金色の瞳

バナナ🍌

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隣国の王女殿下

母国というもの

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金色の瞳ゴールデンアイを持つ者は、生まれながらの“天才„。
この世界の常識であるそれは、都合の良い部分を切り取った、ただの綺麗事でしか無い。
実際は、金色の瞳ゴールデンアイを持つ者は、神の子として人間離れした能力を持つ。そして、神が全ての生き物を愛すように、その愛が金色の瞳ゴールデンアイを持つ者に受け継がれ、ある1つの物に集まる。
つまりは、代償として執着心が与えられたのだった。



馬車に揺られしばらく、リリアイラー王国の王都に入った時わたしは窓の外を見た。国王は毒殺で死亡、王妃は犯人として幽閉されているそうだ。しかも挨拶に第2王子のヨナも来るらしい。来んな。今まで以上にベール依存症になりそう。
今日から通う所はアイラー学院というらしい。その学院に到着し、荷物を運び込む指示をする。今日は学院では始業式も授業も何もないが、大抵寮に多い荷物を運び込む為に速く来る貴族が多い。アリシア様は庭園で御茶をしたいとおっしゃったので、わたしはちょうど到着し降りてきたデヴィン王子達を捕まえてアリシア様の事を任せておく。彼は腹黒く微笑んでいらっしゃった。それはわたしの寿命が5年縮んだ瞬間だった…。
寮に荷物を運び終わりわたしは馬車を帰した。はあ、とため息をつきなかまら庭園に向かった。気が重い、腹黒様とは会いたくない。
「あら貴女、身の程知らずの愚か者の側仕えじゃない?」
はぁ?誰が何だって?
心の中で悪態をつきながらわたしは声の聞こえた方へ振り返った。そこにはデヴィン王子に纏わりついていたエレノアが顔を歪めて立っていた。
「御機嫌麗しゅう、コールマン令嬢」
「あのふしだらな女は何処に?」
「……ちょうど今、品行方正な麗しき我が主人を探していました」
「…あらそう」
主人の暴言許すまじ。
そう思いながら、ふぅんとわたしをジロジロ見る。キモい、こっち見んな、変態、セクハラ。
そう思いながらわたしはそれではとカーテシーをして立ち去ろうとすると、待ちなさいとエレノアから声を掛けられた。しつこい。
「何でございましょう?」
「その手袋、わたくしに差し出しなさい。貴女みたいな侯爵家に仕える程度の者が身に付けるような物では無いわ」
主でも無い御前が人様の装飾品に文句を付けるなと思いながら、わたしはちらりと手袋を見た。デヴィン王子に誕生日プレゼントとして貰った物だ。王子からのプレゼントならば確かにいい値段がするだろう。けれど何故わたしがエレノアに渡す必要がある?
「そんな、コールマン令嬢の御手を煩わせる事ではありません。こちらは後で自分で外しておきますので」
「まぁ!!わたくしが差し出せと言っているのよ。それに口答えをするなんて、主従揃って身の程知らずねッ!!」
あんだとこの我が儘貪欲女!!!
心の中で激怒しながら、わたしがどう対抗しようかと頭をフル回転させていると、コツコツと足音が聞こえた。庭園側のそちらに目を向けると、ヒュバート王子が笑みを浮かべてこちらに向かって来ていた。いつの間にやら遠巻きにこちらを見る野次馬達が居る。
「こんにちは、コールマン嬢。何をして居るんですか?」
「あらっ、ごきげんよう。ヒュバート様。何の御用?今わたくし、大切な話をしているの」
貴族なら挨拶しっかりやれよ、そして仮にも王子を邪険に扱うな。
そう苛立つわたしと同じような事を思ったのか、ヒュバート王子の笑顔が一瞬歪む。
「アリーヤ、アリシア嬢や兄上が庭園からこちらに向かって来ているから、早く向かった方がいいと思う」
ヒュバート王子の言葉に、エレノアはビクリと肩を震わせる。兄上をデヴィン王子と勝手に解釈したのだろう。ジェル王子の方が可能性が高いと思うが。
そう思いながらヒュバート王子を見上げていると、彼はエレノアを見る事無くわたしに首を傾げてきた。
「大切な話と聞いたけど、どんな話をしていたの?」
「それはっ……!!」
「コールマン令嬢にこの手袋を差し出せと言われました。わたしの身の丈に合わないようなので」
「そう?とても良く似合っている」
そう言ったヒュバート王子は、わたしの手を掬い上げ顔を近付け唇を落とした。ヒュバート王子目当ての野次馬化していた令嬢達は黄色い声を上げる。おいわたしの手袋の価値を上げるな、他の令嬢から盗られるだろ。
そう思いながら顔を上げたヒュバート王子を見上げていると、わたしはふわりと覚えのある香りに気付いた。そちらへ目を向けると、フライア王女がにこりと微笑み立っていた。ラベンダーの香水、彼女が誘拐されたパーティー以来の香りだ。匂い強っ…。
フライア王女に気付いた野次馬達は、ザッと彼女に道を開ける。王女としての振る舞いはかなり出来るようになったようで、彼女は笑みを浮かべてその道を歩いてこちらに歩いてきた。
「エレノア」
その清らかな声に、野次馬の男子達は聞き惚れる。エレノアは彼女を見てあたらさまに顔を歪めた。公爵令嬢としての作法がろくに出来ていない。彼女の親は一体、どんな教育をしているのだろうか。これでは一族の恥だろう。
わたしはそう思いながら、わたしはフライア王女を目に映す。それと同時に刺々しいエレノアの声が聞こえた。
「あら王女様、どうなさったの…?」
「貴女と御茶をしようと思ったのですが、第3王子殿下と何か大切な御話があったのかしら?」
「いえ、もう解決しましたので大丈夫。御気遣いありがとう」
「とんでもありません、それでは失礼します」
反論しようと騒ぐエレノアをフライア王女は引きずるように連れていき、わたしはそっとため息をついた。自国の愚かな公爵令嬢を宥める?程には王族として成長したようだ。
すると、ヒュバート王子がわたしの手を握った。顔を上げると、彼はわたしと目を合わせ庭園の方を指差して微笑み掛けて来た。
「実はまだ兄上方やアリシア嬢は庭園で御茶をしているから。私は寮の部屋に戻るつもりだったけど、折角だから一緒に行こう。アリーヤ」
私が嘘を付いた事は秘密だよ、とヒュバート王子はわたしの唇に人指し指を当ててきた。こくりと頷き、わたしはヒュバート王子と共に庭園に向かった。
「見つけた」
後ろから、そう発した彼の無邪気な声に気付かないまま…。
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