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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
04:53 序盤バグのスルーポイント
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04:53
「おっとお嬢さん。そこまでにしてもらいましょうか」
「!」
綿毛竜のお助けキャラを従え、赤い軍服姿でダンジョン内を疾走するアイシャの前に新たな敵が現れた!
背の高いダークスーツ姿の、青銀の髪のイケメンおじさんだ。
というより、ただの秘書ユキレラである。
一応リースト一族の魔法剣士なので、二本の金剛石の魔法剣を宙に浮かせ、切先をアイシャに向けて次のエリアへの入口を塞ぐ形で待ち受けていた。
「ユキレ……ケフケフンッ、――敵です。人型のモンスター……ではなさそうですが、魔法剣を扱うようです」
(身内だらけのお遊戯会だからなあ。頑張れ、アイシャー)
さも初めてダンジョン挑戦します、敵のことなんか何も知りませんでした、という顔をして踏破しなければならないアイシャも大変だ。
「ここがちょうど、クリスタルパレスの中間地点です。引き返すならここが最後のチャンスですよ~」
「隙あり!」
魔法剣を飛ばそうとユキレラが片手を上げた、まさにそこが隙だ。
そのままアイシャは小柄な体型を生かして、脇をすり抜けて次のエリアへと進んでいった。
あとはひたすら全力疾走だ。
「え? あー! ち、ちょっとアイシャ様! 戦闘! 戦ってくださいよ、せっかくの出番だったのにー!」
アイシャ様に一太刀でも浴びせることができたらボーナスだったのに! とユキレラががっくり項垂れている。
(まさかの戦闘スルー)
(攻略のバグポイントだな……)
(時短のためにあるような雑魚でしたね……。っと、それではいよいよオレの出番)
と鮭の人がいそいそと魔道士用の黒ローブを着込み始めたが、まだ早かった。
「くっ、こ、これは!?」
思いっきりスルーされてしまったユキレラの全身に、光る紐状の魔力が絡みついている。
ネオングリーン色の光だ。聖女アイシャの聖なる魔力の色だった。
(よっしゃ、練習の甲斐あったなアイシャ!)
彼氏のトオンが拳を握りしめて快哉を叫んでいる。
紐状の魔力はそのままユキレラを縛り上げていき、やがてきゅっと一際強く締め上げられたユキレラはその場に崩れ落ちた。
挑戦者、聖女アイシャの勝ち!
(小ボスにすらならぬとは……)
(これはボーナスどころか減給かな。ユキレラ、修行を一からやり直し!)
年下ながらユキレラの魔法剣の師匠だという、鮭の人のお言葉である。
08:05
「先程の雑魚敵のところがちょうど中間点だったようです。この先はもっと強い敵も出現するでしょう。――しかしこの聖女アイシャに油断はありません」
走りながらキリッと顔つきを引き締めるアイシャは、まだ十八歳の少女だが歴戦の猛者の雰囲気を漂わせている。
何年間も旧カーナ王国の聖女として、国を襲う魔物退治をしてきたのだ。今さらこんなヌルい出来レースダンジョンで醜態など晒すわけがない。
「ピュイッ(聖女よ、次の敵だ! 気をつけて!)」
「了解です!」
現れたのは黒いローブを羽織った人型の敵だった。
背格好からするとまだ若い男性のようだ。
(ヨシュアの晴れ舞台! これは次のファンクラブ会報は分厚くなるぞう!)
(何の、聖女アイシャファンクラブだって負けてませんよユーグレンさん!)
(……まあ見せ場だしな。写真を撮っておくとしよう)
エキサイトするユーグレンとトオンを横目に眺めつつ、カズンが自前の写真撮影用の魔導具を構えて、アイシャと中ボスの対戦を撮影していく。
この写真はまたしばらくは新聞の『聖女投稿』コーナーを賑わせることだろう。
「おっとお嬢さん。そこまでにしてもらいましょうか」
「!」
綿毛竜のお助けキャラを従え、赤い軍服姿でダンジョン内を疾走するアイシャの前に新たな敵が現れた!
背の高いダークスーツ姿の、青銀の髪のイケメンおじさんだ。
というより、ただの秘書ユキレラである。
一応リースト一族の魔法剣士なので、二本の金剛石の魔法剣を宙に浮かせ、切先をアイシャに向けて次のエリアへの入口を塞ぐ形で待ち受けていた。
「ユキレ……ケフケフンッ、――敵です。人型のモンスター……ではなさそうですが、魔法剣を扱うようです」
(身内だらけのお遊戯会だからなあ。頑張れ、アイシャー)
さも初めてダンジョン挑戦します、敵のことなんか何も知りませんでした、という顔をして踏破しなければならないアイシャも大変だ。
「ここがちょうど、クリスタルパレスの中間地点です。引き返すならここが最後のチャンスですよ~」
「隙あり!」
魔法剣を飛ばそうとユキレラが片手を上げた、まさにそこが隙だ。
そのままアイシャは小柄な体型を生かして、脇をすり抜けて次のエリアへと進んでいった。
あとはひたすら全力疾走だ。
「え? あー! ち、ちょっとアイシャ様! 戦闘! 戦ってくださいよ、せっかくの出番だったのにー!」
アイシャ様に一太刀でも浴びせることができたらボーナスだったのに! とユキレラががっくり項垂れている。
(まさかの戦闘スルー)
(攻略のバグポイントだな……)
(時短のためにあるような雑魚でしたね……。っと、それではいよいよオレの出番)
と鮭の人がいそいそと魔道士用の黒ローブを着込み始めたが、まだ早かった。
「くっ、こ、これは!?」
思いっきりスルーされてしまったユキレラの全身に、光る紐状の魔力が絡みついている。
ネオングリーン色の光だ。聖女アイシャの聖なる魔力の色だった。
(よっしゃ、練習の甲斐あったなアイシャ!)
彼氏のトオンが拳を握りしめて快哉を叫んでいる。
紐状の魔力はそのままユキレラを縛り上げていき、やがてきゅっと一際強く締め上げられたユキレラはその場に崩れ落ちた。
挑戦者、聖女アイシャの勝ち!
(小ボスにすらならぬとは……)
(これはボーナスどころか減給かな。ユキレラ、修行を一からやり直し!)
年下ながらユキレラの魔法剣の師匠だという、鮭の人のお言葉である。
08:05
「先程の雑魚敵のところがちょうど中間点だったようです。この先はもっと強い敵も出現するでしょう。――しかしこの聖女アイシャに油断はありません」
走りながらキリッと顔つきを引き締めるアイシャは、まだ十八歳の少女だが歴戦の猛者の雰囲気を漂わせている。
何年間も旧カーナ王国の聖女として、国を襲う魔物退治をしてきたのだ。今さらこんなヌルい出来レースダンジョンで醜態など晒すわけがない。
「ピュイッ(聖女よ、次の敵だ! 気をつけて!)」
「了解です!」
現れたのは黒いローブを羽織った人型の敵だった。
背格好からするとまだ若い男性のようだ。
(ヨシュアの晴れ舞台! これは次のファンクラブ会報は分厚くなるぞう!)
(何の、聖女アイシャファンクラブだって負けてませんよユーグレンさん!)
(……まあ見せ場だしな。写真を撮っておくとしよう)
エキサイトするユーグレンとトオンを横目に眺めつつ、カズンが自前の写真撮影用の魔導具を構えて、アイシャと中ボスの対戦を撮影していく。
この写真はまたしばらくは新聞の『聖女投稿』コーナーを賑わせることだろう。
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