伯爵夫人はやられた分だけきっちりやり返す

こじまき

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夫の連帯保証人になっていました

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結婚式の翌日から夫は屋敷を留守にし、留守を預かる私が目にした伯爵家の財政は惨憺たるものだった。

使用人の給料すら満足に払われていない。私は持参金を取り崩して当面必要な資金を確保する。そして領地については優秀な財政管理人を雇い直した。

「やることが多すぎるわ」

額に冷たい指をつけてため息をついたとき、「奥様」と執事が声をかけてきた。

「奥様宛てのお手紙です」
「ありがとう」

確かに私宛てではあるが、見慣れない封蝋が押された手紙。

《ボルトン伯爵夫人ベアトリーチェ・サマーズ=ボルトン様

債務者であるボルトン伯爵アーヴィング様が期日までに弁済を行わないため、連帯保証人であるあなたさまに返済をお願いするものであります。遅延損害金を含めた全額を一括弁済願います。支払い期日は…》

「…連帯保証人ですって?」

執事がおずおずと説明する。

「旦那様は奥様とご結婚されることが決まってからというもの、勝手に奥様の名前を連帯保証人の欄に書いて、サマーズ男爵以外からも金を借りておられたのです」
「そうなのね」
「申し訳ございません。そんなことをしてはならないと、何度も申し上げたのですが…」
「あなたのせいではないわ、イーデン。教えてくれて感謝するわ」

本人の同意も得ずに連帯保証人欄に名前を書くなど、とんでもない。おとなしく払ってやるわけがない。

私は債権者であるフィッツロイ商会に返事を書く。

《お金は返す。だから大変申し訳ないが、連帯保証人なしでお金を貸してくれる、審査の緩い業者を教えてほしい》

数日後にフィッツロイ商会から紹介された金貸しで、私は「ボルトン伯爵アーヴィング」の名でフィッツロイ商会に返済するためのお金を借りた。

もちろん端数まで合わせてきっちりと。

倍返しはしない。やられた分だけ、やられたように、やり返すだけだ。彼が私の名を使ってお金を借りたなら、私は彼の名を使って同じ額のお金を借りればいい。

ふっと笑みがこぼれる。

連帯保証人もなしに他人名義で借金を申し込んだ女に大金を貸す金貸しが、フィッツロイ商会やお父様ほど、まともなはずはない。
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