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それでもやっぱり頭に浮かぶのは
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※攻以外の人物に強引に触られるシーンがあります。
がしゃん、と音をたててロッカーを閉めると黒いリュックを背負う。いつもよりも重く感じる荷物を煩わしく思いながら、はぁ、とため息を吐いた。
「どうしたの、神田くん。なんか悩み事?」
店員の制服でバックヤードに入ってきた男性の先輩が軽い調子で俺に声をかける。
バックヤードには、このコンビニでのバイトを終え帰ろうとしていた俺と、今入ってきたいくつか年上の先輩しかいなかった。
「悩み事っていうか……いや、悩み事っすね」
授業中も食事中もバイト中も、考えているのは空のことだった。他のことを考えようと必死に打ち消しても、気づけば空が脳裏にいる。
「なになに?よかったら相談にのるよ」
少しのからかいも含めた調子の先輩は休憩なのか、バックヤードのパイプ椅子を引く。
先輩からの申し出に逃げる訳にもいかず、そして誰かの意見も欲しかった俺は、先輩の隣に腰掛けた。
「もし友達だと思ってた奴にいきなり好きだって言われたら、どうしますか?」
「……神田くんはその人のこと好きなの?」
「それがわかんなくて。ずっと友達だと思ってたんで」
「そっかぁ。その人可愛いの?」
「いや、可愛いっていうか……男、なんすよ」
迷いに迷って、しかし戸惑いの核心をぽろっとこぼしてしまう。
どんな反応が返るだろう。これ言っちゃっても大丈夫だったかと不安になる俺の隣で、先輩は少しの間沈黙する。
その沈黙に、やっぱり話さなければ良かったかと思っていると、突然片方の手のひらが掴まれた。
「なんだ、睦月くん男でも大丈夫なの?」
俺の手のひらを掴んでいる先輩の指が、手の甲をねっとりと撫でる。
初めて聞く、睦月くんと下の名前を呼ぶ声、皮膚を這う強引な指にゾワゾワとしたものが込み上げる。
「いや、え……?」
「俺の方がずっと睦月くんを見てた。俺の方が睦月くんのことを好きだよ。そんな奴やめて俺と付き合ってよ」
心臓がばくばくと速く動き、上手く声を出せない。
どうしてこうなったんだ、俺、なんて言われてるんだ。
真っ白になった頭のまま、はっとしてどうにか立ち上がる。その勢いでパイプ椅子ががしゃんと音をたてた。
「俺、帰ります!」
何がなんだかわからないまま、掴まれていた手のひらを振りほどいてバックヤードの扉へと急ぐ。
そのままの勢いで店内に飛び出すと、レジ横を通り店内から走り出た。
息を切らして走りながら、先輩の耳に絡みつくような声、指の動きが頭の中によみがえる。
なんなんだよ、とこぼした次には、何故か空の顔が浮かんでいた。
がしゃん、と音をたててロッカーを閉めると黒いリュックを背負う。いつもよりも重く感じる荷物を煩わしく思いながら、はぁ、とため息を吐いた。
「どうしたの、神田くん。なんか悩み事?」
店員の制服でバックヤードに入ってきた男性の先輩が軽い調子で俺に声をかける。
バックヤードには、このコンビニでのバイトを終え帰ろうとしていた俺と、今入ってきたいくつか年上の先輩しかいなかった。
「悩み事っていうか……いや、悩み事っすね」
授業中も食事中もバイト中も、考えているのは空のことだった。他のことを考えようと必死に打ち消しても、気づけば空が脳裏にいる。
「なになに?よかったら相談にのるよ」
少しのからかいも含めた調子の先輩は休憩なのか、バックヤードのパイプ椅子を引く。
先輩からの申し出に逃げる訳にもいかず、そして誰かの意見も欲しかった俺は、先輩の隣に腰掛けた。
「もし友達だと思ってた奴にいきなり好きだって言われたら、どうしますか?」
「……神田くんはその人のこと好きなの?」
「それがわかんなくて。ずっと友達だと思ってたんで」
「そっかぁ。その人可愛いの?」
「いや、可愛いっていうか……男、なんすよ」
迷いに迷って、しかし戸惑いの核心をぽろっとこぼしてしまう。
どんな反応が返るだろう。これ言っちゃっても大丈夫だったかと不安になる俺の隣で、先輩は少しの間沈黙する。
その沈黙に、やっぱり話さなければ良かったかと思っていると、突然片方の手のひらが掴まれた。
「なんだ、睦月くん男でも大丈夫なの?」
俺の手のひらを掴んでいる先輩の指が、手の甲をねっとりと撫でる。
初めて聞く、睦月くんと下の名前を呼ぶ声、皮膚を這う強引な指にゾワゾワとしたものが込み上げる。
「いや、え……?」
「俺の方がずっと睦月くんを見てた。俺の方が睦月くんのことを好きだよ。そんな奴やめて俺と付き合ってよ」
心臓がばくばくと速く動き、上手く声を出せない。
どうしてこうなったんだ、俺、なんて言われてるんだ。
真っ白になった頭のまま、はっとしてどうにか立ち上がる。その勢いでパイプ椅子ががしゃんと音をたてた。
「俺、帰ります!」
何がなんだかわからないまま、掴まれていた手のひらを振りほどいてバックヤードの扉へと急ぐ。
そのままの勢いで店内に飛び出すと、レジ横を通り店内から走り出た。
息を切らして走りながら、先輩の耳に絡みつくような声、指の動きが頭の中によみがえる。
なんなんだよ、とこぼした次には、何故か空の顔が浮かんでいた。
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