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第二章 お師匠様がやってきた
お師匠様、バーでお一人様になる
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存分にカニを堪能した後。
赤レンガの建物への帰宅途中、ルシウスはトオンにひとつ指示を出した。
「トオン。古書店の魔法書の中に、賎民呪法に関する書籍があれば出しておいてくれないか」
母親の名前を出すと機嫌を損ねるなら、周縁から攻めて行くのが良いだろう。
「それならもうピックアップしてあるよ。帰ったらすぐ渡しますか」
と速攻返事が返ってきて、思わずその湖面の水色の瞳を瞬いてしまったルシウスだ。
(母親の名前を出されること話題は嫌がるのに、それでも必要な準備だけはちゃんとしていたわけか)
「いや、今日は酒も飲んでいるし、明日にしよう。予定は大丈夫か?」
「古紙回収は今日行ったし、明日は何も予定ないです」
少し気まずそうだったが、返事はしっかりしていた。
午前中に不貞腐れて外に出た自覚は、本人にもあるらしい。
そのまま三人で帰宅するのかと思いきや、ルシウスは用事があると言って、赤レンガの建物を通り過ぎて出かけて行った。
「日付が変わる頃までには戻る。裏口から帰るから、戸締りはしっかりとな」
アイシャとトオン、ふたりと別れてルシウスがやってきたのは、南地区の赤レンガの建物から中央に近い側、商店街の通りから裏に入っていったところにあるバーだった。
今でもたまにミーシャおばさんの家のパン屋に料理を習いに行っているのだが、彼女の親父さんから「落ち着いて飲めるちょっとお高めの店」と勧められていた店だ。
ドレスコードがあるほど格式ばった店ではないと聞いていた。
それでも、赤レンガの建物を出るとき一応グレーのジャケットは羽織っていたルシウスだ。
この国にいる間はトオンとアイシャに合わせてラフな格好をしているが、上着を羽織ればそれなりに格好はつく。
店内に入ると、薄暗い間接照明の奥からピアノのしっとりした曲が流れてくる。
客層はバラバラだ。仕事帰りの肉体労働者たちもいれば、商会の職員のような者たちも多い。
(二時間ぐらい時間を潰せればと思ったのだが。なかなかいい店じゃないか)
まだ若い十代後半から二十代にかけて、故郷でもこういった雰囲気の店によく友人たちと通ったものだ。
ルシウスの友人には、同じ貴族の子息もいれば平民出身の者もいる。
出身階層の違う仲間たちと飲みに行くと、必然的にこの手の、庶民にはちょっとお高めだがそこまで敷居が高くない街中のバーやクラブに落ち着くことになる。
もっとも、貴族と平民の区別が明確なカーナ王国のこと、この店に貴族らしき客の姿はなかったのだが。
お一人様なのでカウンターの端に座り、バーテンダーに好みを伝えてウイスキーをロックで頼んだ。
するとグラスと一緒に、潰したアボカドにカニ肉を混ぜたディップの載った、小さなクラッカーが出てくる。
どうやら今夜はどこもカニ祭りのようである。
今日、朝に古紙回収だと言って出て行ったトオンは、結局夕方近くまで半日以上戻って来なかった。
何となく、トオンはその半日の間に考えたことをアイシャに話したいのではないかと思った。
アイシャもトオンのことを随分と気にしていたから、話を聴きたいはずだ。
(ついでに恋人同士の時間も作れるしな)
余計な気を回さないで欲しいとは、普段から言われていた。
とはいえ、今回は一人で酒を飲む口実があるのでちょうどいい。
--
お師匠様がいないだけで彼らはラブラブするので無問題ですね(・∀・)
赤レンガの建物への帰宅途中、ルシウスはトオンにひとつ指示を出した。
「トオン。古書店の魔法書の中に、賎民呪法に関する書籍があれば出しておいてくれないか」
母親の名前を出すと機嫌を損ねるなら、周縁から攻めて行くのが良いだろう。
「それならもうピックアップしてあるよ。帰ったらすぐ渡しますか」
と速攻返事が返ってきて、思わずその湖面の水色の瞳を瞬いてしまったルシウスだ。
(母親の名前を出されること話題は嫌がるのに、それでも必要な準備だけはちゃんとしていたわけか)
「いや、今日は酒も飲んでいるし、明日にしよう。予定は大丈夫か?」
「古紙回収は今日行ったし、明日は何も予定ないです」
少し気まずそうだったが、返事はしっかりしていた。
午前中に不貞腐れて外に出た自覚は、本人にもあるらしい。
そのまま三人で帰宅するのかと思いきや、ルシウスは用事があると言って、赤レンガの建物を通り過ぎて出かけて行った。
「日付が変わる頃までには戻る。裏口から帰るから、戸締りはしっかりとな」
アイシャとトオン、ふたりと別れてルシウスがやってきたのは、南地区の赤レンガの建物から中央に近い側、商店街の通りから裏に入っていったところにあるバーだった。
今でもたまにミーシャおばさんの家のパン屋に料理を習いに行っているのだが、彼女の親父さんから「落ち着いて飲めるちょっとお高めの店」と勧められていた店だ。
ドレスコードがあるほど格式ばった店ではないと聞いていた。
それでも、赤レンガの建物を出るとき一応グレーのジャケットは羽織っていたルシウスだ。
この国にいる間はトオンとアイシャに合わせてラフな格好をしているが、上着を羽織ればそれなりに格好はつく。
店内に入ると、薄暗い間接照明の奥からピアノのしっとりした曲が流れてくる。
客層はバラバラだ。仕事帰りの肉体労働者たちもいれば、商会の職員のような者たちも多い。
(二時間ぐらい時間を潰せればと思ったのだが。なかなかいい店じゃないか)
まだ若い十代後半から二十代にかけて、故郷でもこういった雰囲気の店によく友人たちと通ったものだ。
ルシウスの友人には、同じ貴族の子息もいれば平民出身の者もいる。
出身階層の違う仲間たちと飲みに行くと、必然的にこの手の、庶民にはちょっとお高めだがそこまで敷居が高くない街中のバーやクラブに落ち着くことになる。
もっとも、貴族と平民の区別が明確なカーナ王国のこと、この店に貴族らしき客の姿はなかったのだが。
お一人様なのでカウンターの端に座り、バーテンダーに好みを伝えてウイスキーをロックで頼んだ。
するとグラスと一緒に、潰したアボカドにカニ肉を混ぜたディップの載った、小さなクラッカーが出てくる。
どうやら今夜はどこもカニ祭りのようである。
今日、朝に古紙回収だと言って出て行ったトオンは、結局夕方近くまで半日以上戻って来なかった。
何となく、トオンはその半日の間に考えたことをアイシャに話したいのではないかと思った。
アイシャもトオンのことを随分と気にしていたから、話を聴きたいはずだ。
(ついでに恋人同士の時間も作れるしな)
余計な気を回さないで欲しいとは、普段から言われていた。
とはいえ、今回は一人で酒を飲む口実があるのでちょうどいい。
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お師匠様がいないだけで彼らはラブラブするので無問題ですね(・∀・)
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