付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ

文字の大きさ
24 / 40
1章

第二十四話:彼女の嗜好

しおりを挟む
「ぁ――っ……はぁ~」

 一ノ瀬綾乃は目を覚まして、枕元のスマホを見ると既に九時を過ぎていた。

 彼女は休日でも毎朝目覚ましを掛けているのだが、一時間以上も寝過ごしている。
だというのに余り睡眠をとった気はしなかった。

 怠い、眠い、身体はそう訴えている癖に、

「どうしよう、会いたい……」

 寝起き一番で思うのは、彼氏の事だった。

 数日前に恋人になってから常に顔を合わせ、昨日はデートまでした筈なのだが……まだ足りないらしい。

 スマホの画面を操作して彼に『今日、暇?』とメッセージを送ろうとして、はたと思う。

 昨日一日中デートしたのに今日も、となると迷惑かもしれない。

 彼にも友人との付き合いもあるし、趣味もあるだろう。

 自分の為に休日を全て潰させるには流石に気が引けた。

「まぁ、どうせ話すタイミング位あるだろうし……」

 あまり構って貰うのを要求して煙たがられるのも避けたい所。

 無性に、そして今すぐ顔を見たいし声を聞きたい気分なのだが少し位は自重しよう、とスマホの電源キーを押した直後、その彼――上条悠斗から通話の着信。

「ひゃっ!?」

 慌てて電話に出た。

「な――何!?」

『おっ、びっくりした!』

 悠斗がスマホを耳から離したのが分かった。

「あ、ごめん」

『いや、大丈夫。――それより、そっちは大丈夫か?』

「え、何が?」

『いや、綾乃がこの時間までカーテン閉めっぱなしなのは珍しいからさ。体調でも悪いのかなって』

 言われて、カーテンを開けると窓の向こうで悠斗が小さく手を上げた。

 通話を切って窓を開ける。

「ちゃんと寝れてないのか?」

「あー、うん。でも平気。ただアンタの事、考えてたらドキドキして寝れなかっただけだから」

 自然と口をついた言葉に、

「……え」

「あ……」

 数秒の沈黙後、悠斗は笑いを溢した。

「何だ、綾乃もか」

「“もか”って……何よ」

 顔を赤くさせる綾乃に、悠斗は照れくさそうに、

「俺も中々、寝れなかったよ。昨日はおじさんと話せたからか、昔の事を思い出しちゃってさ」

 「あ、あぁ――そう……」
 
 また少しだけ間が空いて、

「風邪とかじゃないなら安心した。寝不足なら今日はゆっくりしていると良いよ……出来れば今日も一緒に居たかったけど、それじゃ綾乃も窮屈だもんな」

 言われて綾乃は、はっとした。そして、嬉しい様な恥ずかしい様な気分になる。

 ……彼も同じことを思っていた様だ。

「それじゃ、今日はのんびりって事で」

「あ、ちょっと待って」

 窓から離れようとした彼に綾乃は声を掛けた。

「私もさ、今日も特に予定無いから……お昼食べたら、そっち行って良い?」

「良いけど、休んでないで大丈夫か? なんか顔赤いぞ?」

 誰のせいでこうなったと思ってる。あとガチで心配すんな、とムスッと睨んだ。

「大丈夫よ。傍に居るだけで良いし――アンタと、大好きな人と居た方が元気になるから」

 綾乃よりも赤面した悠斗が何か言う前に、

「じゃ、着替えるから!」

 彼女は勢いよくカーテンを閉めた。





「……なるほど、こういう事ね」

 昼を少し過ぎた頃、映画のブルーレイディスクとお菓子各種を持参した一ノ瀬綾乃は上条悠斗の部屋に数年振りに招かれて、フムと小さく唸った。

「名探偵みたいな事言い出してどうしたの?」

 彼女からディスクを受け取った悠斗が怪訝そうに眉を顰めると、綾乃は真剣な顔で、

「アンタがこの間、私の部屋に来た時の気持ちが分かったわ。なんかその……あれね」

「緊張する?」

「うん。だって、男の子の部屋に連れ込まれちゃったし」

「人聞き悪い言い方、やめてくんないかなぁー? 来るって言ったのそちらよ」

 悠斗がテレビをつけて、レコーダーにディスクを入れている間に綾乃は安っぽい小さめのカーペットの上に並べた二人掛けの座椅子に腰を下ろした。

 彼の背を眺めながら、

「でも……ホント、自分以外の部屋の匂いって、結構気になるのね」

 どこか落ち着き無く言う綾乃に悠斗は顔を引き攣らせた。

「え? 嘘、臭う? 消臭スプレーしたんだけど……」

「まぁーちょっとね。でも、自分の部屋の匂いなんて分かんないもんよ。私もそうだし、気にしないで。しばらく居れば慣れるだろうし」

「いや……ごめん。もっかいするから一旦、退室して貰っても良い?」

 どこからか取り出した消臭スプレーを両手に構えた彼に、綾乃は目を丸くしてから、堪える様に笑い出す。

「二刀流? どんだけ気にしてたのよ。――って、待って撒かないで!? 多い多い! 使用上の注意を守んなさいよ!!」

「だって……綾乃が……臭いって……」

「あ、涙目になってる? 違うわよ、別に臭いって訳じゃ……だから、やたらめったら撒くんじゃないっての! 寧ろ、スプレーの『クリアブルーの香り』が臭い! そしてベタつく!」

「やっぱ……臭いって……うぅっ」

「本気で泣き出した!?」

 シュッ、シュッと交互に撒き散らす悠斗から、綾乃はスプレーを奪い取り、

「だから、違うってば!? この部屋、アンタの匂いがしてドキドキするってだけよ!」

 濁した言葉の意味を口にした。割と大声で。

 そして、沈黙。

 ……――たっぷりの間の後。

「……よし、映画見ようぜー。楽しみだなー、マジタノシミダワー」

「ねぇ、ユート? ごめん、引かないで? さっきのはちょっと、アレだったけど別にそういう癖とかじゃないからね」

「あ……うん。分かってる、ヨ……?」

「お願いだから素で引かないで!? そんな気まずそうな優しい笑みしないで!」

「――綾乃」

 何とも言えない表情から、悠斗は真剣な顔をした。

「告白の時にも言ったけど、俺は綾乃が好きだ。高校を卒業した後も、綾乃とは真剣に付き合いたいと思ってる」

「……うん。私も、そう――だけど」

「本気で愛し合うってのは、お互いの良い所も悪い所も、知って受け入れる事だと思う。これから一緒に居るとさ、多分俺の嫌な所が気になると思うけど、それでも傍に居て欲しいんだ。俺も綾乃の色んな所をひっくるめて――愛していきたい」

「ぇ、あの、ちょっ……何? そんな、急に――」

 顔を赤くし胸を抑える綾乃に、

「だから……俺は気にしないから。綾乃の要望には極力、応えるつもりだ。人には人の趣味趣向ってのがあるし、お互いに尊重出来る所は……していこう」

「ねぇ、だから待って? 私、そこまでガチな匂いフェチじゃないからね? やっぱ、引いているよね? なんで、目逸らすの? 『大丈夫、大丈夫』じゃなくてさ……。いや、ホントに違うから!?」

「俺も恥ずかしいけどさ、綾乃の為なら……どうぞ」

「両手を広げないで!? 別に嗅ぎたい訳じゃないから!」

「……やっぱ、臭いんだ……」

「私の彼氏、めんどくせっ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。 前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章 後編 「青春譚」 : 第6章〜

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...