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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
ラスボス弱体化案
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預けていた残りの宝物を取りに神殿に寄り、まとめてアイシャの環内アイテムボックスに放り込んだ。
あとは本日最後のダンジョン攻略である。
もう何十回と潜っている地下ダンジョンの最奥までの道のりは慣れたものだった。
当初、身体強化が使えるのはアイシャとユーグレンだけだったが、環を通せば慣れないトオンも一時的に自分で使えるようになった。偶然とはいえなかなかのスキルアップである。
強化した脚で全力で走って十数分あれば深奥まで辿り着く。
神殿では大神官アウロラからも助言を頂戴していた。
『ルシウス様と代替品の宝物を交換する、でございまするか。良い案やもしれませぬ。ただ、申し上げにくうございまするが、これらすべての宝物を集めてもルシウス様の魔力量には及ばぬかと……』
とはいえ、方法はあるという。
「現ボスの弟をある程度弱らせねばならぬ、か。まあ妥当な案だな」
神人ジューアに話を通し、改めてルシウスへの攻撃許可を貰った。
ルシウスはといえば、ジューアが張った魔法樹脂の壁に阻まれて深奥部に留まっているものの、随獣のユキノとともに侵入者のアイシャを鋭く睨みつけてきている。
怖い。アイシャもトオンもあんなにキツい目でこれまで彼に睨まれたことはなかった。
それにユキノの大きく愛らしいガーネットの瞳が、ルシウスに追随して敵を見る目なのも精神的に堪えた。
「そういう話なら、私も攻撃に加わろう。全員、攻撃準備!」
「「「はい!」」」
だが、ジューアやアイシャの攻撃もなかなか通らない。
大盾を構えながらのユーグレンの大剣も軽々かわされてしまう。
「さすがにハイヒューマン、強いわね」
方針は既に定まった。ルシウス本人と、カーナ王国の宝物との〝価値〟や魔力量が釣り合うところまで、ルシウスの体力を削ぐ。
「うわあ……ルシウスさん、『絶対防御』のスキルがあるよ。そういえば俺たちとダンジョン潜ってたとき、いっつもアイシャと俺に付与してくれてたっけ」
そのルシウスに授けられた人物鑑定スキルで彼を見て、トオンがげんなりしている。
並の攻撃では通らないはずだ。他人に付与できるということは、本人が持っているから可能なのだ。
「そ、そもそも何でルシウス様はそんなに多彩な反則スキルばかり持っているのだ? 人がひとつの人生で持てるスキル数には限りがあるはず!」
「弟は理論上、無限にスキルを習得する〝無欠〟なる固有スキルを持ってるのだ」
〝無欠〟は永遠の国から与えられた彼本来の称号でもある。
ルシウスは〝聖剣の聖者〟と〝無欠〟を称号に冠したハイヒューマンだった。
「自分の体質に適合するスキルを、他者から自動的に学習して身につけてしまうスキルでな。自分が使えないスキルでも不活性のまま保持できる」
「な、何という恐ろしいものを……!」
「それらすべて、一つの〝無欠〟スキルだけでまかなっている。……我らハイヒューマン魔人族の最高傑作だ」
そう言うジューアの顔つきは硬い。
今ここにいる四人の中で最も攻撃の手数が多いのは彼女だ。無数の金剛石の魔法剣を生み出し、弟に挑んだが一本もルシウスに届いていなかった。
「逆にいえば自分の持っている無数のスキルを他者に授けることができる。指導者としては最高のスキルだ。相手にとって最適のスキルを見抜いて与えられるのだから」
「………………」
その通りだ。アイシャもトオンもユーグレンも、これまでルシウスからは幾つもスキルを授けられている。
自分だけで努力していたら何年かかったかわからないスキルも多かった。
「は、話はわかった……」
かすれた声に、ハッとなって視線を向けた。
ジューアが築いた魔法樹脂の防御結界の向こうで、ルシウスが自分の聖剣を床に突いて身を支えている。
「と、とりあえず私が弱体化すれば良いと。ならば話は簡単だ」
「!?」
皆が見ている前で、ルシウスはネオンブルーに光る聖剣を持ち上げ、そして。
「ピャーッ!?」
傍らにいたユキノが止める間もなかった。
自分で、自分の腕を斬り落とした。
右腕だった。
ごと、と鈍い音をたてて腕が床に落ちる。大量の血が吹き出して、ルシウスとユキノの真っ白な羽毛を赤く染めた。
「る、ルシウスさん……!」
「ルシウス様、何てことをなさるのか!」
トオンやユーグレンといった人物鑑定スキル持ちは、それでルシウスの体力値が大きく落ちたことを確認した。
だが、まだまだ削りきれていない。
アイシャが慌てて声を張り上げた。
「ルシウスさん! あまりやりすぎると私でも治せなくなる! 程々にして!」
「だ、大丈夫だ。腕は魔法樹脂で保存しておく。後から治癒を頼む!」
「それなら腕の根本も魔法樹脂で覆って! いくらハイヒューマンでも切り口が壊死したら腕を付け直すどころじゃなくなっちゃう!」
次々と指示を出すアイシャに従い、ルシウスは斬り落とした腕、腕を無くした切り口の両方を魔法樹脂で覆った。
あとはそのまま、ユキノの身体に倒れ込むようにもたれかかり、動かなくなった。
死んではいない。さすがに腕を斬って血を大量に流したダメージが大き過ぎて動けないようだ。
「大丈夫って、大丈夫って、……大丈夫なわけないだろ、ルシウスさん……っ」
「まさか、躊躇いもなく己の腕を……」
見ているだけだったトオンたちもパニックになりかけだった。
「お前たち、今日はもう地上に戻れ。その状態では戦うどころではないだろう」
憔悴しきったアイシャたちはそのままジューアに、ダンジョンのエントランスまで転移で飛ばされた。
三人は気力を失ったそれぞれの顔を見て、がっくり肩を落とした。
「……帰るか。腹も減ったし」
「腹が減っては戦はできぬ、だよね」
とぼとぼと地上への階段を歩く。
気づけばもう陽が暮れていた。
時間の経過が早い。なのにルシウスを救うどころではない状況に打ちのめされていた。
庭園に出てから、馬車に乗るまでも、ルシウス邸に戻るまでも、三人はずっと無言だった。
あとは本日最後のダンジョン攻略である。
もう何十回と潜っている地下ダンジョンの最奥までの道のりは慣れたものだった。
当初、身体強化が使えるのはアイシャとユーグレンだけだったが、環を通せば慣れないトオンも一時的に自分で使えるようになった。偶然とはいえなかなかのスキルアップである。
強化した脚で全力で走って十数分あれば深奥まで辿り着く。
神殿では大神官アウロラからも助言を頂戴していた。
『ルシウス様と代替品の宝物を交換する、でございまするか。良い案やもしれませぬ。ただ、申し上げにくうございまするが、これらすべての宝物を集めてもルシウス様の魔力量には及ばぬかと……』
とはいえ、方法はあるという。
「現ボスの弟をある程度弱らせねばならぬ、か。まあ妥当な案だな」
神人ジューアに話を通し、改めてルシウスへの攻撃許可を貰った。
ルシウスはといえば、ジューアが張った魔法樹脂の壁に阻まれて深奥部に留まっているものの、随獣のユキノとともに侵入者のアイシャを鋭く睨みつけてきている。
怖い。アイシャもトオンもあんなにキツい目でこれまで彼に睨まれたことはなかった。
それにユキノの大きく愛らしいガーネットの瞳が、ルシウスに追随して敵を見る目なのも精神的に堪えた。
「そういう話なら、私も攻撃に加わろう。全員、攻撃準備!」
「「「はい!」」」
だが、ジューアやアイシャの攻撃もなかなか通らない。
大盾を構えながらのユーグレンの大剣も軽々かわされてしまう。
「さすがにハイヒューマン、強いわね」
方針は既に定まった。ルシウス本人と、カーナ王国の宝物との〝価値〟や魔力量が釣り合うところまで、ルシウスの体力を削ぐ。
「うわあ……ルシウスさん、『絶対防御』のスキルがあるよ。そういえば俺たちとダンジョン潜ってたとき、いっつもアイシャと俺に付与してくれてたっけ」
そのルシウスに授けられた人物鑑定スキルで彼を見て、トオンがげんなりしている。
並の攻撃では通らないはずだ。他人に付与できるということは、本人が持っているから可能なのだ。
「そ、そもそも何でルシウス様はそんなに多彩な反則スキルばかり持っているのだ? 人がひとつの人生で持てるスキル数には限りがあるはず!」
「弟は理論上、無限にスキルを習得する〝無欠〟なる固有スキルを持ってるのだ」
〝無欠〟は永遠の国から与えられた彼本来の称号でもある。
ルシウスは〝聖剣の聖者〟と〝無欠〟を称号に冠したハイヒューマンだった。
「自分の体質に適合するスキルを、他者から自動的に学習して身につけてしまうスキルでな。自分が使えないスキルでも不活性のまま保持できる」
「な、何という恐ろしいものを……!」
「それらすべて、一つの〝無欠〟スキルだけでまかなっている。……我らハイヒューマン魔人族の最高傑作だ」
そう言うジューアの顔つきは硬い。
今ここにいる四人の中で最も攻撃の手数が多いのは彼女だ。無数の金剛石の魔法剣を生み出し、弟に挑んだが一本もルシウスに届いていなかった。
「逆にいえば自分の持っている無数のスキルを他者に授けることができる。指導者としては最高のスキルだ。相手にとって最適のスキルを見抜いて与えられるのだから」
「………………」
その通りだ。アイシャもトオンもユーグレンも、これまでルシウスからは幾つもスキルを授けられている。
自分だけで努力していたら何年かかったかわからないスキルも多かった。
「は、話はわかった……」
かすれた声に、ハッとなって視線を向けた。
ジューアが築いた魔法樹脂の防御結界の向こうで、ルシウスが自分の聖剣を床に突いて身を支えている。
「と、とりあえず私が弱体化すれば良いと。ならば話は簡単だ」
「!?」
皆が見ている前で、ルシウスはネオンブルーに光る聖剣を持ち上げ、そして。
「ピャーッ!?」
傍らにいたユキノが止める間もなかった。
自分で、自分の腕を斬り落とした。
右腕だった。
ごと、と鈍い音をたてて腕が床に落ちる。大量の血が吹き出して、ルシウスとユキノの真っ白な羽毛を赤く染めた。
「る、ルシウスさん……!」
「ルシウス様、何てことをなさるのか!」
トオンやユーグレンといった人物鑑定スキル持ちは、それでルシウスの体力値が大きく落ちたことを確認した。
だが、まだまだ削りきれていない。
アイシャが慌てて声を張り上げた。
「ルシウスさん! あまりやりすぎると私でも治せなくなる! 程々にして!」
「だ、大丈夫だ。腕は魔法樹脂で保存しておく。後から治癒を頼む!」
「それなら腕の根本も魔法樹脂で覆って! いくらハイヒューマンでも切り口が壊死したら腕を付け直すどころじゃなくなっちゃう!」
次々と指示を出すアイシャに従い、ルシウスは斬り落とした腕、腕を無くした切り口の両方を魔法樹脂で覆った。
あとはそのまま、ユキノの身体に倒れ込むようにもたれかかり、動かなくなった。
死んではいない。さすがに腕を斬って血を大量に流したダメージが大き過ぎて動けないようだ。
「大丈夫って、大丈夫って、……大丈夫なわけないだろ、ルシウスさん……っ」
「まさか、躊躇いもなく己の腕を……」
見ているだけだったトオンたちもパニックになりかけだった。
「お前たち、今日はもう地上に戻れ。その状態では戦うどころではないだろう」
憔悴しきったアイシャたちはそのままジューアに、ダンジョンのエントランスまで転移で飛ばされた。
三人は気力を失ったそれぞれの顔を見て、がっくり肩を落とした。
「……帰るか。腹も減ったし」
「腹が減っては戦はできぬ、だよね」
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気づけばもう陽が暮れていた。
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