横でうろうろされるより、アートレイドもその方がずっと作業に集中できる。
「本を読みながら、どうやって暴れろって言うのよ」
「はは、そうだね。じゃあ、行こうか、シェイナ」
ユーリオンに促され、シェイナは部屋を出て行った。その後ろ姿を見て、アートレイドはほっとする。
「……アート?」
「え? ああ、シェイナの奴、すごく喜んでるなって思って。久しぶりに人間扱いしてもらったから」
「そうなの? だけど、今までアートが会った人って、魔法使いが多かったんじゃないの? 事情を話せば、シェイナが人間だってことはちゃんとわかってるはずでしょ」
妹が呪いでねこにされた、と話しているのだから、シェイナが黒ねこの姿であっても、魔法使いには人間だとわかるはず。
「うん。俺が会った魔法使い達は、ネイロスさん達みたいにシェイナが呪いをかけられてるってことをちゃんとわかってくれたよ。彼女が人間だってことをね。だけど、どうしてもみんな、シェイナの見た目で対応してしまうんだ。特にねこが好きな人は、ねこを扱うようにシェイナを扱って……本当のねこかわいがりだよ。中身はフローゼと変わらない女の子だから、後でいっつも怒ってた」
今のシェイナは、十五歳。思春期まっただ中だ。背伸びし、大人のように振る舞おうとする子も多い。
本来なら「難しい年頃」と言われる少女が、子ども扱いどころか単なるねこのように頭をなでられたりする。
そのことにシェイナが怒りを覚えても、仕方がない。
好きでねこになった訳ではないし、こんな姿でいることに嫌悪感だってあるのに。
しかし、相手は自分を元に戻してくれるかも知れない、もしくはその情報を持っているかも知れない。
そう思うと、その場でわめき散らす訳にもいかなかった。その結果、後でアートレイドがグチを延々と聞かされることになるのだ。
冷たい目で見られるよりいい。不気味がられるよりいい。
アートレイドがそう言ったところで、自分に向けられる行為を全て受け入れるまでには、シェイナもまだ大人ではないのだ。
しかし、さっきのユーリオンは普通に対応してくれていた。シェイナも本が読めることを喜び、機嫌よく部屋を出て行った。
それを見て、アートレイドも安堵感を覚えたのだ。いわゆる「大人の対応」がありがたかった。
「じゃ、書庫へ行って来るよ」
アートレイドは、足早に部屋を出て行った。
「相当苦労しているようだな」
少年の後ろ姿を見て、ネイロスがつぶやく。フローゼも、黙って彼の後ろ姿を見送った。
☆☆☆
予想はしていたが、その日のうちにそれらしい記述のある魔法書を見付けることはできなかった。
探す時間も短かったので、そう簡単に見付かるとは思っていない。
次の日もアートレイドは書庫にこもり、どこかに呪いを解く方法、もしくは変化の術そのものについて書かれていないかを探し続ける。
ネイロスの記憶では、古い魔法書にそういった術に関する記述があった、ということのようだ。
アートレイドは、年代物の方から探し始めていた。なので、時間が無駄にならずに済んでほっとしたのも束の間、この書庫にあるのは古い魔法書の方が多い。半分以上を占めるので、結局あまりなぐさめにはならなかった。
ユーリオンも手伝ってくれるが、彼も時間をもてあましている訳ではない。どうしても手の空いたわずかな時間しかなく、結局はアートレイド一人だ。
フローゼはユーリオンから少しだけ魔法を習っていたので、一応魔法書を読むことができる。家事の合間のわずかな時間ではあるが、アートレイドより時間はかかりながらも手伝ってくれた。
「シェイナはどうしてた?」
夕暮れより少し早い頃。
フローゼが時間をつくり、また書庫に現れた。アートレイドは書庫にこもったままだったが、その間ずっと妹を放ったままにしていたことを思い出す。
「ずっとお父さんの部屋にいるわ。新しい本を読むのが楽しくて仕方がないって感じね。夢中って、ああいう状態を言うんだなぁってことがわかったわ」
ねこの手で器用にページをめくり、書かれていることを隅から隅まで読んでいる。集中しているのを邪魔するのも悪いので、フローゼは昼食の時以外は声をかけないでいた。
今シェイナが読んでいるのは、ユーリオンの本。所有者から「傷が付いても気にしなくていいよ」と言われたこともあってか、気負うことなく本に触れている。
もちろん、シェイナもそれなりに気を付けてはいるが、気楽に読めるから楽しんでいるようだ。
「そうか。あいつ、家でもそんな感じだったからなぁ」
我が妹ながら、あの集中力は尊敬に値する、とアートレイドはいつも感心しているのだ。
「ねぇ。シェイナの青い目は、人間の時もそうなの?」
「うん。俺は茶色だけどね。俺は母親似で、シェイナは父親に似たんだ。黒ねこになったのは、たぶん髪の色が影響してるんじゃないかな」
本当のシェイナは、長く真っ直ぐな黒髪をポニーテイルにしていた。
今の姿にされて思ったが、元々ねこっぽい雰囲気を持っている。魔女リュイスがシェイナをねこにしたのは、その雰囲気のせいか、偶然なのか。
「それじゃ、私みたいに茶色の髪なら、そういう体毛のねこになってたかもね」
「うん、たぶん」
「普段のシェイナって、どんな女の子なの?」
「どんな……んー、本人が聞いたら突っかかってきそうだけど。本を読んでいる時は当然おとなしいけど、普段のシェイナはかなりお転婆なんだ。気が強いって言うのかな」
村の悪ガキに髪を引っ張られ、取っ組み合いのケンカをしたことは何度もあった。相手が男の子でも構わず、シェイナの方が泣かせることもしばしば。
「何度止めに入ったか、忘れたな。ああ見えて……あ、今の姿じゃわからないけど、かなりケンカっ早い部分があってさ、ヤオブも困ってたよ。お転婆って言葉でおさまるかな。ケンカの時に魔法を使わなかったのは、唯一ほめられるけど。あれは使うのを忘れて、直接手を出してただけだろうな」
アートレイドの話に、フローゼはくすくす笑う。
「本が好きな人って、物静かなイメージがあるけど」
「シェイナは、絶対その中には入らないよ。極端なんだ」
「そう言えば、最初の魔物への攻撃は、シェイナの爪だったわね」
魔物の顔に飛びかかり、その爪で引っ掻いていた。
「確かに、ねこの爪は武器になるけど、それに慣れられるのも困るな。相手にもよるけど、ケンカは口だけにしてほしいよ。……あんまり口が悪いのも、考えものだけど」
「元気な女の子なのね。……うらやましいわ。アートは、本当にシェイナを大切にしてるのね」
「うらやましい?」
「だって、妹をとっても大切にしてるって感じが、今の口調からよくわかるもん。私には兄弟姉妹がいないから、そういうのってうらやましい」
兄弟どころか、フローゼには血のつながった肉親が一人もいない。たった一人でも、存在するのとしないのでは大きな違いだ。
「養い親はいたけど……俺が守ってやらなきゃって、小さい頃から思ってた。なりきれるはずはないけど、親父代わりにならないといけないって」
それなのに、街へ出るために妹を置いて行こうとした。いくらシェイナが反対しなかったとは言え、そうするべきではなかったのだろうか。
アートレイドが街へ出ることを考えなければ、シェイナは魔女の山へ薬草を採りに行くこともなく、ねこにされることもなかったのか。
しかし、ずっと村にいれば生活に困る訳で……。何が正解なのか、わからない。
「私は、両親の思い出がないの。小さかったしね。残ってるとすれば、形見だよって最近渡された、このペンダントくらいかしら」
フローゼの胸には、白い玉が三つ連なったペンダントがあった。
親指の爪くらいの大きな玉を、小指の爪くらいの小さな玉が挟むようにして並んでいる。通されているのはチェーンではなく、細く黒い紐だ。一見しただけでは、何の素材かわからない。
素材がわからないのは、ペンダントトップの玉も同じだ。
白いと言っても、真っ白ではない。薄く黄みがかっていて、年季が入っているように見える。両親の持ち物だったのなら、本当に長い年月が経っているせいかも知れない。
不透明なので、水晶ではないだろう。真珠でもなさそうだが、アートレイドは宝石に詳しくないので、本当に真珠ではないとも言い切れなかった。
しかし、シンプルな白でありながら、きれいだと思える。
「だけど、ある意味では私って幸せ者よね。育ての親が三人もいるんだもん。おじいちゃんも入れれば四人になるし。これ以上ぜいたく言うと、天国のお父さんとお母さんに叱られるわね」
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