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第十四話 不思議の森の魔女と騎士
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しおりを挟む森に静寂が訪れる。木々のさざめきと生き物の声に交じって誰かの呼ぶ声が聞こえる。
「――――――ルウド―――――?」
「……‥」
幻聴だろうか?あの姫が一人でこんな森に入るわけない。
「……ルウド、お姫さまが呼んでるわよ?」
「……嫌まさか……」
「でもほらもうそこに、姿が…‥」
暗い森の道の方にゆっくり近付く人の黒影がある。
「隠れ怖がりの姫が……」
「それでもルウドのいる所に来るのか、愛だな…」
「愛ね……」
騎士と魔女が笑って消える。
ルウドは立ってティア姫の所へ行く。
「ティア様、大丈夫ですか?」
「ル、ルルルルルルルウド!まさかとは思ったけどどうしてこんな所に一人で来ているの?一人で何しているのよ?」
ルウドを見つけたティア姫はしっかり張り付いて文句を言う。
「うん?一人ではないですよ。幽霊の先輩が居ましてね。話していたんです」
「………先輩?……騎士の幽霊?……‥やっぱりいるんだ?」
ティア姫はびくびくと周囲を見る。
「……早く出ましょう?」
「そうですね、森の呪いが現れたら困りますしね」
「呪い?そんなものまであるの?嫌だ、早く行きましょう?」
ティア姫はルウドをつかんだまま森の外へと進んでいく。
「危険という立て札があったはずなのですが?見なかったのですか?」
「見たけどルウドがいないか気になって」
「危険ですからもう入っちゃいけません。男女がうっかり入り込むと結ばれてしまうという恐ろしい森ですから。その主が成仏しない限り呪いが消えないですし」
「……………え?」
「昔あの湖で自害したという騎士なのですが、成仏してくれる気になってくれればいいのですが……」
「そ、それは大変ね?男女が結ばれてしまう呪いって…‥…‥?」
「呪いですよ?怖いですよ。さ、早く森を出ましょう!」
こわごわと躊躇するティア姫を引きずってルウドは何とか森を出た。
「ル、ルウド、湖で結ばれるのよね?本当?じゃあ昨日、あの、私の記憶がない間に……」
「何もありません。あるはずないでしょう?眠ってる姫をちゃんと部屋へ送り届けましたよ?全く丸わかりの変装なんかして」
「……最初から知った上で草むしりなんてさせたのね。デートとか言う名目で。あのデート権を勝ち取る為に私がどれだけ苦労をしたのかも知らないで!」
「そんな大袈裟な」
「あんなの詐欺だわ!デートが草むしりなんてあり得ない!無効よ!やり直してよ?」
「ええ?嫌ですよ?大体私だって相手が姫様なんて想定していなかったのですから」
「酷いわ!私以外の女とデートするつもりだったのね?私に隠れて浮気する気だったのね?酷い裏切りよ!信じられない!」
「裏切りって……私姫の夫じゃないですから。どうでもいいじゃないですか?」
「いいわけないわよ!何でよ?私の気持ち知っててまだそんなこと言うの?私の事なんかどうでもいいというの?酷いわ!ルウドの馬鹿ああああっ!」
「―――――あっ、ティア様!」
「ルウドなんか幽霊に呪われてしまえばいいんだわ!森に入ってルウドを恨みながらどこかの男と結ばれてやるうううううっ!」
ティア姫は泣きながら森へ走って行った。
「ティア様、そんな無茶な…‥」
ルウドは慌てて森の中へと引き返した。
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