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17話 キスと幼馴染
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一度キスを許してからのひかるはすごかった。
朝起きた時から始まって家を出る前、帰ってきてすぐ、食事や風呂、寝る前、とにかくなにか行動を挟むたびちゅっとされるようになった。しかも毎回無駄にスマートで、この前なんかすれ違い様にキスされた。
ひかるって意外と1日に何回もキスとかするタイプだったんだ…と、知らなかった幼馴染の一面を知ってしまって俺はちょっと複雑な気持ちになった。なんていうかこう、もうちょいドライな感じだと思っていた。恋人にはべったりするタイプなのは読めていたけど、ロマンチストな一面があったことは知らなかった。よく数ヶ月前まで幼馴染としてやってきた男にそんな甘い行動ができるなと、少し感心してしまうほどだ。
まあ、俺が全部受け入れてるのも悪いとは思う。ひかるに思っていることは全部ブーメランで俺にも返ってくる言葉ばかりで、数ヶ月前まで幼馴染てしてやってきた男からの甘い行動を、全部ちょっと喜んで受け入れている俺だって、おかしい。
結局キスも数日で当たり前になってしまった。行ってきますとお帰りのチューは必ずする始末。流石に俺、元カノとだってここまでしてなかったと思う。
今日も2人でひかるの家に帰ってきたくせして、玄関のドアを閉めてから当たり前にキスをして家に上がった。どちらからとも顔を寄せ合って、軽く唇を合わせて、それからまた何事も無いように会話しながら部屋の奥に進む。
お互いの家に上がり込む事が多い俺たちだったけど、今日は明確に2人でレポートを片付けるために集まった。
まあ察しの通り履修している授業も被りが多い俺たちは、前々から期末の重い課題は2人で集まってチームプレイで終わらせていた。そろそろまたそんな時期になってきたので、今日は幼馴染として普通にひかるの家にきたつもりでは、ある。キスはしたけど。それ以上は特に何もしないつもりだった。
-------
「あれ……明日のサークルの飲み会、茉理参加するんだっけ」
「するよ。ひかるも行こうよ」
「バイト終わったら行こうかなあ。ちょっと早い上がりだったし」
「おつかれー」
夕食も風呂もさっさと済ませて2時には寝ることを目標に、課題を進めていた。
横並びで座って、2人でそれぞれの画面と向き合いながら、時々とりとめのない会話をする。そうでもしないと寝てしまいそうだったからだ。
「あ゛ーーーもうやだ、あとちょっとなのに」
「僕もうあと1行くらいで字数はクリア」
「はや………………悔しい、俺もう無理なんだけど」
「気分転換にコーヒーかなんか淹れる?」
「今集中切らしたら終わる気がする……」
「もう茉理だいぶ限界でしょ」
「うー………………」
伸びをしたひかるが、ついでといったように俺の頭をわしゃわしゃ撫でてからキッチンに向かって行った。任せっきりにするのも申し訳ないので、1Kの間取りの狭いキッチンに一緒について行った。
ひかるの家にはポットが無い。あまりコーヒーもお茶も飲まないみたいで買わなかったらしく、毎回安いヤカンで沸かしているから時間がかかる。カップラーメン食べる時とかだるくない?と一度聞いたことがあったけど、そもそも自炊派だからインスタントラーメンはあまり食べないらしい。そうですか、いい暮らしですね偉いですねと思ったことがあった。
「煙草吸うついでだから茉理先進めてなよ」
「いい……1人じゃ無理、寝る」
「あはは、今寝たら終わるね」
静かな廊下に換気扇の音が響く。ひかるが吐く煙が吸い込まれるのをぼんやり眺めた。
電子煙草は匂いがあまり残らない。今は煙たい香りが広がっているけど、普段のひかるやひかるの部屋からは煙草の気配は感じられないから、なんだか変な感じがする。
「おいしいの?煙草」
「おいしくはないんじゃない、そういうんで吸ってるんじゃ無いし」
「あれ、芝がすげー吸うんだっけ。お前仲良かったもんね、それで始めたんだよね」
「うん。しかも芝は僕の倍以上吸うし、この時代に紙」
「へえ。……なんでひかるも始めたの」
「キッカケは喫煙所着いて行くことが多かったからだけど、まあ気分転換とストレス発散にちょうどよかったからかな」
「俺もちょっともらう」
「なんで、茉理ストレスとか無いじゃん」
「失礼じゃね、多分あるし」
「羨ましいよ、多分って言えるの。昔からずっと呑気だよねお前」
自覚はそこまで無いけれど、ひかるはよく俺のことを呑気だとかのんびりしてるとか言う。実際大抵のことはまあ良いか、で済ませるタイプなのでひかるに比べれば俺はストレスも悩みも抱えない性格ではあるんだろうな、とは思っていた。
勝手を知っているキッチンなので、棚を開けてインスタントのコーヒーを取り出した。ひかるの家には豆も茶葉も何も無かったから、勝手に俺がお気に入りのを置いている。マグカップを先に準備してお湯が沸くのを待った。
暇になってしまう。隣でふうっと煙を吐き出すひかるが、なんだか少し色っぽく見えた。
「……やっぱ煙草もらう」
「なんで、どうしたの今日」
「気になったから」
「…良いけど一本もいらないでしょ、僕のでいい?」
「いいよ」
吸いかけの煙草をひかるが口元に差し出してくる。手渡してくれればいいのに、とは思ったけれど黙って咥えて息を吸い込んだ。
空気に漂ってるのより何倍も煙たいのが喉の奥に入り込む。咽せるほどでは無かったけれど、何が楽しいんだろうと思った。
「……なんだよ、めちゃくちゃ咳き込むの期待してたのに」
「俺器用だからね」
「関係ある?…どうだった、初煙草」
「何も楽しく無い」
「人のもらっておいて……」
ひかるがぼそっと文句を言って、それからしばらくしてお湯が沸いた。ひかるを見るとまだ煙草が終わっていなかったので、粉ではなくてドリップのコーヒーを取り出してのんびり淹れることにした。
ひかるの家のヤカンは口が細いからコーヒーが淹れやすい。できる範囲で円を描くようにお湯を注いで泡立てて蒸らす。自分の家のポットより上手くできるから楽しかった。
「……ちゃんと淹れてる」
「別にちゃんとはしてないよ。本当はさ、豆引くやつ欲しいんだよね」
「そうなんだ。いつの間にそんなコーヒー好きになってたの?」
「いや、カッコいいじゃんアレで引いてたら。だから豆とかはあんまりわかんない」
「茉理らしくて安心した」
ゆっくりお湯を注いでコーヒーを入れる。すうっとお湯が引いて行くところは見ていて少し楽しい。コーヒーの香ばしい香りが煙草の煙と混ざっていった。
頭を回したいからなるべく甘くしたくて、砂糖か蜂蜜がないか探す。俺が買っていたミルクとスティックシュガーがあったから、どっちも入れることにした。自分の分にシュガーを2本用意してから、ひかるの分を作るために声をかける。
「ひかる、どれくらい甘くす……」
そう言って振り向いたら、すぐそばにひかるがいた。
俺の言葉を遮って肩に手を置いて、そのままちゅ、と小さく音を立ててキスをしてきた。直前まで煙草を吸っていたからか、ほんの少し苦い気がした。
いつもならすぐに顔を離すのに、唇だけ離して顔は寄せたままじっと見つめられる。
さっきまでの幼馴染とだらだら離している時の目とは違う、本当に好きな人に向けるそれだった。近くでじっと見つめられると、そういう機微も読み取れてしまう。
すぐにまた近づいてきて、今度は長いキスをされた。ゆっくり何度も重ねて軽く唇を吸われてから、唇で甘噛みするように柔らかく啄まれる。一度ディープキスが嫌だと伝えてから、ひかるはこうやって俺に合わせて優しいキスをするようになった。
肩に置かれていた手が、首の後ろに回って襟足や髪の生え際をそうっと撫でる。くるくると指先に毛先を巻き付けて、遊んでいるのが分かった。
正直に言うと、ひかるとのキスは好きだった。
優しいし丁寧だし、唇も柔らかくて気持ちいいし。
はむ、と唇を啄まれて吸われるうちに、もっと欲しくなってしまった。
口元を緩めて待ってみる。それでもひかるの舌は律儀に口内へ入ろうはとせず可愛いキスを繰り返すばかりだったので、自分からそろっとひかるの唇を舐めた。
一拍間を置いてから、今度はひかるの舌が割り入ってくる。熱い舌が口内を舐め回していって、思わずふうっと吐息が漏れた。くちゅくちゅ音を立ててお互い舌を絡めあう。気持ちいいし、それ以上に満たされた気持ちになってしまって唇を離せなかった。
腰から力が抜けそうになって、ひかるの首に腕を回してしがみついた。軽いキスをした時より、煙草の香りを感じて苦かった。
「……茉理、止まらなくなるから終わり」
「…止まらなくなるって?」
「分かるだろ」
ひかるの目の奥がギラついているのをみて、気を良くした俺は顎を捕まえてまたキスをした。
軽く唇を吸って、指先で輪郭をなぞる。耳の下から顎にかけて、シャープなラインが見えるところが実は好きだったりした。
課題も淹れたばっかのコーヒーも放っておいて何してるんだろうと一瞬冷静な自分の声が頭をよぎったけど、先に手を出してきたのはひかるなので、俺のせいじゃ無いなと無視した。なんだか今だけは、可愛いキスで済ませるには惜しかったのだ。
舌を差し込んで、綺麗に並んだ歯列をなぞった。ひかるは少し歯が小さいのか、笑った時も少ししか前歯が見えないのが動物っぽい印象があって可愛げがあったことを思い出す。軽く裏側も舐めて、また舌を絡めあった。
薄目を開けるとひかると目が合う。たまにはいっかと逸らしたり閉じたりせずに、見つめあったままキスをした。甘く舌を噛んでやると、ひかるは少しだけ目元を歪める。
「……ねえ、本当何してんの」
「先にエロいキスしたのはひかる」
「舌入れるなって自分から言ってきたくせに」
「お預けくらってるみたいでかわいそうだったから、今日だけいっかなと思って」
「………………………………」
「………え、ぅわッ!ちょ………」
ひかるが黙ったまま俺の股間を柔らかく揉んできた。薄々そんな気はしてたけど、まあ普通に勃起している。薄い生地の部屋着を着ているからはっきり形が見える分恥ずかしかった。
目線を下げて、ひかるもしっかり勃起しているのが目についた。普段は勃っちゃったかもしれない時ほど、お互いあんまり見ないように触れないようにやり過ごしていたから、しっかり見るのは久々だった。相変わらずでかいなと先に感心してしまう。
すりすりそこ撫でているひかるの手首を掴んだ。諦めが悪く、動かせなくなったら今度は指先でぐにぐに触ってきた。
「……っ触りすぎ、待って、治らなくなる」
「この状態でレポート書けるの?」
「ほっとけばいけるだろ……んん、もーやめ…ッ!」
「……無理でしょお互い、ねえもう抜いてからにしない?」
「は、はあ?」
ひかるが近づいてきて、またキスをする。体を寄せられて、ひかるの硬いのが当たった。
…こっちの方がキスより興奮するかもしれない、もうだめだ俺。
視界の隅に、湯気の出なくなったコーヒーが見えた。せっかくドリップで淹れたのに、もう酸化して美味しくなくなっちゃったんだろうなあと少し残念な気持ちになった。
朝起きた時から始まって家を出る前、帰ってきてすぐ、食事や風呂、寝る前、とにかくなにか行動を挟むたびちゅっとされるようになった。しかも毎回無駄にスマートで、この前なんかすれ違い様にキスされた。
ひかるって意外と1日に何回もキスとかするタイプだったんだ…と、知らなかった幼馴染の一面を知ってしまって俺はちょっと複雑な気持ちになった。なんていうかこう、もうちょいドライな感じだと思っていた。恋人にはべったりするタイプなのは読めていたけど、ロマンチストな一面があったことは知らなかった。よく数ヶ月前まで幼馴染としてやってきた男にそんな甘い行動ができるなと、少し感心してしまうほどだ。
まあ、俺が全部受け入れてるのも悪いとは思う。ひかるに思っていることは全部ブーメランで俺にも返ってくる言葉ばかりで、数ヶ月前まで幼馴染てしてやってきた男からの甘い行動を、全部ちょっと喜んで受け入れている俺だって、おかしい。
結局キスも数日で当たり前になってしまった。行ってきますとお帰りのチューは必ずする始末。流石に俺、元カノとだってここまでしてなかったと思う。
今日も2人でひかるの家に帰ってきたくせして、玄関のドアを閉めてから当たり前にキスをして家に上がった。どちらからとも顔を寄せ合って、軽く唇を合わせて、それからまた何事も無いように会話しながら部屋の奥に進む。
お互いの家に上がり込む事が多い俺たちだったけど、今日は明確に2人でレポートを片付けるために集まった。
まあ察しの通り履修している授業も被りが多い俺たちは、前々から期末の重い課題は2人で集まってチームプレイで終わらせていた。そろそろまたそんな時期になってきたので、今日は幼馴染として普通にひかるの家にきたつもりでは、ある。キスはしたけど。それ以上は特に何もしないつもりだった。
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「あれ……明日のサークルの飲み会、茉理参加するんだっけ」
「するよ。ひかるも行こうよ」
「バイト終わったら行こうかなあ。ちょっと早い上がりだったし」
「おつかれー」
夕食も風呂もさっさと済ませて2時には寝ることを目標に、課題を進めていた。
横並びで座って、2人でそれぞれの画面と向き合いながら、時々とりとめのない会話をする。そうでもしないと寝てしまいそうだったからだ。
「あ゛ーーーもうやだ、あとちょっとなのに」
「僕もうあと1行くらいで字数はクリア」
「はや………………悔しい、俺もう無理なんだけど」
「気分転換にコーヒーかなんか淹れる?」
「今集中切らしたら終わる気がする……」
「もう茉理だいぶ限界でしょ」
「うー………………」
伸びをしたひかるが、ついでといったように俺の頭をわしゃわしゃ撫でてからキッチンに向かって行った。任せっきりにするのも申し訳ないので、1Kの間取りの狭いキッチンに一緒について行った。
ひかるの家にはポットが無い。あまりコーヒーもお茶も飲まないみたいで買わなかったらしく、毎回安いヤカンで沸かしているから時間がかかる。カップラーメン食べる時とかだるくない?と一度聞いたことがあったけど、そもそも自炊派だからインスタントラーメンはあまり食べないらしい。そうですか、いい暮らしですね偉いですねと思ったことがあった。
「煙草吸うついでだから茉理先進めてなよ」
「いい……1人じゃ無理、寝る」
「あはは、今寝たら終わるね」
静かな廊下に換気扇の音が響く。ひかるが吐く煙が吸い込まれるのをぼんやり眺めた。
電子煙草は匂いがあまり残らない。今は煙たい香りが広がっているけど、普段のひかるやひかるの部屋からは煙草の気配は感じられないから、なんだか変な感じがする。
「おいしいの?煙草」
「おいしくはないんじゃない、そういうんで吸ってるんじゃ無いし」
「あれ、芝がすげー吸うんだっけ。お前仲良かったもんね、それで始めたんだよね」
「うん。しかも芝は僕の倍以上吸うし、この時代に紙」
「へえ。……なんでひかるも始めたの」
「キッカケは喫煙所着いて行くことが多かったからだけど、まあ気分転換とストレス発散にちょうどよかったからかな」
「俺もちょっともらう」
「なんで、茉理ストレスとか無いじゃん」
「失礼じゃね、多分あるし」
「羨ましいよ、多分って言えるの。昔からずっと呑気だよねお前」
自覚はそこまで無いけれど、ひかるはよく俺のことを呑気だとかのんびりしてるとか言う。実際大抵のことはまあ良いか、で済ませるタイプなのでひかるに比べれば俺はストレスも悩みも抱えない性格ではあるんだろうな、とは思っていた。
勝手を知っているキッチンなので、棚を開けてインスタントのコーヒーを取り出した。ひかるの家には豆も茶葉も何も無かったから、勝手に俺がお気に入りのを置いている。マグカップを先に準備してお湯が沸くのを待った。
暇になってしまう。隣でふうっと煙を吐き出すひかるが、なんだか少し色っぽく見えた。
「……やっぱ煙草もらう」
「なんで、どうしたの今日」
「気になったから」
「…良いけど一本もいらないでしょ、僕のでいい?」
「いいよ」
吸いかけの煙草をひかるが口元に差し出してくる。手渡してくれればいいのに、とは思ったけれど黙って咥えて息を吸い込んだ。
空気に漂ってるのより何倍も煙たいのが喉の奥に入り込む。咽せるほどでは無かったけれど、何が楽しいんだろうと思った。
「……なんだよ、めちゃくちゃ咳き込むの期待してたのに」
「俺器用だからね」
「関係ある?…どうだった、初煙草」
「何も楽しく無い」
「人のもらっておいて……」
ひかるがぼそっと文句を言って、それからしばらくしてお湯が沸いた。ひかるを見るとまだ煙草が終わっていなかったので、粉ではなくてドリップのコーヒーを取り出してのんびり淹れることにした。
ひかるの家のヤカンは口が細いからコーヒーが淹れやすい。できる範囲で円を描くようにお湯を注いで泡立てて蒸らす。自分の家のポットより上手くできるから楽しかった。
「……ちゃんと淹れてる」
「別にちゃんとはしてないよ。本当はさ、豆引くやつ欲しいんだよね」
「そうなんだ。いつの間にそんなコーヒー好きになってたの?」
「いや、カッコいいじゃんアレで引いてたら。だから豆とかはあんまりわかんない」
「茉理らしくて安心した」
ゆっくりお湯を注いでコーヒーを入れる。すうっとお湯が引いて行くところは見ていて少し楽しい。コーヒーの香ばしい香りが煙草の煙と混ざっていった。
頭を回したいからなるべく甘くしたくて、砂糖か蜂蜜がないか探す。俺が買っていたミルクとスティックシュガーがあったから、どっちも入れることにした。自分の分にシュガーを2本用意してから、ひかるの分を作るために声をかける。
「ひかる、どれくらい甘くす……」
そう言って振り向いたら、すぐそばにひかるがいた。
俺の言葉を遮って肩に手を置いて、そのままちゅ、と小さく音を立ててキスをしてきた。直前まで煙草を吸っていたからか、ほんの少し苦い気がした。
いつもならすぐに顔を離すのに、唇だけ離して顔は寄せたままじっと見つめられる。
さっきまでの幼馴染とだらだら離している時の目とは違う、本当に好きな人に向けるそれだった。近くでじっと見つめられると、そういう機微も読み取れてしまう。
すぐにまた近づいてきて、今度は長いキスをされた。ゆっくり何度も重ねて軽く唇を吸われてから、唇で甘噛みするように柔らかく啄まれる。一度ディープキスが嫌だと伝えてから、ひかるはこうやって俺に合わせて優しいキスをするようになった。
肩に置かれていた手が、首の後ろに回って襟足や髪の生え際をそうっと撫でる。くるくると指先に毛先を巻き付けて、遊んでいるのが分かった。
正直に言うと、ひかるとのキスは好きだった。
優しいし丁寧だし、唇も柔らかくて気持ちいいし。
はむ、と唇を啄まれて吸われるうちに、もっと欲しくなってしまった。
口元を緩めて待ってみる。それでもひかるの舌は律儀に口内へ入ろうはとせず可愛いキスを繰り返すばかりだったので、自分からそろっとひかるの唇を舐めた。
一拍間を置いてから、今度はひかるの舌が割り入ってくる。熱い舌が口内を舐め回していって、思わずふうっと吐息が漏れた。くちゅくちゅ音を立ててお互い舌を絡めあう。気持ちいいし、それ以上に満たされた気持ちになってしまって唇を離せなかった。
腰から力が抜けそうになって、ひかるの首に腕を回してしがみついた。軽いキスをした時より、煙草の香りを感じて苦かった。
「……茉理、止まらなくなるから終わり」
「…止まらなくなるって?」
「分かるだろ」
ひかるの目の奥がギラついているのをみて、気を良くした俺は顎を捕まえてまたキスをした。
軽く唇を吸って、指先で輪郭をなぞる。耳の下から顎にかけて、シャープなラインが見えるところが実は好きだったりした。
課題も淹れたばっかのコーヒーも放っておいて何してるんだろうと一瞬冷静な自分の声が頭をよぎったけど、先に手を出してきたのはひかるなので、俺のせいじゃ無いなと無視した。なんだか今だけは、可愛いキスで済ませるには惜しかったのだ。
舌を差し込んで、綺麗に並んだ歯列をなぞった。ひかるは少し歯が小さいのか、笑った時も少ししか前歯が見えないのが動物っぽい印象があって可愛げがあったことを思い出す。軽く裏側も舐めて、また舌を絡めあった。
薄目を開けるとひかると目が合う。たまにはいっかと逸らしたり閉じたりせずに、見つめあったままキスをした。甘く舌を噛んでやると、ひかるは少しだけ目元を歪める。
「……ねえ、本当何してんの」
「先にエロいキスしたのはひかる」
「舌入れるなって自分から言ってきたくせに」
「お預けくらってるみたいでかわいそうだったから、今日だけいっかなと思って」
「………………………………」
「………え、ぅわッ!ちょ………」
ひかるが黙ったまま俺の股間を柔らかく揉んできた。薄々そんな気はしてたけど、まあ普通に勃起している。薄い生地の部屋着を着ているからはっきり形が見える分恥ずかしかった。
目線を下げて、ひかるもしっかり勃起しているのが目についた。普段は勃っちゃったかもしれない時ほど、お互いあんまり見ないように触れないようにやり過ごしていたから、しっかり見るのは久々だった。相変わらずでかいなと先に感心してしまう。
すりすりそこ撫でているひかるの手首を掴んだ。諦めが悪く、動かせなくなったら今度は指先でぐにぐに触ってきた。
「……っ触りすぎ、待って、治らなくなる」
「この状態でレポート書けるの?」
「ほっとけばいけるだろ……んん、もーやめ…ッ!」
「……無理でしょお互い、ねえもう抜いてからにしない?」
「は、はあ?」
ひかるが近づいてきて、またキスをする。体を寄せられて、ひかるの硬いのが当たった。
…こっちの方がキスより興奮するかもしれない、もうだめだ俺。
視界の隅に、湯気の出なくなったコーヒーが見えた。せっかくドリップで淹れたのに、もう酸化して美味しくなくなっちゃったんだろうなあと少し残念な気持ちになった。
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