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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
新生カーナ神国に死刑はない。
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ゴーリ、ゴリ、ゴリ……
「ほら、前に刑罰の件で揉めたことがありましたよね?」
普通の安物の味になってしまったコーヒーをすすりながら、鮭の人ヨシュアが言うには……
* * *
旧カーナ王国がサラマンダーの進化した種族、神人ピアディによって〝カーナ神国〟に転換された直後、ある悶着があった。
この国の政官財それぞれは、旧王国時代の骨組みをそのまま継続して運営続行することが決まっていた。
聖女アイシャを虐げた『聖女投稿事件』で一気に評判を落としたカーナ王国は、王族の暴挙と聖女絡みのろくでもなさこそ際立っていた。
ところが国家運営に関しては大変優良で、後からテコ入れする必要はほとんどなかったのである。
ただし、神人ピアディによってある一つの法律だけが大きく変わった。
刑罰から〝死刑〟が削除されたのだ。
「なぜ、死刑の撤廃を? 犯罪の抑止のためにも必要と思うが」
これには他国の王族、特に王太子のユーグレンは解せないと疑問をぶつけてきた。
「ぷぅ(そんなこともわからぬのか、友の親戚! だからおまえはだめなのだ!)」
「そもそも、貴殿のその謂れなき駄目出しも私は納得がいかぬのだが!?」
「ぷぅ~(しかたないのだ。一からわれがきっちり教えてやるのだー。できのわるい嫁に姑がきちっといいきかすようになのだー)」
「嫁? し、姑!? 誰が何だと!?」
傲岸不遜ウパルパに翻弄されるユーグレンは置いておくとして。
首脳部を旧王城の玉座の間に集めて、神人ピアディが語ったのは単純明快な支配者の理だった。
「ぷぅ(カーナ神国の支配者はわれなり。ゆえに国内すべての生殺与奪権、われにあり)」
小さく幼いウーパールーパーのピアディは、保護者の〝おとうたん〟こと新たな神人となったルシウスが座る玉座で、抱かれた腕の中からぷぅぷぅ語った。
どこからどう見ても、純白の礼装を身にまとった麗しの美丈夫ルシウスこそが支配者に見えるが、あくまで主役は半透明ベビーピンクの小さなボディのピアディである。
そのルシウスは面白そうにピアディの説法を聞いている。彼的にはピアディの言説は〝有り〟らしい。
ちなみに玉座に向かって左側には宰相に任命された鮭の人ヨシュア・リーストが、ピアディの瞳の色である真っ青なウルトラマリン色の礼装で立っている。
反対側の右側には、古き魚人族の時代からのピアディの兄嫁にして、永遠の国の長老でもある神人カーナ姫が立つ。
黒髪と琥珀の瞳を持つショートボブの優美な面立ちの少女は、神殿の神官とほぼ同じ白い聖衣姿だ。
そのカーナ姫の隣には、友人で聖女アイシャに加護を与えたと噂の、魔王ジューアが白いワンピース型の女性用礼装で立っている。
彼女はルシウス、鮭の人と同じ青銀色の長い髪と白い肌、麗しの容貌の華奢な美少女だ。
この時点で玉座側にはルシウス、鮭の人、神人ジューアという進化した種族魔人族とそれに連なる一族が三名もいることになる。
名目上の支配者こそ神人ピアディだが、実質的な権力者が魔王ジューアの一族であることは一目瞭然だった。
「法治国家の建前を自ら破壊すると仰るか?」
「ぷぅ(そんなこむずかしいこといっておらぬわ。おのれの命でしか償えぬほどの罪をおかした者がおれば、命をわれがあずかるといっておる)」
「……預かって、如何なさるのか?」
「ぷぅ!(いかすもころすも、われしだい。そのときかんがえるのだー)」
「………………」
納得いかない顔をするユーグレンに、それ以上神人ピアディは構わなかった。
「諸賢におかれましては反論もございましょう。例えば、撤廃した死刑に代わる刑罰をどうするのか、とか」
宰相の鮭の人がフォローを出した。
「そうだ、その通り。命を奪う死刑に異論があることは承知だが、代わりの重罰は絶対に必要だ」
「私もユーグレン王太子と同意見です」
「ぷぅ?(さいあい、そうなの?)」
ルシウスの腕の中から、ピアディは不思議そうにウルトラマリンの大きな瞳で鮭の人を見上げた。
麗しの鮭の人ヨシュアに一目惚れした神人ピアディは、彼を〝さいあい〟と呼んで寵愛している。
「どうでしょう、ピアディ様。このヨシュア・リーストへ、死刑に代わる代替案をお命じくださいませんか。宰相として初の大仕事となりましょう」
「ぷぅ!(ゆるす! ぞんぶんにそのかしこい頭をはたらかせるとよいぞー)」
「は、ありがたく存じます」
※本当は玉座側に正装アイシャ、本来サイズの巨体のユキノ君もおきたいんですが、ちょっとやりすぎなので少し離れたところに控えてます。
「ほら、前に刑罰の件で揉めたことがありましたよね?」
普通の安物の味になってしまったコーヒーをすすりながら、鮭の人ヨシュアが言うには……
* * *
旧カーナ王国がサラマンダーの進化した種族、神人ピアディによって〝カーナ神国〟に転換された直後、ある悶着があった。
この国の政官財それぞれは、旧王国時代の骨組みをそのまま継続して運営続行することが決まっていた。
聖女アイシャを虐げた『聖女投稿事件』で一気に評判を落としたカーナ王国は、王族の暴挙と聖女絡みのろくでもなさこそ際立っていた。
ところが国家運営に関しては大変優良で、後からテコ入れする必要はほとんどなかったのである。
ただし、神人ピアディによってある一つの法律だけが大きく変わった。
刑罰から〝死刑〟が削除されたのだ。
「なぜ、死刑の撤廃を? 犯罪の抑止のためにも必要と思うが」
これには他国の王族、特に王太子のユーグレンは解せないと疑問をぶつけてきた。
「ぷぅ(そんなこともわからぬのか、友の親戚! だからおまえはだめなのだ!)」
「そもそも、貴殿のその謂れなき駄目出しも私は納得がいかぬのだが!?」
「ぷぅ~(しかたないのだ。一からわれがきっちり教えてやるのだー。できのわるい嫁に姑がきちっといいきかすようになのだー)」
「嫁? し、姑!? 誰が何だと!?」
傲岸不遜ウパルパに翻弄されるユーグレンは置いておくとして。
首脳部を旧王城の玉座の間に集めて、神人ピアディが語ったのは単純明快な支配者の理だった。
「ぷぅ(カーナ神国の支配者はわれなり。ゆえに国内すべての生殺与奪権、われにあり)」
小さく幼いウーパールーパーのピアディは、保護者の〝おとうたん〟こと新たな神人となったルシウスが座る玉座で、抱かれた腕の中からぷぅぷぅ語った。
どこからどう見ても、純白の礼装を身にまとった麗しの美丈夫ルシウスこそが支配者に見えるが、あくまで主役は半透明ベビーピンクの小さなボディのピアディである。
そのルシウスは面白そうにピアディの説法を聞いている。彼的にはピアディの言説は〝有り〟らしい。
ちなみに玉座に向かって左側には宰相に任命された鮭の人ヨシュア・リーストが、ピアディの瞳の色である真っ青なウルトラマリン色の礼装で立っている。
反対側の右側には、古き魚人族の時代からのピアディの兄嫁にして、永遠の国の長老でもある神人カーナ姫が立つ。
黒髪と琥珀の瞳を持つショートボブの優美な面立ちの少女は、神殿の神官とほぼ同じ白い聖衣姿だ。
そのカーナ姫の隣には、友人で聖女アイシャに加護を与えたと噂の、魔王ジューアが白いワンピース型の女性用礼装で立っている。
彼女はルシウス、鮭の人と同じ青銀色の長い髪と白い肌、麗しの容貌の華奢な美少女だ。
この時点で玉座側にはルシウス、鮭の人、神人ジューアという進化した種族魔人族とそれに連なる一族が三名もいることになる。
名目上の支配者こそ神人ピアディだが、実質的な権力者が魔王ジューアの一族であることは一目瞭然だった。
「法治国家の建前を自ら破壊すると仰るか?」
「ぷぅ(そんなこむずかしいこといっておらぬわ。おのれの命でしか償えぬほどの罪をおかした者がおれば、命をわれがあずかるといっておる)」
「……預かって、如何なさるのか?」
「ぷぅ!(いかすもころすも、われしだい。そのときかんがえるのだー)」
「………………」
納得いかない顔をするユーグレンに、それ以上神人ピアディは構わなかった。
「諸賢におかれましては反論もございましょう。例えば、撤廃した死刑に代わる刑罰をどうするのか、とか」
宰相の鮭の人がフォローを出した。
「そうだ、その通り。命を奪う死刑に異論があることは承知だが、代わりの重罰は絶対に必要だ」
「私もユーグレン王太子と同意見です」
「ぷぅ?(さいあい、そうなの?)」
ルシウスの腕の中から、ピアディは不思議そうにウルトラマリンの大きな瞳で鮭の人を見上げた。
麗しの鮭の人ヨシュアに一目惚れした神人ピアディは、彼を〝さいあい〟と呼んで寵愛している。
「どうでしょう、ピアディ様。このヨシュア・リーストへ、死刑に代わる代替案をお命じくださいませんか。宰相として初の大仕事となりましょう」
「ぷぅ!(ゆるす! ぞんぶんにそのかしこい頭をはたらかせるとよいぞー)」
「は、ありがたく存じます」
※本当は玉座側に正装アイシャ、本来サイズの巨体のユキノ君もおきたいんですが、ちょっとやりすぎなので少し離れたところに控えてます。
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