婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

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第二章 お師匠様がやってきた

弟子を育てるのは楽しいらしい

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 弟子を育てるのは、特に新世代の魔力使いたちにとっては、大きな楽しみであり喜びだという。

「フリーダヤとロータス系列は特にその傾向が強い。うちは、『弟子は必ず己を超えさせろ』がモットーゆえ」

 そこが、ルシウスが彼らの特に気に入っている姿勢だという。
 自分だけが強く優れていることを目指すのではなく、後の世代の新たな可能性を拓いてやることを常に考えているところを、とても好ましく感じているそうだ。

「私は魔力使いの中では、トップクラスの魔力量の持ち主なんだ。魔力使いは魔力の多い者ほど強いわけで。だから、私にとってはもう上を目指す必要がない。だからこそ、自分より優れた者を育て上げるというのが、大きなチャレンジになるのさ」
「私たち、カズンからあなたのことは『料理の師匠だった』としか聞いていないんです。魔力使いとして私たちの指導のために来てくれた……のが主目的ということですか?」
「いや、まあ最初はそのつもりだったんだが、……あのひどい料理を知った後ではな。魔力使いの修行と、調理の修行、両方を並行しても大した手間ではないから」

 ルシウスは分類上、魔力使いとしては旧世代と新世代の掛け合わせハイブリッドになるらしく、この点がアイシャと共通になる。
 教え方の上手い師匠なら他にもいたらしいのだが、現時点でフリーダヤ・ロータス系列の魔力使いファミリーに新旧の掛け合わせハイブリッドが聖女ロータスと聖者ルシウス、ふたりしかいない。
 カズンもそこは悩んだらしいのだが、ロータスとルシウスの二択しかないならば、自分の師匠でもあるルシウスのほうがアイシャとトオンも親しみやすいのではないか、と判断したらしい。



「それで結局、ルシウスさんもリンク使いの魔術師ということですか?」
「ああ。私は分類上は“聖者”になる。元々は魔法剣士の一族の出身だから、リンク使いの魔法剣を持った魔法剣士であり、聖者だな」
「聖者……聖女の男版ですよねえ」

 魔力使いの世界だと、聖人といって男女を引っくるめていうことはなく、聖なる魔力持ちで男なら聖者、女なら聖女と分類することが決まっている。同じ聖なる魔力持ちでも、性別で特性が多少異なるためだ。

「弟子を育てる、かあ……」

 トオンの脳裏には、半年前、自分勝手な言動のままに消えていった己の母、聖女エイリーのことが浮かんでいる。
 彼女のことは、半年が経った今でもトオンの中に大きなしこりを残していた。
 気づくとあの女のことを考えて気分が滅入るのだが、今はルシウスの話を聞くべきときだ。慌てて頭を振って面影を追い払った。



「うちのファミリーは、どういった称号や職業の者でも、弟子として次世代を育て上げることが必須のようでな。自分の力だけを追求していくと知恵も技術も衰退するからと。そこは私も昔からフリーダヤに口を酸っぱくして言われ続けていて……」

 弟子をひとりも育て上げたことのない魔力使いは、いつまでたっても半人前扱いということらしい。

「この年になって、半人前と言われることになろうとは」

 本人は苦笑しているが、特に悔しいなどと思っているような感じではない。仕方ないなあという感じの苦笑いだ。
 聞いてみると、ルシウスの年齢は37歳ということだ。
 まだ魔力使いとして、“時を壊す”は果たしていないとのこと。

「まあ半人前なりに、私にできることは全力でやらせてもらう。そこは安心してほしい」
「「はい!」」

 アイシャとトオン、声を揃えて良い子のお返事だった。

 多分、この人物は師匠として、当たりで間違いないのだろう。
 彼を紹介してくれたカズンには感謝しかない。
 明日から始めるという魔力使いとしての修行にも期待が高まろうというものだった。




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