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12 ヨズキSide
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会場からほのかに聴こえてくる音楽に合わせる。
「1、2、3、&、1、2、3…」
口で拍子を呟きながらヴィオラはヨズキに指導する。
今にもつまづきそうな酷いステップだが、しばらくすると少しは慣れてきた。
「そうそう、上手ですよ」
足元を見守っていたヴィオラが、ヨズキを見上げて微笑みかける。
高嶺の花は着飾るとより一層美しかった。
「すみません言い忘れてましたね、
とてもお綺麗ですよ」
表情が豊かなタイプではない自覚があるから、ヨズキは思ったことはなるべく口に出すようにしている。
それに比べると彼女は懸命に冷静を装いながらも感情が思いっきり顔に出る。今だって一瞬で顔が真っ赤になった。
そう言うところが可愛らしくて気に入っている。
「せ、先生こそ中々お似合いですよ。いつものボサボサよりうんとマシです」
「そりゃどうも」
その頬に触れると、彼女はハッとしたような顔をしてからじっとヨズキを見つめた。
いつの間にかダンスは止まっている。
ああ、綺麗な目だな。
ヨズキの心の底から欲が膨れ上がる。
「恋愛なんてね…」
ヴィオラの顎を持つ。
「恋愛なんて性欲と支配欲を美化しただけのモンなんですよ」
そう自警も込めて囁いてから、触れるだけの優しい口づけをする。
すぐに離れてしまうとヴィオラは少し物足りなさそうな切ない顔をした。
全くこの人は、俺を欲情させるのが上手い。
「もっと欲しいならあとで俺の部屋にきてください」
耳にキスをする。
「そんな、私…」
「言い訳が欲しいですか?」
蝶の髪飾りをスッと取る。
「人質です」
こんな髪飾り、別に今夜返さなくたっていいものだ。明日でも、授業のあとでもいい。
なんなら今すぐ手から奪い取ってもいい。
それでも今夜来たら…そういうことだ。
ヴィオラは赤い顔で無言のまま後退りすると、早足に去っていった。
「…気色ワリ……」
宝石の蝶を眺めながら自分に向かって独り言を言う。
良いトシして、17も年下の娘に何ときめいてんだか…。
しかもどうせ今だけの関係だ。この学園であの子の父親に逆らえない若い男がたまたま俺だっただけだ。
そのうちどこぞの小僧と政略結婚させるだろう。あの父親は自分の娘を物としてしか見ていない。
ヨズキはまた新しくタバコを取り出して火をつける。
そうしていると、1人の女性がひょっこりとこちらを覗いた。
「こんばんは、ミス.フローレン」
「こちらにいらしたのね、探しましたのよ」
ミス.フローレンが飲み物をふたつ持ってやって来た。
「俺を探してたんですか?」
差し出された飲み物を受けとる。
「ええ、少しお話がしたくて。
こんなところで何をしてらっしゃるの?」
「少し休憩です」
「そうなんですか、疲れているなら私の部屋で少し休みません?」
「面食いのあなたにお誘いを受けるとは光栄ですね」
彼女は白衣の天使と男子生徒に人気の看護師だが、実のところ教師生徒問わずに気に入った男を食い散らかしてることで有名だった。
「あら、酷い言い様。
…それでお返事は?」
「今夜は先約がありましてね、すみません」
「あら残念。でもまあルーベンスさんには流石に敵わないか…若いしとっても可愛いもの」
「…まさかあなたが"生徒に手を出すな"何て言いませんよね?」
「もちろん。私たちは魔力安定のお手伝いをしているだけだもの」
そうやって開き直るのもどうなんだと心の中で思うが、面倒なので押し黙る。
「でも、本気はやめたほうがいいわよ。だって理事長の娘でしょ?」
「…わかってますよ」
「ならいいの。
…じゃ、私は他を探そうかな」
ミス.フローレンはつまらなそうに地面を蹴り立ち去ろうと背を向けたが途中で振り返った。
「あ、ごめんなさい。私断られるなんて思ってなくて…飲み物に催淫薬入れちゃった」
ヨズキは自分の既に飲み干したグラスを見る。
「えぇ…」
「1、2、3、&、1、2、3…」
口で拍子を呟きながらヴィオラはヨズキに指導する。
今にもつまづきそうな酷いステップだが、しばらくすると少しは慣れてきた。
「そうそう、上手ですよ」
足元を見守っていたヴィオラが、ヨズキを見上げて微笑みかける。
高嶺の花は着飾るとより一層美しかった。
「すみません言い忘れてましたね、
とてもお綺麗ですよ」
表情が豊かなタイプではない自覚があるから、ヨズキは思ったことはなるべく口に出すようにしている。
それに比べると彼女は懸命に冷静を装いながらも感情が思いっきり顔に出る。今だって一瞬で顔が真っ赤になった。
そう言うところが可愛らしくて気に入っている。
「せ、先生こそ中々お似合いですよ。いつものボサボサよりうんとマシです」
「そりゃどうも」
その頬に触れると、彼女はハッとしたような顔をしてからじっとヨズキを見つめた。
いつの間にかダンスは止まっている。
ああ、綺麗な目だな。
ヨズキの心の底から欲が膨れ上がる。
「恋愛なんてね…」
ヴィオラの顎を持つ。
「恋愛なんて性欲と支配欲を美化しただけのモンなんですよ」
そう自警も込めて囁いてから、触れるだけの優しい口づけをする。
すぐに離れてしまうとヴィオラは少し物足りなさそうな切ない顔をした。
全くこの人は、俺を欲情させるのが上手い。
「もっと欲しいならあとで俺の部屋にきてください」
耳にキスをする。
「そんな、私…」
「言い訳が欲しいですか?」
蝶の髪飾りをスッと取る。
「人質です」
こんな髪飾り、別に今夜返さなくたっていいものだ。明日でも、授業のあとでもいい。
なんなら今すぐ手から奪い取ってもいい。
それでも今夜来たら…そういうことだ。
ヴィオラは赤い顔で無言のまま後退りすると、早足に去っていった。
「…気色ワリ……」
宝石の蝶を眺めながら自分に向かって独り言を言う。
良いトシして、17も年下の娘に何ときめいてんだか…。
しかもどうせ今だけの関係だ。この学園であの子の父親に逆らえない若い男がたまたま俺だっただけだ。
そのうちどこぞの小僧と政略結婚させるだろう。あの父親は自分の娘を物としてしか見ていない。
ヨズキはまた新しくタバコを取り出して火をつける。
そうしていると、1人の女性がひょっこりとこちらを覗いた。
「こんばんは、ミス.フローレン」
「こちらにいらしたのね、探しましたのよ」
ミス.フローレンが飲み物をふたつ持ってやって来た。
「俺を探してたんですか?」
差し出された飲み物を受けとる。
「ええ、少しお話がしたくて。
こんなところで何をしてらっしゃるの?」
「少し休憩です」
「そうなんですか、疲れているなら私の部屋で少し休みません?」
「面食いのあなたにお誘いを受けるとは光栄ですね」
彼女は白衣の天使と男子生徒に人気の看護師だが、実のところ教師生徒問わずに気に入った男を食い散らかしてることで有名だった。
「あら、酷い言い様。
…それでお返事は?」
「今夜は先約がありましてね、すみません」
「あら残念。でもまあルーベンスさんには流石に敵わないか…若いしとっても可愛いもの」
「…まさかあなたが"生徒に手を出すな"何て言いませんよね?」
「もちろん。私たちは魔力安定のお手伝いをしているだけだもの」
そうやって開き直るのもどうなんだと心の中で思うが、面倒なので押し黙る。
「でも、本気はやめたほうがいいわよ。だって理事長の娘でしょ?」
「…わかってますよ」
「ならいいの。
…じゃ、私は他を探そうかな」
ミス.フローレンはつまらなそうに地面を蹴り立ち去ろうと背を向けたが途中で振り返った。
「あ、ごめんなさい。私断られるなんて思ってなくて…飲み物に催淫薬入れちゃった」
ヨズキは自分の既に飲み干したグラスを見る。
「えぇ…」
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