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9 そしてダンジョンに一人残される

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「まあ、こんな所だ。オレはそろそろ行くけど、後なんかあったかな・・・」

 もう十分過ぎるほどダンジョン攻略法を教えてもらった。後はもう俺の問題だろう。

「ああ、そうそう!このダンジョンって10階まであるんだけどさ、10階にある魔法陣には乗っちゃダメだぞ?その魔法陣がダンジョンの出口なんだが、ダンジョンの外は猛吹雪で、しかも戻ってこれねーから絶対死ぬぞ」

「・・・むっちゃ重要な情報やん!わ、わかった!絶対に魔法陣には乗らない」
「あー、ちなみにココは奈落じゃなくてアリアにあるダンジョンだ。猛吹雪の雪原を半年歩いたら街に辿り着けるぞ」

「なんだそりゃ・・・。もしかして二人はその雪原を突破したの?」
「おうよ。それしか道が無かったんでな!普通の人間なら確実に死ねる。常に猛吹雪だから視界は1メートルって感じで、いきなり崖に落下したりするぞ」
「・・・よく生きてましたね」
「何度か死にかけたな。まあそんなワケだから無茶はすんなよ?」
「絶対せんわ!」

 ホントこの二人ってとんでもねーな。このアリアという世界の戦争も体験してるし、物語の主人公を地で行っておる。俺も彼らのようになれるのだろうか?

「んーと、後は・・・、そうだ!」

 虎徹さんがリュックサック?をどこからか取り出して、何かやっている。
 時空魔法の使い手みたいだから、アイテムボックスとか所持してるのかも?

「これをやるよ」

 リュックを渡された。うん、たしかにこういうのは非常に助かる。

「ありがとう!魔石を集めたりするのにこれは重宝する!」
「オレが普通のモノなんか渡すと思うか?」
「え?」
「ちょっと手を前に出して」

 言われた通り、手を前に出した。するといきなり槍で手を少し斬られる。

「いてッ!いきなり何!?」
「よし、これでそのリュックの所持者は小烏丸になった。それはマジックバッグだから役に立つぞ」
「マジックバッグ!?もしや物が大量に入る、異世界で御馴染みのアレ?」
「知ってたか。たぶん想像してる通りの品物だぞ」

 うおおお!マジか!!マジックバッグって超貴重品じゃないか!虎徹さんってなんて良い人なんだ・・・。

「こんな凄いモノまで・・・、本当にありがとう!」
「強くなったら武力で恩返しでもしてくれ」
「わかった!その時は必ず力になることを誓う!ミスフィートさんが最優先だけど」

 俺も強くなれば、人助けが出来るほど余裕のある人間になれるのだろうか?
 あ、そうだ。アレを聞いておかないと!

「ところで魔法ってどうやったら使えるん?」
「ん?あー、それはだな、加護を手に入れる必要がある。加護があれば、その加護に対応した魔法が使えるんだ」
「加護?ステータスの一番下の項目かな?それはどうやって手に入れるの?」
「神殿でお祈りしまくればいいらしいぞ」
「え?神殿って、よくわからんけどダンジョンの中には無いよね?」
「ない」
「クッソー!じゃあ魔法を使うのは俺には無理なのか・・・」

 俺も魔法を使えればなんて思ったけど、神殿が見つかるまで無理やん。

「ところが加護ってのは、いつの間にか勝手に付いてたりもするんだ。オレとアニキはいつの間にか加護が付いてた。条件は未だにさっぱりわからん」
「へーーー、それなら俺にもワンチャンあるかもしれんのか」
「そうだな。運が良ければ勝手に付くんじゃね?」

 なるほど運か。地味に俺はそこそこ運が良い方だと思うけど、うーむ・・・、加護が付くといいなあ。

「ここには気を付けなきゃならん魔物が何体かいるから説明しとくぞ」
「危険な魔物かあ」
「まずはゴブリンだ。全ての階層に出て来るが、とにかく全部強い。んで次に危険なのは人魚だ。不意に近づくと眠らされてゲームオーバーだ。あとゾンビは首を落としても襲って来るから気を抜くな。最後にウニだ。ウニには毒があるから絶対食うな」
「眠らされるのはヤバイな。わかった、人魚には気を付ける!」
「歌声が聞こえてきたら、そっちに人魚がいるってことだ。人魚ゾーンを突破するには耐性を付ける必要があるので、少しずつ近づいて眠気が来たら引き返すってのを繰り返し、少しづつ地味に耐性を上げろ。眠ったらアウトだからマジで要注意な」

 なんて恐ろしい魔物なんだ・・・。俺は絶対死ぬワケにゃいかんから、歌声には要注意だな。

「じゃあアニキ達が待ってるしオレはそろそろ行くぞ。1年後に迎えに来る!」

 俺は1年間、ここに放置されるのか・・・。

「あー、個人的な用事でちょくちょく来る事はある。でもいちいち小烏丸を探したりもしないんで、お迎えは1年後と思ってくれ」
「わかった、1年後ですね。よしッ!それまでに絶対に強くなってやる!」

「じゃあな!ゴブさんによろしく!転移!」


 虎徹さんは行ってしまった。

 もうこれで完全に、俺は一人で生きてゆかねばならない。

 期限は1年間。
 それまでひたすら戦い抜き、彼らのような絶対的な力を手に入れる!


 ミスフィートさん、それまで待っててくれ!絶対に生きていてくれよ!
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