金色の瞳

バナナ🍌

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侯爵令嬢側仕え

痛感する女子力の無さ

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王族や貴族が治める王国が殆どのこの世界では、世界共通の知識はそれほど多くない。
そんな知識の中の1つにこんな物があった。
金色の瞳ゴールデンアイを持つ者は生まれながらの“天才„だと。



わたしは昨日アリシア様に言われた定時に、アリシア様を起こしに行った。
扉をノックし、失礼致しますと声を掛けてから扉を開ける。
「おはようございます、アリシア様」
「ん………」
寝顔も可愛らしいですね!!
わたしは祈るように手を絡め、思わずそう言いそうになったが、無表情で手だけ行動させ何とか納めた。今のわたしはたぶん仏様のような表情をしているだろう。
まぁどちらにせよ、ベールを掛けているから見えないけどね。
そんな事を考えながら、わたしはアリシア様の肩を揺らした。
「起きてください、アリシア様」
「…ァリィ………ヤ……?」
「はい、貴女様の筆頭側仕えであるアリーヤです。アリシア様、起きてください」
「ん………ァリィヤも……………」
「はい?」
アリシア様が、わたしを微笑んで見上げて布団を軽く上げ、ポンポンと自分の隣を叩かれた。
「………アリィヤも………寝る……?」
「っ?!?!?!?!?!?!?!?!?!」
わたしの頭は一瞬にして真っ白だ。
落ち着きなさい、アリーヤ。貴女はアリシア様の筆頭側仕えでしょう?もしアリシア様を起こしに行って一緒に寝ちゃいましたてへ★とかなったら……旦那様に確実にクビにされるゥゥ!!!!
ハッとしたわたしは、アリシア様に声を掛けた。今日の時刻はいつもより早い為、寝ぼけていらっしゃるのだ。今日この頃目的を言えばきっと目を覚まされるだろうとわたしはアリシアの肩を揺すりながらこう告げる。
「アリシア様、今日は街へのお出掛けです。起きてくださぁぁぁぁ?!」
あ、危なあっぶなッッッッッッッッ!!!
アリシア様がまるで骨盤を重心にするかのように円を描くかのごとく素早く起き上がられ、危うくわたしの顎にアリシア様の頭が直撃する所だった。
アリシア様は先程寝ぼけていらっしゃったのが嘘のようにベッドから降りた。
わたしは慌てて昨日決めておいた服を持ってきてアリシア様の着替えを手伝った。
「御綺麗です!!!」
「ありがとう、アリーヤ」
そう言って微笑んだアリシア様にわたしは縦長の鏡を支えつつ見惚れる。
『まるで天使のような美しさ!』『その輝きは止まる事を知らないね!』『結婚したい~~!』『こんなの男が見たら一殺よ!』『神よなんて素晴らしい事をしてくれたのでしょう?!』『アリシア様をこの世に生まれさせてくれてありがとう!!』『一生付いていきます』『アリシア様~~~~!!!』
心の中でこれ等の事を一斉に叫んでいると、アリシア様はわたしに声を掛けられました。
「アリーヤ」
「はい」
「アリーヤも着替えて」
「はい」
わたしはそう言って扉を開けアリシア様を外に促した。そして、3秒間アリシア様と見つめ合った。
ん?待って。アリシア様何て言ってた?
“アリーヤも着替えて„。
ん?アリーヤも?着替えて?
「何してるの。アリーヤと2人で行くのだから、今回くらい着替えてちょうだい」
「ふ、2人?!」
つまり、デート?!!!!!!!
変態思考に陥った罰としてわたしは壁に掛かっていたジェル王子の姿絵を自身の頭にぶつける。
やべっ、罰のつもりが私欲が混じってしまっていた。描き直して貰わねば。
そう思いながら、わたしは着替えるついでに焼却炉に向かおうと真っ二つに割れた姿絵を抱え、唖然とするアリシア様に頭を下げる。
「それではアリシア様、失礼致します」
「え、えぇ………」
わたしは屋敷の裏にある焼却炉に姿絵を投げるように捨て、というか投げて自分の部屋に向かう。
部屋のクローゼットを開いたが、どうしよう。ろくに服を持っていない。給料は貯りに貯まっているがアリシア様の好きな御菓子等にしか使っていない。女子力が低いと言うのはこういう事だろうか。
そう思いながら、わたしは複数ある側仕えとしての桃色のリボンの付いた黒い服を取った。これがいつも着ている服だ。正直に言うと、今それと同じ種類の服を着ている。これを着て何が変わろうものか。
さて、どうしよう。困った。
買い物の途中で買うという手段を思い付いた。が、わたしが着るような服はアリシア様にとって質の低すぎる服だ。アリシア様にとって無駄足になってしまう。却下だ。
今すぐ買ってくるという手段を思い付いた。が、アリシア様をその分数分無駄に待たせてしまう。却下だ。
諦めてせめてもの着替えだけするという手段を思い付いた。が、アリシア様の期待を裏切る訳にはいかない。それに心優しいアリシア様は背丈の似たわたしに服を貸そうとされるだろう。却下だ。
新しく買うのも駄目、いつもの服では駄目。
そうなると、レンタルか。
そう思い、わたしは自分の部屋から出た。3つ部屋を挟んだ所にある、背丈の似た同僚の部屋の扉をノックする。
「ふわぉぁい、おはようございますぅ。あ"、鬼畜筆頭側仕え様……」
「おはようございます、随分遅いお目覚めですね。ケイトさん」
生憎親しい有能なグレイさんとは背丈が合わない。その為問題児な子爵家の御令嬢ケイト・リコリスさんに服を借りようと思ったのだ。
幸いいつでもクビに出来る程この人の弱味は握っている。
服程度簡単に借りてくれるわ、ククク…。
(※これは主人公の台詞です)
わたしはベールの下でにっこりと微笑む。ケイトさんは見えなくとも悪寒がしたようで、え?何?と自身を抱き締めるかのように腕を回した。
「何も言わずに服を貸してください」
「え?あぁ、そういえば街への御出掛けでしたっけ。鬼畜筆頭側仕え様女子力低いから私服持っていませんでしたもの、ねっ?!!」
ペラペラしゃべるケイトさんの首にわたしは護身用のナイフを当てる。社会的じゃなく物理的にクビにするか。
「何も言わずに、と言いましたが??」
「ヒィィ!すみませんすみません!!服でしたね!はい!どうぞ!!鬼畜筆頭側仕え様!!!」
そう言って、押し付けるように桃色の生地の使われたワンピースを押し付け、ケイトさんは乱暴に扉を閉めていった。
あの人これから仕事じゃ無いのか。
そう思いながら、わたしは自室に戻り服に着替えた。ちなみにベールは桃色だ。付け替えた。派手だ。恥ずかし。
ワンピースには緑色の蔓や葉等の詩集があった。
さすがケイトさんだ。いつもうざいくらい女子力を語っているだけある。
わたしはそう思いながら貯金の入った財布を持ち自分の扉のドアノブに手をかけた。急ぎ足でアリシア様の部屋に向かう。
コンコンとわたしはアリシア様の部屋をノックした。
「御待たせ致しました、アリシア様」
「アリーヤ!全然待ってないわ、可愛いわね。良く似合ってる」
そう微笑んだアリシア様に、わたしは嬉しさで気絶しないよう意識を保ちながら、エスコートの手を差し伸べた。
桃色のベールを付けている姿を見て可愛いと思ってくれるアリシア様は神だと思ったのだった。
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