オルタナティブ・フロンティア

ゆいすな

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名古屋市解放戦線

第2話 作戦会議を始めましょう(後編)

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オルタナティブ・フロンティア 作者:ゆいすな
第1章 名古屋市解放戦線
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第2話 作戦会議を始めましょう(後編)
「さてと、今回の作戦の目標は、愛知県代表の撃破です。とりあえずは大まかな作戦を伝えますね。まず主力部隊として椎名先輩、凛ちゃん、それと援護役で愛の三名で愛知県代表を叩いてください。次にサブ部隊で亜利沙さん、隊長の二名で愛知県代表の護衛がいると思うので、その護衛を殲滅してください。それ以外の者はバックアップとして増援が無いか周囲の安全確保をお願いします。」
「「「「「了解!」」」」」
自分も入れて5人全員が何の迷いもなくその作戦に従うことにしたのはやはりそれだけ久木田への信頼が厚いからだろう。彼女が出来るというのならそれは間違えなく僕たちに出来るのだから。
「1つだけ確認良いかな?」
と凛が久木田に話しかけたのに対して、久木田が首を縦にコクッと振る。
「えっと、愛知県代表の確か名前は……霧島莉音、の能力って何なの?能力によっては無能力の私じゃ太刀打ち出来ないかもしれないし。」
その凛の質問に対してまったく間を開けずに久木田が答える。やっぱり今回の編成はじっくり彼女なりに考えたうえで組まれているのだろう。
「そうですね、でも今回に限っては大丈夫だと思います。」
「まぁ詩絵菜がそう言うならそうなのだろうけど、一応その根拠は?」
「えっとですね、霧島莉音の能力は現時点では不明です。ですが、過去の戦闘の情報を見る限り念動力の亜種に分類される能力だと思います。恐らくは、一点に力を掛けて物を吹き飛ばす能力だと思います。」
「え、でもそれって別に私の戦闘スタイルと相性良いわけじゃ無いよ?むしろ相手に近づかなきゃいけないだけ相性悪いんじゃ無いの?」
「確かにそうですが、この能力って使い方次第では銃弾とか全部皮膚に触れる直前に弾かれでしまうので近接のお二人で戦ってもらうしか無いんですよね。」
「それじゃあ愛ちゃんの狙撃だって通らないんじゃ?」
とここで僕が気になった疑問を言うと、
「いえ、椎名先輩。恐らくは私の能力は通ります。」
愛ちゃん本人から答えを貰うことが出来た。
「愛ちゃんの能力って、確かさっき『座標狙撃』って言ってたっけ?」
「はい、そうですよ。私の能力『座標狙撃』も念動力の亜種に分類されるんですけど、文字通り座標を決めて、その座標に遠距離から力を加えるという能力です。制限としては、自分から半径2kmを越す距離の狙撃は正確性と威力が大幅に低下することと、自分がその座標を何らかの形で知覚していることです。あ、ただし画面越しに見てる場合は自分との距離は自分と画面の距離と画面と座標の距離の和になるので、そういった使い方も出来ます。」
何なんだろうこの能力って普通に最強クラスじゃないだろうか?、とか内心思いながらもとりあえずもう少しその能力について聞いてみる。
「なるほど、ちなみにどのくらいの威力が出るの?」
「そうですね……このスナイパーライフルに演算の補助をしてもらってはいるんですけど、恐らく鉄筋コンクリートを粉砕するくらいなら……」
とりあえずびっくりしたのが、彼女が店に入ってきた時に背中に背負っていたリュックの中身がスナイパーライフルだったことだった。これはこの場で彼女には逆らわない方が身のためだろう。
「ということは僕と凛が相手の攻撃を受け止めてるあいだに、愛ちゃんが能力を使って倒す、っていう感じで良いの?」
僕が久木田に確認すると、
「いえ、先輩。今回はあくまで愛はお二人の援護です。」
と返ってきたが、どういうことだろう。
「あ、椎名先輩、恐らく私の能力を使った場合、霧島さんはほぼ確実に死んでしまうからじゃ無いでしょうか?」
「愛の言う通りです。愛の能力で決着をつけた場合、相手は確実に死ぬか、体の一部を失うくらいの傷を負います。それは、作戦完了後のことを考えるとあんまり良くありませんので、今回はお二人で協力して決着をつけてください。」
「まあ、久木田がそう言うならそうなんだろうし分かったよ。」
「うん、私も詩絵菜の言うことに異論は無いよ。」
と僕も凛も確認が済んだところで、
「それでは作戦決行時刻を通達しますね。明後日の朝4時半に愛知県庁前に集合してください。5時より作戦行動を開始します。」
さすがにこれにはみんなも驚いたようで、普段口出しをあまりしない隊長が、
「流石に朝早すぎないか?その時間だと……まさか寝込みに不意打ちをかけるつもりか?」
と聞くと、
「いやいや、そんな卑怯な勝ち方しようとは思いませんよ。それでは質問です。明日からの名古屋祭りですが、2日目の明後日の朝に毎年必ずあるイベントと言えば?」
考えるが、誰も思いつかないようで、沈黙が流れる。
「それじゃあ、1つヒント。もし私たちが勝ったとしても、それを世間に伝える前に捻じ伏せられてしまったら意味がありません。ですので、私たちは勝ったことを世間に伝え、それと同時に近隣の都道府県が代表戦を仕掛けてくる口実を潰さなくてはなりません。」
そのヒントを受けてどうやら亜利沙さんが気付いたようで、
「なるほど。毎年名古屋祭り2日目の朝に、県庁前で県代表が挨拶するじゃない?それの生放送をするために県庁付近に集まっているマスコミを使って、生放送で勝利宣言をするっていうことね?確かに生放送なら隠蔽も何も無いけれど、もう一個の口実潰しはどうするん?」
「亜利沙さん正解です。口実潰しについては、既に考えてありますが、その時のお楽しみということで。ヒントだけ言っておくと、その口実潰しをするために今回は愛に援護に回ってもらってるんです。」
さっきのヒントかどうかすら分からなかったヒントだけで、答えを導いた亜利沙さんに感心しつつ、結局久木田の『お楽しみ』は誰も分からなかったようだった。

その後は、より細く作戦のことを伝えた後に少し気が抜けたのか、みんなで談笑していたらあっという間に日暮れになってしまった。最後に明日1日をどうするか話していたら、
「みなさん、もう訓練は十分やってますし、明日は作戦前ということで少し息抜きでもしてください。」
と久木田が提案するが、
「え、でも、作戦前だからこそみんなで訓練しといた方が……。」
と凛が反論する。
「ダメだよ、凛ちゃん。そんなに硬くなってたら。どうでしょう、明日は名古屋祭り期間中で一部の施設が無料なので、みんなで遊んできたら?」
僕も訓練しときたいとは思うが、確かに直前まで根を詰めるのは良く無いともいうし、ここは遊びにでも行って少しリフレッシュしとくのも良いかな、と思った。それにまだ愛ちゃんとはあまり話したことが無いので、明日少し話すことが出来るかもしれないし。どうやら凛も同じ意見に辿り着いたらしく、みんなで遊びに行くことになった。
「それじゃあ、明日どこ行く?」
凛がみんなを見渡しながら聞くと、
「僕はみんなに任せるよ。」
と僕が答え、
「うちは、今日は少し暑いし、屋内が良いかなぁ~。」
と亜利沙さんが要望を言い、
「俺は別に行かないぞ、若者同士色々と楽しんでくると良いだろう。」
と隊長がいつも通りのことを言い、
「私は、先輩方の意見に合わせます‼」
と愛ちゃんが言う。
「普段の食事の時とかも思うけど、和馬の『なんでも良い』が1番困る。うーん、詩絵菜は?」
凛が少し呆れたように僕に言いながら、久木田の方に意見を求める。
「あ、いえ、私は少しやることがあるので行きませんよ。」
と久木田が予想外の答えを返してくる。遊びに行くのを勧めてきたのは、お前だろうに。
「え、詩絵菜来ないの?」
と凛も驚いたようで、久木田に質問するが、どうせこの後輩の事だし『やる事』の内容は教えては貰えないのだろう。
「うん、ごめんね。というわけで4人でどっか行って息抜きしてきてください。」
「そっか~、詩絵菜お姉ちゃん来ないのか~。」
少し残念そうな表情を愛ちゃんがする。いや、残念そうとは少し違うのだろうか?
「まあ、やる事あるなら仕方ないか、どうせその内容は『お楽しみ』なんでしょ?」
凛がさっき僕が思った事と同じ事を言うと、返答は予想通りのものだった。
「じゃあ、みんなの意見を統合して、水族館っていうのはどう?」
凛がそう提案しつつ周りにいるみんなを見渡す。
「うん、賛成。」「良いね~、水族館。愛ちゃ~ん、明日はいろんな事しようね~。」「あ、亜利沙さん、離してくださいー‼あ、私も水族館行きたいです。」
僕、亜利沙さん、愛ちゃんの順に、みんな賛成したので、明日の行き先は名古屋港水族館に決定になった。
明日の待ち合わせ時間を決めた後、その日はお開きになったが、女子たちは
「女子のお出かけには、それ相応の準備が必要なのよ。」
と言って、どこかに買い物に行くようなので、僕は1人で家に帰ることにした。

今日待ち合わせをした喫茶店から家までは歩いて帰ると1時間半程かかるので、普段なら電車を使って帰るところなのだが、帰っても特にすることもなく、喫茶店で少し食べ過ぎてしまったので歩いて帰ることにしたのだった。だったのだが、何故40分程の前の自分はおとなしく電車に乗らなかったのか、と少し前の自分を恨む。
帰り道の途中にある公園のベンチで少し休憩しながら、自分の前で母親に手を引かれて楽しそうに家に帰っていく子供たちの様子を眺めていると、
「もしもし、そこのお兄さん、お兄さん?」
横から声をかけられた。声のした方を向くと、そこに座っていたのは少し茶色がかった黒髪の少女だった。
「ん、君は道にでも迷っちゃったのかな?」
家への帰り道がわからず迷子にでもなってしまったのだろう。子供に接する態度でそう聞いてみると、
「うちを子供扱いするんじゃないの!うちは単にお兄さんがじっと子供の方を見ていたから、てっきり不審者かと思って声をかけただけなの!」
どうやら僕は端から見たら不審者だったらしい。というか不審者だと思ったのなら、声をかけずに逃げるべきだろう。
「そっか。道に迷ってるとかじゃなくて良かったよ。」
「ぐっ……道には、迷っているけど…。」
ふむ、あながち間違ってなかったらしい。
「そっかそっか、でお家はどこにあるのかな?」
「だから、うちを、子供扱いするな、と言ったでしょ!」
顔を真っ赤にして怒られてしまった。どうやら難しい年頃なのだろう、うん。
「それにうちが探してるのは家じゃないの。」
「それなら君はどこを探してるんだい?」
「うん、これもなんかの縁かも。お兄さん、こっから愛知県庁に行くにはどうすれば良いの?」
「愛知県庁……もしかしたら親御さんでも働いてるのかな?」
「まあ、そんなところなの。だから道を教えて欲しいの。」
こんな子供が…まさか考えすぎか…。
「えっとね、そこの道をそっちに行って…口で説明するのは難しいなあ。端末って持ってる?」
指で方向を指しながら説明しようと思ったが、やってみると意外と難しいな、これ。そんな訳で、端末で地図を描いて、それを相手に送る作戦に変更する。
「うーん、持ってるけど、少し特別な端末で、普段は使えないの。」
作戦変更後、5秒で作戦失敗である。仕方なく、紙を持ち合わせていたので、そこに地図を描いて、少女に渡す。
「はい、今ここだから、この線の通りに行けば大丈夫だよ。」
地図を指で指して教えると、少女は元気に
「分かったの。お兄さん、ありがとうなの!」
と言って、ベンチから立つ。
少女は2、3歩進んだところで、こちらを振り替えり、
「お兄さん、お兄さんの名前聞いても良いの?」
と聞いてくる。
「別に良いけど。僕は、椎名和真だよ。」
「なるほど、お兄さんが、そう……、面白いお土産話が出来たわ。」
一瞬少女が今までにない気迫を発したかと思ったが、どうやらそれは僕の気のせいだったのだろう。次の瞬間、少女は普通にさっきまでと同じ可愛らしい笑顔をしていた。
「ところで、僕の方こそ、君の名前を聞いてなかった気がするな。聞いても良いの?」
「人の口癖をバカにしないでください、お兄さん。うちは、水梨冴江って言うの。あ、もうそろそろ行かないと、約束の時間に遅れちゃうの。それじゃあ、お兄さん、またいつか、なの。」
少女、いや冴江ちゃんは、名前を名乗ると地図の通りに走って行ってしまった。
とはいえ冴江ちゃんが一瞬発した気迫は本当に勘違いだったのだろうか。

「なるほどね、まさかあんなところで、あの人の遺作に出会うとは、驚いたの。でも、今のお兄さんは失格かな。まだ椎名どころか秕なの。ふふっ、これは意外と明後日のイベントも楽しめるかもしれないの。」
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