61 / 84
61 パジャマパーティー
しおりを挟む
女子的お泊り会の目玉イベントと言えば、やはりパジャマパーティーに敵うものはないでしょう。異論は認めない。
クリスタちゃんの部屋に、この日のために用意した「明かりをつけるときれいな柄が周りに散るライト」をふんだんに配置し、花瓶に花を生け、部屋をデコレーション。お揃いの夢かわいいパジャマとヘアバンドも用意した。
パウロスさんと風魔法使いさん&水魔法使いの試行錯誤によって無事爆誕したアイスクリームは、小さなかまくらの中で保冷してある。
「完の璧。いや、完な璧です」
「いつロゼマリアが来ても大丈夫だね!」
タイミングよく、コンコンとノックの音がする。
「サティ様、クリスタ様、失礼いたします」
「いらっしゃい、ロゼマリアちゃん」
「パジャマパーティーのはじまりはじまりぃ!」
「パジャマパーティーとは何ですの?」という戸惑うロゼマリアちゃんを、高速で私たちとお揃いのパジャマに着替えさせる。はい、超絶可愛い。
「パジャマパーティーっていうのはね、可愛いパジャマを着て、美味しいお菓子を食べながらおしゃべりするパーティーのことだよ」
テンションの上がったクリスタちゃんがベッドにダイブし、私もポンとベッドに倒れ込む。二人でロゼマリアちゃんを見て、「おいで」と腕を広げると、彼女はおずおずとベッドに近づいた。
「行儀が悪い」という気持ちと、「やってみたい」という気持ちが、ロゼマリアちゃんの心の中でせめぎ合っているのがわかる。
「お父様やお母様には…」
「内緒」と声をかけると、ロゼマリアちゃんは一瞬考えてから、ぴょんとベッドに飛び乗った。そして本当に嬉しそうに、「こんなことをしたのは初めて」と笑う。
たった何センチのジャンプ。だけど今彼女が飛び越えたのは、ベッドの縁だけじゃないと思う。「自分の常識」の境界線を越えたんだ。
すっごく小さいことだよ?でも、大事なことだと思う。
「さ、アイスを食べながらおしゃべりタイム!味はバニラといちごとチョコがあるんだよ、何がいい?」
「クリスタはチョコ!」
だと思った。
「ロゼマリアちゃんは?」
「いちごをいただきますわ」
「了解」
「ねえ、ロゼマリアは花だと何が好き?」とクリスタちゃんが聞いた。
「お花でしたら薔薇が好きですわ」
うん、ぽいぽい。
「そうなんだ。クリスタはエーデルワイスっていう花が好きなの。あとりんごの花も可愛いんだよ」
「エーデルワイスというお花は、聞いたことがございませんわ」
「エルドルフにはいっぱい生えてるよ。レオがよく、エーデルワイスを摘んでクリスタにくれたの」
ぴたっとロゼマリアちゃんが動きを止める。
「殿下が、クリスタ様にお花を…?」
「うん。よく髪に飾りっこしたの。エーデルワイスは白い花でね…」
ロゼマリアちゃんの顔色が変わっていく。
《男の子が女の子に花をあげるんだよ、好きな女の子に》
《そうなの?じゃあレオがクリスタを好きなら、花をちょうだい》
いつかレオくんとクリスタちゃんはそんな会話をしていた。「だとしたらこれはマウントになるぞ。まずい」と思ったけど、私が言い訳するより早く、ロゼマリアちゃんはベッドから降りてアイスをことんとテーブルに置いた。
そしてきちんとした姿勢でお辞儀をする。
「大変申し訳ございませんが、体調が優れませんため、本日はこれにて失礼いたします」
「待って、ロゼマリアちゃん!今のは…!!」
「サティ様、お気遣いいただかなくてもけっこうです。すべてわかりましたから」
ロゼマリアちゃんの声がちょっと震えて、目が潤んでる。彼女はくるっと踵を返して、いい姿勢で部屋を出て行った。
「ロゼマリア、どうしたのかな?」
クリスタちゃんには、まるで悪気はない。ただ過去の事実を述べただけだ。だけどそれが相手にどんな感情をもたらすか、そろそろ彼女も学んでいく段階なのかもしれない。
私は言葉を砕いて説明した。
ロゼマリアちゃんはレオくんのことが好きだってこと。そこへクリスタちゃんが、そんな気はなくても「レオくんは自分のことが好きだった」と思わせるようなことを言ってしまったってこと。
「例えば、アウレリアちゃんやエステルちゃんが、クリスタちゃんに”私もユリウス様からたくさん虫やお手紙をいただいたことがありますわ”って言うようなものかな」
「…嫌な気持ちになる」
「だよね」
クリスタちゃんは事態を飲み込んだ。
「謝りに行きたい」
「うん、一緒に行こう」
けれどロゼマリアちゃんの部屋のドアをノックしても、彼女は出てこない。「明日にしよっか」と顔を見合わせたとき、「どうしたの?」と声がした。
レオくんだ。さっきまでイーゼルに載っていたキャンバスを抱えている。
隠しても仕方ない。私たちはレオくんに事情を説明した。
するとレオくんは「僕のせいでもあるよね」と呟いた。
「どういうこと?」
「僕がちゃんとロゼマリアに伝えてなかったから、不安になっちゃったんだと思う」
そう言って、レオくんはドアを優しくノックする。
「ロゼマリア、僕だよ。開けてくれないか。渡したいものがあるんだ」
クリスタちゃんの部屋に、この日のために用意した「明かりをつけるときれいな柄が周りに散るライト」をふんだんに配置し、花瓶に花を生け、部屋をデコレーション。お揃いの夢かわいいパジャマとヘアバンドも用意した。
パウロスさんと風魔法使いさん&水魔法使いの試行錯誤によって無事爆誕したアイスクリームは、小さなかまくらの中で保冷してある。
「完の璧。いや、完な璧です」
「いつロゼマリアが来ても大丈夫だね!」
タイミングよく、コンコンとノックの音がする。
「サティ様、クリスタ様、失礼いたします」
「いらっしゃい、ロゼマリアちゃん」
「パジャマパーティーのはじまりはじまりぃ!」
「パジャマパーティーとは何ですの?」という戸惑うロゼマリアちゃんを、高速で私たちとお揃いのパジャマに着替えさせる。はい、超絶可愛い。
「パジャマパーティーっていうのはね、可愛いパジャマを着て、美味しいお菓子を食べながらおしゃべりするパーティーのことだよ」
テンションの上がったクリスタちゃんがベッドにダイブし、私もポンとベッドに倒れ込む。二人でロゼマリアちゃんを見て、「おいで」と腕を広げると、彼女はおずおずとベッドに近づいた。
「行儀が悪い」という気持ちと、「やってみたい」という気持ちが、ロゼマリアちゃんの心の中でせめぎ合っているのがわかる。
「お父様やお母様には…」
「内緒」と声をかけると、ロゼマリアちゃんは一瞬考えてから、ぴょんとベッドに飛び乗った。そして本当に嬉しそうに、「こんなことをしたのは初めて」と笑う。
たった何センチのジャンプ。だけど今彼女が飛び越えたのは、ベッドの縁だけじゃないと思う。「自分の常識」の境界線を越えたんだ。
すっごく小さいことだよ?でも、大事なことだと思う。
「さ、アイスを食べながらおしゃべりタイム!味はバニラといちごとチョコがあるんだよ、何がいい?」
「クリスタはチョコ!」
だと思った。
「ロゼマリアちゃんは?」
「いちごをいただきますわ」
「了解」
「ねえ、ロゼマリアは花だと何が好き?」とクリスタちゃんが聞いた。
「お花でしたら薔薇が好きですわ」
うん、ぽいぽい。
「そうなんだ。クリスタはエーデルワイスっていう花が好きなの。あとりんごの花も可愛いんだよ」
「エーデルワイスというお花は、聞いたことがございませんわ」
「エルドルフにはいっぱい生えてるよ。レオがよく、エーデルワイスを摘んでクリスタにくれたの」
ぴたっとロゼマリアちゃんが動きを止める。
「殿下が、クリスタ様にお花を…?」
「うん。よく髪に飾りっこしたの。エーデルワイスは白い花でね…」
ロゼマリアちゃんの顔色が変わっていく。
《男の子が女の子に花をあげるんだよ、好きな女の子に》
《そうなの?じゃあレオがクリスタを好きなら、花をちょうだい》
いつかレオくんとクリスタちゃんはそんな会話をしていた。「だとしたらこれはマウントになるぞ。まずい」と思ったけど、私が言い訳するより早く、ロゼマリアちゃんはベッドから降りてアイスをことんとテーブルに置いた。
そしてきちんとした姿勢でお辞儀をする。
「大変申し訳ございませんが、体調が優れませんため、本日はこれにて失礼いたします」
「待って、ロゼマリアちゃん!今のは…!!」
「サティ様、お気遣いいただかなくてもけっこうです。すべてわかりましたから」
ロゼマリアちゃんの声がちょっと震えて、目が潤んでる。彼女はくるっと踵を返して、いい姿勢で部屋を出て行った。
「ロゼマリア、どうしたのかな?」
クリスタちゃんには、まるで悪気はない。ただ過去の事実を述べただけだ。だけどそれが相手にどんな感情をもたらすか、そろそろ彼女も学んでいく段階なのかもしれない。
私は言葉を砕いて説明した。
ロゼマリアちゃんはレオくんのことが好きだってこと。そこへクリスタちゃんが、そんな気はなくても「レオくんは自分のことが好きだった」と思わせるようなことを言ってしまったってこと。
「例えば、アウレリアちゃんやエステルちゃんが、クリスタちゃんに”私もユリウス様からたくさん虫やお手紙をいただいたことがありますわ”って言うようなものかな」
「…嫌な気持ちになる」
「だよね」
クリスタちゃんは事態を飲み込んだ。
「謝りに行きたい」
「うん、一緒に行こう」
けれどロゼマリアちゃんの部屋のドアをノックしても、彼女は出てこない。「明日にしよっか」と顔を見合わせたとき、「どうしたの?」と声がした。
レオくんだ。さっきまでイーゼルに載っていたキャンバスを抱えている。
隠しても仕方ない。私たちはレオくんに事情を説明した。
するとレオくんは「僕のせいでもあるよね」と呟いた。
「どういうこと?」
「僕がちゃんとロゼマリアに伝えてなかったから、不安になっちゃったんだと思う」
そう言って、レオくんはドアを優しくノックする。
「ロゼマリア、僕だよ。開けてくれないか。渡したいものがあるんだ」
77
あなたにおすすめの小説
追放された地味探索者、実は隠された伝説級スキルの持ち主でした~気付いたら無自覚に最強ハーレムを築いていた件~
fuwamofu
ファンタジー
地味で目立たない探索者アレンは、仲間に「足手まとい」と罵られパーティを追放された。だが実は彼のスキル【探索眼】は、古代英雄の力を見抜く唯一の能力だった!
鉱山の奥で偶然出会った少女を救ったことから、運命が動き出す。
魔王軍、古代遺跡、神々の争い——すべての鍵を握るのは「ただの探索者」だった男。彼は気付かぬうちに、世界を救い、そして多くの少女たちの心をつかんでいく。
地味だけど最強、無自覚だけどモテまくり。これは世界を変えた謙虚な英雄の物語である。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
俺とエルフとお猫様 ~現代と異世界を行き来できる俺は、現代道具で異世界をもふもふネコと無双する!~
八神 凪
ファンタジー
義理の両親が亡くなり、財産を受け継いだ永村 住考(えいむら すみたか)
平凡な会社員だった彼は、財産を譲り受けた際にアパート経営を継ぐため会社を辞めた。
明日から自由な時間をどう過ごすか考え、犬を飼おうと考えていた矢先に、命を終えた猫と子ネコを発見する。
その日の夜、飛び起きるほどの大地震が起こるも町は平和そのものであった。
しかし、彼の家の裏庭がとんでもないことになる――
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!
966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」
最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。
この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。
錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる