異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~

こじまき

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47 彼女だけいればいい

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「それって、絶対やらなきゃだめ?」
「…やりたくないの?」

私はきょとんとしてレオくんを見る。レオくんは何も答えずもじもじする。

「んと…アロイス叔父さんは、レオくんには男の子とだけじゃなくて女の子とも仲良くしてほしいんだって。それで、仲良くなれそうな女の子がいるかどうか、探してほしいんだってさ。もう日程は決まっちゃってるし、レオくんが参加するってみんなに言ってしまってるから、ちょっと顔を出すだけでもどう?」

なぜ私は六歳児に対して「イケメンの同僚を何とか合コンに来させたい幹事」みたいなムーブをしているのか。

でもレオくんはまだ何も答えない。やっぱりやりたくないのだろう。

たいていは素直に言うことを聞いてくれるレオくんが、こんな風に抵抗するのは珍しい。

「どうしてやりたくないの?」と聞くと、レオくんはちらっとクリスタちゃんを見た。彼女は土を掘り返している。おそらくミミズを探しているのだろう。

「…僕、女の子はクリスタだけいればいいんだ」
「はうっ…っ!!!」

六歳児にきゅん死させられそうになり、私は思わず胸を押さえる。小屋にいたときからレオくんはクリスタちゃんを好きだって思ってたけど、今もまだ好きだったなんて。一途かよ。可愛いがすぎる。

「これからもずっと、クリスタだけ好きだから」

そのダメ押しはもう無理しんどい。尊さのあまりテーブルに頭を叩きつけそうになる。

私は何とか息を整え、真剣な表情をつくってレオくんに向き直る。でも恋する六歳児が可愛すぎて、どうしても口が緩んでしまう。

「クリスタが参加しないなら、ママ友会はやりたくない」 
「わかった。ママ友会にクリスタちゃんも参加させてもらえるように、一緒にアロイス叔父さんにお願いしに行こう」
 「…ありがと、サティ」

 レオくんは私の頬にちゅっと可愛いキスをくれた。レオくんの可愛いけれど熱い恋に、私はそのあとずっとにまにましていたと思う。

両手に顎を乗せたアロイスさんに「難しいことを言う」と、渋い顔をされるまでは。

「レオは王太子だ。感情だけで伴侶を選ぶなど、許されない」

レオくんは目から輝きを消して、表情を硬くした。

「ベルント伯爵の養女になったとはいえクリスタの後ろ盾は弱いし、もし婚約すれば二人揃って貴族たちの攻撃にさらされるのは目に見えている。レオとクリスタの間に子どもができたとして、その子どもの正統性についてとやかくいう人間も出てくるだろう」

今から婚約だとか子どもの正統性だとか、大袈裟すぎる。

これは、六歳さんの可愛い初恋なんだってば。

「ただ子どもたちが同じ場所にいて、みんなで仲良くするだけです。クリスタちゃんにも同世代の同性のお友達がたくさんいたほうがいいのは当たり前ですし」

アロイスさんはため息をつく。

「幼いからこそ危険でもあるのだ。婚約者候補の集まりに平民出身のクリスタを混ぜるのは、明らかに不自然だ。クリスタがレオの想い人だとわかってしまえば、クリスタを利用して甘い汁を吸おうとする者も、逆に彼女に危害を加えようとする者も、どちらも湧いて出てくるだろう」

ここはそういう世界の、そういう王城。だけど私にだって反論はできるんだから。「そんな言葉で脅しても無駄ですからね。馬鹿にしてもらっちゃ困ります」と、私は両手を腰にやった。

「ブルーノ先生の授業で習ったんです。平民出身でも、聖女は王妃になった例があるって。しかもその治世は”レイデンバーンの春”と呼ばれるくらい繁栄してたそうじゃないですか。クリスタちゃんの魔法は人を助けられるんだから、聖女と言っても差し支えないでしょ?王太子と同年代かつ素晴らしい能力をもつ聖女が婚約者候補に名を連ねるのは、不自然だとは思いません」
「それは、確かにそうだが…」

アロイスさんは「クリスタが危険に晒されてもいいのか」というもうひとつの柱にすがって盛り返す。けどそれだって論破できるのだ。

「私とベルント伯爵夫人は、クリスタちゃんに変な大人が近づけないための盾になれます。それでも危険なら護衛をつけてもらえばいいし、そもそもクリスタちゃんの闇魔法は最強です。下手に攻撃したら触手に襲われて全員死亡ですよ」

どうだ。いくらアロイスさんが国王でも、この正論には手も足も出ないでしょ。

「クリスタちゃんを即レオくんの婚約者候補にするって話じゃありません。他の子たちを婚約者候補から排除してほしいわけでもありません。ただレオくんの気持ちに配慮して、可能性を残してほしいんです」
「可能性を残す…」

まだまだ先の、どうなるかもわからない未来の話。レオくんが抱える恋の種を守っても、花を咲かせるかどうかはわからない。だけど確かに今ここにあるものを、最初から枯らしてしまうことはしたくない。

そして二人が大人になったとき、二人の気持ちが同じなのだとしたら、「身分が違うから」と諦めるんじゃなくて、「どうしたらできるようになるか」を考えられるようにしてあげたい。

「アロイスさんがレオくんの立場にいるとしたら、頑固でちょっと怖い叔父さんを説得するための方法を、必死で考えるでしょう?方法はあるはずです」

アロイスさんは「ふむ」と視線を上にやった。

「…クリスタの能力を活かして手柄を立てさせたうえで世論を誘導し、”王太子と優秀な聖女の一途な愛”として打ち出す方法があるな」

レオくんの顔に希望が戻ってくる。

「叔父上、それって…!」

アロイスさんはふっと優しく笑った。

「ああ。厳しい道だが、前例も方法もある。もしも二人が心を合わせてその道に進むなら、できる限りの応援はしよう」

レオくんと私はぱちんとハイタッチした。
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