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第二章 お師匠様がやってきた
聖女アイシャの決意
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決めた、とアイシャは言った。
「私、この手の邪悪なものに対処する専門家になるわ」
それが結果的に人々の心を救う道に繋がると信じて。
心が定まるとアイシャの環が一際強く輝いた。
“世界”にその決意が受け入れられた証拠だった。
食堂内にはアイシャのオレンジに似た爽やかな芳香が充満している。
「ならばアイシャ。お前はこの国に神殿を誘致することだ。神殿のカーナ王国支部を王都に設置して、代表となるように」
「神殿」
教会と同じように、本部が円環大陸の神秘の国、永遠の国にある摂理の研究機関である。
「カズン様の件で虚無魔力の使い手が確認されて以降、神殿が対応策の研究に動いている。世界を崩壊させかねない邪気を、永遠の国も放置しておけないと判断した。その研究部門を丸ごとカーナ王国支部として誘致するんだ」
「でも、神殿を設置できる場所なんてこの王都にあるかな?」
「王宮の一部を改修しても良いだろうし、もしくは」
ニヤリとルシウスが笑った。
麗しの男前の彼がそういう顔をすると、ものすごい悪事を企んでいるように見える。
「王都の教会を撤収させて、跡地をそのまま神殿に使えばいい」
「「それでいこう」」
教会のカーナ王国支部は、かなり大きな失態をやらかしている。
司祭の勝手な判断で聖女アイシャの判断基準を歪めさせ、ありもしない神の声の元になった、一部の者たちだけに都合の良い倫理や道徳感を植え付けさせた元凶のひとつなのだ。
それに教会関係者の世話役に受けた屈辱に関しては、アイシャは今も許していない。
元婚約者だったクーツ王太子や不貞相手の公爵令嬢ドロテア、彼らの取り巻きや王宮内で彼らにおもねってアイシャを虐げた者たちは既に断罪されている。
また、『聖女投稿』によって相応の社会的制裁も受けていた。
最後に残るのが、教会だった。
教会がアイシャに対して行った勝手な“指導”は、教会本部の大司祭、聖者ビクトリノを激怒させている。
そもそも、聖女アイシャの不自然な状況に不信感を覚えた彼が、同じ魔術師フリーダヤと聖女ロータス系列の魔力使いだった後輩魔術師カズンに調査を依頼したことが、アイシャに関することの発端なのだ。
なぜ現在まだ見逃されているかといえば、理由がある。
王都地下の邪悪な古代生物こそ浄化され、それが原因による魔物の大侵攻スタンピードの危機は去った。
だが、依然として国内に魔物は出るし、その危険を防ぐための結界のための魔導具などを管理しているのが教会だった。
カーナ王国建国期からずっと、国の聖女聖者を教育し支援するための機関として。
アイシャは今も定期的に教会から魔導具や宝具の類を借り受けて、魔物討伐のために働いている。
何か制裁を加えて関係がこれ以上悪化すれば、彼らから協力を得られなくなる可能性があった。
大掛かりな国土全体に張り巡らせている結界はまだアイシャが張っている。
そのためには教会が持つ専用の錫杖や宝冠などが必要だった。
さすがに500年間、彼らが建国期から管理してきたものを、聖女だからといってアイシャが奪うわけにもいかなかった。
「聖女アイシャのためのバックアップ機能を、今後は新しく設置する神殿に移すってことか……でもそんな大掛かりなこと、実際できるものなんですか」
教会自体はどこの国にもある。
人々に生活のための倫理道徳を教え、また困窮者や孤児への支援を行う慈善団体としての側面もある。
また、上は王族から下は平民まで、婚姻を司るのは教会だった。
「神殿が設置されるなら、教会組織をそのまま神殿の下部組織に組み込んでしまえばいい。まあ、その辺はビクトリノが上手くやってくれるだろう」
あのオッサンは、カーナ王国の王都の教会支部に対して、いつどのようなお仕置きをするかウズウズしている。
今はまだ厳重注意だけで、お仕置きらしいお仕置きはしていないと聞いている。
一番の被害者のアイシャからのアクションを待っているものと思われる。
「アイシャはトオンと相談しながら、ビクトリノ宛の手紙を書くように。書き上げたら環を通じてビクトリノに送ればいい」
あとは彼と永遠の国、教会本部、神殿本部が上手く取り計らってくれることだろう。
「私、この手の邪悪なものに対処する専門家になるわ」
それが結果的に人々の心を救う道に繋がると信じて。
心が定まるとアイシャの環が一際強く輝いた。
“世界”にその決意が受け入れられた証拠だった。
食堂内にはアイシャのオレンジに似た爽やかな芳香が充満している。
「ならばアイシャ。お前はこの国に神殿を誘致することだ。神殿のカーナ王国支部を王都に設置して、代表となるように」
「神殿」
教会と同じように、本部が円環大陸の神秘の国、永遠の国にある摂理の研究機関である。
「カズン様の件で虚無魔力の使い手が確認されて以降、神殿が対応策の研究に動いている。世界を崩壊させかねない邪気を、永遠の国も放置しておけないと判断した。その研究部門を丸ごとカーナ王国支部として誘致するんだ」
「でも、神殿を設置できる場所なんてこの王都にあるかな?」
「王宮の一部を改修しても良いだろうし、もしくは」
ニヤリとルシウスが笑った。
麗しの男前の彼がそういう顔をすると、ものすごい悪事を企んでいるように見える。
「王都の教会を撤収させて、跡地をそのまま神殿に使えばいい」
「「それでいこう」」
教会のカーナ王国支部は、かなり大きな失態をやらかしている。
司祭の勝手な判断で聖女アイシャの判断基準を歪めさせ、ありもしない神の声の元になった、一部の者たちだけに都合の良い倫理や道徳感を植え付けさせた元凶のひとつなのだ。
それに教会関係者の世話役に受けた屈辱に関しては、アイシャは今も許していない。
元婚約者だったクーツ王太子や不貞相手の公爵令嬢ドロテア、彼らの取り巻きや王宮内で彼らにおもねってアイシャを虐げた者たちは既に断罪されている。
また、『聖女投稿』によって相応の社会的制裁も受けていた。
最後に残るのが、教会だった。
教会がアイシャに対して行った勝手な“指導”は、教会本部の大司祭、聖者ビクトリノを激怒させている。
そもそも、聖女アイシャの不自然な状況に不信感を覚えた彼が、同じ魔術師フリーダヤと聖女ロータス系列の魔力使いだった後輩魔術師カズンに調査を依頼したことが、アイシャに関することの発端なのだ。
なぜ現在まだ見逃されているかといえば、理由がある。
王都地下の邪悪な古代生物こそ浄化され、それが原因による魔物の大侵攻スタンピードの危機は去った。
だが、依然として国内に魔物は出るし、その危険を防ぐための結界のための魔導具などを管理しているのが教会だった。
カーナ王国建国期からずっと、国の聖女聖者を教育し支援するための機関として。
アイシャは今も定期的に教会から魔導具や宝具の類を借り受けて、魔物討伐のために働いている。
何か制裁を加えて関係がこれ以上悪化すれば、彼らから協力を得られなくなる可能性があった。
大掛かりな国土全体に張り巡らせている結界はまだアイシャが張っている。
そのためには教会が持つ専用の錫杖や宝冠などが必要だった。
さすがに500年間、彼らが建国期から管理してきたものを、聖女だからといってアイシャが奪うわけにもいかなかった。
「聖女アイシャのためのバックアップ機能を、今後は新しく設置する神殿に移すってことか……でもそんな大掛かりなこと、実際できるものなんですか」
教会自体はどこの国にもある。
人々に生活のための倫理道徳を教え、また困窮者や孤児への支援を行う慈善団体としての側面もある。
また、上は王族から下は平民まで、婚姻を司るのは教会だった。
「神殿が設置されるなら、教会組織をそのまま神殿の下部組織に組み込んでしまえばいい。まあ、その辺はビクトリノが上手くやってくれるだろう」
あのオッサンは、カーナ王国の王都の教会支部に対して、いつどのようなお仕置きをするかウズウズしている。
今はまだ厳重注意だけで、お仕置きらしいお仕置きはしていないと聞いている。
一番の被害者のアイシャからのアクションを待っているものと思われる。
「アイシャはトオンと相談しながら、ビクトリノ宛の手紙を書くように。書き上げたら環を通じてビクトリノに送ればいい」
あとは彼と永遠の国、教会本部、神殿本部が上手く取り計らってくれることだろう。
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