9 / 11
09
しおりを挟む
雨宿りのときのものとは違って、今度のキスは激しく繰り返された。何度も角度を変え、貪るように執拗に求められる。
静かな部屋に落ちるぴちゃぴちゃという音がやけに耳についた。
ただ受け止めるのに必死になっている僕の背に手がそえられたかと思うと横抱きにされる。ようやく離れたディランさんの顔をぼうっと見つめると、いつもの余裕さが消えている気がした。
気づいたときには大きなベッドにやんわりとおろされていた。
本当に、このまま、ディランさんと。嫌なわけではない、むしろ嬉しいことなのに襲ってくる緊張にまだ体から力が抜けられない。
「緊張してる?」
「はい……」
「俺も、どきどきしてる」
僕の右手をとったディランさんは自分の胸へと導いた。押し付けた手のひらから早い鼓動が伝わってくる。
「……ディランさんも緊張するんですね」
「するよ。これから好きな人を抱くんだから」
言葉にされると恥ずかしさが膨らみ、かあっと顔が熱くなる。僕に向けられるぎらついた視線が尚更そうさせた。
「触るよ」
そう呟いたかと思うと、僕の手を解放したディランさんの手がガウンの首元から侵入してくる。熱い手のひらは肌を撫で付けながらゆっくりと下に運ばれる。
その手に引っ張られた結び目がするりとほどけ、体を隠していた布が頼りなく滑り落ちる。
さらけ出された素肌に強烈な恥ずかしさを感じくねらせる体。そんな僕を見つめるディランさんはうっとりと目を細めた。
「あっ、んんっ」
「っセス」
ぎしぎしと軋むベッドのスプリングの音をかきけすかのようにまた高い声を上げてしまう。
僕に覆い被さって腰をふるディランさんも、そして僕も相手への愛しさとそれによる気持ちよさに満たされていた。
「はぁっ……セスとこんなことをしてるなんて、まだ夢みたいだ」
「あぁっ……ふっ、ぼくも、です」
ちゅっと唇にキスが落ちてくる。ついばむように何度も触れていたが、次第に舌が唇をなぞるねっとりとしたものに変わる。
ディランさんが腰を動かす度に僕の中が擦られて頭にびりびりと電流が走る。
初めは僕の反応を確かめながらゆっくり進められていたが、いまはお互いが足りないものを求めるかのようだ。
「セス……っ」
「んぅ、あ、あっ」
ディランさんが僕の名前を呼び、僕もそれに応えようとするが、だらしなく開けた口からは声にならない吐息しか出ない。
いまはただ、ディランさんからもたらされる快感を受け止めることに必死になっている。
「はぁっ、あ、そこっ……!ぼく、もうっ」
「ん、いいよ、俺ももう……」
ひときわ激しく腰が打ち付けられると同時に、いままで堪えていたものが弾け頭が真っ白になる。体を震わせて果てた僕にキスを降らせながら、ディランさんも僕の中に熱を放った。
「……セスにこういうことをするのは気が引けてたんだけど、癖になりそうで怖い」
僕の横にどさりと倒れたディランさんはそんなことを言う。火照った顔が苦笑を浮かべた。
「僕は、またこれからもしたい、です……」
自然と口から出ていた言葉がどんなに恥ずかしいかわかると何てことを言っているのかと後悔する。ディランさんは目を大きくしたあと、息を吐いて笑った。
「よかった。俺もまたしたいよ」
ディランさんの指先が僕の額に張り付いた髪を掬う。思えばディランさんが横になっているところを見るのも、その横で一緒に寝転んでいるのも初めてのことだった。
「僕、宿の人から綺麗なシーツ貰ってきます」
「いや、セスはこのまま寝てて」
「でも……」
「大丈夫、こう見えても俺、ベッドメイキング上手いから」
ディランさんがイタズラっぽく笑う。その笑みを受けて、僕も頬を緩ませながら重くなってきた瞼を閉じた。正直、立って歩いていけるのか不安だったからありがたかった。
指先が額を撫でたかと思うと、まるで愛しさを伝えるような柔らかな感触がそっと押し付けられた。
静かな部屋に落ちるぴちゃぴちゃという音がやけに耳についた。
ただ受け止めるのに必死になっている僕の背に手がそえられたかと思うと横抱きにされる。ようやく離れたディランさんの顔をぼうっと見つめると、いつもの余裕さが消えている気がした。
気づいたときには大きなベッドにやんわりとおろされていた。
本当に、このまま、ディランさんと。嫌なわけではない、むしろ嬉しいことなのに襲ってくる緊張にまだ体から力が抜けられない。
「緊張してる?」
「はい……」
「俺も、どきどきしてる」
僕の右手をとったディランさんは自分の胸へと導いた。押し付けた手のひらから早い鼓動が伝わってくる。
「……ディランさんも緊張するんですね」
「するよ。これから好きな人を抱くんだから」
言葉にされると恥ずかしさが膨らみ、かあっと顔が熱くなる。僕に向けられるぎらついた視線が尚更そうさせた。
「触るよ」
そう呟いたかと思うと、僕の手を解放したディランさんの手がガウンの首元から侵入してくる。熱い手のひらは肌を撫で付けながらゆっくりと下に運ばれる。
その手に引っ張られた結び目がするりとほどけ、体を隠していた布が頼りなく滑り落ちる。
さらけ出された素肌に強烈な恥ずかしさを感じくねらせる体。そんな僕を見つめるディランさんはうっとりと目を細めた。
「あっ、んんっ」
「っセス」
ぎしぎしと軋むベッドのスプリングの音をかきけすかのようにまた高い声を上げてしまう。
僕に覆い被さって腰をふるディランさんも、そして僕も相手への愛しさとそれによる気持ちよさに満たされていた。
「はぁっ……セスとこんなことをしてるなんて、まだ夢みたいだ」
「あぁっ……ふっ、ぼくも、です」
ちゅっと唇にキスが落ちてくる。ついばむように何度も触れていたが、次第に舌が唇をなぞるねっとりとしたものに変わる。
ディランさんが腰を動かす度に僕の中が擦られて頭にびりびりと電流が走る。
初めは僕の反応を確かめながらゆっくり進められていたが、いまはお互いが足りないものを求めるかのようだ。
「セス……っ」
「んぅ、あ、あっ」
ディランさんが僕の名前を呼び、僕もそれに応えようとするが、だらしなく開けた口からは声にならない吐息しか出ない。
いまはただ、ディランさんからもたらされる快感を受け止めることに必死になっている。
「はぁっ、あ、そこっ……!ぼく、もうっ」
「ん、いいよ、俺ももう……」
ひときわ激しく腰が打ち付けられると同時に、いままで堪えていたものが弾け頭が真っ白になる。体を震わせて果てた僕にキスを降らせながら、ディランさんも僕の中に熱を放った。
「……セスにこういうことをするのは気が引けてたんだけど、癖になりそうで怖い」
僕の横にどさりと倒れたディランさんはそんなことを言う。火照った顔が苦笑を浮かべた。
「僕は、またこれからもしたい、です……」
自然と口から出ていた言葉がどんなに恥ずかしいかわかると何てことを言っているのかと後悔する。ディランさんは目を大きくしたあと、息を吐いて笑った。
「よかった。俺もまたしたいよ」
ディランさんの指先が僕の額に張り付いた髪を掬う。思えばディランさんが横になっているところを見るのも、その横で一緒に寝転んでいるのも初めてのことだった。
「僕、宿の人から綺麗なシーツ貰ってきます」
「いや、セスはこのまま寝てて」
「でも……」
「大丈夫、こう見えても俺、ベッドメイキング上手いから」
ディランさんがイタズラっぽく笑う。その笑みを受けて、僕も頬を緩ませながら重くなってきた瞼を閉じた。正直、立って歩いていけるのか不安だったからありがたかった。
指先が額を撫でたかと思うと、まるで愛しさを伝えるような柔らかな感触がそっと押し付けられた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
101
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる