異世界犯罪対策課

河野守

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第一章 女子高生行方不明事件

第二十四話

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「それがリベレーションを使うようになった経緯ですか?」
「はい……そうです……」
 沖田は蚊の鳴くような小さな声で答える。
 まあ、よくある話だ。
 ダイエット、勉強、ストレス発散などを謳い文句に、健康には問題ないと嘘を吐き、一度薬物を使用させる。そして、薬物の快楽に溺れされ、購入を継続させる。これはこちらの世界でも長年用いられてきた売人のやり方だ。
「あ、あの、これから僕はどうなるのでしょうか? やっぱり逮捕されるのでしょうか?」
 沖田は目を伏せながら、不安そうに尋ねる。
 これからの自分の行先が気になるのは当然だろう。
 ここでぬか喜びさせても意味がないと、明善は正直に答える。
「まあ、何の罪にも問われない、ということはありません。沖田さんは異世界違法薬物所持、および使用という罪で逮捕されます。また、今朝のことで暴行などの罪も問われるでしょう」
「そう、ですよね……」
 沖田は目に見えて落胆。
 落合は沖田の肩にそっと手を置く。
「沖田君、確かに前科はついてしまう。それは避けようがない。きっと冷たい目を向けてくる人間はいる。だが、その一方で更生を信じて支援してくれる人もいる。君はまだ二十代だ。人生もまだまだ長い。今回の一件で君の将来が閉ざされたわけじゃない。ご家族のためにも立ち直って、しっかりと親孝行しようじゃないか。なあに大丈夫さ。君は一度自立しようとしたんだ」
 落合の励ましの言葉に、明善も続く。
「その後も購入したとはいえ、最初はアロマと騙されていたわけですから。リベレーションには非常に強い依存性があるので、向こうも沖田さんが再度使用するだろうと計算していたのでしょう。幸い死亡者は出ていません。沖田さんがここでしっかりと反省し、我々警察に積極的に協力して犯人逮捕に繋がれば、裁判も幾分か有利になるでしょう」
「……わかりました」
 日本は前科持ちには厳しい。就職では不利になるだろうし、沖田の自立にとって大きな足枷になるだろう。だが、落合の言う通り、更生や社会復帰を復帰する人間や法人なども存在する。沖田が心を入れ替えれば、社会はきっと受け入れてくれるとはずだ。
「沖田さん、それでは早速我々に協力してもらいます。まずは、あなたがリベレーションを受け取っていた取引場所を教えてください」
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