くすぐり小説【想像したことを書き綴るだけ】

ホロン

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くすぐりサークル

第4話【兼部はした方がいいっぽい】

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「あ、そういえば灯篭君。」
「なんですか?沙月さん。」
「これはくすぐりサークルに入っている人全員がしていることなんだけど、くすぐりサークルは基本兼部オッケーってのは知ってると思うけど、むしろ兼部しておいた方がいいよ。」
「ああ、それならもう大丈夫です。」

そういえば同じ話を学部長からされた気がする。


「灯篭君、くすぐりサークルに入ったんだって?」
「はい、そうです。」
「人は見かけによらないと言うけど、まさか灯篭君がそのサークルに入るとは…。」

この人は学部長の岡山優花さんだ。

『人は見かけによらない』と言われたのは、おそらく俺が新入生代表を務めたことを言っているのだろう。

実は俺は自身の実力より少し下の大学を受けている。

親から地元にある国立大を進められたが、「この大学でやりたいことがある」と伝えると「それなら」という感じで許可をもらった。

進められた大学は特段に頭が良いというわけではなかったが、校風が俺には合わないし何よりくすぐりサークルを見つけてしまった俺にはこちらの大学にしか目がいかなかった。

そして先ほど言った通り、自身の実力より少し下の大学であるため、ギリギリだが一位通過を果たし、学部長から新入生代表を進められたというわけだ。
だから学部長とはそれなりに縁があり、他の教師よりかは話しやすい関係に慣れた。

それで兼部の話に戻る。

「それで灯篭君、私が話したいのはサークル…というか部活動での話になるんだけど、くすぐりサークルが一般的には明かされていないサークルってことは知ってるね?」
「はい。部員の方から聞きました。」
「これは君の功績に関わることなんだけど、大学で何の部活・サークルに入ったかを聞かれたときのために、兼部しておくことをおすすめするよ。」
「兼部ですか?」
「そう。おそらくだが、くすぐりサークルの部員は全員兼部をしてるんじゃないかな。」

つまり明かせないサークルだから、もし質問された時に答えれるようもう一つ所属しておけということだろう。

「内容は把握しました。岡山さんからおすすめってありますか?」
「兼部のおすすめねえ…くすぐりサークルに入ってる以上、そっちに注力しても幽霊部員にはならないような少し緩めのものがおすすめだよね?」
「そうですね。」
「だったら、まず運動部はやめた方がいいね。この大学の運動部は緩いの基準が違うから。」
「大体察しはつきます。」
「となるとそうだな…灯篭君の履修状況も考慮するなら…創作部なんかどうだ?」
「創作部ですか?」
「そうだ。ここの創作部はかなり緩くて、1人1人好きなものを作り、必要な時には可能な人だけ協力するといったようなサークルだ。個別で作品を作るから、ペースも合わせやすいし参加回数制限もないから兼部にはうってつけだと思うが。」
「なるほど、たしかにそうですね。時間があるときに見学して、よさそうならそっちにも入ります。」
「うむ。学業も怠らないようにね。」
「もちろんです。」

と言った感じで話していた。


「大丈夫ってことは、もうすでに入ってる感じ?」
「そうですね。くすぐりサークルの人は見てないのですが、沙月さんたちはどの部活に入ってるんですか?」
「私たちは全員ノベルサークルってところに入ってるねー。名前の通り小説に関連するサークルで、図書室でいろいろな小説を読んで、ときには書いたりもしてるの。」
「なるほど。」

元演劇部らしい兼部の仕方である。

「ノベルサークルでは、主に神楽ちゃんが大活躍してるねー。神楽ちゃんって印象的に少し内気な子ってイメージだと思うんだけど、小説に限らず本を読むのが好きで、サークル内ではもう3度くらい出版の功績だしてるから。」
「ええ…!?それはすごいですね…!」
「本人はあまり多くの人に見られると恥ずかしいと言ってるんだけど、誰が見ても絶賛するレベルのクオリティなんだよねえ。」
「そこまで言われると気になりますね。今度教えてもらいます。」

いい情報を得たものだ。

「話逸れちゃったけど、結局灯篭君はどこの部活に入ったの?」
「創作部ですね。学部長に進められたので様子見してから入りました。」
「創作部かあ、まあ学部長に進められるなら安心だね。」
「そうですね。っとそろそろバイトいかないとですね。」
「あ、そういえば今日はバイトの日だったね。私はちょーっとやることがあるから、ここでお別れだね。」
「そうですね。それではまた明日。」
「うん。バイバーイ!」

沙月さんに見送られながらバイトに向かう。


「3番テーブルハンバーグ定食2つ!」
「はーい!」
「6番テーブル唐揚げ定食1つとお子様セットAB1つずつ!」
「はーい!」
「7番テーブル海鮮丼1つとカルボナーラ1つとサイドA2つ!」
「はーい!」
「これ2番!これ4番!」
「分かりました!」
「サユさん追加で海鮮丼とお子様セットお願い!」
「りょ~か~い。」

俺がしてるバイトはファミレス店のキッチンチーフだ。
取っているシフトは毎回注文の嵐が来る時間帯であり、忙しい代わりにバイトで取れる地位ではかなりの高収入となっている。

大学入学したての俺がチーフになれている理由は、一年前から大学を決めていてその時からすでにバイトを入れていたからだ。

つまり高校3年のときから1人暮らしをしていたわけだが、もう慣れているのでそこまで苦しくはない。
というより、親の援助もあって初めて可能なことだったので、素直に親に感謝だ、

話を戻して、この超多忙な時間帯、バイト内で通称「嵐期らんき」と呼ばれる時間帯は、お客が多いのも原因の1つなのだが、俺がここのチーフになって以降、ある噂が流れてしまったのも原因の1つとなっている。

それが、『特定の曜日の特定の時間帯にいけば味がものすごく美味しくなる』という噂だ。

要するに料理が段違いに美味い時間帯がお客の想像上で固定されてしまい、たまたまそれが俺だとバイト内で特定されてしまったため、店側も調節しているとの事情だ。

正確には俺とは別にもう一人料理の腕が段違いのバイト仲間がいるのだが、「嵐期」では毎回この2人だけで処理している。

そうじゃないとお客から批判が来るようになるほど噂の力が強かったのだ。

もちろん最初こそ処理できるわけもなくお客を待たせてしまったわけでが、今となってはもはやプロの領域に達しており、一人でメニュー3つ同時相手は当たり前、時に5つ相手することもあるほど。

むしろ運んでくれる人が忙しそうに見える。

ちなみに料理の腕前が段違いのもう一人のバイト仲間というのは、さきほど名前が上がったサユという人だ。

お互いの料理の得意分野は把握しているため、流れてくる注文を2人で聞き仕分けし覚えながら料理を作る。
それを6時から9時までぶっ通してで料理を作りまくる。

こんな感じのことを毎週3日もやっていれば、さすがに店長も優遇してくれる。


「ふい~…今日も今日とて疲れたー…。」
「チーフ~、今日も一緒に帰る~?」
「ああ、そうだな。」

バイトが終わり、サユと一緒に帰る。

別にそういう関係とかではなく単純に帰る方向が一緒なのだ。

ところでこのサユという人物についてだが、本名は左院寺由良さいんじゆらで、上の名前と下の名前を頭文字を取ってサユと呼ばれることが日常となっている。
実際、俺含めバイト仲間全員がそう呼んでいる。

そしてもう一つ、今では親しい仲であるため、彼女の日常も知っているのだが、基本的に不思議な人という印象が強い。

初対面の人とは人見知りを発揮してまず口数がかなり少なく、誰とも話していないときは常にスマホを見ており、よく分からない文字列を打ち込んでいる。
彼女曰くプログラミングが好きとの事なので、その文字列もプログラミング言語なのだろうが、俺にはさっぱりわからない。

一緒に帰ると言っても特に何か話すという訳でもなく、ただサユがスマホをいじっているのを眺めているだけである。

ちなみに他大学の同年で、脳内スペックが高すぎる超がつくほどの天才であるが、なぜか誰もその才能に気づいてないのが現状である。

「あ。」
「ん?」

珍しく彼女が口を開き、スマホに文字を打ち込む手を止める。

「灯篭、大学で部活、何入った?」
「部活?」

ここでのそれを聞いてくるとは…正直何も考えてなかったが、ここで安易にくすぐりサークルの名を出すのはよろしくない。
けど嘘をつくのもあれなので、創作部の方だけを言うことにする。

「創作部だよ。」
「…そう。」
「サユは?」
「…まだどこにも入ってない。」
「入るつもりは?」
「…今のところはない。」
「そうか。」

ギクシャクしているようにも見えるがこれが普通である。

名前が呼び捨てなのは普通として、質問や返答など全てが片言なのは、彼女があまり人と話すことが得意ではないからだ。

ただ必要最低限の情報はくれるため、会話することは可能なのである。
むしろこれを普通だと思えば、案外自分もギクシャクしないのだ。

そんな感じでいつも通りサユを家まで送り、俺も帰宅した。
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