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三
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揺られて、揺られて、一体どれ程経っただろう。
不意に、どこかへと乱雑に置かれた。
やがて袋の外からは、パチパチと何かが爆ぜる音が聞こえ出す。
「女どもに飯、食わせろよ。せっかく頂いてきたんだ、死なれちゃ困る」
「お頭、あの白いのには飯とかやらなくていいんですかい?」
「あぁ? あれは鬼なんだろ? 飯なんかやらなくったってそうそうくたばりやしねぇよ」
「それもそっすね」
「それともお前、あれに自分の腕でも食わせるか? 鬼ってのは、人の肉を食らうって言うからな」
「ええ!? 絶対嫌っすよぉ!」
笑い声がどっと響き、ヤジが飛ぶ。
静寂に慣れた耳に、大きな声がわんわんとこだまする。
身体を小さく丸め、手で耳を塞ぐ。
たしかに、僕は鬼子だけれど。
でも、人なんて食べない。
食べたいとも、思わない。
「しっかし、さすがお貴族さまだぜ。食いもんもお宝もたっぷりだ」
「これをただふんぞり返って受け取るだけだなんて、お山の鬼様たちはお気楽なもんでさぁね」
「全くだ。だがまぁ、そのお山に置いてもらってんだ、仕方のねぇこった」
騒がしい声は止まない。
耳を塞いでも突き抜けてくる。
その中に、気になる言葉が聞こえた。
山の、鬼。
どくどくと鼓動が速まる。
自分以外の鬼。
人々から鬼として認識されている、本物の鬼。
会ってみたい。
でも、怖い。
その鬼はきっと、力も強くて、不思議な力を持っていて、人とは違う姿形をしているのだろう。
対して僕は所詮、やせ細っていて何の力もない、ただの鬼子だから。
それに、これからどこへ行くのか、僕がどうなるのかすらわからない。
……僕の望みが、叶ったこともない。
会ってみたいという希望が、あっという間に萎んでいく。
……これでいい。
希望なんて持ったって仕方ない。
結局どうやったって叶わなくて、傷つくだけだから。
ぎゅっと身体を丸めて、周囲の喧騒から遠ざかるために意識を深く沈めた。
不意に、どこかへと乱雑に置かれた。
やがて袋の外からは、パチパチと何かが爆ぜる音が聞こえ出す。
「女どもに飯、食わせろよ。せっかく頂いてきたんだ、死なれちゃ困る」
「お頭、あの白いのには飯とかやらなくていいんですかい?」
「あぁ? あれは鬼なんだろ? 飯なんかやらなくったってそうそうくたばりやしねぇよ」
「それもそっすね」
「それともお前、あれに自分の腕でも食わせるか? 鬼ってのは、人の肉を食らうって言うからな」
「ええ!? 絶対嫌っすよぉ!」
笑い声がどっと響き、ヤジが飛ぶ。
静寂に慣れた耳に、大きな声がわんわんとこだまする。
身体を小さく丸め、手で耳を塞ぐ。
たしかに、僕は鬼子だけれど。
でも、人なんて食べない。
食べたいとも、思わない。
「しっかし、さすがお貴族さまだぜ。食いもんもお宝もたっぷりだ」
「これをただふんぞり返って受け取るだけだなんて、お山の鬼様たちはお気楽なもんでさぁね」
「全くだ。だがまぁ、そのお山に置いてもらってんだ、仕方のねぇこった」
騒がしい声は止まない。
耳を塞いでも突き抜けてくる。
その中に、気になる言葉が聞こえた。
山の、鬼。
どくどくと鼓動が速まる。
自分以外の鬼。
人々から鬼として認識されている、本物の鬼。
会ってみたい。
でも、怖い。
その鬼はきっと、力も強くて、不思議な力を持っていて、人とは違う姿形をしているのだろう。
対して僕は所詮、やせ細っていて何の力もない、ただの鬼子だから。
それに、これからどこへ行くのか、僕がどうなるのかすらわからない。
……僕の望みが、叶ったこともない。
会ってみたいという希望が、あっという間に萎んでいく。
……これでいい。
希望なんて持ったって仕方ない。
結局どうやったって叶わなくて、傷つくだけだから。
ぎゅっと身体を丸めて、周囲の喧騒から遠ざかるために意識を深く沈めた。
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