追放聖女のもふもふスローライフ

臥龍岡四月朔日

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追放聖女のもふもふスローライフ

第11話 猛禽少女と料理研究

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 チュン、チュン。

 窓から差し込む朝の光と、小鳥たちの歌声で目を覚ます。今日もいい朝だ。

「おはようございます」

「おはよう。……ミミィって、もしかして寝てない?」

「はい、以前の癖で……」

 まあ、元々ミミズクだしね。夜行性の名残はそう簡単には抜けないみたいだ。

 私はいつものように食事を用意し、起き出してきたロゼやもふぞーと食卓を囲む。パン屑を入れた皿を窓際に置くと、すぐに小鳥たちが寄ってきて、ちゅんちゅんと鳴きながらついばみ始める。

 ミミイがその様子をじぃっと見ていた。

 ジュルリ――

 ミミィが生唾を飲み込む音が聞こえた。小鳥たちが一斉にブルっと身を震わせる。

 ああ、そうだった。猛禽って、小鳥なんかも食べるんだっけ……

「ミミィ? 食べちゃダメだよ」

「……た、食べませんよ!」

 慌てて視線を逸らすミミィの耳が赤く染まっている。
 人の姿をしているとはいえ、元の感覚はそう簡単には消えないらしい。

 できればお肉を食べさせてあげたいけど……この世界じゃ中々そうはいかない。街に行けばお肉屋なんかもあるけど、こういった村ではタンパク質は基本的に豆類で摂るのが普通だ。手持ちの干し肉も残り少なかった。

 ……まあ、工夫して何とかするしかないか。
 新しい家族のためだし。

 日本ではお肉の代替品として油揚げが作られたらしいけど、この世界には豆腐自体がない。
 ダイズミートなんかもないし、自分で作るには材料も器具も不足している。……それに何よりものすごく手間がかかる……

 まあ、できる範囲で豆をそれっぽく加工してみるかな?
 うん、今度やってみよう。


 * * *

 食事が終わり、雑貨屋へと行く。
 今日はミミィを紹介するためにみんな一緒だ。

「この子が昨日言ってた子だね。よろしくね、ミミィ」
「ミミィちゃんよろしく」

「よ、よろしくお願いします!」

 ミミィは小さく頭を下げ、緊張気味に挨拶する。その姿にケイトさんもアリサちゃんも微笑んだ。

 ポーション補充を済ますとアリサちゃんと一緒に村の広場へと向かう。広場で遊んでいた子どもたちにミミィを紹介する。

「この子はミミィ。みんな仲良くしてあげてね」
「よろしくお願いします!」

「うん! ミミィちゃん遊ぼう!」

 子どもたちに手を引かれ、ミミィは少し戸惑いながらも笑顔を浮かべた。ロゼともふぞーも混じり、一緒に鬼ごっこや追いかけっこを始める。

 私はその様子をのんびり眺めていたけれど――

「おねーちゃんも!」

 小さな手が、私の手をぐいっと引いた。

「えっ、私も?」

 気づけば私も遊びの輪の中に連れ込まれていた。
 ……なんだか 既視感。ロゼの時もこうだったっけ。

 そう思いつつも、私は笑いながら子どもたちと駆け回るのだった。


 * * *

「ふあぁ……」

 ポーション作りのハーブを混ぜてもらってる最中、ミミィが小さなあくびを漏らした。
 やっぱり日中は眠いのかな? 元は夜行性だしね。

「寝てていいよ」

「いえ……恩返しするためにも、やれることを見つけなきゃ」

 そう言って頑張ってたけど、やっぱり眠気には勝てなかったらしい。ウトウトと船を漕ぎ始める。
 うん、わかるよ。眠気には勝てないよね。

「ロゼ~、ミミィをベッドまで運んでもらえるかな?」

「おっけー」

 ロゼが念動力でミミィをふわりと運ぶ。ミミィの体重は体格が同じくらいの私よりも軽いらしい……私だってそんなに重くないぞ!

 私は、ミミィが混ぜていた桶の中身を確認する。
 うん、これくらい混ざってれば大丈夫。後は瓶に移して回復の魔力を込めるだけだ。

 ポーション作りを終えると、私は台所へ向かう。
 鍋の中では、朝から水に浸しておいた豆がぷっくりと膨らんでいる。これくらい水を吸ってれば大丈夫かな。

「よし、そろそろやってみようか」

 私は鍋の水を入れ替え、火にかける。コトコト煮えた豆の匂いが台所に広がり、なんだか懐かしい気分になる。

 柔らかく煮上がった豆を湯切りして、粗熱を取る。
 それからすり鉢に入れて――潰す、潰す、潰す!

「……ふんぬっ」

 腕に力を込めながら、つぶした豆に塩を入れ、小麦粉を少しずつ混ぜ込み、手で練っていく。

 豆の香ばしさがふわりと立ち上がる。あとは焼き方次第で、なんとか“肉料理もどき”になるはずだ。

 ――ミミィに少しでも満足してもらいたいし。
 新しい家族のためだし。

 私は小さく息をついて、生地をもう一度練り込んだ。

 出来た生地に細かく刻んだ野菜を混ぜ込み、成形して油をまとわせて焼く。じゅうっと音がして、香ばしい匂いがしてくる。
 しっかりと焼き目が付けば肉もどきのハンバーグの完成だ。

 とりあえず、試作品を一切れ口に運ぶ。
 ……うん、微妙だ……悪くはないけど、なんか脂身が足りないかな?
 美味しいものは脂肪と糖で出来ている、とは言ったものだ。
 動物も油、好きだしね。行灯の油をペロペロ舐めたり……ってそれは妖怪だっけ?
 たしか、クマなんかも油の匂いに寄ってくるとか聞いたことがある。

 とりあえず今日はこれを出してみよう。反応を見て改良してけばいいかな。

「これ、美味しいです!」

 ミミィがほっぺを膨らませながら幸せそうな顔で言う。
 どうやらミミィの口に合ってくれたようで良かった。もふぞーも気に入ったのかガツガツと平らげた。

「……ふふっ、良かった」

 安堵の息をつきながら、私はみんなと一緒に食事を楽しんだ。


 * * *

 夜になり、私たちは森の泉へと水浴びに行く。
 泉はいつものように澄んだ水を湛えていて、月明かりを反射して輝いている。

「うーん、気持ちいい」

 ロゼもミミィも服を脱ぎ、私と並んで泉に身を浸す。
 もふぞーは相変わらずぷかぷかと浮かんでいて、その姿を見ているだけで心が和む。

 動物たちが時折姿を見せ、こちらをじっと伺っている。
 そんな光景さえ、今では癒しのひとつだ。

 私はふと空を仰ぎ、小さく息をついた。

 ……あれ? もしかして私、意外とのんびり暮らせてない?

 最初の内は色々と下準備が必要だから仕方ないよね。そう自分に言い聞かせる。

 ――明日はもっとのんびりしようね、もふぞー。
 私は小さくつぶやき、もふぞーの背をそっと撫でた。
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