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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
お師匠様が恋愛トラブルに巻き込まれたらしい
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昼食も済ませた頃になって、秘書ユキレラだけが戻ってきた。
サロンに一同を集めるなり。
「皆さんに残念なお知らせです」
いつも飄々として斜に構えた言動の多い彼の沈痛な面持ちに、皆の間には動揺が走った。
まず、ルシウスが戻るには数日かかりそうなので、ダンジョン探索は姉の神人ジューア主導で進めてくれとの伝言が伝えられた。
「どういうことだ?」
朝寝坊から起きてきていたジューアが首を傾げている。
そしてユキレラから聞かされたのは、何と。
「ルシウス様なんですがね。どうもお弟子さんの恋愛沙汰に巻き込まれてしまったようで」
言ってる当のユキレラも自信なさげだ。
聞かされたアイシャたちも一瞬脳がバグりそうになって思考停止しかけた。
恋愛? 巻き込まれ?
アイシャたちが知る限り、カーナ王国に来てからのルシウスにその手の相手はいなかったはずだ。
たまに町の人や、共和制実現会議の男性陣に娼館に誘われても笑って断っていたのをトオンなどは知っている。
「えーと。ルシウスさんが人の恋人をその……寝取った……とか? 嘘だよねそれ」
「もちろんですよ。ルシウス様はそういう間違いはやらない方ですから」
ユキレラが嘆息して詳しい事情を説明してくれた。
まず、今朝早くにルシウスと秘書のユキレラは王都の門番から連絡を受けて、王都入りしようとしていた弟子を迎えに行った。
「先触れも何もなかったから驚きましたよ。でもアケロニア王国の高位貴族の子息ですから無視もできなくって」
「ホーライル侯爵令息ライルという。カズンの親友でな。私やヨシュアとも仲が良かった」
「そうですか、鮭の人とも……」
ユーグレンが補足してくれた。確かにそんな人物なら迎えに行かざるを得ない。
「その彼、ライル様なんですがルシウス様の顔を見るなり攻撃してきましてね。何を言い出すかと思ったら……」
『ルシウスさんよう。あんた、人のモンに手ぇ出すような男だとは思ってなかったぜ』
『ま、待て、何か誤解があるのではないか? まずは話し合いをだな……』
ルシウスの弁解はまったく聞いてもらえなかったそうで。
「元々きかん気の強そうな令息でしたけど、うちのルシウス様にあそこまでブチ切れる胆力にはこのユキレラもビックリ」
あれは大物になりますよ、と軽口を叩くユキレラは疲れきった様子だ。
「あのまま正門で激突してたら、門も詰所も壊滅してたでしょうねえ。しかもルシウス様の魔力はネオンブルー、あちらの剣聖様はネオンオレンジ。なんか混ざってすごい色になってましたよ」
慌てて令息を連れてルシウスが王都を出て、ユキレラも付いて行ったが埒があかないからと途中で自分だけ戻ってきて今に至る。
「ありゃ、環経由でもルシウスさんの反応がエラーになってるね」
「今頃、どこか開けた場所でドンパチやってるんでしょうねえ」
トオンが自分の胸回りに環を出して、同じ環使いのルシウスと連絡を取ろうとしたが駄目だった。
受け取る側のルシウスに余裕がないようだ。
「ユキレラ、詳しく話せ」
「はいっ、お姉様。早朝、王都に到着したホーライル侯爵令息ライル君は剣聖の資格持ち剣士で、故郷アケロニア王国ではルシウス様が稽古をつけてました。とても筋が良かったようで、それなりに面倒を見てやってましたね」
「それがなぜ、恋愛沙汰に巻き込まれている?」
そうだ、まさにそこが知りたい。
「ライル君の恋人なんですが、どうも彼と別れたがってたみたいで。でも恋人にゾッコン惚れ込んでたライル君が受け付けなかった」
ああ~とユーグレン王太子が納得したような訳知り顔で嘆息した。ライルとは同級生だったらしいしその恋人のことも知っているようだ。
「実は昨日の時点で恋人さんからルシウス様宛に手紙が届いてたんです」
「あ、サルモーネにいたときね?」
「ええ、あれですよ。あの後、屋敷に帰ってきてからオレも見せてもらったんですがね、別れの口実に『自分が本当に好きなのはルシウス様である』って言っちゃったんですって」
「そ、それは」
思いっきり、無関係なのに巻き込まれてしまっている。むしろとばっちりレベルだ。
「まあ、ルシウスさんもいい男だから目移りの理由としちゃあ最適、なのか……?」
トオンが首を捻っている。
恋愛とルシウスとがなかなか自分の中で結び付かなくて違和感が半端ない。
「手紙は速達だったから、ライル君が来るとしたらもっと後かと思ってましたけど。まさか手紙の翌日に来ちゃうなんてねえ。よっぽど怒り狂ってたんですねえ」
「アケロニア王国からカーナ王国へは移動用の高速馬車なら速いもので一週間から十日といったところだが……」
「朝早くから伝令が来て、オレもルシウス様も寝耳に水でしたよ。結局、ライル君に恋人を賭けた戦いに引っ張られて行っちゃいました」
ちなみにいつ戻ってくるか、ユキレラにも予測できないそうで。
「というわけで、しばらくルシウス様はダンジョン調査から外れます。本当に申し訳ない」
それとアイシャたちに伝言があるそうだ。
「ルシウス様からはユキノを連れて行くようにと」
「ピュイッ(お呼びですかこのボクを!)」
サロンの空いたスペースで仔犬サイズになって仔竜、いや雛竜たちと戯れていたユキノが、部屋の天井に届くぐらい大型化して、キリッと表情を引き締めた。
もふもふの前脚で五体の毛玉もどきな雛竜たちをまとめて抱えている。
ユキノはやる気だ。ちなみに雛竜たちは「あそぶ、あそぶ♪」とはしゃいでいて、探索の意味はわかっていないようだ。
「ピュー?(ジューアさま、この仔たちも一緒にいいでしょー?)」
「ボス以外いないダンジョンだからな。まあ良いだろう。ただし来るからにはお前たちにも働いてもらう」
「ピュイッ(がんばります!)」
かくしてダンジョン探索パーティーに、もふもふドラゴンが加わったのである。
※この辺の事情は「魔導具師マリオンの誤解」の
「side マリオンの前世~ハイヒューマンのおじちゃんはまだ健在」
「side マリオンの前世~巻き込んで本当にごめんなさい」
でも語られてます。
剣聖ライル君の聖なる魔力はネオンオレンジ、聖なる芳香はカルダモン的な。
サロンに一同を集めるなり。
「皆さんに残念なお知らせです」
いつも飄々として斜に構えた言動の多い彼の沈痛な面持ちに、皆の間には動揺が走った。
まず、ルシウスが戻るには数日かかりそうなので、ダンジョン探索は姉の神人ジューア主導で進めてくれとの伝言が伝えられた。
「どういうことだ?」
朝寝坊から起きてきていたジューアが首を傾げている。
そしてユキレラから聞かされたのは、何と。
「ルシウス様なんですがね。どうもお弟子さんの恋愛沙汰に巻き込まれてしまったようで」
言ってる当のユキレラも自信なさげだ。
聞かされたアイシャたちも一瞬脳がバグりそうになって思考停止しかけた。
恋愛? 巻き込まれ?
アイシャたちが知る限り、カーナ王国に来てからのルシウスにその手の相手はいなかったはずだ。
たまに町の人や、共和制実現会議の男性陣に娼館に誘われても笑って断っていたのをトオンなどは知っている。
「えーと。ルシウスさんが人の恋人をその……寝取った……とか? 嘘だよねそれ」
「もちろんですよ。ルシウス様はそういう間違いはやらない方ですから」
ユキレラが嘆息して詳しい事情を説明してくれた。
まず、今朝早くにルシウスと秘書のユキレラは王都の門番から連絡を受けて、王都入りしようとしていた弟子を迎えに行った。
「先触れも何もなかったから驚きましたよ。でもアケロニア王国の高位貴族の子息ですから無視もできなくって」
「ホーライル侯爵令息ライルという。カズンの親友でな。私やヨシュアとも仲が良かった」
「そうですか、鮭の人とも……」
ユーグレンが補足してくれた。確かにそんな人物なら迎えに行かざるを得ない。
「その彼、ライル様なんですがルシウス様の顔を見るなり攻撃してきましてね。何を言い出すかと思ったら……」
『ルシウスさんよう。あんた、人のモンに手ぇ出すような男だとは思ってなかったぜ』
『ま、待て、何か誤解があるのではないか? まずは話し合いをだな……』
ルシウスの弁解はまったく聞いてもらえなかったそうで。
「元々きかん気の強そうな令息でしたけど、うちのルシウス様にあそこまでブチ切れる胆力にはこのユキレラもビックリ」
あれは大物になりますよ、と軽口を叩くユキレラは疲れきった様子だ。
「あのまま正門で激突してたら、門も詰所も壊滅してたでしょうねえ。しかもルシウス様の魔力はネオンブルー、あちらの剣聖様はネオンオレンジ。なんか混ざってすごい色になってましたよ」
慌てて令息を連れてルシウスが王都を出て、ユキレラも付いて行ったが埒があかないからと途中で自分だけ戻ってきて今に至る。
「ありゃ、環経由でもルシウスさんの反応がエラーになってるね」
「今頃、どこか開けた場所でドンパチやってるんでしょうねえ」
トオンが自分の胸回りに環を出して、同じ環使いのルシウスと連絡を取ろうとしたが駄目だった。
受け取る側のルシウスに余裕がないようだ。
「ユキレラ、詳しく話せ」
「はいっ、お姉様。早朝、王都に到着したホーライル侯爵令息ライル君は剣聖の資格持ち剣士で、故郷アケロニア王国ではルシウス様が稽古をつけてました。とても筋が良かったようで、それなりに面倒を見てやってましたね」
「それがなぜ、恋愛沙汰に巻き込まれている?」
そうだ、まさにそこが知りたい。
「ライル君の恋人なんですが、どうも彼と別れたがってたみたいで。でも恋人にゾッコン惚れ込んでたライル君が受け付けなかった」
ああ~とユーグレン王太子が納得したような訳知り顔で嘆息した。ライルとは同級生だったらしいしその恋人のことも知っているようだ。
「実は昨日の時点で恋人さんからルシウス様宛に手紙が届いてたんです」
「あ、サルモーネにいたときね?」
「ええ、あれですよ。あの後、屋敷に帰ってきてからオレも見せてもらったんですがね、別れの口実に『自分が本当に好きなのはルシウス様である』って言っちゃったんですって」
「そ、それは」
思いっきり、無関係なのに巻き込まれてしまっている。むしろとばっちりレベルだ。
「まあ、ルシウスさんもいい男だから目移りの理由としちゃあ最適、なのか……?」
トオンが首を捻っている。
恋愛とルシウスとがなかなか自分の中で結び付かなくて違和感が半端ない。
「手紙は速達だったから、ライル君が来るとしたらもっと後かと思ってましたけど。まさか手紙の翌日に来ちゃうなんてねえ。よっぽど怒り狂ってたんですねえ」
「アケロニア王国からカーナ王国へは移動用の高速馬車なら速いもので一週間から十日といったところだが……」
「朝早くから伝令が来て、オレもルシウス様も寝耳に水でしたよ。結局、ライル君に恋人を賭けた戦いに引っ張られて行っちゃいました」
ちなみにいつ戻ってくるか、ユキレラにも予測できないそうで。
「というわけで、しばらくルシウス様はダンジョン調査から外れます。本当に申し訳ない」
それとアイシャたちに伝言があるそうだ。
「ルシウス様からはユキノを連れて行くようにと」
「ピュイッ(お呼びですかこのボクを!)」
サロンの空いたスペースで仔犬サイズになって仔竜、いや雛竜たちと戯れていたユキノが、部屋の天井に届くぐらい大型化して、キリッと表情を引き締めた。
もふもふの前脚で五体の毛玉もどきな雛竜たちをまとめて抱えている。
ユキノはやる気だ。ちなみに雛竜たちは「あそぶ、あそぶ♪」とはしゃいでいて、探索の意味はわかっていないようだ。
「ピュー?(ジューアさま、この仔たちも一緒にいいでしょー?)」
「ボス以外いないダンジョンだからな。まあ良いだろう。ただし来るからにはお前たちにも働いてもらう」
「ピュイッ(がんばります!)」
かくしてダンジョン探索パーティーに、もふもふドラゴンが加わったのである。
※この辺の事情は「魔導具師マリオンの誤解」の
「side マリオンの前世~ハイヒューマンのおじちゃんはまだ健在」
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