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勇者の国編
第73話 君のために働きたい
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そして、ゲームは飛ぶように売れた。
街の人が至るところでゲームを持ち歩いて、遊んでいる。
「中ボスを倒したよ」
「すごいな。俺はやっと最初のダンジョンを攻略したよ」
街の人同士で攻略方法を話し合っている。
だが、それは無意味なことだった。
なぜなら、ゲームの主人公はプレイヤーごとにそれぞれ異なるステータスとスキルを持っていて、なおかつ、冒険の舞台となる世界もまた異なるからだ。
「すいません。売り切れです」
僕はせっかく買いに来てくれた人に、頭を下げてばかりいた。
もっと増産しないと人々の期待に応えられない。
「僕、頑張るよ」
ハルトは額に汗して、健気にゲームを量産し続けてくれた。
彼の両親は無実の罪で、親衛隊に捕らえられ牢獄で非業の死を遂げたそうだ。
僕らとこの悲運の少年はグランに復讐するために、協力し合った。
ハルトはスキルレベルを日に日に上げて行った。
一日当たり10台が限界だったが、今では100台まで出来るようになった。
だが、『複製』スキルの発動は、過度のHPを消耗するらしい。
体力を回復させるためのポーションが足りず、生産性が頭打ちになって来た。
需要に応えきれていない。
その内、国民の間でゲームの希少価値が上がって行った。
僕らを通さず人々の間で直接ゲームの売買が行われる様になった。
「なんだこれ! 偽物じゃないか!」
ある日、メガネを掛けた爺さんが怒鳴り込んで来た。
「どうしましたか?」
「どうしたもこうしたも無いよ! こんな偽物つかませやがって! 金返せ!」
話を聞くと、どうやら爺さんはルキ堂からではなく、街の誰かから直接ゲームを買ったらしい。
しかも、ルキ堂が売ってる価格の10倍の値段でだ。
爺さんは喜び勇んで、いざSTARTボタンを押すと、ガラスの画面に『バカ』と表示されただけで終わったそうだ。
「それは、私達のせいではありませんよ。お爺さん」
「何だと!? お前らが品切れさえしなければ、わしは少ない年金をだまし取られずに済んだんだぞ!」
爺さんのメガネレンズは後悔の涙でグショグショになった。
僕は気の毒だなと思ったが、どうすることも出来ない。
「はい。あげる」
ジェニ姫が僕の横からそっとゲームを爺さんに渡す。
「いっ……いいのかっ?」
「いいわよ。その代わり、おじいちゃんに偽物を売りつけた奴らのこと教えて」
ジェニ姫は僕らの商売の邪魔する奴を見逃さないらしい。
爺さんから詐欺集団の特徴を聞くと、
「行ってくる!」
そう言い残し、店を出て行った。
数時間後、顔をボコボコに腫らした詐欺集団のボスと一緒に戻って来た。
ボスの首には縄が掛けられていて、ジェニ姫がその縄の先端を握り締めている。
「すごいですね! この広い街ですぐ見つけられましたね!」
僕はその行動力と探索力に舌を巻いた。
「おじいちゃんは自分の家の近くで偽のゲームを買ったって言うから、私もその近くで偽のゲームを売ったの。まぁ、正確には売る振りをしたのだけどね。で、やっぱりこの詐欺野郎が路地の奥から出て来て難癖付けて来たわけ」
ジェニ姫は詐欺ボスに拳を振り下ろそうとした。
「ひっ! すいません!」
詐欺ボスが頭を両手で防御する。
ジェニ姫は拳を引っ込めてこう続けた。
「俺の縄張りで何やってんだって言うから、返り討ちにしたの」
サラサラの銀髪を手ですきながら事も無げに、言う。
儚げな美少女はどんな暴力をふるったのか。
味方だとこれほど頼もしい女もいないな。
敵に回すと危険な女だけど。
「あんたはゲームの評判を落とした。このままただで帰らせるわけにはいかないわ。一緒に働いてもらいます」
こうしてジェニ姫は詐欺集団と『白銀子猫党』というギルドを作った。
まずはハルトの生産性を上げるために、ポーションの元となるスライムの欠片集めを始めた。
毎日、大量のポーションが手に入ることで、ハルトのHPは常に回復状態となった。
つまり、『複製』スキルでより沢山のゲームが作れるようになった。
忙しい、毎日。
店を閉め、店の二階で食事を終え、寝るまでのひと時だけが落ち着く時間だった。
僕は屋根の上に座って星を見て心を癒すのが日課だった。
「ね、ここに座っていい?」
天窓からジェニ姫が顔を出して問い掛けて来る。
つづく
街の人が至るところでゲームを持ち歩いて、遊んでいる。
「中ボスを倒したよ」
「すごいな。俺はやっと最初のダンジョンを攻略したよ」
街の人同士で攻略方法を話し合っている。
だが、それは無意味なことだった。
なぜなら、ゲームの主人公はプレイヤーごとにそれぞれ異なるステータスとスキルを持っていて、なおかつ、冒険の舞台となる世界もまた異なるからだ。
「すいません。売り切れです」
僕はせっかく買いに来てくれた人に、頭を下げてばかりいた。
もっと増産しないと人々の期待に応えられない。
「僕、頑張るよ」
ハルトは額に汗して、健気にゲームを量産し続けてくれた。
彼の両親は無実の罪で、親衛隊に捕らえられ牢獄で非業の死を遂げたそうだ。
僕らとこの悲運の少年はグランに復讐するために、協力し合った。
ハルトはスキルレベルを日に日に上げて行った。
一日当たり10台が限界だったが、今では100台まで出来るようになった。
だが、『複製』スキルの発動は、過度のHPを消耗するらしい。
体力を回復させるためのポーションが足りず、生産性が頭打ちになって来た。
需要に応えきれていない。
その内、国民の間でゲームの希少価値が上がって行った。
僕らを通さず人々の間で直接ゲームの売買が行われる様になった。
「なんだこれ! 偽物じゃないか!」
ある日、メガネを掛けた爺さんが怒鳴り込んで来た。
「どうしましたか?」
「どうしたもこうしたも無いよ! こんな偽物つかませやがって! 金返せ!」
話を聞くと、どうやら爺さんはルキ堂からではなく、街の誰かから直接ゲームを買ったらしい。
しかも、ルキ堂が売ってる価格の10倍の値段でだ。
爺さんは喜び勇んで、いざSTARTボタンを押すと、ガラスの画面に『バカ』と表示されただけで終わったそうだ。
「それは、私達のせいではありませんよ。お爺さん」
「何だと!? お前らが品切れさえしなければ、わしは少ない年金をだまし取られずに済んだんだぞ!」
爺さんのメガネレンズは後悔の涙でグショグショになった。
僕は気の毒だなと思ったが、どうすることも出来ない。
「はい。あげる」
ジェニ姫が僕の横からそっとゲームを爺さんに渡す。
「いっ……いいのかっ?」
「いいわよ。その代わり、おじいちゃんに偽物を売りつけた奴らのこと教えて」
ジェニ姫は僕らの商売の邪魔する奴を見逃さないらしい。
爺さんから詐欺集団の特徴を聞くと、
「行ってくる!」
そう言い残し、店を出て行った。
数時間後、顔をボコボコに腫らした詐欺集団のボスと一緒に戻って来た。
ボスの首には縄が掛けられていて、ジェニ姫がその縄の先端を握り締めている。
「すごいですね! この広い街ですぐ見つけられましたね!」
僕はその行動力と探索力に舌を巻いた。
「おじいちゃんは自分の家の近くで偽のゲームを買ったって言うから、私もその近くで偽のゲームを売ったの。まぁ、正確には売る振りをしたのだけどね。で、やっぱりこの詐欺野郎が路地の奥から出て来て難癖付けて来たわけ」
ジェニ姫は詐欺ボスに拳を振り下ろそうとした。
「ひっ! すいません!」
詐欺ボスが頭を両手で防御する。
ジェニ姫は拳を引っ込めてこう続けた。
「俺の縄張りで何やってんだって言うから、返り討ちにしたの」
サラサラの銀髪を手ですきながら事も無げに、言う。
儚げな美少女はどんな暴力をふるったのか。
味方だとこれほど頼もしい女もいないな。
敵に回すと危険な女だけど。
「あんたはゲームの評判を落とした。このままただで帰らせるわけにはいかないわ。一緒に働いてもらいます」
こうしてジェニ姫は詐欺集団と『白銀子猫党』というギルドを作った。
まずはハルトの生産性を上げるために、ポーションの元となるスライムの欠片集めを始めた。
毎日、大量のポーションが手に入ることで、ハルトのHPは常に回復状態となった。
つまり、『複製』スキルでより沢山のゲームが作れるようになった。
忙しい、毎日。
店を閉め、店の二階で食事を終え、寝るまでのひと時だけが落ち着く時間だった。
僕は屋根の上に座って星を見て心を癒すのが日課だった。
「ね、ここに座っていい?」
天窓からジェニ姫が顔を出して問い掛けて来る。
つづく
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