付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ

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1章

第三十話:穏やかではいられない

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「……――」

 綾乃はエコバッグを片手に澄ました顔で信号が青に変わるのを待っていたが、内心は穏やかでは居られない。

 会計を済ますまでは今日は『彼と恋人としてちゃんと向き合おう』と心に決めていた。

 だが、コンビニを出て自宅を視界に入れると、途端に心の中の綾乃が「みぴゃー!?」と奇声を上げ出したのだ。

 意識してしまうと、期待と緊張と少しばかりの恐怖心が駆け巡る。

 それでもやはり、今すぐに彼に会いたい気持ちが先に出るので、頭の中はお祭り状態だ。

 慌ただしい脳内会議で今後の予定を組み立てた。

 まずは、普通に彼の焼いてくれたホットケーキでお腹を満たす。
 
 そして、自室に上げてもらい、穏やかな一時で心を満たす。

 程よい所で“大事な話なの”と、切り出そう。

 自分が真剣なのは彼も分かってくれる筈だ。
 
 ――特に、キーアイテムの選び方や着け方は一緒に正しい情報を知ってもらおう。

 歩行者用信号の赤が点滅し出した。

 よし、ではそんな感じで――、と結論づけた時だった。

 不意に、パシャリ、と聞き覚えのある電子音がした。

「――ぁ?」

 その方向に顔を向ける。

 誰かがスマホを自分に向けていた。

 誰だ? 何をしている?

 状況に思考が追いつかない。

「やぁ、一ノ瀬さん。こんな所で会うなんて奇遇だね」

 その誰かが、不自然なくらいの穏やかな声色で言った。
 その誰かが、不自然なくらいの爽やかな笑みを見せる。

 ――御門光輝。

 ようやく理解した。

 コイツに写真を撮られた。

 それも、恋人にしか見せていない、今の姿を。

 ――不味い、と心が叫んだ。
 
 同級生に見られた、という以上に危険だと察する。

「な、何撮ってるの……! 勝手な事しないで!」

 綾乃は彼のスマホを奪おうと手を伸ばすが、また電子音が耳に届いた。

 ニヤリと、彼は不気味に笑う。

 ――怖い。

 怖い怖い怖い……!

「――良かったら、僕と少し話さない?」

 ――助けて。

 一ノ瀬綾乃は、点滅を始めた青信号を走り抜けた。
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