God's Will!

manta_ei

文字の大きさ
71 / 77
神天地編

第21神話   実験体①

しおりを挟む
「おじゃましまー……「でえぇぇーーい!!」

「ゴハァッ!!!」

 私のそっけない挨拶を訂正するように、何者かの足が私の柔らかいお腹に向けて蹴りを加えられ、後ろへと吹っ飛ぶ。

ガンッ!!
 
 そのまま後頭部にドアノブが直撃した。

「いっ~~~!!」

悶絶してうずくまってしまった。
 
「あなた新人ね!私の従者として歓迎するわ!」

 声が聞こえる方へなんとか目線を上へ上げる。
 そこに居たのは少女だった。いや少女っていう言葉よりガキという言葉が似合いそうな容姿だ。
 服装は私と同じ白い患者服を着用していて、長い赤髪が特徴的だ。体型は……まぁ、私の体型には遠く及ばない程に発展途上だ。胸も身長も。

(……ちっ。なに?このバカガキ?胸もなければ頭も無いのね。) 

 私は今すぐにでも起き上がってボコボコにしたかったが、自分の僅かにいる理性が抑えつけてくれたことで、心の中で悪態を吐くだけで済んだ。

「ちょっと!何かこの私に言うことは無い訳!?私はここのリーダーなのよ!」

(…お前の蹴りが痛すぎてこちとらそれどころじゃないのよ…!)

 このガキ!?手だしてないだけでも感謝しなさい!?

「聞いてるの新人!?いい加減に…「するのはお前だ馬鹿。」」

「痛いっ!」

 聞き覚えのある女性の声と頭蓋骨の固く鈍い音が部屋に響き渡る。
 そのままガキは床に向けて倒れてしまった。
 
「お前……!」

 ガキの後ろから出てきたのは、白衣を着て白髪が特徴的な女性が立っている。そうマケだ。そして手には謎の青い液体が入っている。

「あー…うちのやつが済まない。ちょっとこれ飲め。」

「…何そのえきた……「飲め。」

 マケはしゃがみ、手に持っていた青い液体を私が喋り切る前に強制的に流し込む。

「…ん、んぐ!?」

私は咄嗟の出来事に反応出来ずそのまま飲み込んでしまった。

 ゴクン

「ちょ…ちょっと!何を……ってあれ?」

「甘い……。」

 私は毒でも飲まされたのではないかとも思ったが、飲んでみると今までに飲んだことの無い味だった。味的に……何かの果実?
 それに気づけば先程のガキにやられた痛みもいつの間にか引き、体の調子がすこぶる良い。

「な、何を飲ませたの?」

「即効の回復薬。それが状態異常だろうかわ精神疾患だろうが治してくれる。あとりんご味を付けておいたのは私の遊び心だ。」

ん?なんて?

「……り、りんご?なにそれ?」

「……?りんご分からないのか?」

 私は首を縦にふる。

「へへーん……りんごも知らないとは……あなた相当馬鹿…「なのはお前だ馬鹿。」」

 ゴンッ

「痛ったぁ!」

 そして失礼なバカガキを後ろから、わたしをここへ連れてきた男がマケと同じ場所に拳骨を喰らわせた。多分軽くたんこぶが出来ているだろう。

「…ちょ、ちょっと二人とも!いきなり後ろから攻撃してくるなんて卑怯よ!それでも私が認めた神なの!?さては……偽物!」

 『いやどうしてそうなる。』と思ったのは私だけじゃないはずだ……ほら見ろ。二人ともめんどくさそ~な顔してらっしゃる。

「私の知ってるウランとマケはもっと強くて、真摯な奴等よ!きっとあなた達偽物だわ!私と勝負しろ!」

 二人ともなんて声を掛けようか困惑している。

クスッ

それを見て何故かガキは笑みを見せる。

「ぷくく……さてはあなた達『真摯』っていう意味が分からないのね?ぷくく…」

(はい……?)

 なんてこった。どうしてここまで自分勝手な妄想で話を変えることが出来るのだろうか。

「真摯っていうのはね!『真面目でひたむきなさま。』っていう意味よ!」

 恐らく最近辞書かなんかで調べて、自分だけが知っていることでマウントを取りたいお年頃なのだろう。         
 可愛らしいと思えば可愛らしいが、まぁ一回り大きい私の体に大ダメージを与えてる時点で可愛さの欠片の一つもない。

「こんな簡単な言葉すら知らないなんて…いつものマケ達なら知ってるわ!やっぱりあなた達偽物ね!この私が成敗してやるわ!」

「はいはいそーですか(棒)」

 最早マケは棒読みで、遠い目をしている。ていうかそんな顔するんだ……。 
 何故かどうでも良いとこで変な

「喰らえ!この偽物め!」
 
 なんとも返り討ちにされる時にありがちな言葉を発しながらマケに向けて可愛らしく尚且つ凶器のグーパンをマケの顔面に向けて叩き込もうとする。
 
「りゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そして…

「「いい加減にしろ」」

「わぎゃぁっ!」

 邪魔される。

「う…うぅ。なんでぇ……」

 ついには泣き声になってしまった。
 あら、可愛い所あるじゃない。
 それに邪魔をしたのはまさかのマケや男では無く、私やガキと同じような白い患者服を着た二人の少年だった。恐らくこのガキの同居人だろう。
 ガキ二人に同時に足を引っ掛けて転ばされ、少年二人に、マケに、男に、私に見下される光景になっている。いい気味だ。
 私の人間態での年齢は体格の感じ、20代前半くらいだろう。
 この二人は私の人間態よりかは若く見える。パッと見、3歳差ぐらいだろうか。
 
 「全く!いい加減にせぇや!お前はどこまで迷惑かけたら気が済むんや!」

 茶髪に小柄な体格が特徴的であり、やはり私達とおなじような白い患者服を着用している。きっと私とも同じような境遇なのだろうが、私が気になったのはもう一つあった。

(……早かったな。)

 二人ともガキが殴りかかる一瞬よりも早く近寄り、ガキに警戒されないように気配を殺し、音も無くガキの横へ移動して転ばせた。私ですら今のは反応出来なかった。
 やはりここにいる奴等も私と同じただの人間では無さそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...