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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
環《リンク》覚醒ハイと幸運招きウパルパ
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「今までの人生で経験したことがない、スムーズな流れです。オレは幸運値が低いので、環境や人付き合いが良かったことはほとんどないんですよ」
この世界でステータスの幸運値は、運が良いことを表す他に外運の意味合いが大きい。
即ち、どれだけ人や物、環境が自分にとって好ましい状態かを示す値だ。
鮭の人は魔法の大家の当主だっただけあって、魔法や知力は元から高かった。
これはリースト一族に共通するステータス傾向だそうだ。
「代わりに幸運値が低いんです。ユキレラみたいに傍系で血が薄いと、高めな者もいるんですけどね」
「確かヨシュアの幸運値は1だったか」
「「いちー!?」」
これにはアイシャとトオンは驚愕した。
そもそもステータスは、人間が持つ能力を本人なりの十段階評価で数値に表したものだ。
平均は5で、最高が10。そして最低が1。幸運値が1となるとまったく外界や他者からの助けが得られないということになるが……
「環に覚醒した影響だろう。今まで低かった分、反動で下がってた幸運分が一気に押し寄せてきたんじゃないか?」
「え? でも」
さらっとカズンが言うので、トオンは鮭の人を見た。どうぞ、と言うように頷かれたのでルシウスに伝授されて獲得した人物鑑定スキル初級で彼を見てみると、ステータスの幸運値は3に上昇している。
加えて、オプション数値の付加があった。
「幸運値3プラス……〝神人ピアディの寵愛によりブースト付加〟だと?」
「えっ、ユーグレン、おまえそこまで読み取れるのか? 僕の中級だとプラスまでしか読めないのだが」
「私は環に覚醒したら一気に上級まで上がったんだ」
「う……くそ、さすがは賢者の資格持ちめ」
カズンは何やら悔しそうだ。同い年の王族なこともあって、何かと張り合っている様子をよく見る。
もっとも二人は外見がよく似ているだけで、性格などタイプはかなり異なっていたから比べる類のものではない。カズンが一方的に突っかかっているだけなのだが。
ともあれ、カーナ神国に来たばかりの新参者の鮭の人がいきなり宰相に抜擢されて何の抵抗もなかったのは、今回一時的に上がっている幸運値が影響しているようだ。
そこに神人ピアディの寵愛という加護が後押ししているとのこと。
「そういえばヨシュア、おまえここに来てからずっとテンション高いし元気だよな。らしくなく随分と気合いが入ってるなと思ってたんだ」
「叔父様に言わせると、環覚醒ハイ状態なんですって。そのうち落ち着くだろうって言ってましたけど、環を出してると調子が良いので癖になりましたね」
「ぷぅ!(鮭の人にはわれがまいにち祝福を与えてるのだ。その環なる輪っかに魔力ちゃーじなのだ)」
アイシャの手の上から、自慢げにウパルパが胸を張る。ぽんぽんのお腹まで前に突き出してぽよんと震わせていたがご愛嬌というやつだろう。
「はい。毎朝、頬っぺたにちゅーっと。ご寵愛を賜ってます」
「ぷぅ(鮭の人にちゅーせぬことにはわれの一日がはじまらぬのだー)」
「頬にキスと。ほう。ほお……」
ユーグレンがマジ顔でピアディを見つめている。
凝視されたウパルパはいつもの〝ぷぅ〟という空気が抜けるような鳴き声ではなく「へっ」とものすごくイラッとくる顔でユーグレンに笑い返している。
「ピアディの加護で増強か」
「そういえばピアディはよくヨシュアさんのポケットに入っているよね。神人を装備……強いわけだ」
その神人ピアディはといえば。
「ぷぅ(ステータス鑑定とやらでわれを見てみるとよいのだ)」
「ん? なら遠慮なく」
この場で人物鑑定スキルを持つのはカズン、ユーグレン、そしてトオンだ。ただし全員ランクが異なる。トオン初級、カズン中級、ユーグレン上級と揃っていた。
三人は言われるままにピアディのステータスを見た。
「こ、幸運値10……だと……?」
ユーグレンが慄いた。黒い目を何度も手のひらで擦っては小さな半透明ピンクのウパルパを凝視したが、見える数値は変わらない。
幸運値マックスウパルパだ。間違いない。
「すごいじゃないか、ピアディ」
「ぷぅ(ふふん。ずっと地下のカーナたんの甥っ子の中で眠っていたとはいえ、幸運値10のわれがいたから、この地は豊かだったのだぞ)」
「旧カーナ王国は……そういえば建国から金回りの良い国だったね」
トオンが環経由で覚えた文献の記録を記憶から引っ張り出している。
元々、地下にあった邪悪な古代生物の影響で魔物や魔獣などの被害が多く、それらから獲れる魔石で国庫は常に潤っていた。
「海に面してるから海産物も獲れるし、気候も比較的安定してて農業や畜産も盛ん、国内だけで食糧自給が賄えているし輸出もそこそこ。まあ小さい国なりに、だけど」
「ぷぅ(今後はわれが君臨するのだ。もっともっとゆたかになるのだぞーう)」
神人ピアディは歌聖という、歌で世界を祝福する聖なる魔力持ちだ。
祝福はそれこそ幸運の活性化だ。福徳を授けると言われ、受けた者は天命を自覚し才能発揮の機会に恵まれるとされる。
聖女のアイシャや聖者のルシウスにも祝福の能力はあったが、こと祝福に関してはピアディの力の強さはダントツといってよかった。
この世界でステータスの幸運値は、運が良いことを表す他に外運の意味合いが大きい。
即ち、どれだけ人や物、環境が自分にとって好ましい状態かを示す値だ。
鮭の人は魔法の大家の当主だっただけあって、魔法や知力は元から高かった。
これはリースト一族に共通するステータス傾向だそうだ。
「代わりに幸運値が低いんです。ユキレラみたいに傍系で血が薄いと、高めな者もいるんですけどね」
「確かヨシュアの幸運値は1だったか」
「「いちー!?」」
これにはアイシャとトオンは驚愕した。
そもそもステータスは、人間が持つ能力を本人なりの十段階評価で数値に表したものだ。
平均は5で、最高が10。そして最低が1。幸運値が1となるとまったく外界や他者からの助けが得られないということになるが……
「環に覚醒した影響だろう。今まで低かった分、反動で下がってた幸運分が一気に押し寄せてきたんじゃないか?」
「え? でも」
さらっとカズンが言うので、トオンは鮭の人を見た。どうぞ、と言うように頷かれたのでルシウスに伝授されて獲得した人物鑑定スキル初級で彼を見てみると、ステータスの幸運値は3に上昇している。
加えて、オプション数値の付加があった。
「幸運値3プラス……〝神人ピアディの寵愛によりブースト付加〟だと?」
「えっ、ユーグレン、おまえそこまで読み取れるのか? 僕の中級だとプラスまでしか読めないのだが」
「私は環に覚醒したら一気に上級まで上がったんだ」
「う……くそ、さすがは賢者の資格持ちめ」
カズンは何やら悔しそうだ。同い年の王族なこともあって、何かと張り合っている様子をよく見る。
もっとも二人は外見がよく似ているだけで、性格などタイプはかなり異なっていたから比べる類のものではない。カズンが一方的に突っかかっているだけなのだが。
ともあれ、カーナ神国に来たばかりの新参者の鮭の人がいきなり宰相に抜擢されて何の抵抗もなかったのは、今回一時的に上がっている幸運値が影響しているようだ。
そこに神人ピアディの寵愛という加護が後押ししているとのこと。
「そういえばヨシュア、おまえここに来てからずっとテンション高いし元気だよな。らしくなく随分と気合いが入ってるなと思ってたんだ」
「叔父様に言わせると、環覚醒ハイ状態なんですって。そのうち落ち着くだろうって言ってましたけど、環を出してると調子が良いので癖になりましたね」
「ぷぅ!(鮭の人にはわれがまいにち祝福を与えてるのだ。その環なる輪っかに魔力ちゃーじなのだ)」
アイシャの手の上から、自慢げにウパルパが胸を張る。ぽんぽんのお腹まで前に突き出してぽよんと震わせていたがご愛嬌というやつだろう。
「はい。毎朝、頬っぺたにちゅーっと。ご寵愛を賜ってます」
「ぷぅ(鮭の人にちゅーせぬことにはわれの一日がはじまらぬのだー)」
「頬にキスと。ほう。ほお……」
ユーグレンがマジ顔でピアディを見つめている。
凝視されたウパルパはいつもの〝ぷぅ〟という空気が抜けるような鳴き声ではなく「へっ」とものすごくイラッとくる顔でユーグレンに笑い返している。
「ピアディの加護で増強か」
「そういえばピアディはよくヨシュアさんのポケットに入っているよね。神人を装備……強いわけだ」
その神人ピアディはといえば。
「ぷぅ(ステータス鑑定とやらでわれを見てみるとよいのだ)」
「ん? なら遠慮なく」
この場で人物鑑定スキルを持つのはカズン、ユーグレン、そしてトオンだ。ただし全員ランクが異なる。トオン初級、カズン中級、ユーグレン上級と揃っていた。
三人は言われるままにピアディのステータスを見た。
「こ、幸運値10……だと……?」
ユーグレンが慄いた。黒い目を何度も手のひらで擦っては小さな半透明ピンクのウパルパを凝視したが、見える数値は変わらない。
幸運値マックスウパルパだ。間違いない。
「すごいじゃないか、ピアディ」
「ぷぅ(ふふん。ずっと地下のカーナたんの甥っ子の中で眠っていたとはいえ、幸運値10のわれがいたから、この地は豊かだったのだぞ)」
「旧カーナ王国は……そういえば建国から金回りの良い国だったね」
トオンが環経由で覚えた文献の記録を記憶から引っ張り出している。
元々、地下にあった邪悪な古代生物の影響で魔物や魔獣などの被害が多く、それらから獲れる魔石で国庫は常に潤っていた。
「海に面してるから海産物も獲れるし、気候も比較的安定してて農業や畜産も盛ん、国内だけで食糧自給が賄えているし輸出もそこそこ。まあ小さい国なりに、だけど」
「ぷぅ(今後はわれが君臨するのだ。もっともっとゆたかになるのだぞーう)」
神人ピアディは歌聖という、歌で世界を祝福する聖なる魔力持ちだ。
祝福はそれこそ幸運の活性化だ。福徳を授けると言われ、受けた者は天命を自覚し才能発揮の機会に恵まれるとされる。
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