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第二章 お師匠様がやってきた
カーナ王家の闇
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朝食のとき、さりげなく聖女エイリーのことを尋ねてみたルシウス。
だが、それまで美味しい美味しいとリゾットを食していたのに、アイシャは気まずそうな顔になり、トオンに至っては勢いよく残りのリゾットを掻っ込んで、
「ごめん。その話はあんまりしたくないです」
とまだ早い時間にも関わらず、古紙回収で街に出てしまった。
あの調子だと、昼になっても戻って来ないかもしれない。
ルシウスは朝食後、今日は用事がないというアイシャと食後のお茶を飲みながら話をした。
故郷に戻ったとき、師匠の魔術師フリーダヤと話した内容を掻い摘んで話すと、まだ話していなかったことだがと前置きして詳しい事情を話してくれた。
「……そう。賎民呪法の構造はそうなってるのね。その辺のことはトオンにもっと詳しく解析してもらいたいところだけど」
まだ王都の地下に埋まったままの、古代生物の化石の調査をしなければならない。
ただ、どうしてもこの話題となると聖女エイリーに触れる必要がある。
先ほどのトオンの態度だと、すぐ取り掛かるのは難しいかもしれない。
ルシウスはまず、魔術師フリーダヤから聞いた賎民呪法の効果範囲の話、特に国王と王妃として即位したトオンとアイシャが国内で上位存在化した話のことをアイシャに話した。
そして、懸念事項である、同じように初代王妃となったはずの聖女エイリーが、なぜ賎民呪法の影響下で上位存在となっていないかの疑問のことも。
「……それはね。カーナ王家が如何に愚かで悪辣だったかの話の一部なのよ」
約半年前、自滅して死んだクーツに扮して新国王となったトオン。
しかし、王統譜に記された最後の王の名前はクーツではなく、トオン本人のものだ。
「私が独断で宰相に命じたの。トオンにはまだ話してない。頃合いを見て話そうとは思ってるけど」
新国王トオン・カーナ。
父親は前国王アルター。
母親は初代聖女エイリー。
王統譜を閲覧できる者は限られているため、予想通りトオンとアイシャが退位しても、誰にもその表記に気づかれないまま終わっている。
約半年前、アイシャが王都地下の邪悪な古代生物を浄化する寸前。
消える前のエイリーに己の環を触れられたとき、アイシャは彼女から彼女なりのこれまでの意図を受け取った。
聖女エイリーは、初代国王トオンが「自分を大切にする」約束を守るなら、土地の邪悪な魔力や穢れを浄化する役割を引き受けると誓った。
その一環として初代国王と婚姻を結び、王妃となったはずだった。
彼らふたりの婚姻の儀が執り行われた公式記録は残っている。
ところが、アイシャがトオンと国王と王妃として即位するにあたり王統譜を確認したとき、とんでもない事実が発覚した。
「聖女エイリー様はね、王族の王統譜に載ってなかったの」
「……まあ、予想はしていた」
初代国王トオン。トオンやアイシャの元婚約者クーツ王子たちの祖先だ。
その配偶者の王妃には、今はもうない、当時隆盛を誇っていた他国の姫の名前がある。
ふたりは初婚で、初代国王の欄には離婚歴なども記入がなかったそうだ。
だが、それまで美味しい美味しいとリゾットを食していたのに、アイシャは気まずそうな顔になり、トオンに至っては勢いよく残りのリゾットを掻っ込んで、
「ごめん。その話はあんまりしたくないです」
とまだ早い時間にも関わらず、古紙回収で街に出てしまった。
あの調子だと、昼になっても戻って来ないかもしれない。
ルシウスは朝食後、今日は用事がないというアイシャと食後のお茶を飲みながら話をした。
故郷に戻ったとき、師匠の魔術師フリーダヤと話した内容を掻い摘んで話すと、まだ話していなかったことだがと前置きして詳しい事情を話してくれた。
「……そう。賎民呪法の構造はそうなってるのね。その辺のことはトオンにもっと詳しく解析してもらいたいところだけど」
まだ王都の地下に埋まったままの、古代生物の化石の調査をしなければならない。
ただ、どうしてもこの話題となると聖女エイリーに触れる必要がある。
先ほどのトオンの態度だと、すぐ取り掛かるのは難しいかもしれない。
ルシウスはまず、魔術師フリーダヤから聞いた賎民呪法の効果範囲の話、特に国王と王妃として即位したトオンとアイシャが国内で上位存在化した話のことをアイシャに話した。
そして、懸念事項である、同じように初代王妃となったはずの聖女エイリーが、なぜ賎民呪法の影響下で上位存在となっていないかの疑問のことも。
「……それはね。カーナ王家が如何に愚かで悪辣だったかの話の一部なのよ」
約半年前、自滅して死んだクーツに扮して新国王となったトオン。
しかし、王統譜に記された最後の王の名前はクーツではなく、トオン本人のものだ。
「私が独断で宰相に命じたの。トオンにはまだ話してない。頃合いを見て話そうとは思ってるけど」
新国王トオン・カーナ。
父親は前国王アルター。
母親は初代聖女エイリー。
王統譜を閲覧できる者は限られているため、予想通りトオンとアイシャが退位しても、誰にもその表記に気づかれないまま終わっている。
約半年前、アイシャが王都地下の邪悪な古代生物を浄化する寸前。
消える前のエイリーに己の環を触れられたとき、アイシャは彼女から彼女なりのこれまでの意図を受け取った。
聖女エイリーは、初代国王トオンが「自分を大切にする」約束を守るなら、土地の邪悪な魔力や穢れを浄化する役割を引き受けると誓った。
その一環として初代国王と婚姻を結び、王妃となったはずだった。
彼らふたりの婚姻の儀が執り行われた公式記録は残っている。
ところが、アイシャがトオンと国王と王妃として即位するにあたり王統譜を確認したとき、とんでもない事実が発覚した。
「聖女エイリー様はね、王族の王統譜に載ってなかったの」
「……まあ、予想はしていた」
初代国王トオン。トオンやアイシャの元婚約者クーツ王子たちの祖先だ。
その配偶者の王妃には、今はもうない、当時隆盛を誇っていた他国の姫の名前がある。
ふたりは初婚で、初代国王の欄には離婚歴なども記入がなかったそうだ。
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