付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ

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1章

第二十九話:粒餡かこし餡か。0.02ミリか0.03ミリか

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「“粒餡”か“こし餡”か――それが問題だ」

 二人の自宅の道路を挟んで直ぐのコンビニで、綾乃は缶詰のコーナーでムムッと眉間にしわを寄せていた。

 買い物カゴには既に、お目当てのメイプルシロップは入っている。

 目的は達成されたので直ぐに帰る事も出来たのだが、折角なのでと味のレパートリーを増やそうと思った次第だ。

 ホットケーキに乗せたり挟んだりするなら、どら焼きよろしくどちらでも合う。

 だが、二つ買う程の財布もお腹も余裕は無い。

 ……と、なれば後は好みの問題だ。

 自分は“こし餡派”だが彼は“粒餡派”。

 つまり、

「粒餡入りまーす」

 昔は、何でも自分に合わせてくれていたのだ。餡子を始め服装や料理も好きな人の好みに合わせるのも、やぶさかではない。

 ついでに、ポテチやポッキーもカゴに入れて、

「あ、そうだ綿棒……」

 日用品コーナーに足を運びそれもカゴに入れた。

 こういう雑貨は思い出した時に買わないと、忘れたままになるのが常だ。

「なんだかんだで、結構入れちゃったわね」

 自身が持つカゴが中々の重さになり苦笑する。予算的にもギリギリだ。

 そのままレジに向かおうとするが、その横目でボディケアやスキンケア用品の隣にあるを見て、足を止める。

「――……」

 0.02ミリとか0.03ミリなんて、普段の生活では実感しない単位の厚みの何某《なにがし》。

 それ単体は決して“いかがわしい”アイテムではないと思う。

 寧ろ、愛し合う男女が正しく愛を確かめ合う為に必要で大切な代物だ。

 ――つまりは、必要なキーアイテムなのでは? と綾乃は思う。

 だって、もうお互いになのだ。

『学生らしいお付き合い』かと言われれば、その範疇を超えていると思う。互いの家族に堂々と言える事では無いだろう。

 現にあの時は未遂に終わったが、高ぶった感情の勢い任せだった。お互いに無自覚、無責任だっただろう。

 正直言うと、異性として自分を求めた彼を少し怖いとも思った。

 ――だが、あの時の想いは確かで、今もこの小さな胸にある。

 その日以降は、お互いに家族が家に居て“そんな雰囲気”にもならなかったのだが、
 常に顔を合わせていても気まずくもならなかった。寧ろ家族の目を盗んで、手を繋いでいた位だ。

 そして、今日。

 綾乃の父は休日という事で、朝から釣りで夕方まで帰って来ない。

 悠斗の父は現在、単身赴任中。

 母はパートで、勤め先はスーパーマーケット。今日のシフトは夕方まで。

 姉は友人と遊びに出ている、戻るのは夕方らしい。

 ――つまり、それまでは邪魔は入らない二人きり

 実際に、そういう事をしなくとも、そういう事についてちゃんと話し合う事は出来る筈だ。

 ――するべきだと、思う。

 本気で、彼の事を愛しているから。

 今日は良い機会になるだろう。

「なら――もあった方が……良いかもねっ」

 恐る恐る商品に手を伸ばすが、刺激的なキャッチコピーに怖気づく。

 ――こんな薄くて大丈夫なのだろうか? しかし、彼としては極端薄い方が良いのでは?

 そして、はた、と気付く。

 そもそも、彼に合うのはどれだろう?

 色々なモノには個人差、という奴があるのだ……あるのだ。

 実体験などある訳も無く、知人から詳しく話を聞いている訳でも無い。

 あくまで、ネットで目にする情報や体験談なのだが、こういうのは適切な物を選ぶのがお互いにパートナーの為なのは確かだ。
 

「――やっぱり、うん。ちゃんと話し合おう……」

 そっと、箱を棚に戻し綾乃はレジへと向かった。
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