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神天地編
第20神話 ウラン②
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「やめろ!ハウワ!」
扉の前から男の声が聞こえ、そこから視線をなんとか動かす。
そこには居たのは30代くらいの男だった。(まぁ、おそらくはあの女みたいに怪物なんだろうが……)
ブロンド色の髪に、黒色の瞳、ハウワや創造神の女と同じように白衣を着用し首にはチェーンネックレスをつけている。白衣の下には黄色い無地のシャツを着用し、また足には創造神の女と同じような形のブーツを履いている。
「……ウランさま。」
多分男の名前だろう。どうやら面識があるらしい。
それでもハウワは顔を男のいる方へ向けず私との目線は未だに変わらない。
「そこら辺にしといたらどうなんだ?お前も人のことは言えたもんじゃないだろ。」
「……確かに一理はあります。でも浅はかな行動をして私達がこの神獣に貶められたこととは別です。」
ハウワの怒りはまだ収まらないようで、こんな一言では揺るがないようだ。
「はぁ…お前、怒りの方向を向けるべきはその神獣なんかじゃないだろ?あの頭のおかしい所長だ。」
「そんなのは分かってます!!私が気にくわないのはこの馬鹿が一々偉そうな口を言っておいて開き直ってることに腹が立つんですよ!」
女はまた癪に障ったのか、語気を強める。
男はまたため息を吐き、少し呆れている様子だった。
「…取り敢えずはその子降ろしてやれ。あんまり意地悪するような所をマケなんかが見たらがっかりすると思うぞ。」
「…………くっ。」
そしてハウワは無言で胸ぐらを掴んだ手を放した。
「あたっ!」
手を放されたことで久しぶりに重力というものを体感し、尻餅を思い切りついて尻骨がジーンと響くように痛む。
(いててて……なんだって?マケ……?)
私は男の発言に引っかかる部分があった。男はマケという単語をだし、その単語を聞いた途端にハウワも手を放した。
恐らくマケというのは間違いなくあの創造神の女のことだろう。
(……そういえばあいつは一体どこに行ったんだろ?)
ハウワとのいざこざに夢中になりすぎて、完全に頭から飛んでいた。確かにさっきまではハウワと一緒に帰っていたはずだ。
「何かあったのかしら…」
私が一人ごとをボソッと言うと
「はぁ!?」
するとまた何か癪に障ったのかハウワがまた怒りの矛先を向ける。
「全部あなたの所為じゃですか!あの人がどれだけ傷を負って…!」
私がまたかと思ってしまったその時、仲裁に彼が入る。
「まぁまぁ、二人ともそこまでにしておいた方が良い。ここで暴れてたらまたあの自分のストレス発散のためだけに怒る所長がやってくるぞ?」
モンスターという字面だけ、しかも出会って間もないというのに頭に思い浮かんでくるのは最早言葉では言い表せない凄さがある。
「でも……!」
「こいつを今ここで責めたって何も解決しないだろ?とにかく今はこの先どうにかすることが優先しようぜ。」
「多分明日の今頃には所長達がこの部屋を一掃するはずだ。今の内に持てるものは持っとかないと全部消し去られちまうぞ?今は取り敢えずここら一帯、片付けよう。話はそれからでも良いだろ?」
「くっ……!」
女は男に諭されたことによって私の顔を悔しがるように見つめ、暫くすると男の方へ向き直す。
「す、すみませんでした……少し…冷静になれてなかったです……。」
そう言って男に向けて深く頭を下げた。
「ま、取り敢えず大事になる前に止めれて良かった。お前がこんなに怒ることなんて中々無いし、俺でも驚いたよ。」
「………」
あのハウワをここまで大人しくさせ、暴力の一つも使わない対応力には脱帽してしまった。
私は興味を持つように男の方へ目を向ける。
「……!」
すると男はこちらが目線を向けていることに気づいたのか、尻餅をついている私の側に近寄る。
「大変だったなぁ、お前も。怪我とかしてないか?」
「ッ…!」
どうやら心配をしていたようだった。このとき、私の警戒心のボルテージが上がる。
今まで生きてきた中で心配をするような言葉を掛けてきた奴は皆んな裏切ってきた。気が滅入る程に。
更に人間の姿ときた。過去のトラウマが私の心を強く刺激する。
男はそんな私を見て困惑している。
「……そ、そんな警戒しなくても……まぁ何も知らない俺が言うのも無責任な話だしなぁ……うーん、そうだなぁ……」
男は深く考え込む。
「あ、そうだ。ちょっとついて来い。」
「え?」
男はそう呟くと地面に座り込んでいる私の手を取る。私は急な行動に驚いてしまった。
「わっ…!わわ、ちょ、ちょっと!」
強引に私はつい立ち上がらされ、男に手を引かれるがまま動く。そして扉へ向けて男は走り始める。
「う、ウラン様どこへ!?」
ハウワも予想外の行動を見て、男に疑問をぶつける。
「どこってあいつらの場所だよ。」
男は意気揚々と言いながら私と一緒にこの狭い部屋を抜け出した。
何故だろう。男の手を振りほどこうなんて考えはかのときには無く、自身の体の行先を男の温かく大きな手に任せていた。
扉の前から男の声が聞こえ、そこから視線をなんとか動かす。
そこには居たのは30代くらいの男だった。(まぁ、おそらくはあの女みたいに怪物なんだろうが……)
ブロンド色の髪に、黒色の瞳、ハウワや創造神の女と同じように白衣を着用し首にはチェーンネックレスをつけている。白衣の下には黄色い無地のシャツを着用し、また足には創造神の女と同じような形のブーツを履いている。
「……ウランさま。」
多分男の名前だろう。どうやら面識があるらしい。
それでもハウワは顔を男のいる方へ向けず私との目線は未だに変わらない。
「そこら辺にしといたらどうなんだ?お前も人のことは言えたもんじゃないだろ。」
「……確かに一理はあります。でも浅はかな行動をして私達がこの神獣に貶められたこととは別です。」
ハウワの怒りはまだ収まらないようで、こんな一言では揺るがないようだ。
「はぁ…お前、怒りの方向を向けるべきはその神獣なんかじゃないだろ?あの頭のおかしい所長だ。」
「そんなのは分かってます!!私が気にくわないのはこの馬鹿が一々偉そうな口を言っておいて開き直ってることに腹が立つんですよ!」
女はまた癪に障ったのか、語気を強める。
男はまたため息を吐き、少し呆れている様子だった。
「…取り敢えずはその子降ろしてやれ。あんまり意地悪するような所をマケなんかが見たらがっかりすると思うぞ。」
「…………くっ。」
そしてハウワは無言で胸ぐらを掴んだ手を放した。
「あたっ!」
手を放されたことで久しぶりに重力というものを体感し、尻餅を思い切りついて尻骨がジーンと響くように痛む。
(いててて……なんだって?マケ……?)
私は男の発言に引っかかる部分があった。男はマケという単語をだし、その単語を聞いた途端にハウワも手を放した。
恐らくマケというのは間違いなくあの創造神の女のことだろう。
(……そういえばあいつは一体どこに行ったんだろ?)
ハウワとのいざこざに夢中になりすぎて、完全に頭から飛んでいた。確かにさっきまではハウワと一緒に帰っていたはずだ。
「何かあったのかしら…」
私が一人ごとをボソッと言うと
「はぁ!?」
するとまた何か癪に障ったのかハウワがまた怒りの矛先を向ける。
「全部あなたの所為じゃですか!あの人がどれだけ傷を負って…!」
私がまたかと思ってしまったその時、仲裁に彼が入る。
「まぁまぁ、二人ともそこまでにしておいた方が良い。ここで暴れてたらまたあの自分のストレス発散のためだけに怒る所長がやってくるぞ?」
モンスターという字面だけ、しかも出会って間もないというのに頭に思い浮かんでくるのは最早言葉では言い表せない凄さがある。
「でも……!」
「こいつを今ここで責めたって何も解決しないだろ?とにかく今はこの先どうにかすることが優先しようぜ。」
「多分明日の今頃には所長達がこの部屋を一掃するはずだ。今の内に持てるものは持っとかないと全部消し去られちまうぞ?今は取り敢えずここら一帯、片付けよう。話はそれからでも良いだろ?」
「くっ……!」
女は男に諭されたことによって私の顔を悔しがるように見つめ、暫くすると男の方へ向き直す。
「す、すみませんでした……少し…冷静になれてなかったです……。」
そう言って男に向けて深く頭を下げた。
「ま、取り敢えず大事になる前に止めれて良かった。お前がこんなに怒ることなんて中々無いし、俺でも驚いたよ。」
「………」
あのハウワをここまで大人しくさせ、暴力の一つも使わない対応力には脱帽してしまった。
私は興味を持つように男の方へ目を向ける。
「……!」
すると男はこちらが目線を向けていることに気づいたのか、尻餅をついている私の側に近寄る。
「大変だったなぁ、お前も。怪我とかしてないか?」
「ッ…!」
どうやら心配をしていたようだった。このとき、私の警戒心のボルテージが上がる。
今まで生きてきた中で心配をするような言葉を掛けてきた奴は皆んな裏切ってきた。気が滅入る程に。
更に人間の姿ときた。過去のトラウマが私の心を強く刺激する。
男はそんな私を見て困惑している。
「……そ、そんな警戒しなくても……まぁ何も知らない俺が言うのも無責任な話だしなぁ……うーん、そうだなぁ……」
男は深く考え込む。
「あ、そうだ。ちょっとついて来い。」
「え?」
男はそう呟くと地面に座り込んでいる私の手を取る。私は急な行動に驚いてしまった。
「わっ…!わわ、ちょ、ちょっと!」
強引に私はつい立ち上がらされ、男に手を引かれるがまま動く。そして扉へ向けて男は走り始める。
「う、ウラン様どこへ!?」
ハウワも予想外の行動を見て、男に疑問をぶつける。
「どこってあいつらの場所だよ。」
男は意気揚々と言いながら私と一緒にこの狭い部屋を抜け出した。
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